IS ~面倒臭がり屋な剣聖~   作:比嘉

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その上ご意見ももらえて、自室で小躍りしそうになった作者です。

それと、前回のあとがきで「ヒロインなしになる可能性もあり」なんてどこぞの馬鹿が言ってたと思いますが、あれは嘘です。


ちーちゃんと呼ばれるのは嫌いらしい。

 運動の得意な生徒、逆に苦手とする生徒では、体育の時間に対する気持ちが大きく異なる。

 前者は楽しみにするが、後者は速く終わらないかと、特に信じても居ない神様に内心で祈る。

 

 では私はどうか。

 答えは寝具こそが至高だと考えている。

 仕事や学業に疲れた時も、失恋や挫折を味わった時も、ベッドは優しく、そして温かく受け止めてくれる。

 冬の寒い日や現実から目を背けたい時、自分の世界に閉じこもりたいときは、掛け布団がそっと自分を包んでくれる。

 姿勢の悪いまま寝てしまうと、身体の疲れを取るどころか逆に疲労がたまるし身体も痛くなる、そんな私を気遣う優しさを持った枕は、時には涙も受け止めてくれる。

 

 さあ、もう分かっただろう。寝具こそが至高にして究極の存在であると。

 だから、体育なんて面倒くさい事は放っておいて、寝具に甘えるに決まっている。

 授業は真面目に受けるのではないのか、だって?阿呆め。体育、音楽、図工、家庭、そして総合、道徳の時間は、保健室のベッドで眠る時間に決まっているであろうが。

 もういっそのこと、このままベッドと結婚してしまいたいが、保健室のベッドとだけは結婚する訳にはいかない。私は尻軽ベッドが苦手だからだ。

 その点自室のベッドは良い。私だけを受け止めてくれ、私だけ包み込んでくれる。しかし、やはり残念ながら結婚までは出来無い。

 こうして学校にいる間は保健室のベッドで寝ることもあるし、何よりサイズの問題がある。

 今はまだ小学生だが、何れ中学生、高校生と成長するに連れ、身体も大きくなっていく。それはつまり、何れ別れの時が来る事を意味するのだ。

 とても悲しいことだが、それも仕方があるまい。だから今はまだベッドとイチャイチャ出来る以上、それをしないのはベッドに対して失礼というものではあるまいか。

 

「ということで先生、私は早退します」

「何が"ということで"よ。寝言は寝てから……いいえ、戯れ言を抜かす前に、授業に出なさい」

 

 ちくせう、これだから義務教育学校の前期課程は。

 今日の座学の授業は午前中に終わったのだし、今日の残りは五時間目、つまり今行われている体育だけなのだ、今早退した所で私の主義にも反しない。

 公立の学校で、授業料は無償。だから、今から帰って私と、いとしのベッドとの逢瀬を重ねるのを邪魔する者は馬に蹴られて挽肉(ミンチ)になってしまえ。

 内心で言い訳をしていたはずが、いつの間にやら呪詛の言葉へと変わってしまっていたのがそのまま表情や目に現れていたらしく、

 

「っ……そんなに睨んだって、ダメなものはダメ」

 

 微妙に怯えた様子で、しかしそれでも私の意見を抑えつけ様としてきた。

 そんな先生の様子を見て、傲慢ながらも素晴らしい胆力の持ち主だと、普通の養護教諭(犬っころ)から評価を改める。

 私の場合、こと睡眠に関して邪魔をされるのを何よりも嫌う。ただし駄兎は話が別だ。彼奴は良くも悪くも人間ではない。そんな者に人間らしい対応を求めるのは、酷というものだ。

 

 さて、話を戻そう。何故この養護教諭の胆力が素晴らしいのかというと、私の睨みを受け止めたからだ。

 人間だって動物だ。自分より上と思われる者から睨まれるのは、恐怖を感じる。

 現状私と養護教諭の関係性が、先生と生徒だとしても、人斬りの目というのはそれだけで竦んでも可笑しくはない。

 だから、そんな目を見ても直ぐに理性で気持ちを落ち着かせようとした養護教諭は、度胸のある人間なのだと思ったのだ。

 

 しかし、いくら胆力があるからと言っても私とベッドとのお部屋デートを邪魔する者は、これから二週間程絶食すればいい。勿論、水を飲んだり入浴も無しだ。

 平和な世界というものは一日過ごすだけでも人斬りとしての自分が鈍っていく。その所為か、睡眠に関することで邪魔をされると、直ぐに思考が鈍ってしまうのはやはり反省すべき点だ。

 反省すべきことがアルということは、これはもう睡眠反省をする他あるまい。反省は次に活かすべきと言う言葉があるように、そして何事にも反省会というものがあるように、反省というのはとても重要なことだ。

 

「ということで先生、私は早退します」

「だから……」

 

 断られてもなお諦めない姿勢を見せたからか、先生の拳がワナワナと震える。

 ほう、つまりは生徒の不屈の精神を見て喜んでくれていると、なんと素晴らしい教諭か――何が、とは明言しないが、勿論わざとだ。

 これは先生の期待に応える為にも、やはり早退してさっさとベッドとの蜜月を過ごすべきに違いあるまい。

 

「先生、喜んでいただけるなんて……やはり私は早退すべきなんですね!」

「……いい加減にしないと」

 

 どうやら私は勘違いしていたらしく、彼女はついに怒り始めてしまった。

 両の手をワキワキとさせ、明らかに私のことを擽る態勢を取る。一瞬身が強張るも、直ぐにそれを解きほぐす。

 何も斬りかかられるわけではないのだ、少し擽られるくらいであれば、命の危険なんてものはない。

 

「せ、せんせ……それはセクハラです、よ?」

 

 と言いつつも、私はこそばゆいのが苦手だ。どれくらい苦手かというと、少し脇を擽られただけで、直ぐに呼吸困難となってしまう程だ。

 わざわざ苦手なことを自分から受け入れる様な被虐趣味など、生憎私は持っていない。

 まだ小学生であり、どちらかと言えば中性的な容姿を最大限に活用して、上目遣いで媚びるように、しかし言葉は全く媚びずに、寧ろ喧嘩を売るかのように言葉は発せられた。

 

「アウト」

「ひっ!」

 

 私の見当違いな言葉が引き金となったのか、先生はいよいよ私の脇や脇腹を擽り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「も、もうやめれ……おねが、い……そうらぃ、しなひっ、からぁ」

 

 擽られすぎて、まともに言葉を紡ぐ事が出来無い。途絶え途絶えになりながらも、懸命に彼女に訴えかける。

 すると、漸く彼女の手が止まり、そのまま私の身体から離れていった。

 

「あぁ……あひっ……はぁ、はぁ……っく」

 

 時間にして数分間、体感時間は一時間にも及ぶ拷問も終わりを迎えたが、未だに身体のあちこちを彼女の手が這っているような幻覚に、乱れた呼吸を正しながらも苦しんでいる。

 頭がぼうっとしてまともに働かない。いくらなんでも酸素が足りないのだ。

 それからまた数分後、今度は先生に向けて、軽くジト目で睨みながら、

 

「先生の鬼、悪魔、ショタコン、淑女(変態)

 

 と、軽く罵っておく。

 

「うっ、ご、ごめんなさい。ちょっとやり過ぎてしまったみたい」

 

 一応、私はまだ小学生という身分である以上、ショタに分類されると言っても良い……半ズボンは制服以外では履かないが。

 はてさて、そんないたいけな児童を擽り、思考力が低下する程悶えさせたのだ、言い逃れなんて出来無いのは、本人がしっかりと理解している。

 女尊男卑が広がろうとも、中にはまともな人だって存在する。先生がそのまともな存在――変態ではあるが――であったことに感謝しつつ、開けてしまいそうになった禁忌の扉を閉じつつ、

 

「では、私は早退」

「は?」

「いや、早退しませんから。早退しないと言うつもりでしたから」

 

 いや、本当だ。

 もうあんな思いはちょっとだけしかしたくない。

 なんとか、こしょこしょの構えを取る彼女を宥め付ける。軽くトラウマのような何かになってしまっているが、これはもう自業自得なのだから仕方が無いだろう。

 それに、後数十分もあれば五時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響く、それまで寝てしまえばいいのだ。

 先生のこしょこしょに怯えつつ、先程の自分の軽率な発言を反省するためにも、やはり私は寝ることにしよう。

 薄っすらとかいた汗が肌にまとわりついて気持ち悪いが、そんなもの寝てしまえば気にもなるまいて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、帰りの会の時間も私は寝ていた。

 五時間目の体育の時間は保健室で寝て、帰りの会の時間は机の上で……しまった、これでは保健室のベッドより私の方が節操なしではないか。

 先生が帰りの会の終わりを告げると同時、私はそそくさと立ち去り帰路につく。放課後の掃除?知らない子ですね。

 養護教諭による児童逆レ○プ事件の所為で、微かではあるが、未だに手が脇を擽る様な感覚が抜け切らないので、

 

「ふっ!」

 

 取り敢えず背後へと足刀を叩き込む。

 あぁ、これではまるっきり不審者ではないかと思わないでもないが、背後の人物は案の定こともなげにそれを掴み取った。

 今までで最高にキレのある一撃だったのに、という悔しさも無いわけではないが、それ以上にやってしまったという後悔が大きかった。

 

「あは」

 

 ねっとりとまとわりつくような笑い声。顔も笑っているが、所謂目が笑っていない状態。

 これは非常にまずい。何がまずいって、

 

「伊織の足ゲット~」

「しまっ」

 

 しまった、と言おうとしたが、この言葉が最後まで言い切られることはなかった。

 この駄兎はあろうことか、一瞬で靴と靴下を剥ぐと、そのまま足の裏を擽り始めたのだ。

 急に力の抜けた身体は、そのまま重力に従って崩れ落ちる。このまま後ろへ倒れれば、首に力が入らない以上頭を打つ。

 しかしどうやら杞憂だったようで、束は私の足を掴み、そのまま頭が逆さになるように持ち上げた。気分はまるで、漁師に釣られた魚の様だ。

 いや、これはこれでどうかと思うが。

 

「流石に立ってる状態でのこしょこしょは不味かったかた~。束さん反省!」

 

 子供が玩具を振り回す様に、という程ひどくはないが、ブラブラと揺らされるのは結構頭にダメージを受ける。

 そう言えば、と駄兎さんの方へ視線を向けると、今日はどうやら学校の制服のまま来たらしく、何時もの長いスカートではない。

 女子高生の制服のスカートと言うのは、皆一様に短いように思うのは私の偏見だが、それでも大半が短いと思うのは私だけではないだろう。

 加えて束の場合、タイツを履いていない。ニーソックスと短いスカートから覗く絶対領域が眩しい。

 ということはだ、少し視線を下げる――この場合は上げるか?――と、そこには、

 

「せい!」

「あだっ!?」

 

 聖域など確認できず、目の前を星が広がっていた。

 どうやらスカートの中を拝ませていただこうとした所、地面に突き刺す勢いで落とされたらしい。

 なるほど、これはつまり安易にエロに走っては行けないという束さんからの忠告に違いない――そう思っておこう。

 頭を抱えて蹲るも、当然の事ながら後頭部の鈍痛は治まらない、なのにこうしてしまうのは人間故か。それとも半ばふざけているからか。

 

「それはそうとして、駄兎よ。そちらの娘子は?」

 

 何処か怪訝な表情を浮かべ、変なものを見る目で私の事を見る、束と同年代で同じ制服を着た少女の紹介を求める。

 女性にしては背が高く、スラリとしたスタイル、しかし女性の象徴は年不相応の貫禄を持っている……束もだが。

 美少女というより美女と言って差し支えない彼女は、しかしなるほど、あの束が関わろうとするだけのことはあった。

 全くぶれない重心、何時でもどの方向にだって動ける、まるで立っているだけの様に見える構え。

 少なくとも今の私では、防御に徹してなおかつ刀を用いなければ惨敗を期すだろう。

 

「気になる?気になっちゃう?そっかやっぱり気になっちゃうよねー!ちーちゃ「織斑だ」……んェ……あたたたたっ!?痛ひちーちゃん、頭割れちゃう!」

「織斑千冬だ、小僧」

 

 私が娘子と呼んだ事が気に食わないのか、やはり睨む様に名乗る女性の名は、聞いたことがあるだけで誰だかは思い出せなかった。

 それにしても小僧、か。

 確かに女子高生からしたら、小学生の餓鬼など小僧で十分かもしれないが、全部で二回の人生、及び今回の人生を合わせて半世紀以上生きているため、小娘なんぞに小僧と呼ばれるのは釈然としない。

 が、まあいいか。

 

「それで、何故今日はちーちゃんと一緒に来たのか、説明ぐらいはしてくれるのだろう?」

 

 ちーちゃんと呼んだ辺りで私の頭を掴み、そのまま握りつぶそうとしてくるちーちゃん。

 流石に今は後頭部を打った直後で痛みが酷く、このまま握られるとプチッといってしまいそうなので、振り払ったり躱したりして凌ぐ。ついでに関節を取ろうとするが、上手く取れなかった。

 すっかり無視していたが、束ちゃんは今ちーちゃんにアイアンクローをされており、今にもやばいという悲鳴を上げている。

 もっとも、この馬鹿が人を殺せる程度のアイアンクローでどうにかなるとも思わないので普通に話しかけてみると、やはりと言うべきかいつもの調子で答えてきた。

 

「それはね、ちーちゃんと伊織を引き合わせたら、面白い事になるかなって思ったからなのだ!」

 

 アイアンクローをされたまま宙吊りにされる束は、とても楽しそうな声音で馬鹿なことを宣うではないか。

 私とちーちゃんが出会うと面白いことになる……あながち否定出来ないのかもしれない。なんせ、二人共この駄兎に振り回されている苦労人?だ。

 

「ふむ、なるほど。ではちーちゃんよ、この駄兎に振り回される者同士、協力して兎狩りと行こうではないか」

「兎狩りはまあ良いとしよう。だが、ちーちゃんと呼ぶな、小童」

「よろしく頼むよ、ちーちゃあだだだだだだ!」

 

 どうやらちーちゃんと呼ばれるのは、冗談では済まない程嫌いらしい。一瞬反応できない速度でアイアンクローを仕掛けてくるではないか。

 唯でさえ痛い頭がプチッと潰されてしまいそうで、耳や目、鼻などから出てきてはいけない液体が出てくる自分を幻視した。

 

 ―――あ、これアカン。駄目な奴や。

 

 どうにも危機的状況に陥ると口調が変わるな、と思いつつ、ちーちゃんの握力はまるでゴリラだなと思いつつ――力が強まった気がしたが気の所為だろう――、ちーちゃんについて思い出した。

 そうだ、ちーちゃんこと織斑千冬は、IS搭乗者で最も栄誉のある「ブリュンヒルデ」の称号を持つ世界最強だった。

 テレビを見るのは面倒くさいが、こういう時に限って見ておけばよかったと後悔する。もっとも、直接会う機会があるなんて考えもしなかったが。

 意識が暗転する直前、そんなことを考えていたが……やはり、テレビで情報収集は面倒くさいな。

 

 

 




・織斑千冬の主人公に対する認識
「束に対する苦労を共有できるが、簡易版束の様な面倒臭さがある小僧」

・主人公の織斑千冬に対する認識
「駄兎に対する苦労を共有でるが、駄兎の気持ちも少しは理解できるので、ついつい身を滅ぼしてしまう」

・安易にエロに走ってはいけない。
 教訓にすると思った?残念、時折暴走します。

・ヒロイン候補
 感想にて「たっちゃんをヒロインに」と言うお声を頂まして考えてみたところ、気が付けば作者の頭なの中で最有力に踊り出ていました。ネタバレ、次回たっちゃん登場!

・ハーレム決定
 インフィニット・ストラトスに登場する女性キャラってね、大抵魅力的じゃないですか。二次創作の中でくらいね、はっちゃけたっていいじゃないですか。転生者らしくね、ハーレム築いたっていいじゃないですか。

・主人公が擽られて悶えるシーンって誰得?
 少なくとも、作者にとっては俺得ではありません。唯の蛇足です。

・主人公が擽りに弱いって必要?
 犬夜叉が「おすわり」の一言で動けなくなる様なもの。ヒロインが擽る事によって、主人公は暴走も無茶も、セクハラも出来無くなります。寧ろヒロインにセクハラされます。




今更ですけど、ワンパンマンって面白いですよね。
サイタマとその周りの温度差っていうか、なんかそういうの。
それよりも最後の駆け足感が……。既に、作者は迷子になっております。
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