#ケモ彼版深夜の60分1本勝負   作:とましの

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「一周年」「徳川真琴」

最近なぜか慶次がよそよそしい。

さらに言えば長政はもっとよそよそしい。俺の顔を見るなり困った顔で逃げてしまうほどだ。

 

そのため何かしたのかと考えたがとくに覚えがない。

仕方がないからと政宗と幸村に聞いても知らないと返された。ただ政宗の様子を見る限り何か隠しているようだ。

 

そんな状態が何日も続き、徐々に政宗の態度もよそよそしくなっていった。

『何か』を隠しきれなくなっているらしい。

 

しかし俺もあえてそれを聞くのが億劫になっていた。

むしろ当直続きの激務で余裕がないと言ったほうが良いかもしれない。

 

そんな中で久しぶりに休日を与えられた俺はひとり買い物に出掛けていた。

なんとなくデパートに出掛けて何となく買い物をして、なんとなく医大へ足を向ける。

 

慶次と長政と政宗はよそよそしい。幸村に聞いても教えてくれない。秀吉に聞いても笑ってごまかされる。

三成は論文の締め切りに追われていて話しかけられる雰囲気ですらない。

さらに信長は、話しかけようとするだけで殺意の目を向けてきた。そのまま問いかけたりしたらメスを向けられそうな気がする。

 

そして光秀は昨日行われた学会の準備にずっと追われ続けていた。

あの様子では明日が誕生日であることも忘れていそうだ。

 

ただ……最近のみんなの態度を思うと光秀に会うことすら怖くなる。

この一週間まともに顔を合わせていないが、もし光秀に他人のような態度を取られたら心が折れそうだ。

 

そう考えれば自然と医大へ向かう足も重くなる。

 

俺は何かしただろうか。

いやそもそも俺は月城医大に来てから迷惑しかかけていない気がする。

ステージ4の獣症患者であること自体が既に迷惑だと言うのに、さらに厄介な事に俺は他に症例のないタイプだった。

大勢の人に迷惑をかけてやっと完治しても後遺症として発情期を残してしまっている。

 

もう本当に迷惑しかかけていない。

 

そうして医大へ到着した頃には、俺は重く深い考えに支配されていた。

 

職員室に立ち寄り光秀の居場所を聞くと休憩室に足を向ける。

 

そして重い足を引きずり歩く俺は、背後に潜んでいる慶次の存在に気づかなかった。

 

 

もし光秀に嫌われたらフランスへ帰ろう。そう思いながら休憩室のドアを開かせる。

 

その瞬間、俺は複数の破裂音に包まれた。驚きに目を丸め立ち尽くす俺の周囲を様々な色合いの紙切れが舞う。

そこでやっとクラッカーが炸裂したんだということを認識した。

 

あげく少し遅れて背後で慶次がクラッカーを鳴らす。

 

その時点で俺の感情は氷点下まで落下していた。

 

「なんだこれ」

 

暗い面持ちで問いかけると長政が照れたように「一周年だよ」と返してくれる。

だが意味がわからなかった。

むしろくだらない嫌がらせとしか思えない。

 

「………………」

 

抱いた苛立ちを隠すことなく表情に表した俺は光秀の姿を探す。しかしその姿はなかった。だとしたら先ほど職員室でここにいると教えてくれた職員もグルだったのだろう。

 

「真琴!」

 

休憩室を出ようとする俺の前を慶次が慌てた様子で立ちはだかる。

「今日で真琴が月城に来て一年なんだ」

「は?」

慶次から向けられた突然の言葉に、俺は不機嫌なまま返した。すると慶次は救いをも止めるように休憩室の奥へ視線を向ける。

すると今度は政宗が俺を呼んだ。

「真琴が月城に来た一周年の祝いをしようと慶次が計画したのだ。機嫌を直して付き合ってくれないか」

政宗の説明を聞いてやっと俺は自分を包む状況を理解した。

皆が隠そうとしていたのは俺を祝う計画だったらしい。

 

そうとわかった俺は自然とその場にしゃがみこんでいた。

どうやら俺は嫌われてはいなかったらしい。

 

しゃがみこんだ俺のそばに慶次がしゃがむ。

「真琴、祝わせてくれるか?」

「……好きにしてくれ」

 

大きな安堵感に包まれた俺はそう返すしかなかった。

 

 

 

ささやかな祝いを終える頃には夜になっていた。祝いをすると言っても仕事がある者もいるため派手に祝うことはできない。

 

就業時刻を終えた頃に休憩室を後にした俺は、政宗から教えられた通り地下の研究室へやってきた。

 

中に入ると三成と光秀がテーブルを挟んで向かい合わせに座っている。

「お疲れ」

疲れが目の下にくっきりと表れていても、その態度はいつもと変わらない。

誰よりも多忙な外科部長は立ち上がると三成に声をかけながら俺のもとに来てくれた。

一緒に研究室を出ると誰もいない廊下で俺は手元の袋を差し出そうとする。

「これ……」

「一周年パーティーは楽しかったか?」

袋の中身を説明しようとした俺に光秀が質問をぶつけてきた。

そのため俺は手を止めて光秀を見つめる。

「楽しくないと言えば嘘になる。だが隠し事をされていた間は楽しくなかったな」

「そりゃそうだよな」

俺にそう返した光秀の手はなぜか俺の前髪をいじっている。

「けどおまえがここに来てくれたことを感謝してるのは俺だけじゃないってことだ。許してやってくれ」

甘えるような甘やかすような、そんな声色で光秀が言う。

 

そんなこと言われて、俺が怒れるはずがないだろ。

 

「月城に来てくれてありがとな、真琴」

 

そう告げた光秀は、赤らんだ俺の頬をそっと撫でてキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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