ソードアート・オンライン The road 作:light.SAO
黒ポンチョの男…
第1層ボス戦はキリトのラストアタックによって幕を閉じた。
この時、第1層に閉じ込められていたプレイヤー8000人を閉じ込めていた障害は取り除かれ、またこれによって100分の1ではあるものの攻略したということが全プレイヤーに知れ渡ることになったのである。
そして、ボス攻略に加わっていたメンバーの殆どが第1層の攻略が完了したことに歓喜していた。盛大に盛り上がってる中、後に俺も知り合うことになるエギルという男が、キリトに「コングラチュレーション」と流暢な英語で話しかけていたのを聞いた。俺もキリトに話しかけようと近づいたその時
「なんでだよ!!」
と盛り上がりを消し去るような叫び声が突如勝利に喜んでいたプレイヤー達に浴びせかけられた。さらに詳しくいうのなら、キリトに向かって浴びせた言葉であった。
「なんで、ディアベルさんを見殺しにしたんだ!!ボスの繰り出す技だって知っていたじゃないか。その情報が最初から伝わっていたとしたら、ディアベルさんが死ぬこともなかったんだ!」
キリトは無言だった。
しかし、だからといってそれらの事象が責められるべきものではないとも思ってしまう。βテスター連中なら知っていると思うが、カタナスキルはβテスターの内の本当に先鋭のグループしか知らないものであって、ディアベルも知っていた可能性があった。それも知らないくせによく言える…と俺は考えていた。
だが、ディアベルのグループ、あるいは信頼していたプレイヤーはβテスターの事など考えたくもないのだろうか…興奮しすぎているせいなのか冷静な判断が出来なくなっていた。
「あの情報屋も全てをタダで渡すわけがない!」
などの喧騒が起こる中、キリトは黙りながらシステムメッセージを眺めていた。
「ここにも何人もいるんだろ!出てこいよ、βテスター共!!」
これに対してキリトが出した答えは今でも俺は、忘れることは無い。いや、忘れることの出来ない事だったのだ。
「βテスターごときと同じにしないでくれ。」キリトは蔑むような態度で言った。
「なんだと…」怒りを顕にしながらディアベルのグループのやつはつぶやいた。
「知ってるだろ。SAOのβテストの抽選はとても確率が低い。さらにその中から本当のゲーマーなんて数える程しかいなかったことくらい。俺はβテスト時に誰もが登ったことない層まで登った。だからこそ、カタナスキルの使うMobと戦い、どんな行動をするかを知っていた。それだけの話さ。」ニヤリと悪役をわざと演じるようにしているのがβ時からの知り合いの俺にはよく分かった。それなら、俺もお前とβ時は一緒にやっていたのだから俺も同罪だ!俺も一緒にβテスター全員を守るために発言しようとした。
「違っ…」
「異論は認めない。」キリトは俺には、プレイヤーからの憎悪を被せないように防いだ…なんでなんだ!と叫びたかった。
「そんなのチートだ。」「チーターでβテスターだから、ビーターだ!」など喧騒が起こった。
「そうだ、俺は:ビーター:だ!これからはβテスターとは同じにしないでくれ。」
キリトはそう言いながら、第2層のアクティベートをするために2層へ繋がる扉へと向かった。
扉をバタンとキリトが閉めたあと、大体のプレイヤーは1層に1度戻って休憩するらしくボス部屋から去っていった。俺もそうしようと思った時、
「てめぇもビーターだろう。いつか、この事をばらし、お前を殺してやる。」
後ろから、冷たい声が俺の耳に響いた。
「誰だ!!ばらすなら今にでもばらしてもらってもいい。そんなんで俺は殺されはしない!」
と、さっきの叫びたい気持ちを今ぶちまけた。
「おいおい、そんなに自信がおありなのかぁ。そりゃぁ、楽しみだなぁ。今にでも殺したくなっちまったよぉ!!」ボス部屋の一つの柱から黒ポンチョの男が出てきて、そう言った。
「お前、何をしようとしてるのか分かってるのか?お前がしようとしてることは人殺しと同じだぞ!」俺はボス戦では見なかった黒ポンチョの男に驚きを覚えながらも、そう言った。
「てめぇは分かってねぇ〜!この世界で殺しても、現実世界で死ぬかどうかなんて、この世界にいても分かんねぇだろぉ!だからなぁ、お前はいつか俺に殺されるんだ、楽しみにしておけよぉ」
そう言いながら、俺の前を横切り第1層に戻っていった。
「絶対に人を殺させはしない!お前がどういう手を使おうと俺の目の前では必ず…!!」
俺は自身に言い聞かせるようにそう呟いた。
俺は1度、この黒ポンチョの男の事とこれからどうするのかを聞くために会いたいとキリトにメッセージを送った。
返答は
「すまないが、今は無理だな。今、会うことも可能ではあるんだけど、ちょっと色々あってさ…。黒ポンチョの男についてはアルゴにも調べてもらおうと思ってる。この世界で人殺しをしようとする輩がいないと願ってはいたけど、やっぱりいるんだな。ウェッドも分かっているとは思うけど要注意してくれ。」
とのことだった。つまり、今は何らかの厄介事に巻き込まれてると考えていいだろう。俺がどうにもできないような事だとは思うが、無事に終わることを祈っておこう。
12月9日: 第2層唯一のフィールドボス、<ブルバス・バウ>の攻略は2パーティーと武器や装備の質の高さの割には動きが少しぎこちのない3人が加わって攻略がされていた。
それが見える場所から俺は見物し、ソロでどのように倒すかを考えていた。
勿論、俺は誰とでも組める立場にあるものの自身のプライド、つまりビーターと名乗って全プレイヤーを守ったキリトに引けを取りたくはないと思ってしまっていたのだ。だからこそ、ソロで倒せるようにしておきたいと考えたのだ。
フィールドボスはリスポーンするため、俺はやつの行動パターンをじっくりと見て、ソロ攻略の動きを認識した。いがみ合っている二つのパーティーと、第1層攻略時には見なかった3人が倒し終わったあと俺は1人でそのボスを倒すべく、そのフィールドに向かった。
ハルバートにもまだ疑問は残っているから、それを試すのもここでやろうと思っていた。
「さぁ、やるか!」と軽く気合を入れながら、ボスの視覚圏内に足を踏み入れた。
突如として、蜂を大きくしたようなMob<ウインドワスプ>がでるも、それをハルバートで断ち切り、《ダブルスラスト》で2体を同時に倒し、左手に持ち変えて、システム外スキル「スキルコーパレション」によって《スリーコンセクティブ》で残り3体のMobを一気に倒した。
「ここまでは順調だ、次はお前だ!」そう言いながら、俺は<ブルバス・バウ>に向かってスラストを打ち込んだ。これによってスタンしたところに、通常攻撃で繋いでソードスキルをもう1度放とうと通常攻撃の横薙ぎを繰り出そうとした。その時、機械音のような音が鳴り響き、ハルバートが第1層ボス戦の時のような輝きを放っていた。
この輝きの放った横薙ぎがボスに当たった瞬間、やつのHPはほぼなくなっていた。
EXスキルにも入っていない事をさっき確認したところからして、これはもう武器の能力として見ていいだろう…そう考えながら、俺はボスにラストアタックを食らわせようとした。その時、黒い影が俺の横から飛び出し、LAボーナスを横取りしてきた。
「おいおい、戦ってる最中にぃ、油断は禁物だぜェ。後ろからこうやって横取りされるかもしれねぇしなぁ…」第1層ボス戦の後にあった黒ポンチョのやつは俺を挑発するかのようにそう言った。
「そんなにLAボーナスが欲しかったのか。それにしても俺を殺すといいながら、後ろから刺したりはしなかったんだな。」俺はやつに対して軽口を叩いた。
「後ろから刺して、オメェみたいな面白いやつを殺してもなんの楽しみもねぇよ。やっぱり、死が直前に迫ってるところをオメェに見せたいんだわァ。」ともう狂人と言ってもいいくらいに狂った黒ポンチョの男はそう言った。
「お前の目的はなんなんだ。この世界の終焉を望んでないようにしか見えない…」俺は正直にそう言った。
「俺は目的なんかぁない。終焉だとォ?そんなものを望んでどうする。この世界なら殺しでもなんでもできるのによ。あぁ、そうだ。言い忘れてたァ。また、近々会ってお前に殺し合いを挑むから、それまで待ってろよォ。」黒ポンチョの男は不気味な笑いを浮かべながらそう言って立ち去って行った…。
12月11日: 後に聞いたことだが、キリトやアルゴによって、ネズハというプレイヤーが行っていた武器の詐欺事件が発覚し、またそれを見破ったらしい。だが、それにあの黒ポンチョの男が絡んでいたと聞いた時は驚きを隠すことは出来なかった。やつの手が他プレイヤーにもう及んでいるとは思っていなかったからだ…
そして12月14日、第2層ボス攻略に俺は行くことが出来なかった。行く途中で黒ポンチョの男にあったからだ。
「なんのようだ。俺は今から攻略に行こうと思ってるからそこをどいて欲しいんだが。」俺は実際に攻略には加わる予定だったから、この時ばかりは少し怒りの感情が露わになっていた。
「おいおい、てめぇはここで襲われるのだから、そんな攻略の心配なんかしてたらすぐに死ぬぞォ。」とニヤニヤにとしながらそう言ってきた。やつはそう言いながら、カーソルがオレンジになることも躊躇わず、短剣を振りかぶってきた。それを避けながら、俺はハルバートを構える。
武器を弾くだけなら、プレイヤーを攻撃したことにはならないため、俺はやつの攻撃を弾き、少し逃げることを繰り返した。そうして圏内まで行けばやつはその間、俺を殺すことは出来ない。それどころか、人目のつく場所ではまだ殺そうとはしないと考えたからだ。
「弾くだけでお前は攻撃を繰り出してこないのかよォ。オレンジになることを恐れてるんじゃ、お前は今日逃げられてもいつかはきっと俺に殺される。」短剣によるソードスキルを打ち込みながら、そう言ったやつは何故か不気味な笑みをあの時同様浮かべていた。
「何を考えてるのか知らないけど、このまま俺が弾き返していればお前は俺を殺すことは出来ない。しかも、お前の事はあっという間に8000人に知り渡り、プレイヤーを殺すことは今後さらに難しくなる。それでも殺せると言えるか?」短剣の素早いソードスキルを弾き、時には避けながら俺はやつにそう言った。やつは無言のままだった。弾き返し、また少し距離をとる事を繰り返し、もう少しで圏内のところまできた。こうなったらやつも、もう諦めるだろうと思い、やつの短剣の動きに合わせて槍を突き合わせ、パリィをした。「これでお前は、俺を殺すことは出来ない!お前のスタン時間だけあれば、俺が圏内に入るには十ぶ…」俺は最後まで言う前に、後ろからの刺客に気づき、避けようとしたが体を掠った。
「こいつをやれ。」黒ポンチョの男は片手剣の男にそう言った。
俺はプレイヤーキルをしようとする連中はこいつ以外にもいる可能性があるのは眼中になかった…。どうやって、この2対1の状態でどうするべきか…
片手剣の男はバーチカルアークを打ち込むモーションに入った。このソードスキルの動き方は知っていた。だから、俺は弾き返すタイミングで薙ぎ払った。だが、その瞬間、大きな音と共に俺とその片手剣の男は武器だけでなく体ごと吹っ飛んだ。それだけではなく、俺のSAOの中での全ての物事を変える事件にもなってしまった。俺のハルバートによる薙ぎ払いは輝きを放ち、やつの武器と体を真っ二つにかち割った。破砕音と同時にやつはゲームオーバーとなった。
「なっ…、そんな馬鹿な…。この能力の発動条件は敵を倒すにつれて輝きを増すものだと思っていたのに…。そんな…そんな…」俺は焦燥していた。そして、人を殺したという事実が何よりも俺を恐怖に陥れた。一つだけ、俺がこの世界の仕組みによって守られたのはカーソルがグリーンという事だけだった。
「俺には人殺しと同じだとか言っといて、お前は人を殺してるじゃねぇか。いいね、最高だよ、お前。まぁ、俺がこの最高な状況を作り上げたんだけどなァ」ケラケラとやつは笑いながらそう言った。
「そんな…俺が…人を殺した…。」俺はもう既にやつの言うことなど聞こえてなどいなかった。ただ、ひたすらやってはいけない一線を超えた気がした。
「あぁ、こんなに最高な日はSAOに入ってから初めてだぜェ。感謝感謝。まぁ、こんなに最高にしてくれたんだし、今日はこれくらいにしといてやるよ」やつはそう言って、その場からいなくなった。
俺は人を殺したのか…。それがやつが去っても、俺がその場から動けない原因となった…
こうして俺は、SAO開始後の初めてのクリスマスイヴの早朝まで何もする気にはなれなかった…。