ご要望がありましたので、当初考えていたギャグ名乗りで最後まで行くストーリーへの原点回帰回となっていますので、全話の話と一部かぶって矛盾してしまってます。
基本的にキャスター戦は原作通りに行ったんだと思っといてくださいませ。
ズドン! ドゴン! ゴオオン!!
・・・夜の未遠川に爆発音が連続して轟いていた。
「轟風弾五連!」
「爆炎弾七連!」
「「【炎色の荒嵐(ローターシュトルム)】!!!!」」
二人の天才美少女魔術師が、己の家系が誇る秘奥を惜しみなく投入し。
「ミユさん!? 乗って!!」
「!!!」
ドギュアッ!!!
――ドン!!
・・・パキィィィィン・・・・・・
二人の魔法少女による即席の連係プレイがとどめとなり。
未遠川に現界していたクラスカード『キャスター』のサーヴァントは消滅した。
計算外な自体が多く起き、作戦失敗や凡ミスの連続も多発し、結果オーライな部分が大きい戦いではあったものの。まぁ勝利は勝利である。
戦いというのは如何に見事な作戦を立てて、計算通りに勝利するのが大事とされるものではない。結果的に勝つことこそが何より大事なジャンルだからだ。
たとえ神威なく、大義なく、野心むき出しにした暴君が欲望の赴くままにおこなった大遠征だったとしても。結果として歴史に影響を与えるほどの大勝利で終われたならば、後の世の歴史家が適当に戦略とか戦術とかの理屈をつけ加えてくれる様になる。
逆に、敗れたりすると同じ王様なのに扱いがヒドくされたりもする。サーヴァント適性がバーサーカーしかない認定されたりとかさ。
――伝説の戦いと違い、現実でおこなわれている戦いは夢がないが、そんな戦いだからこそ勝たなければ意味が無い。
そして彼女たちは勝った。――結果的に見て、それがこの戦いの全てである・・・。
「しかし、勝ったとは言え・・・」
パンパンと、ミニスカートについた汚れをはたき落としながら遠阪凜は、嘆くようにつぶやき捨てた。
「2枚目で早くもこんな苦戦するとはね・・・先が思いやられるわ」
「仕方ありませんわよ。情報が少なすぎますもの」
横合いから時計塔の同輩ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが応じて答える。
彼女たちは初戦で快勝し、2戦目でいきなりの敗北と大苦戦という苦難を乗り越えたばかりで神経が弛緩仕切っていた。勝った直後に次の敵が襲ってくるなど想像すらしていない。
「敵の能力についても、そもそもこんな空間を作ってしまうカードについてもね。・・・まったく、カード探索を命じるなら命じるでもう少し詳細な情報を与えてからにして欲しかったですわよね。あの陰険ロード・・・今度あったらギッタギタのボコボコにしてやりたいですわ」
「まったくその通りよねー」
安心しきって陰口の言い合いを楽しむ、普段は犬猿の仲のライバル二人。
才能が並外れているので突然の奇襲にも対処可能な実力がある彼女たちであるが、こう言う油断しやすいところは流石に名門・遠阪の現当主とそのライバルと言える。
うっかりスキルEX持ちの名は伊達ではない。
「・・・って、あれ? そう言えばカードを回収したってのに、空間の崩落がずいぶんと遅くない?」
「・・・そう言えば確かに・・・どういうことですの?」
遅まきながら異常に気づき始めた魔術の名門にしてパイオニア二人。
そして、背後の闇から近づいてくる黒い凶刃の持ち主が、鎧を鳴らす音が響く段になって、ようやく凜がその可能性に思い至る。
「まさか・・・・・・」
そうつぶやいた時。背後から聞こえた『ズシャ・・・』という不気味な音に振り返り。そこに見た黒い鎧のサーヴァントの存在を知覚した瞬間。彼女たちはようやく思い出す。
聖杯によって喚び出される数多の英雄豪傑たち、その半数近くの者が。
“勝利して安心した瞬間に横合いから襲い来る凶刃によって斃された”という、伝説史実を問わない戦いにおける絶対原則を―――――
『クラスカード「キャスター」・・・回収完了です。お疲れ様でした、美遊様』
「ハー・・・今度こそ、戦闘終了・・・だね・・・」
予想以上の強敵だったキャスターとの死闘に疲れ果てた美遊は地べたに座り込むと、先ほどの戦いを反芻して自分の未熟さに唇をかみしめる。
「・・・わたしはイリヤスフィールのようには飛べない。飛行するイメージがどうしてもできなかった・・・。
わたしにできたのは『魔力を空中で固めて足場にすること』だけ・・・。それをわたしはイリヤスフィールに伝えていない・・・」
『では、イリヤ様はご自分で見抜いておられたのでしょうか?』
「どうかな。彼女はヴェルベットと違って頭で考えるのは得意じゃなさそうだし・・・。
でも、仮にそうでなかったとしても、『魔力砲を足場にする』なんて発想はわたしには思いつきもしなかったのは確かだよ・・・」
しばらくの間、沈黙が続き。カレイドステッキのサファイアが翻意を促すように幼い主に向け語りかける。
『・・・先日、美遊様は仰いました。カードの回収は全部わたしがやる・・・と。わたしにはあの時の美遊様の真意はわかりませんが、この勝利はお二人の連携がもたらしたものです。
カレイドの魔法少女は二人でひとつ。わたしはイリヤ様は信頼するに十分な方だと・・・そう思います』
「うん・・・わかってる・・・でも・・・でも、わたしは・・・・・・」
思い詰めたような表情でサファイアの言葉を聞き終えて。美遊は決意と共にその言葉を自白する。
「信頼するに値する子だからこそ組みたくないの。ヴェルベットがわたしよりもあの子のこと選んじゃったら、わたしはきっと暗黒の魔法少女美遊になって黒く染まってしまうだろうから」
『すいません、美遊様。真意を聞いた上でもわたしには美遊様のお気持ちがまったく理解できそうにありません・・・』
恋を知った聖杯少女は揺るがない。目的とした人へと続く道を盲目的に、ただ真っ直ぐに進むだけ。まるでどっかの平行世界に生きる正義の味方志望な兄と同じように純粋に。ただただ求め続け、歩み続ける。
歩む先に求めるものが正義と愛で違うだけなのに、ずいぶんと別の生き物に見えてしまうのものだなぁと、なんとなく聖杯が思ったかどうかは定かでない。
「あれ? どうしたの美遊さん? なんか空気が想いってゆーか、黒いよ?」
漫才コンビのようなやり取りを交わす杖と魔法少女の主従二人の側に、イリヤスフィールが舞い降りてきて声をかける。
「この子にだけは絶対まけない・・・!」という、敵意じゃないし悪意もないけど、強すぎるライバル心と独占欲だけは小さな胸いっぱいに溜め込んでいる瞳で一撫でして美遊は、
「・・・なんでもない。いこう・・・」
と言って立ち上がり。
――その音を聞く。
ズドォン・・・・・・
「え・・・・・・?」
聞き覚えのある重低音。
それは人間サイズの物体が起こした音でありながら、人間の膂力ではどうあっても再現できない神秘の如き現象が創り出す魔法の域に達した者のみが起こせる破壊音。
即ち―――自分たちでもキャスターでもない、別のサーヴァント・・・・・・。
「まさか・・・・・・」
「二人目の敵!?」
完全に想定外の自体に驚く二人。
クラスカードは一カ所に留まり、移動しないものと思い込んでいたが故の大きすぎる誤算。
そして、その被害を真っ先に受けるとしたらバリアを張れる魔法少女状態の自分たち二人ではなく、
「リンさん! ルヴィアさん・・・!!」
そう。ただの人間で、生身である魔術師の少女二人しか候補がいない。
はたしてイリヤの想像は的中し、慌てて振り返った視線の先で凜とルヴィアは倒れ伏していた。
倒れ伏していたのだけれども。
「・・・・・・あれ?」
意外な存在の乱入に、二人目のサーヴァントの刃は寸前のところで食い止められていて、二人は本当に『ただ倒れているだけ』だったりしていたのだった・・・・・・。
「ウェーバーさん!?」
「ヴェルベット! 来てくれたのね! わたしのために!!」
新たに現れた二人目の敵と同じく、新たに現れた三人目の魔法少女というか、ライダー少女。ベルベット・ウェーバーことロード・エルメロイⅡ世による、空から降りてきての乱入&加勢だった!!
「悪いが彼女たちをやらせるわけにはいかないな・・・。暗闇からの不意打ちで二度までも同じ不覚を取り、アイツから『未熟者』って笑われるのは私の忠誠心が許せないものでね・・・」
ギリギリと鍔迫り合いを演じながらロードはライダー征服王イスカンダルとして、キュピリオト族の王から献上された剣である『スパタ』で敵サーヴァントの剣を防ぎきっていた。
「・・・正直なところ、素直に礼を言うのは勘に障ること甚だしいのだが・・・それでも敢えて言わせてもらう、『ありがとう』と。――あなたと同じ剣を使って同じ人助けをしてやったぞ、なんて言えば、あいつはもしかしたら私を褒めてくれるかもしれないからな」
そう言った彼女には、彼だった時に思い出がある。良い思い出ではない。むしろ、苦み走った屈辱極まるイヤな思い出だ。
とある戦争の最中、キャスターの攻防に攻め入って予想外の代物を見てしまったせいで取り乱して油断して、暗闇から襲いかかってきた暗殺者の凶刃により命を落としかかったところを、魔術師にとっては使い魔に過ぎないサーヴァントにマスターが命を救われたと言う、情けないことこの上ない若さ故の過ちについての思い出だ。
今思い出しても顔から火が出そうになるほど、小っ恥ずかしくて悔やんでも悔やみ足りない未熟さを自覚させられたあの出来事は、小さくとも大きなササクレとして心に残っていたので多少なりとも精算できたことは喜ばしい。
たとえ自己満足と分かっていようとも、それが人の夢を追うという行為そのものなのだから。
――まぁ、要するに個人的私情から来た行動であって、他人のために起こした人助けという程ではない。本人にとっては大事だけれど、他人のためにやって上げた行動では全くなかったのだ。
果たしてこの事実を、後ろの方で意外と厚かましいラブコールを叫んでた聖杯少女が知ってしまった場合なにが起こってしまうのか? 出来れば黒美遊とか爆誕しないことを祈るばかりである。いや本当に。マジでマジで。
「とは言え、今の私は私でありながらアイツでもある。ライダーのサーヴァント 征服王イスカンダルを宿してもらった者として暗殺者如きに負けてやるわけにはいかないな。
隠れ潜むだけが取り柄の鼠なんかに負けたとあっては、ボクの仕える王に面目が立たない。悪いがここで斃させてもらう・・・ぞ?」
過去と現在とを自分の中で繋げていたヴェルベットの声が、途中からトーンを変えていき、不審げな響きを帯び始めていく。
そして、言い終わる頃には完全に驚愕の形で表情が固定されてしまっていた。
――あり得ない・・・あり得ないぞ、これは・・・。
いくら横紙破りが常套手段の聖杯戦争とは言え、いくら何でもこれはおかしい・・・っ!!
正常なルールで運営されてる場合の絶対原則を知る彼女は、無意識のうちのその可能性を除外していたせいで気づくのが遅れてしまった相手の正体。
黒い甲冑に身を包み、黒い大剣を掲げた金砂の髪色を持つ凜々しい風貌の女騎士。
夜だというのにサングラスのような黒いバイザーをかけていることだけが奇妙ではあるが、後は大凡よく見知った外見的特徴を持つ旧知のサーヴァント。
その名も。
「どぉぉぉぉいうことなんだ騎士王ぉぉぉぉぉっ!? お前ちょっと来て説明しろ――っ!?」
そう。今彼女と鍔迫り合ってるサーヴァントのクラスはセイバー。真名はどう見たってアルトリア・ペンドラゴン。
そう。先ほど鈴たちのピンチを見て思わず駆け出してしまった自分が元いた場所で、ロンドン製から揚げ君を座り込んで食べ続けている黒く染まった腹ぺこキング様ご本人のドッペルゲンガー的同じ人だったのである!
「ふむ。これは中々の味だな。そちらのチーズ味も寄越せと言っているのが聞こえなかったのか小僧?」
「知るか! それより質問に答えろ! この異常事態に対する説明を! 同じ英霊は一度の聖杯戦争で二体同時に現界させることは不可能って言う絶対原則あっただろ確か!?」
「もっきゅもっきゅ・・・・・・ペロリ。まったく、愚かだな貴様は。私が魔術儀式についてなど詳しく知るはずがないだろう? この私アルトリア・ペンドラゴンは完璧な秩序を敷く騎士王であり、セイバークラスで喚ばれた英霊なのだからな。魔術師どもの考え出す屁理屈などまったく以て理解できん」
「ぐ・・・。暴論の癖して妙に反論しにくい正論を吐く奴・・・」
「まぁ大方、昨今のポコジャカポコジャカと新セイバーを増産していく世の流れに便乗し、クラスカードとやら言う魔術礼装で人工的に劣化サーヴァントの量産でも始めたのだろうよ。
おそらくは課金兵的な意味でバーサーカーにでもなってな」
「何のこと言ってんだお前はさっきから!?」
平行世界の都合についてである。こちらの世界には関係しないので気にしてはいけない。十年以上を経て以前よりはマシになった大人として無視するのだウェイバー・ベルベット! いや、ロード・エルメロイⅡ世よ! 時計塔の内弟子が白い目で見てくれる未来が君を待っているからなきっと!
――閑話休題。
サーヴァントは英霊の座にいる本体から影だけ喚び出してる存在であり、ご本人様自身は不動にして絶対の存在であり、自分の分身であるサーヴァントとして喚び出された色んな自分には一定の情報更新が加えられる場合もあるため、セイバー・オルタさんはなんとなく言うべきと思ったことを言ってるだけです。
反転した騎士王は、彼女が生前にやりたかったが正義にもとるため選ぶことが出来なかった道を選んだ可能性のひとつ。迷いや躊躇いを振り切ったアルトリアさんなので、基本的に言う言葉に配慮がありません。世界観の事情などお構いなし。それこそが暴君!!
「ところで、日本製から揚げ君のチーズ味はまだか?」
「知らん! あと、少しは手伝え腹ペコ黒王!」
黒く染まっても染まらなくても、腹ペコ王が微妙に役立たないのは変わらない…。
つづく