「よいしょっと。」
戦闘が終わった後、果南は自宅でもあるダイビングショップに戻って、店の手伝いをしていた。
戦いの疲労が残っているうえ、女性が持つには少し大変な酸素ボンベを当たり前のように果南は運ぶ。
「これで終わりかな。」
額に流れる汗を拭い、次の仕事に行こうとしたその時、散々聞き慣れた声によって呼びかけられた。
「果南!」
その声に果南は苦虫を潰したような表情を浮かべながらも、すぐに表情を元に戻し、その方を向く。
「鞠理……。」
そこにはかつての親友、小原鞠莉が複雑な表情で立っていた。
「久しぶりだね。アメリカはどうだった?」
2年ぶりの再会にもかかわらず、2人にはどこか分け隔てる壁のようなものがあり、互いに余所余所しかった。
「果南……。」
「触らないで!」
鞠莉が果南に触れようと手を伸ばす。しかし、果南はキッと目を見開き、鬼のような気迫でそれを拒絶した。
「あっ……ごめん。」
「相変わらずなのね、果南は……。」
あまりにも言い過ぎたと果南は反省するも、
「ねぇ、果南。また一緒に……。」
「私にはやるべきことがあるから。」
鞠莉がとあることを言い出そうとすると、果南はバツの悪そうな表情を浮かべ絵て逃げるように店の中に戻ろうとした。
「待って!果南!」
そんな果南を鞠莉は
「私……私達にとって果南は大切な親友だから!」
元気が取り柄の鞠莉が珍しく憂いの表情で果南に自らの思いの丈をぶつけた。そんな鞠莉に果南は
「……鞠莉はやっぱり優しいね。」
ただ果南はその一言だけを残して、店の中に戻っていってしまった。
「相変わらず……頑固親父だね……。」
1人残された鞠莉はただ、哀しそうな表情でその場にいない果南に向けそう呟いた。
♢♢♢
「失礼しますわ。」
理事長室の扉を丁寧に開け、浦の星女学院の生徒会長、黒澤ダイヤが不満そうな表情をしながら入ってきた。
「あら、ダイヤ。来たのね。」
窓の外を眺めていた鞠莉はゆっくりと振り向き、ダイヤを見た。
「あなたが呼んだのでしょ。……まぁ、いいですわ。それで要件は何ですの?」
「果南に会ってきたわ。」
鞠莉のその言葉を聞いて、ダイヤの不満そうな表情が変わり、どこか怒りのこもった表情へとなる。
「2年振りなのに相変わらずだったね。」
鞠莉は笑みを浮かべながら話すもダイヤはただ黙って聞いていた。
「ねぇ、ダイヤ。あなたの力が欲しいの。」
すると、鞠莉は何処か軽い雰囲気を醸し出していたが本題を切り出すと途端に真剣な雰囲気へと変わった。その変換にダイヤも気づくも、反応は何も変わらない。
「一緒に果南を救いましょ。」
スッと右手を出し、ダイヤに手を組もうと求めた。しかし、ダイヤはその手を握ることはせず、逆に激しい怒りを鞠莉にぶつけた。
「勝手に私達の前から居なくなったくせに何様ですの!」
ダイヤの反応は鞠莉自身も予想はしていたが、あまりの勢いにたじろいでしまう。だが、それを顔に出さず、黙って聞いていた。
「あなたは果南さんの2年間の何を知ってるのですか!誰かの為にずっと……ずっと戦い続けて、自分のことなんて後回しで……果南さんは!」
うつむき、歯を食いしばり、拳を握りしめ、悔しそうに言葉を吐き出すダイヤ。鞠莉がいない間も果南は孤独に戦い続け、ダイヤをそれを見守ることしか出来なかった。見守ることしか出来ない後悔、果南からひしひしと伝わる苦しみはこの2年で嫌な程体感した。だからこそ、ポッと出に現れた鞠莉にそんなことを言われるのが気に食わなかったのだ。
そして、最後に鞠莉に決別するようにこう言った。
「あなたがそれなら……私は、私のやり方で果南さんを助けますわ。」
ダイヤはそう言い残して、さっさと理事長室から去っていった。
「ほんと、ダイヤも好きなのね……果南のことが。」
果南と同じように変わらないダイヤを見て、鞠莉は嬉しくもあった。しかし、もうあの頃には戻れないということが決定的にもなり、鞠莉はただ1人、部屋で涙を零した。
次回は重要な回です。何故、3年生組がこんなに離れ離れになってしまったのかが明かされます。