ニセコイ~サンカク関係どころではない話し~   作:通りすがりのぬこ様

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第4話:オノデラの想い

 

 

私は、いつからあの人のことを好きになったのだろう………

 

私は、いつからあの人に恋をしたのだろう………

 

 

 

いつ好きになったのかは分からないが、気になりだしたきっかけは覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初は、すごくこわい人だと思ってた。

 

中学1年の時、クラスが違ったから廊下ですれ違うぐらいだったけど、こわくて顔も見れなかった。

 

でも、2年生になり、同じクラスになってしばらくして、本当は優しい人だということに気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれは梅雨に入る前のとある日のことだった。

 

その日、学校はお休みで私は買い物をするためにお出かけしていた。

 

ちょっと大きな公園の近くを通った時、誰かが泣いている声が聞こえて、公園の方に目を向けると、小さな男の子が泣いていた。

 

心配になった私は声を掛けようと思ったんだけど、先に声をかけた人がいた。

 

 

 

それが彼だった。

 

 

 

彼は、男の子と目線を合わせるためにしゃがみこんで、男の子に「どうしたのか?」と問いかけてるみたいだった。

 

少しすると、彼は男の子の頭を少し乱暴に撫でたあと、手をつないでどこかへ行ってしまった。

 

あの子と彼が何を話していたのはか分からないけど、あの男の子は、たぶんお父さんやお母さんとはぐれてしまったんだと思う。

 

そんな男の子を見かけた彼は話しかけ、慰めてから一緒になってお父さんやお母さんを捜しに行ったんだと思う。

 

それ以来、彼への印象は大きく変わり、「本当はどんな人なんだろう?」という興味が出てきた。

 

 

 

 

 

まだ話しかける勇気がなかった私は、ただ遠目で彼のことを見ていることぐらいしかできなかったが、それでも彼がどんな人なのかはある程度分かった。

 

つまらなそうな顔をしつつも、友達の話にきちんと付き合ってあげたり、

 

友達に「ノート写させて」と言われたら、文句を言いながらも貸してあげたり、

 

周りからは怖いと思われるけど、実はすごく優しい人なんだなと思った。

 

 

 

中でも強くそう思ったのが、あの事件の時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中学2年生の冬頃。彼とよく一緒にいる友達に関するひどい噂が校内に流れていた。

 

それは本当にひどい噂で、最初聞いた時は私も強い憤りを覚えた。

 

その噂が彼の耳に届いた時、彼は静かに……そして爆発するかのように怒った。

 

 

 

 

 

 

「この噂流したの誰だ………この噂を流しやがったのは…どこのどいつだァッ!!!!!」

 

 

 

 

 

その教室だけではなく学校中に響きそうな勢いの怒号は教室の空気を凍りつかせ、何事かと他のクラスの人が覗き込むほどだった。

 

次の日、噂を流したという男の子たちが彼とその友達の前で泣きながら謝っていた。

 

あの時の彼はすごくこわかったけど、同時にすごく優しい人だと思った。

 

 

 

……あっ、そうだ。たぶんこの時だ。

 

 

 

友達のために全力で怒った彼を見た時に、私は彼を好きになったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋に落ちたあとも、しばらくの間は遠目から彼を見ているぐらいしかできなかったけど、3年生になってからは友達のるりちゃんのおかげで挨拶ぐらいはできるようになった。

 

最初はすごく緊張した。るりちゃんが「おはよう」と言ったあとに私も「おはよう」と挨拶すると、彼は少し不思議そうな顔をしたあとに「おはよう」と返してくれた。

 

それからは朝に会うと「おはよう」、放課後に会うと「またね」と挨拶し合うようになり、それが私にとって毎日の楽しみになってた。

 

 

 

でも、3年の秋頃、そんな楽しみがなくなってしまうかもしれないと思う出来事があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当時、私はどの高校に進学するかすでに決めていた。地元から数駅ほど離れたところにある女子高だ。

 

進路希望調査票にその高校の名前を書き、先生に提出しようと廊下を歩いている時、偶然彼と友達が進路について話しているのを聞いた。

 

彼は地元の公立高校に進学するようで、その話を聞いた時に私は気づいてしまった。

 

 

 

当然の話だが、学校が違えば彼には会えなくなってしまう。「おはよう」も「またね」も言うことができなくなってしまう。女子高ならなおさらだ。

 

地元は同じなのだから、会おうと思えば会えるかもしれない。でも、毎日会うことはできなくなってしまう。

 

進学すれば彼と会えなくなる。そう思うととても寂しい気持ちになったし、すごく嫌だった。

 

そう思った私は、進学先を変えることにした。もちろん彼と同じ高校だ。

 

入学の難易度は最初に希望していた女子高の方が高かったから結果的に難易度を下げることになったが、それでも当時の私の学力では難しいことに変わりはなかった。

 

正直、最初の進学先の志望理由はかなり浅いものだったから受験勉強にも身が入らなかった。でも「好きな人と同じ高校に行く」という理由ができてからはすごく頑張った。今までの人生で一番勉強したと言えるぐらいに。

 

 

 

 

 

そして、今までにないぐらいのやる気で試験に臨み、結果は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不合格だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショックが大きすぎて、家に帰る気になれなかった私は、何かをするわけでもなくただただ公園のベンチに座っていた。

 

日が落ちて夜になっても、雪が降ってきても動くことはなく。むしろ、このまま消えてしまいたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにしてんだよ。小野寺」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、彼の声が聞こえてふと顔を上げると、目の前に彼が―――久堂悠也くんがいた。

 

 

「く、久堂くん!?久堂くんこそどうして………」

 

「家で姉貴とゲームしてたんだけど負けちまってな。罰ゲームでコンビニでアイスとかいろいろ買って、今は帰り」

 

「そ、そうなんだ」

 

「で、お前はなにしてんだよ?リストラされたことを家族に言えずに公園で時間潰すリーマンみたいな面して」

 

「ぐふっ!」

 

 

久堂くんの妙に具体的なたとえが私の心をえぐった。

 

それから、少し時間はかかったけど久堂くんに話した。同じ高校を受験して、落ちたことを。

 

久堂くんは小さく相槌を打ちながらも何も言わずに静かに聞いてくれた。

 

そして、私の話が終わると、ただ一言だけ―――

 

 

 

「そうか」

 

 

 

そう、口にしただけだった。

 

久堂くんは本当に優しい人だ。そんな彼の優しいところが好きなんだと改めて思うけど、今は好きだと思う度に辛くなる。

 

もう、大好きな久堂くんと挨拶を交わすことができなくなる。大好きな久堂くんの姿を見ることができなくなる。

 

その思いが止まらなくなり、どんどん心が悲しみの奥深くへと沈んでいく。しかし―――

 

 

「ところで小野寺、お前寒くねぇのか?そんな格好で」

 

「えっ。えっと、その……たぶん寒いけど」

 

「たぶんってなんだよ。とりあえずこれ着ろ」

 

 

そう言うと、久堂くんは着ていたダウンジャケットを脱いで私に差し出してくる。

 

 

「えっ!?い、いいよ!久堂くんが風邪ひいちゃうから!」

 

「安心しろ。これぐらい、真冬の雪山を3日間彷徨った時に比べりゃぁ全然マシだ」

 

「えっ、えーーーっ!!!雪山を3日間彷徨ったってなにしてるの!?」

 

「俺、小さい頃からじーさんに剣術を習ってたんだけどさ。小5の頃にじーさんに雪山連れてかれて、その後じーさんが「精神修行だ!」とか言い出して雪山に放置しやがったんだよ」

 

 

今、初めて久堂くんの身の上話的なのを聞いたけど、嬉しさよりも驚きの方が遥かに優ってしまった。

 

 

「というわけでこれ着とけ。てか着ろ」

 

 

ちょっとだけ言葉に圧を感じて、押し負ける形でダウンジャケットを受け取り、羽織る。

 

さっきまで気持ちが沈んでいたのに、久堂くんが着てたダウンジャケットを羽織っただけで幸せな気持ちになる。

 

現金だな。私。

 

 

 

互いに何も喋ることなく、しばらくそうしていると携帯が着信を告げた。発信者はお母さんだった。

 

電話に出ると、帰りが遅いというお母さんからの心配の言葉と、そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――えっ?合格?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受験した高校の繰り上げ合格を伝える通知がきたという話だった。

 

電話を切り、久堂くんにどんな内容だったのか伝えると―――

 

 

 

「そうか」

 

 

 

さっきと同じ、ただ一言だけの言葉を口にした。でも、さっきと違うのは―――

 

 

「じゃぁある種の入学祝いってことで………ほれ」

 

 

レジ袋の中からカップラーメンを取り出し、手渡したことだ。

 

 

「えっ。いいの?」

 

「ああ。あとそれ、最近発売されたばかりのやつでな。めっちゃ旨いから」

 

「そうなんだ」

 

 

そう言う久堂くんの顔は、どこか楽しそうだった。

 

 

「っとやべ!長居しすぎた!急がねぇと姉貴にどやされる!」

 

 

久堂くんは慌てたようにベンチから立ち上がり、レジ袋を掴んだ。

 

 

「あっ!待ってこれ―――」

 

「そのまま貸しとくから!次会った時に返してくれ!じゃぁまたな!」

 

 

そう言うと、久堂くんは慌てて走り去っていった。

 

見えなくなった後ろ姿に向かって、私は呟くように言った。

 

 

 

 

 

「……またね。久堂くん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから季節は変わって、春―――

 

同じ高校に進学できた私は、また久堂くんと同じクラスになり、朝と放課後に挨拶をする程度の関係が続いている。

 

るりちゃんのおかげで挨拶を交わす程度の間柄になって以来、1年もそんな状態が続いているのだ。

 

できればあの時みたいにいろいろお話したいけど、話せる機会がなくて……ううん、それは違う。

 

話せるチャンスはたくさんあった。でも、私に声をかける勇気がないだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高校生になって半月経ったとある日の休み時間。

 

私は屋上から、校庭でサッカーをしている久堂くんたちを見ていた。

 

はぁ……今も一緒になって遊んでる一条くんや舞子くんが羨ましい。

 

私も一条くんたちみたいに小さい頃からの付き合いだったらなぁ……あっ、久堂くんのシュートでキーパーの人が吹き飛んだ。

 

 

「……ねぇ小咲」

 

 

一条くんたちを羨ましがっていると、隣にいるるりちゃんが話しかけてきた。

 

 

「なに?るりちゃん」

 

「あんた、いつになったら久堂くんにアタックかけるの?」

 

「ぶっ!い、いきなり何言い出すのるりちゃん!ていうかい、一体いつから……」

 

「気づいてないと思ったの?あきれた………」

 

 

うぐっ。そ、そういえば中学3年になって間もない頃、るりちゃんに「私の後に挨拶しなさい」と言われて、そのおかげで久堂くんと挨拶するぐらいの仲にはなったけど、もしかしてあの時から?

 

 

「で、いつになったらするのよ」

 

「いつになったらって、まだそんなお喋りしたこともないのに………」

 

 

久堂くんとお喋りしたのは、昨年度のあの冬の日ぐらいで、普段は本当に挨拶をするぐらい。

 

友達と呼べる間柄ですらないのに、アタックだなんてそんな……

 

 

「仕方ないわね……私がチャンスを作ってあげるから。あとは自分でなんとかなさい」

 

「えっ?」

 

 

なんだろう……すごく嫌な予感がするんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。教室に残ってお喋りしている久堂くんたちにるりちゃんが話しかけた。

 

 

「ねぇ久堂くん」

 

「ん?どした宮本」

 

 

 

 

 

「今日、私たちあなたの部屋で勉強会を開きたいんだけど、構わない?」

 

 

 

 

 

「………はっ?」

 

 

悪い予感は的中した。

 

ていうか、いきなり何言ってるのるりちゃああああんっ!!!

 

 

 

 

 




【あとがき】


一条かと思った?残念!久堂でした!

というわけで、小野寺さんの好きな人は一条くんではなく久堂くんです

ただ一条楽の好きな人は原作通り小野寺さんなので、現時点では一条→小野寺→久堂という感じです

あと、余談ですがこの話を書いてる途中にニセコイのファンブックを買ってきました

るりちゃんに年の離れた双子の弟と妹がいたり、初期段階では小野寺三姉妹だったりとなかなか興味深い情報がありました

もしかしたら今後のシナリオに取り入れるかもしれません
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