IS ~面倒臭がり屋な剣聖~ 作:比嘉
よろしくお願いします。
朝、それは多くの生物が1日の活動を始める時間帯。この時間に漸く活動を休止する生物もいるだろうが、少なくとも人間として生きて行くのならば残念ながらそれは許されない。
だがしかし、学生と言うある種の特権階級であるならば話は別だと、私―――御船伊織は考える。
例えば私の場合、朝6時頃に起床する。この時点で話が違うと思うかも知れないが、まぁ黙って聞いて欲しい。
朝、普通に起床する。すると、このまま一度歯を磨いてから朝食を口にする。私の朝は一杯のコーヒーから始まると言いたいが、この小学生の身体には、どうやらまだコーヒーは早いらしい。解せぬ。
文字数稼ぎ、もとい脇道に逸れたので話を戻そう。私の朝は一杯の牛乳から始まる。
寝ている間に渇いてしまった喉を潤し、それから何時ものように朝食と相成るのだが、因みにうちの朝食は、大体が和食だ。本当にどうでも良いが。
さて、朝食を終えると、次に行う事は割愛しよう。
身だしなみを整えた私は、やっとこさ学校へと登校する事になるのだが、その際妹の寝顔を鑑賞するのを忘れない。
話がそれたが、私の登校時間は他の生徒に比べてやや早い。
さて、ここで勘の良い人ならばもう気が付いただろう。そう、少し早く登校して、そのまま教師の自分の席で寝ればいいのである。
この事を言うだけで大層な物言いをしたが、そんなことは最早どうでも良い。私は寝る。
「御船くん、起きなさい」
肩を揺すられ、深い眠りから引っ張り出される感覚に不快感を募らせつつ、こんな程度で起きてたまるかとクラスの担任の手を払いのける。
伝え忘れていたが、私は転生者だ。詳しい説明はいずれするが、今は、私が転生者であるという事だけでも知っておいてもらえれば良い。
そんな私は、それなりの死線を潜り抜けて来たと言う自負がある。
平和な世界で生きて来た担任の先生様如きの手を払いのけるなど、赤子の手を捻るに等しい。
気配を察知し、再び肩へと手を置かれる前に振り払う。
三度目、四度目と繰り返すうちに相手が折れるのは、経験上知っている事。最早この、朝の会の為に起こされ、それを拒否すると言うのは、常習化している事だった。
今日もまた完全なる勝利を収めた私は、満足気に惰眠を貪る為に、改めて身体を机の上に突っ伏す。
もっとも、授業が開始してからは身体を起こし、真面目に受けるのだが。
転生者なんだから小学生の授業如き、なんて莫迦にする者もいるかも知れないが、私はこれを決して莫迦にする事は無い。
何故なら、この世界に来る前では学問に励む事など出来なかったからだ。
さて、午前中の授業の授業を終えると、私も含めて多くの学生が待ちに待った給食の時間だ。
働かなくとも飯を食う事が出来ると言うのは、何と素晴らしい事か。周りの者は好き嫌いをして給食を残したりするが、私はその者達に対して言いたい。巫山戯るな、と。
給食センターのマダム達が、私達の事を考え、一生懸命作って下さった物を残すなど、なんてバチ当たりなことなのかと。そして、飯にありつけないという事が、どれ程苦しく、恐ろしいかを。
まぁ、どれだけ懸命に説いたところで誰もまともに取り合わないだろうから、この事は己の胸の内に秘めておく事にしている。
さて、給食談議を終えたところで、今度はいよいよお待ちかね、お昼休みがやって来るのだ。フハハハハハ。
お昼休み、多くの者が運動場に遊びに行く中、私はやはり、机の上に突っ伏す。そして寝る。
放課後とは、学校と言う檻から解放されるのと同義であると誰かが言っていたが、まさにその通りである。
家に帰って寝るも良し。友人の家にお邪魔してベッドを占領するも良し。木の上でお昼寝と洒落込んでも良い。学校では出来ない事が色々と出来るのだ。これを釈放と言わずして何というのか。
それに、この世界には既に女尊男卑の風潮が生まれてしまっている。
小学校と言う環境でも、女子は男子より偉いというわけのわからない言い分が罷り通るのだ、怠惰を極めんとする私にとって、鬱陶しいことこの上無い。
そんな場所なぞ、監獄と言う呼び方で充分だ。今日の私は、「リストラされた中年男性が、公園のベンチで黄昏てる図」風に睡眠と決めているのだ、もう終わった学校の事なんてどうでも良い。
「ヤッホー、束さんだよ♪」
だから、「キャハ」と言い出しかねない声音で話し掛けて来る天災の事も、どうでも良い。
「もぅ〜無視するなんて、酷いよ伊織」
プンスカと聞こえて来そうな声なんて、私には聞こえない。
しかし、ガンガンと背に受ける殺気は別だ。これは無視するわけにはいかない。
「どうかしたのか、束」
「やっと反応してくれたよ!兎さんはね、寂しいと死んじゃうんだよ?もっと構ってくれないと、束さんも死んじゃうよ?」
「それは済まない事をした。今後は徹底して無視するとしよう」
私の言葉に何か騒ぎ始めるが、宣言通り無視をする。なんせ、寂しいと死ぬと言ったのだ。全人類にとって、今の状況を、女尊男卑の風潮を作り出した此奴が死ぬのは、とてもありがたい事なのだ。
しかし残念ながら、私には此奴を無視し続けるのは無理があるらしい。
「…っく、 んん……」
残念ながら、私は擽りに弱いのだ。
これをされては、此奴に構う他あるまい。
一先ず、背中にいる束のこめかみ目掛け肘打ちを忘れない……躱されたが。
「あはは〜相変わらず伊織は加減を知らないね!あんなの当たってたら死んじゃうぞ」
「死ねば良いのに」
「酷いよ!私と伊織の仲なのに!」
とか言いつつも、死なないくせに。
そもそも、全盛期でも無ければ、振り向き様の肘打ちで人を殺す事なんて出来やしない。小学校の筋肉なんて、たかが知れているのだ。
あと、目の前の駄兎は、さも私と仲が良い風に言っているが、初めて出会った時も殺し合いをした仲だ。
「それで、私に何か用でも?」
「用事が無かったら話し掛けたらダメなのかな?」
「質問に質問で返すな。あと答えはダメだ」
何とも辛辣な答えだとは自覚しているが、此奴に何を言ったところで無駄なのは知っている。こうしてダメだと答えたところで、今後も普通に話し掛けて来る事だろうよ。
「それで、本当に用事は無いのか?」
「え?うん、無いよ。伊織が、リストラされたサラリーマンが公園のベンチで黄昏てるかの様に寝てたから、邪魔をしようと思って」
「死ね」
やはり此奴は駄兎だ。さっさと飼主に引き渡さなければならない。
「それはそうと伊織、高校は何処にするか決めてるの?」
「おやすみ」
「会話しようよ!キャッチボールしようよ!変化球だって諦めるなよ!」
相変わらず五月蝿いが気にしない。
そもそも、小学校低学年の餓鬼に高校選びの事を聞くなんて間違っているのだ。
再び此奴に背を向けて、眠る姿勢に入るが、
「もー、無視するんだったら束さんが決めるからね!」
「高校選び、ねぇ」
此奴に進路を決められるなんて、絶対に碌なことにならないと、咄嗟に反応する。
普段は全く信じていない神様に誓っても良い。何なら、前世の愛刀に誓っても良い。
「はい、もう遅いですー。伊織にはIS学園に通って貰いますー」
「いや、無理だろ」
先程、此奴が女尊男卑の風潮を作り出したと言ったが、その原因が此奴の発明品《インフィニット・ストラトス》だ。
通称ISと言われるそれは、現存するどんな兵器でさえ太刀打ち出来ない程の圧倒的な力を持つ。元々は別の用途を目的として造られたのだが、愚かしい人間らしく、事実上、最強の兵器として扱っているのだ。何とも面倒臭い話である。
そしてこのIS、なんと男には使用出来ないのだ。
女性にしか扱えない圧倒的な力。それを勘違いした莫迦な女共が、増長し、幅を利かせている。
努力の末に力を付け、自分の中に一本の真っ直ぐな魂を持っている者が天狗となるのならば、私はとやかく言うまい。しかし、女だからと言うだけで態度を大きくする奴は、私は莫迦だと罵ろう。
話が逸れたが、ISと言うのは女性にしか扱えない。つまり、そのISについて学ぶ学舎は、女性にしか受験する事が出来ないのだ。それに、女しかいないところで過ごすなんてのは、原作主人公だけで良い。
「私、男。IS、乗れない。OK?」
「あははははは!変な事言うねぇ」
いつの間にか私の隣に座る束が笑う。
決して変な事を言ったつもりは無いのだが。
しかし、次の一言で納得せざるを得ないと思わされてしまった。
「私は束さんだよ?」
会話を文字に起こした時、あたかも話がずれている様に思うかもしれない――一部は事実ずれている――が、私達の間ではこれで充分だ。「私は束さんだよ」と言う言葉だけで、殆どのトンデモ発言に納得してしまう。
つまりは、私を例外とする、という事だろう。
ISは女にしか動かせないというのは、世界的に認められている事実だが、そこに例外が現れたとしよう。するとどうなるのかなんて、想像に難くない。実験動物になれるよ、やったね!
これは行き過ぎた空想にせよ、貴重な人材としてISを研究開発する企業に従事することになるはずだ。
ISのパイロットとして仕事をする、つまりそれ相応の技術を習得しなければならない。技術を習得するにはどうすれば良いのか、誰かに師事すればいい。
師事という言い方が大仰であるのならば、学校に通うと言い換えればいい。その学校がIS学園というだけだ。
「……ハァ。仮にISを起動できるようになろうとも、今の私はまだ、下の毛も生えそろっていない餓鬼だ。高校になど通うことなど出来まい」
「大丈夫、大丈夫。別に今すぐ通えってわけじゃないから」
束が言うには、今後は私の他にもう一人、男でISを操縦できる様にするという。
そのもう一人が快適に学園生活を過ごせるようにするためには、やはり同性の学友は必要だろうという、束なりの間違った優しさがそこにあるらしい。
そこで選ばれたのが、私だったというだけだ。
「断る」
たったそれだけの為に進路を決められるなんて、絶対に在り得ない。私は私の進みたい道を目指すのだ……まだ決まってないが。
「ま、考えといてよ。まだ数年あるからね」
断ると言ったのに、当然のごとくこいつは話を聞かない。
誰だ、言葉のキャッチボールをしようと言った奴は。
「死ね」
「じゃあね~。束さんは、これでサラダバー!シュワッチ!」
最期の最期まで話を聞かない奴だった。
彼奴はいいやつだったよ、と言いたかった……わけではないか。彼奴は五月蝿いやつだったよ。
あたかもウル○ラマンであるかの様に飛び去っていった奴の背中を、恨みがましく睨みつけておく。
無限の睡眠欲を満たすために訪れた公園で、結局はストレスを募らせる結果となってしまったのは、彼奴が現れた時点で諦めざるを得ないのだが、それでも納得は出来ないのだ。
やはり、睡眠は自宅のベッドの上に限るということらしい。
それにしても、前世よりも今のほうが、束と関わるようになってしまってから、口が悪くなってしまったのは反省しなければならない。
これから先訪れるであろう出来事に面倒くさいと思いつつ、睡眠学習ならぬ睡眠反省が待ち遠しいと、一人公園からの帰路へと着いた。
さて、さっさと帰って、私は寝る。
・主人公の性格
エクスカリバー(ソウルイーター)の面倒臭さを1/20のくらいに希釈、そこに怠惰やその他あれこれ(シスコン、おっぱい星人等)を加えれば主人公となる、らしい。
・鍛錬や授業中は真面目
前世では勉強できる環境になかったので、勉強できる有り難みを覚えたこと。そして、前世と今の身体能力の差に違和感を覚え、それを詰めるために自己研鑚は真面目。
・なんでこんなに寝るの?
「寝る子は育つ」を実践中。
・主人公に原作知識あり?
なしです。そういう作品があったということを、第一の人生で知った程度です。
・ヒロイン候補は?
現状作者の中では、更識楯無、更識簪、シャルロット・デュノア、山田真耶、ラウラ・ボーデヴィッヒ、のほほんさんが候補。(8/18あとがきを訂正)
あと、束さんが主人公のことをニックネームで呼ばないのは仕様です。