とある真理の探究者   作:無想転生

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もう一人の上家進利

窓の無いビル…その内部の中心には、巨大なビーカーが佇んでいる。

ビーカーの中には弱アルカリ性の培養液で満たされており、その中にたった一人…男にも女にも、子どもにも老人にも、聖人にも囚人にも見える「人間」が逆さまのまま沈んでいた。

 

「プランの方には何か、進展はあるか?」

ビーカーに沈む人間の眼前に、黒いスーツを纏った黒髪の男…上家進利が立っていた。

 

「いや、まだだ。

いつも言っているだろう?プランに進展が見られれば、こちらから連絡を入れると」

毎度尋ねられては迷惑だ。と、ビーカーの人間は応えた。

 

「退屈なんだ、世間話をしに来るくらい勘弁してくれ」

 

「退屈…か…

君が今やっている“あれ”も、退屈を紛らわす方法の一つなのかね?」

ビーカーに沈む人間…アレイスター・クロウリーが笑みを浮かべて問いかけた。

 

もっとも…その表情は笑みというには余りにも微妙な変化であり、先程の会話も、端から見れば、ただただ無表情のまま言葉を発しているようにしか見えない。

 

まるで機械どうしが会話しているかのように、互いに表情に変化は見られないが、何度も対話をしている二人にはその微妙な変化が分かるらしい。

その証拠に、二人の間には、まるで友達と話しているかのような気さくな雰囲気が漂っている。

 

「あれ…というのは幻想殺し(イマジンブレイカー)の事かね?」

無表情にしか見えない顔で笑みを浮かべながら、アレイスターの問いに応える上家。

 

「まぁ…それもあるな」

笑みを浮かべながら、含みのあるような言い方をするアレイスター。

が、上家と同様、やはり無表情にしか見えない。

 

「しかし素晴らしいものだな、幻想殺し(イマジンブレイカー)というものは、あそこまで俺の興味を駆り立てる能力は存在しない」

幻想殺し…という言葉に何かのスイッチが入ったのか、上家の口調が若干興奮気味に高ぶり始めた。

 

今度は先程までとは違い、明らかに表情の変化が見られる。

 

「あわよくば、自分の物にしたいともよく考えるが…あれは上条当麻だけに許された代物なのだろう?」

 

「あぁ、その通りだ。

あれは上条当麻…いや、神浄の討魔以外には持ちうる事を許さない」

例え切り落とし、自分の腕として移植しようと、再び上条当麻の右腕に戻ってくる。

 

上条当麻と幻想殺しは、切っても切れない不思議な鎖に絡まれているからだ。

 

「…そう言えば、潰してもまた再生するんだったな。

だったら一度、解剖でもして徹底的に調べてみたいものだが…」

上家が物騒な事を平然と口にだした。

 

「君ならとっくにやっていそうなものだが…何か理由でもあるのかね?

まぁ…やられてもこまるのだが」

 

「あるさ、彼は心優しい性格だからな、物騒な真似はできない。

傷ついている者がいるのなら、真っ先に救いの手を差し伸べ…どんなに強大な悪にも、恐れずに立ち向かえる…彼はそういう人間だ」

 

深く思考するかのように、ゆっくりと目を閉じる上家。

その表情は何故か穏やかで、どことなく誇らしげだった。

 

「彼…?」

アレイスターは一瞬、幻想殺しの使い手である上条当麻の事を指しているのかと思ったが、直ぐに別の人物の事を思い浮かべた。

 

「あぁ彼か…“もう一人の上家進利”…とでも呼べばよかったかのかな?」

アレイスターは静かに応えた。

 

もう一人…上家進利などそうそうある名前ではないが…

それが一体何の事を指し示しているのかは、今会話を繰り広げている二人にしか分からない。

 

「その通り、俺と違って正義感の強い少年だよ」

 

「君がそうしたのだろう?わざわざ君好みの性格に改変した…違うか?」

 

「バカを言うな、もともと彼はあんな性格だったよ。

まぁ…確かに、俺が手を加えて、少々行き過ぎてしまったが…」

 

「彼女の性格に似せたか…

まるでごっこ遊びだな」

上家に対し、アレイスターが嘲笑気味に笑みを浮かべた。

 

「そうだな」

アレイスターの嘲笑を気にする様子もなく、上家は自傷気味笑みを浮かべながらこう続けた。

 

「自分でもそう思うよ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ここは学園都市の第七学区にある、とある高校…

科学の最先端の街というイメージからはかけ離れた、見た目もごく普通、学校に通う生徒にも強力な能力者などはいない、平凡過ぎる高等学校だ。

 

「はい、上家ちゃん。

この問題を解いてみてください」

子どもの声の様な高い声が教室に響きわたる。

教卓にはピンク色の髪の小さな子ども…いや、小柄な女教師が、椅子を足場にチョークで黒板に問題を記していた。

 

どう見ても小学生くらいの子どもにしか見えないが、その実は酒もタバコも嗜める、教員免許を持ったれっきとした大人である。

 

小学生教師だけではない。

この教室には、サングラスにアロハシャツを着込んだ少年や…派手な位真っ青な髪にピアスを付けた少年に…巨大な胸と立派なデコを持った少女…そしてツンツン頭の少年と、個性豊かな少年少女達で溢れている。

 

「はいっ!」

 

そんな中、上家と名前で呼ばれた一人の少年が、元気よく返事をして席から立ち上がった。

 

少年は爽やかな人のいい笑顔を浮かべながら、大きな声で教師に求められた問題の回答を述べた。

 

 

彼こそが “もう一人の上家進利” である。

 

 

 




「何を言っているのか分からない」そう思ったあなた。

安心してください、あなたの頭は正常ですよ。
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