ニセコイ~サンカク関係どころではない話し~   作:通りすがりのぬこ様

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第7話:10年前のヤクソク

 

勉強会が終わり、みんなを帰してから数分後。

 

チャイムが鳴ったので玄関の戸を開けると、帰ったはずの桐崎がいた。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「実はスマホ忘れちゃったみたいで。部屋に落ちてない?」

 

「ちょっと待ってろ」

 

 

急いで階段を駆け上がり、自分の部屋へ。

 

テーブルの下を見てみると、某アニメ映画のプリンセスが描かれたカバーがかけられたスマホを見つけた。

 

回収し、急いで自分の部屋を出て玄関へ。

 

 

「もしかしなくてもこれか?」

 

「それそれ!帰る途中で気づけて良かったぁ」

 

「本当にな」

 

 

桐崎の言葉の同意した直後、空が一瞬光り、遅れてゴロゴロという雷の音が聞こえてきた。

 

 

「降ってないのに雷きたか。雨雲が近くまで来てるな……んっ?」

 

 

ふと視線を落とすとそこには、うずくまって頭を両手で押さえながらプルプル震えてる桐崎の姿あった。

 

 

「……あー、もしかして雷、苦手だったりする?」

 

「なっ、何言ってるのよ!そんなわけな――」

 

 

 

 

ゴロゴロッ

 

 

 

 

「ひゃう!!」

 

 

空から唸り声のような音が聞こえてきて、また震えだしている。

 

今の反応がちょっと可愛いと思ったが、口には出さないでおこう。

 

 

「はぁ~……とりあえず上がってけ」

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐崎を居間に通し、俺の部屋にあったのよりも大きい長方形の木製テーブルに座る。一枚板を使った値段の張りそうなやつだ。

 

桐崎は向こう側ではなく俺の隣に座り、お茶でも持ってこようとするとここにいてと言わんばかりに服の裾を掴んでくる。そんなに怖いか雷が。てか、キャラ違くないか?

 

 

「しかし、まさか雷が苦手だとは………」

 

「う、うるさい!仕方ないでしょ……小さい頃、夜中にハリケーンがきた時に雷が鳴ったかと思えば停電になって。それ以来ダメなのよ……雷と暗いところは………」

 

「あぁーなるほど。そりゃトラウマになってもしゃーないわ」

 

「そ、そういう久堂くんは何かないわけ?」

 

「ああ?苦手なことか?うーん……ほとんどないけど、強いて言えば姉貴かな」

 

「えっ?あのお姉さん?」

 

「ああ。あのテンションだけは全然慣れる気がしない」

 

「分かる気がする……まだ1回しか会ってないけど私もついていけないかもあれには」

 

 

日本人よりはテンション高そうなアメリカ人にこう言われるとは。姉貴すげぇな。

 

 

 

ふと会話が途切れて部屋が静かになると、隣の桐崎が一言。

 

 

「ね、ねぇ何か喋ってよ。黙ってたら怖いじゃない」

 

「何か喋れも言われてもなぁ………」

 

「なんでもいいのよ。すごく面白い話とか」

 

「簡単そうに言ってるけどそれめちゃくちゃ難しいからな?」

 

 

面白さは置いておいて、ふと気になったので訊いてみた。

 

 

「桐崎ってさ、楽のどこが好きなの?」

 

「ぶっ!い、いきなり何言ってるのよ!別に好きじゃないわよあんな―――」

 

 

そこまで言ったところで自分の発言に気がつき―――

 

 

「――じゃなくて!全部好きなの!ダーリンの全部が!」

 

「全部ねぇ………」

 

「なによ……」

 

「いや別に」

 

 

ここまでくるともう自分からバラしてるようなもんだが、深くは追求しないでおくか。もう大体察したからな。

 

 

「そ、それより、久堂くんは好きな子とかいないの?」

 

 

慌てて話の矛先を向けてきたな。とりあえず乗っておくか。

 

 

「いないというか、そもそも異性を好きになったことなんて一度―――」

 

 

そう言いかけたところで、あることを思い出す。

 

 

「――いや、一度だってあったかもしれねぇな」

 

「あったかもしれないって何よ」

 

「俺は覚えてないんだけどよ、姉貴が言うには小さい頃に女の子と毎日遊んでた時があって、その子と結婚の約束をしてたらしいんだわ」

 

「結婚って、随分マセた子なのね」

 

「同意見だわ。まぁ、俺が覚えてないぐらいだから、向こうも忘れちまってるだろうけどな」

 

 

身近に小さい頃の約束を覚えてるのがいるけど、あいつは少数派だろう。

 

 

 

小さい頃の約束の話をしたあと、流れは小さい頃の俺の話になった。

 

 

「で、小4の夏休みは無人島に置き去りにされたんだよ」

 

「小学4年生の男の子を無人島に置き去りにするって……何考えてるのよあんたのおじいちゃんは………」

 

「ほんとそれな。まぁ人がいないとはいえ、森があったからまだ良かったけどな。小5の夏休みの時なんて砂漠のど真ん中に放置だぜ?」

 

「そんな状況から生還してるあんたも大概よね」

 

「自覚はあるよ。俺自身、結構人間やめてると思う」

 

 

それでも姉貴には負けるがな。あの人の人外度は俺以上だ。

 

 

「まぁそんな感じで小さい頃からいろいろ危ない目に遭ってきたけど、ある意味一番やばかったのは中1の夏休みの時に家族でメキシコ行った時かな」

 

「なんかもうメキシコって時点で想像つきそうだけど………」

 

「多分想像通りだ。具体的に言えば向こうの犯罪組織に命狙われた」

 

「やっぱり……でも、メキシコの犯罪組織ってかなり危ないって有名じゃない?本当によく生きてたわね」

 

「その時は親父が経営する会社の人間も護衛役として一緒に来てたからな。姉貴も一緒にいたし、命の危険は感じなかったけど、違う意味でやばかった」

 

 

うちの親父、久堂征一はクドウセキュリティシステムズという警備会社を営んでいる。

 

常駐警備や身辺警護を行っていて、会社の規模は大手と比べれば小さいが社員たちの戦闘能力はかなり高く、重武装したテロリスト相手にも負けないぐらいだ。

 

まぁ、社長である親父が久堂神天流の後継者で剣道八段、空手十段、合気道も達人クラスと普通に化物クラスで、そんな親父が課す地獄の入社試験を突破してきた猛者揃いな会社だからな。テロリストも泣いて逃げ出すレベルだ。

 

そんな会社からよりすぐりの社員たちが守ってくれてたからそういう意味では問題なかったんだが………

 

 

「姉貴のバカが向こうの構成員とケンカになってボコってから命を狙われるようになったんだが、それからがやばかった。うちの連中も戦闘力的な意味でやばいヤツばっかりだったから返り討ちにしたんだが、何回も襲って来る内に親父があまりのしつこさにブチギレてたな。同行してた社員の内、二人を母さんの護衛のために残して、残りの社員全員と俺と姉貴を連れて連中の拠点に殴り込みに行ったんだよ」

 

「お姉さんも大概だけど、何やってるのお父さん……ていうかあんたも連れてかれたのね」

 

「なんでか知らんけどな。それから先はちょっとした戦争状態だったぞ。向こうは重武装した兵士だけじゃなくて軽機関銃を積んだ車両や攻撃ヘリまで出してきてからな」

 

「そんなものを持ってる組織とケンカして生きてるあんたたちがすごいわ……ん?ちょっと待って、あんたたちがやり合ったのってメキシコで一番やばいって言われてた連中でしょ?」

 

「そうだけど?」

 

「たしか、3年前にメキシコで猛威を振るってた組織が壊滅したニュースが流れてきて、パパたちが慌ててたけど………」

 

「ああ。多分そのニュースの当事者だわ俺たち。てかメキシコで話題になったことは知ってたけど、国境越えてたのか」

 

「何のんきなこと言ってんのよ。あの組織が潰れたことでメキシコの裏社会の勢力図が大きく変わったって言われてるのよ?うちにまで影響あったんだから」

 

「……マジで?」

 

「マジで」

 

 

どうやら、俺たち家族はとんでもないことをやらかしていたようだ………なんて言いながら、後悔はしてないけどな。もう3年も前のことだし。やっちまったもんはしょうがない。

 

 

 

それから、他愛もない話をして雷雲が通り過ぎるのを待つ。

 

雷が鳴った時はビビってたけど、そうでない時は普通に言葉を返してきていた。

 

気を紛らわすという役目をちゃんと果たせたようで、とりあえずは良かった。

 

 

 

桐崎を帰したあと、夕飯を作ろうかと思い立って台所へ。

 

姉貴はもう東京に帰っただろうから、一人分でいいか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都の目黒区にある小さなアパート。

 

実家から戻ってきた私は帰ってきてすぐに部屋着に着替えて冷蔵庫からビールを取り出し、その場でグイッと一口。

 

 

「くぅ~ッ!」

 

 

友達からは「そういうところもジジくさい」と言われるが知ったこっちゃない。人生気のまま生きた方がお得なのだ。

 

しかし、人生というのは本当に分からないものだと今日改めて思った。

 

まさか、10年前に弟とよく遊んでた子と再会するとは。もっとも、向こうは完全に覚えてないみたいだけど。

 

弟も全然忘れてるみたいだし、こりゃ思い出した時がいろいろ面白いことになりそうだ。

 

でも、このままいくとずっと忘れたままになりそうだから、少し思い出す方向に誘導する必要がある。

 

たぶん、アレがまだ弟の部屋にあるだろうからアレを見つけさせるか。そうすれば少しは思い出すだろう。

 

それでは、ビール片手に作戦の立案といきますか。ただアレを探させるだけじゃ不信がられるから、できるだけ自然にね。

 

 

 

 

 




【あとがき】

今回、10年前の約束が出てきましたか、これが一条たちの件とどう絡んでくるのか……

そして主人公の過去がまた明かされましたが、久堂家はいろいろとんでもない家柄です

戦闘民族的な家系で、父親やお姉さんは本田さんでも苦戦を強いられるぐらいには強いで



ただ、そこまでガッツリした戦闘シーンがあまりないのがニセコイなので、物語に活かせそうにない設定です

マリー奪還編をやるなら活かせそうだけど、どうしよう?
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