ソードアート・オンライン The road 作:light.SAO
案の定寝ることは出来ず、こっそりと夜の街の中心街で心地よい風を浴びることにした。
涼しい風が頬に当たり、このまま今座っているベンチで寝たいぐらいだが、PKの可能性を考えると怖いので、というより、寝ててサナに見つかったら怖い…から、装備などを整理して暇を潰そうとしていた。だが次第にやることはなくなってきて、景色を見ること以外やることはない。
「まいったな…これはこれで暇だな。」
と独り言をポツリと呟く。
「なら、ソロ同士少し話さないか?」
突然、俺が腰かけていたベンチの隣に久々に話す人物が座る。
「久々だな、話すのも…」
キリトはそう言って、悲しそうな眼をしていた。なにか辛いことでもあったのだろうか。
「ああ、そうだな。お前に最後に今のやり方を止められて以来かな」
「ウェッド、お前雰囲気が最後にあった時よりマシになってるような気がする」
「そうか?確かに殺すのを止められたりして少しずつだけど、変わり始めている気がするよ。」
「もしかして、止めたのってサナさんか?彼女ならソードスキルを平気で止めてきそうだからな…」
キリトは冗談で言ったらしく、少し笑っていたが
「それ、マジって言ったら信じる?」
と俺が言うと彼は驚きの表情を見せながら、
「それマジ…?」
と神妙な顔で言ってきた。
黙って頷く。
「そうなると、ソードスキルを受けても事前にいつ来るか分かれば、サナさんはプレイヤーの攻撃も避けられるのか…、恐ろしいもんだ。やりたくてもプレイヤー同士だとオレンジになるし、Mob相手に練習したとして結構危ないことしてるぞ」
「そうだな、サナは色々とおかしいから…」
そのまま、サナに関する戦闘の話が続いた。
「なあ、そういえば、キリトさ、ボス戦一回来なかったときあったよな。」
「ああ、色々とあってね…、まだ自分でも向き合えては無いんだ。ただ、ソロでやってきた同士だし、何かとウェッドとは似てる節があるからその時の事聞いてくれないか?」
キリトが話す出来事はあまりにも不運な出来事でだったが、確かに自分たちの強さが高いと思い込ませてしまう程のキリトの強さが裏目に出たところでもあった。
「自分が強ければ、他人を守れると過信してた。ただ、その一つの過ちが…」
キリトはそう言って言葉を詰まらせた。
キリトはさっき自分とキリト自身が似ているといってたが、そうなのかもしれない。
サナが言っていた言葉を思い出す。
『誰か1人がその責任を全て負うって言うのはね、必ず壊れて砕ける』
俺は"自分が犠牲になれば、他人を助けることができると思っていた"
いや、まだその考えは心の中に顕在している。
もし、このままサナにも合わずにPKを繰り返していたらどうなっていただろうか。
殺した後、ナーヴギアが脳を焼き切るまでの時間に、俺が殺していったやつは決まって「てめえだって、もう立派な殺人してんじゃねえか」と言って死んでいった。
その声は次第に俺の精神を蝕んでいた。考えようとしなくとも、夢の中でずっとその声が聞こえ続ける。これ以上精神が蝕まれていたらどうなっていたのか…
今は分かる。これ以上やってはいけないと…、だけど、自分以外にこの役割を担う奴なんかいない…とも思うが、サナに助けられたとも思う。
「なあ、キリト。俺はさ、転移門前でギルドがPKにあって、泣き叫びながら彼らを牢獄に入れてほしいというやつを多く見てきた。俺は復讐の代理人みたいな感じで彼らの依頼を受け、奴らをPKしてきた。依頼とは違ったのにな…」
「それは依頼したやつに伝えたことがあるのか?」
「毎回伝えたさ。そしたら彼らはなんで殺した!そんなのは頼んでない!って言って、俺を遠ざけるようになった。結局彼らが望んだのは贖罪を望んだだけで殺しは断じて認めないんだ。キリト、失ったものは取り返せないし、自分の過ちは背負って生きていくしかない。例えば、キリトが間接的に彼らを死に追いやった、俺が勝手な判断で殺したのなら、それを責めるんじゃなくて、背負ったうえで何か行動を起こすべきなのかもな」
「そうかもしれないな…、過ちを責め続けるのはもサチも望んでないと思う…改めて考えるべきかもな」
「俺も偉そうにそう言ってるけど、そう思ったのはキリトの話とサナのおかげさ。ソロではあるけど、ある程度はこうやって話せる中のやつが多かったら、早くに気づけたかもな」
そう言って、二人そろって苦笑いを浮かべる。
「あー、色々心の整理がつき始めた気がするよ。また、時間が空いたら話そう」
そう言ってキリトはベンチから立ち上がり、中心街から離れていった。
「ラギ君、朝だよー」
「あと、もう少し寝させて…」
キリトが帰っていった後、少しまた心地よい風を感じてから宿に戻った俺だったが、キリトとの会話で安心感が出たのか、眠気が凄く、サナの隣と意識することもなく、気にせず爆睡している最中に体をゆすられ、強制的に覚醒させられた。
「もう…、朝ごはん食べにいこうよ」
「じゃあ、食べてきていいから…」
「え~、凄い眠そうだけど眠れなかったの?」
「ああ…、ちょっと外出ててさ」
そう言いながら、二度寝をしようと毛布に潜る。
「外行ったって…まさか、PKの依頼受けに行ったの?」
「違うよ…、キリトと会ってさ、少し話してただけ…」
「ふーん、この頃ボス戦出てなかったから、何かあったのかなとは思ったけど、戻ってきたんだね」
「まあ、あっちも色々あったぽくてさ。俺も色々サナとキリトに気づかされたというか…」
「なになに?私の話したの?へー、男の子どうしで」
ちょっと上気分な声が聞こえてきた。
「うん、そうそう、SSを素手で止められる奴なんて他にいないんじゃねとか、どうやって練習したんだろうなとか、そんな感じの話…」
最後まで言えなかったのは、布団を思いっきり剥がされ驚いたからである。
「なんで、そんな話だけなのよ!」
その後、そう叫ぶなり、布団を振りかぶってこちらに投げてきたのだから恐ろしいものである。
きょとんとする俺を睨むなり早く支度しろと突然攻撃的になるのだから、女性ってものは難しいものだと感じた。
「ちょ、ちょっと待ってくれって!そんなに朝食食べたかったなら、先行ってて良いって言ったじゃん」
と言った事を俺はすぐに後悔することになる。
なぜかって…無言で睨まれたからだ。
「あ…すみませんでした。おなか減ったな~!何食べようかな~」
と謝罪+逃げのセリフを言いつつ宿を後にした。