蒼空の歌 もう一人の民空の物語   作:howaito1211

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一話 初戦は待ってはくれない
01


コツンコツン。

綺麗に掃除されたロビーに多くの人々の足音が響く。

仕事で遠方に出張する者。夏休みを利用して旅行に行く家族連れ。外国から日本に帰国してきた者。

そんなそれぞれの目的を持った足跡がここ、成田空港のロビーに響いていた。

 

「んん!旅客機はやっぱり退屈だな~」

 

 

体を伸ばしながら一人の少年が一人愚痴た。

 

「迎えに来てくれるんだっけな」

 

視線を手にしていた携帯端末に移す。

ここに来るまでの指示が事細かにメールに書かれている。

現在時刻、13時48分。そして、メールに書かれている時刻が13時48分。

 

「おっかしいな?」

 

近くに誰かいるかもしれないとロビーを見渡すが、それらしい人物もいない。

 

「(場所を間違えた?いやいや、成田空港のロビーに迎えを送るって書いてあるじゃないか。まさか、ドッキリ?いまどきそんな番組やってないか・・・・)」

 

自分で問答するが、正確な答えなど出るはずもないのでおとなしくこれから自分が所属する゛民空゛の事務所に電話をかけた。

 

ププッププップルルルルプルルルルル・・・・・・

 

あれ?繋がんないぞ。まるで、詐欺で騙されて金をとられた後、電話繋がらなくなるやつみたいじゃん!

 

「君が大谷翔(おおたにかける)君?」

 

声をかけられて振り向くとそこに女性が立っていた。

染めているのか地毛なのかは知らないが、髪が金髪で、見たものなら10人中10人は凝視するであろうすらりとした体つきだ。

翔も例外ではなく、数秒間凝視してしまった。

 

「うーん、君がお姉さんの相手をするにはちょっと早いかな?」

「あ、すいません」

「てっ!こんな話をしてる場合じゃなかった!!」

 

唐突に翔の手を掴んで走り出す。

 

「ど、どうしたんですか!?」

「事情は車で話すからとりあえず急いで!」

 

ロビーを突っ切り、外に出る。

外には一台のSUVが停められていた。

彼女が扉を開け、助手席に押し込められる。

すぐに彼女も乗りエンジンをかけSUVは猛スピードで走り出した。

 

「あ、あの・・・」

「自己紹介がまだだったわね。私は、エリーよろしくね。唐突だけど、飛んでほしいの」

「へ?」

 

まるでちょっと買い出し言って来て~程度の自然さだったのだ。

思わず間抜けな声が出る。

 

「゛ヤク゛が空自の防空網を強引に食い破って接近中なの。近隣にいる民空は今私達しかいないし、迎撃しようにも出せる人員全員出払ってていないのよー」

 

バシッ!と背中を叩かた。結構、痛い。

 

「あのエリーさん機体は?」

「あら、さっそく名前で呼んでくれちゃって!お姉さん嬉しい!機体も届いてるし゛スカイ゛も到着してるわ。思いってきりやっちゃって!!」

 

ダメだ。どうも、この人のテンションにはついていけない。

 

 

  ◇

 

 

ほどなくしてフェンスで囲まれた基地に車は入っていく。

看板には厚木基地と書かれていた。

 

「頼まれていた物はすべて揃えました」

 

基地内に入ると自衛官達が大勢現れ、対Gスーツを始とした各種装備を渡してくれる。

更衣室で着替え滑走路へと向かう。

青い洋上迷彩を施された機体。

 

「よぉF-2また飛ぶか」

 

懐かしき愛機がそこにあった。

 

「・・・・・ッ!」

 

突如、頭に鋭い痛みが走る。

慌ててポケットからケースを取り出し、その中におさめられている白い粒を一粒口に含む。

 

「まだ、体が覚えているのか・・・・・」

 

いけない。また頭痛が来てしまう。

゛あの時゛の事に頭を支配される前に翔はその思考から抜け出した。

 

「あーあー聞こえる翔くん?」

「無線感度良好。聞こえてますよエリーさん」

「そりゃ良かった。もうすぐ君のパートナーが支度を終えるから・・えっ?もう行った?ごめん、翔くん今のなし」

「で、肝心のスカイはどこなん―――」

 

ドスッ!

後ろで何かこけたような音を聞き、翔は慌てて振り向く。

 

「いたた・・・・」

 

F-2のように青い髪をした人形と言われればそうとしか思えない少女が頭をこすりながら起き上ってくる。

え、まさかこの子が?

 

「え、えっと・・君が?」

「そう。あなたのパートナー」

 

一瞬、見とれてしまった。

「翔くん。急いで!」の言葉でハッと我に返る。

 

「行こう!」

 

青髪の少女の手を引きながら機体に駆けって乗り込む。

肩、腰、足のベルトをきっちにはめ、酸素マスクをつける。

 

「ユーハブコントロール」

「アイハブコントロール」

 

キャノピーを閉める。

 

「そういえば、君の名前を聞いてなかったな」

「え?」

「名前、君の名前だよ」

 

少女は考え込むような表情でうつむいてしまう。

 

「・・・・・・ない」

「へ?」

「名前がないの・・・」

 

機体のエンジン音がこれから戦場に向かうのだと教えてくれる。

滑走路へと機体を移動させながら、会話を続ける。

 

「ブルーとかどうだ?」

「ぶるー?」

「そう、ブルー。お前の髪は青だろ?そこからとった」

 

いまいち名前と言うものが新鮮なのか何度も「ぶるーぶるーぶるー」と繰り返していた。

離陸するポイントまで到達する。

 

「atugiTower,Cobra、at, Runway01, Ready for Takeoff」

「Cobra,atugiTower,Runway 01, Cleared for Takeoff」

 

ここから先は戦場だ。

殺るか殺られるかの無法地帯。

 

「Cobra、クリアードフォーテイクオフ!!」

 

一機の戦闘機が飛び立った。

 

 

  ◇

 

 

「やっと飛んだね。゛スカイ殺し゛くん?」

 

その姿を双眼鏡で見ながら彼女はニンマリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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