ドオオオオオン!!
突如としてなった爆音に人々は身を竦ませた。しかし、同時にまだ自分達が生きている事にも驚いた。
「え?」
「・・・・いまのなんだよ・・・」
見れば空には火球が二つ浮かんでいた。その中からこぼれるように何かの゛残骸゛が滑走路に落ちてくる。
「・・・・助かったのか」
誰かがぽつりと漏らした。
空港は一瞬無人になったかのように静まり返ったが、次の瞬間には大きな歓声が空港を包んでいた。
「た、助かったぞっ!!」
「神様ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます・・・・・・」
安堵したのか泣き崩れる人や近くにいた者と手を取り合う者。反応は人それぞれだ。だが、歓声に包まれる空港に上空を一機の戦闘機が通過して行ったことを気付ける人ははたして何人いただろうか。
◇
『・・・現在、羽田空港は通常通り業務を再開しています。一方、防衛省は今回の件について・・・』
ピッ
何回も見たテレビを消し、部屋の外に出る。
主だった報道機関はここんとこ毎日羽田空港の事件を報道していた。もちろん、詳細な情報は伏せられている。現在、日本のヤクに対する防御があまりにも危ういと悟られるのを防ぐためだ。
「ふぅー」
寒い。
12月の空気はどれだけ着込んでも耐えられない。
やはり早朝なので行き交う人の姿はまばらだ。だが、好都合でもある。こんな出たくない時間帯に出たのはそのためだ。
翔は足を厚木中央公園に向けた。
彼が着くとやはり先客が居た。
「おはっよー!翔くんっ!」
こんな朝早いのにハイテンションだ。この人ほんとに寝てるのか?
「ふぁ~エリーさん。用件は手短にお願いします。眠いんで」
「あらあらつれないな翔くん。こんな美女と一緒にいられるんだから楽しもうよぉあ、押し倒すのはなしね。公衆の面前ではさすがにエリーさんも恥ずかしいし」
「押し倒しませんよっ!てか、それ完全に変態じゃんっ!」
「あとでこっそり君がこれから通う学校に流そうかな」
「やめてくれー!」
気味の悪い笑みを浮かべ携帯端末を操作し始めるエリーさんを俺は全力で止めにかかる。
10秒くらいもみ合った後、エリーさんが片手を振りながら「冗談よ」と笑い、事態は終息した。
「でも君よく『ゴースト』だと分かったね」
「それはブルーを褒めてください」
実際あそこでブルーが見つけてくれなかったら空港だけの話ではない。東京が火の海になっていたかもしれないのだ。
「うちには取材を求める電話や防衛省からの事情説明の対応に追われてて寝る暇なしなのよ。責任とって」
「子供が起こした面倒事を解決するのは大人ですよね?」
「あーあーそんなこと言う子には、これあーげない」
ニヤリと笑ったエリーさんは懐から封筒を取り出す。
ま、まさかそれは――
「じゃじゃーん!今回の成功報酬ですっ!!」
「お願いしますください前言撤回しますから」
食えない。飯が食えなくなる。
土下座しかねない俺を見てエリーさんは高笑いを続ける。なんだこの屈辱感。ここに銃があれば撃ち殺したくなってくる。
「で、あとレイからも感謝お言葉が寄せられてるわよ」
「れ、レイって!あの歌姫の?」
「そうあのレイよ」
嘘だろ。わずか15歳で世界の頂点に上り詰めたあの生きるレジェンドから?
「ま、まさか。厚木からあんなに遠い。成田に降ろされたのは・・・」
「うん。レイが来る時間とあなたが来る時間が被ってたから」
なに平然と言い放ってんのこの人。
エリーさんは封筒を俺の手にしっかり握らせ、公園を後にした。
「はー」
思わず重いため息が出る。
他のメンバーもいるといったな。あの人がいる職場で勤務してるんだから、よっぽど肝が据わってるか、変人かのどちらかだろう。
俺マジでどうなるの?
「おっ、ヤバいな」
右腕につけている時計を見ればそろそろ戻ったほうがいい時間だった。
周りを見れば行き交う人も増えている。
腰を上げ、元来た道を引き返す。
さぁ、゛日常゛を始めようか。