ソードアート・オンライン The road   作:light.SAO

6 / 8
一気に50層辺りにストーリーが動きます。
回想などでそれまでの層については取り扱う予定もあります。
他に、プログレッシブのように3層辺りから番外編でやるのも良いかなって思っています。


第48層
ウェッドの使命


クリスタルが砕け散ったような破砕音が真夜中の森に響きわたる。

「はぁ、俺は何人の人を殺したのだろう…」

暗闇の中で俺は独り言を言った。ここは第48層の森林エリアで、昼間には大したモンスターは出てこない。しかし、夜になるとレッドプレイヤーの巣窟となり、そこに何も知らずに入ったものは生きては帰れないと言われていた。

何故、そんな恐ろしい森にいるかと言われれば、それは俺の仕事だからだとしか答えることは出来ない。

 

約一年前に初めて人を殺した時に、それはもう確定していたのかもしれない。俺はあの襲来を受けて、人を故意では無いにしても殺めてしまった。あの後、俺は自責に駆られ、数時間は動くことも出来なかった。自分では動いているつもりは無かったのだが、知らない内に宿屋に泊まっていた。その日以来、俺は攻略組からは今だから分かるものの、一時的に抜けた。ずっと人を殺してしまった事を考えながら、どうすれば罪を償えるのか、そんな事ばかりを考えていた。食事や宿屋に泊まるお金で所持金は次第に減って行ってしまった。

仕方なく、圏外にでてモンスターを狩っていた。その時には、俺は別に殺されてもいいとしか思っていなかったからだ。

 

俺の今ある使命、責任は、お金が無くなったあの日に奇跡的に出会った。いや、そのうち出会う運命にあったのかもしれない。

12月24日、あの黒ポンチョの男、ゲーム名で言うならば<poh>は俺の時と同様に、人を圏外で待ち伏せし、そして別の男が死角から殺すことをやろうとしていた。殺されそうになっていたのは知らない男だったから無視することだって出来た。だけど、俺は自然と体が動き、待ち伏せしていた男を殺した。

この時点で俺のカーソルはオレンジになっていた。けど、俺はそんな事には気にしていなかった。なぜなら、2回目の殺人を犯したこの時、俺は人を殺してしまったなら、それ以上俺のような犠牲者を出したくはないと強く思ったからだ。

それなら、殺人者になった者、なりうる者を俺が殺人者となって殺す事で、同じ体験を減らそうと考えた。

 

それからは、人を殺し、レベルを上げ、次の層からボス戦にも参加した。その時には、俺が殺人者だということに攻略組の人達は気づいていたようだが、重要な戦力だと思われたのか、不満そうな顔をしながらも毎回ボス戦に誘ってきた。

キリトとも話をした。

「お前、本当にこれで良いのか?人を殺した事で人を殺すことを許されたわけじゃないんだ…。お前の気持ちも分かってる。責任や使命だと思ってやってるのかもしれないが、考え直さないか?」とキリトは言ってくれた。

だけど、この時にはもう遅かった。

俺は無表情のまま

「俺の今やってる行為を否定するなら、俺という人物を否定することになる。もし、殺人者を殺すことを俺が辞めるとしたら、その時には俺はもうこのゲームにはいないだろう…」

こう言って突き放してしまった。

 

こうして、俺は今の層まで殆ど孤独のまま生き残った。誰1人として、俺と話そうとはしなかった。話そうとも思わなかった。更にいえば、他人と話すことは罪とさえ思っていたから、仲間やギルドに所属することなど視野に入れてなかった。

そんな事を暗闇の中で考えていたら、真横からレッドプレイヤーの二人目が襲ってきた。

「死ねぇぇぇえ!!」

と、物凄い勢いで片手剣SS[ヴォーパール・ストライク]を撃ち込んできた。

ジェットエンジンのような音を立てて、突っ込んできた剣の切っ先を槍の太刀打ちと呼ばれる部分で滑らせながら、ギリギリの所で避ける。

「なぜ、殺す事を躊躇わないのか不思議でならない。」

自分にも問いかけるようにボソッと呟きながら、槍のSS[煉獄刺突]のモーションを取る。槍の切っ先が真っ赤に輝きを増し、風切り音を鳴らしながら、襲ってきたプレイヤーに突きを入れる。

木が何本か倒れる音が聞こえ、煙が立ち込める。

終わったかと思ったが、破砕音が聞こえない。煙が消え、視界が開けた瞬間になぜ破砕音が聞こえなかったのかが良くわかった。

有り得ないことに、俺の最速の槍はある女性プレイヤーの片手の白羽取りによって阻止された。

「なぜ、殺そうとするの?貴方は攻略組にいた人でしょ!殺さなくてもいいくらいの強さを持ってるんだから、抑圧して牢屋に閉じ込めればいいものを…」

女性プレイヤーはそう言いながら、レッドプレイヤーを牢屋へ転送させた後、俺をマジマジと見つめてくる。俺もどこかでこの顔を見たことがあると思ってはいたが、人を殺しすぎたせいなのか、それともただ単に記憶が曖昧だからなのか、思い出すことが出来ない。

「あっ!!やっと見つけた!(ひいらぎ)君だよね?」

彼女は突然そう言って、ニコニコしながら聞いてきた。

「なっ…、なんで名前を知ってるんだ?リアルで会った人なら誰だ?」

咄嗟に本名を聞かれたのと、久しぶりに人と話をした事で、ぎこちなくなってしまった。

「あー、やっぱり忘れてるか…。ほら、同じクラスで隣にいた女子、名前は茅ヶ崎。ちなみに、プレイヤーネームはサナって言うんだよ。思い出した?」

そう言って、彼女は魅力的な笑顔をこちらに見せた。

「…。あぁ、思い出した!あの、学年の中で一番可愛いって言われてる茅ヶ崎さんか。隣になったせいで、クラスの他の男にめちゃくちゃ睨まれたのを覚えてるよ…」

魅力的だなぁ…っと少し思いつつも、そういった。

「思い出してくれたか。それで、なんで君はこの世界で殺しをしてるのかな?」

先程とは違い、少し冷静な口調でそう言ってきた。

「俺が殺すのは、俺と同じ体験を減らそうとするからだ。普通のプレイヤーは殺したりしない。悪い所を見せたね。悪かった。だけど、俺は君に何を言われようが止めることないから。」

正直に話して、早く話を終わらせようとしたが、逆に彼女には逆効果だった。

「ふーん、そういうことか…。君が殺すことを止めないなら、私はさっきみたいに君の妨害をし続けて、殺しを止めることにしよう。」

「いや、ちょっと待て!なぜ、君が俺の邪魔をするんだ?関係ないだろ。しかも、君は最初この世界にはいなかったと思う。なのに、なんで今更この世界に来たんだ!デスゲームだと分かっているのに…」

俺は焦りを隠せず、怒りを少し含んだ口調でそう言った。

「関係も何も、君にはそんなことをして欲しくないから止めるだけだよ。今更この世界に来た理由か…。それは君が殺すことを止めるなら、今教えるよ。」

「なんだよ、それ…。理由は教えられないくらい下らないのかよ?俺がもし君を殺そうとし」

「君は私を殺すことなんて出来ない!いや、殺せない。だって貴方はずっと1人で苦しんできた。それが今話してるだけで分かるくらいに滲み出てる。」

彼女は俺が話してるのを遮って、さっきの話す大きさの倍くらい出しながらそう言った。顔を真っ赤にしながらも…

「はぁ…。勝手にしてくれ。俺は君に邪魔されようとも、殺人者が目に映れば必ず殺す…!」

俺は誰に何を言われようと、同じ体験を他プレイヤーがしないようにすると誓ったのだから…

 

 

 

 

 

このSAOの世界では、45層あたりから、豪傑、英雄、最強などと呼称された8人のプレイヤーがいた。その8人とは、

黒の剣士:キリト、反射能力最強。孤高のソロプレイヤー。後にユニークスキル「二刀流」が公に知られる。

血盟騎士団団長:ヒースクリフ、SAO最強の防御力。HPバーがイエローになるのを見た人は未だにいない。ユニークスキル「神聖剣」の持ち主。

 

血盟騎士団副団長:アスナ、別名閃光、集中力から引き起こるクリティカル率はSAOでNo.1。

 

隻腕の侍:デューク、リアルでも片腕しか無いらしく、片腕の神経がきかないらしい。その為、SAO内においても、片腕で刀を使っている。刀の腕はSAOで1番。「刀が片手で使えるユニークスキル」を持っているのではと噂されている。

 

殺人者ギルド<ラフィン・コフィン」マスター:poh、SAOで1番知られた殺人者。恐ろしく、忌まわしき存在。腕はトッププレイヤーと引けを取らない。

 

情報屋:アルゴ、情報収集の天才。情報屋の中でも情報に信頼性がある。素早さとテクニックでは、SAO攻略組の上位陣に匹敵する。

 

制裁者:ウェッド、殺人者を殺す事で自分と同じ過去を持つことのないようにしている。

彼は他プレイヤーに嫌悪を持たれる一方、感謝されるべき立場にもいる。普通のプレイヤーには協力的で、殺人者に襲われた時にも助けられたプレイヤーも数多くいる。

 

ヘイトクリエイター:サナ、ボス戦において、ヘイトポイントを稼ぎ、集中攻撃を全て避けることによって、犠牲者を減らした。女性プレイヤーで最前線プレイヤーなのは数少ない為、多くの男性プレイヤーが心配をしているらしい。

 

この8人の強者プレイヤーをSAO内で知らない人はいないと言われている。

こうやって8人の強者として、噂されるのが俺は本当に嫌だった。

実際pohと俺はこの強者から抜けるべき存在だと今でも思っている。

 

さっき、突然現れたサナも確かに有名で、攻略の時にも何度か顔を合わせたこともあったが、さっきみたいに、近くでじっくりと見ることは無かったから同じクラスで隣のやつだとは気づかなかった。

あの言い合いのあと、一緒に付いてきたのには、更に驚かされたが。そう思いながら、彼女の顔を横目で見る。

「なに?私の顔に何か付いてる?」

彼女は俺に見られた事に気づいて、そう言って顔を少し擦った。

「いや…、そういう事じゃなくてさ…。なんで俺にくっついてくるの?あと、40層位になって突然攻略組に顔出したけど、どうやって追いついたの?」

彼女の仕草に少し可愛いなっと思いながらも、そう言って本題に入り、自分のよく分からない感情を押し殺した。

「私はSAOの攻略が30層位になった時に、ここにダイブした。さっきも見ただろうけど、躱したり、パリィや防御に関しては最初から攻略組に劣ってなかったと思う。今の聞き方からすると気づいてなかったかもしれないけど、レベル4とか、5くらいで30層だったかそこらのボス攻略に参加して、レベルを一気に上げたんだよ。それで今に至るって事!」

彼女はサラッとそう言って、笑顔をこちらに向けた。

「いやいやいや、怖っ!なに、レベル4で30層ボスに挑んでんだよ。避けるの1回でもミスしたら死ぬかもしれないんだぞ!しかも、俺にくっついてくる理由言わずに笑顔で誤魔化そうとするな。」

彼女の大胆さには、半ば呆れたし、くっついてくる理由を誤魔化そうとしてるのがバレバレの笑顔を浮かべてるとなると、じわじわと自然と笑いがこみ上げてしまう。

「私が柊君にくっついている理由?そんなの簡単なことだよ。殺人しないように暖かく見守ってあ

げてるんだよ。って何笑ってるの!」

耐えられなくなった俺が笑い出すと、彼女は少し怒った顔でそう言った。

「理由を率直で隠そうともしない事と、大胆すぎるやり方が、面白すぎて…」

そんな怒った顔を向けられても、面白いことは面白いのだから仕方がない。

「そんなに笑うことないじゃんか!こっちだって、ここまで来るまでのやり方は大胆過ぎるかもしれないって思ったよ!てか、君も普通に笑えるんだね。」

頬を少し膨らませながら、彼女はそう言った。

「いや、大胆過ぎるにも程があるだろ。笑えるんだねって、俺も一応人間なんだから当たり前だろ…。ん、俺は宿屋行くからじゃあな。」

転移門が見えたから、俺は微笑を見せながら、お別れの言葉を言った。

「君は色々と背負ってるから、笑う事も出来ないくらい余裕が無いのかと思ってさ…。あと、まだお別れじゃないよ〜!私は君の隣の部屋で泊まるから!君はどうせ、夜になったらまた、レッドプレイヤーを探しに行くだろうから。監視しないとね!」

彼女はそう言って、黒髪のロングヘアーを揺らしながら、僕の前に立った。

「マジかよ…。はぁ…。まぁ…泊まるのは勝手だけどさ。俺に付いてって、何か巻き込まれて欲しくないんだ!だから、俺は孤独でここまで来たのに…」

これ以上、言葉が続かなかった…。なんで、俺は今まで全く話してなかったのに、こうやって自然に笑えるんだろ?

なんで孤独でいないといけないと思ってるのに、サナにいて欲しいと思ってしまうのだろう…

俺に構うなと一言いえば終わるのに、なぜ言えないのだろう…。

「巻き込まれても、私は避けられるから大丈夫だよ!あとね、私は君の考えには反対なんだ。誰か1人がその責任を全て負うって言うのはね、必ず壊れて砕ける。君はこのまま行けば、SAOがクリアされる前に壊れてしまう。だから、私は君の背負う物を壊しに来た。君が壊れてしまう前に…」

彼女の身に何があったのかは、分からないがこれだけは言える。彼女もまた、何かの責任に押し潰されそうになっているのだと言う事。この時のサナの顔は、相当の覚悟を持って本気だということを俺に伝えていた。

「そうか…。それだけ考えてくれているなら、少し考えるよ。だけど、俺はレッドプレイヤーを見ると使命に駆られたように、体が動いてしまう。それが止められるなら…」

自分でも良く分からない事を言ってしまったと思っていたが、今は何故だか心が軽い。

「理解してくれて有難う!これからもよろしくね!」

彼女は満面の笑みを浮かべながら、俺にそう言った。

「…あぁ!よろしく頼む。じゃ、宿屋に行こう。」

きっと、この何とも言えない気持ちも、この責任や使命もサナと居れば、何かが変わるんじゃないか…とそんな気がしていた。




ルビでも一応付けておきましたが、柊の読み方は「ひいらぎ」です。
誤字や脱字について、何かありましたらご連絡お願い致します。
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