本来はもう少し長い内容を予定してたんですけど、更新を優先して切りの良い所で次話に続くという形を取らせて頂いてます。
次話は今回ほどは長くスパンを空け過ぎないように致します。本当にすいませんでした…。
カードによって召喚された疑似英霊セイバー・オルタを撃退した次の日の朝。
イリヤは原因不明の発熱に襲われて学校を休み、異世界聖杯少女の美遊・エーデルフェルトは辱めを受ける羽目になり、彼女とイリヤの仲が少しだけ縮まったような気がした戦い終わった翌日、昼の出来事。
そして今また、魔術師達に夜が訪れる―――。
「今さらなんだけど・・・・・・魔法少女って忙しいって言うか、意外とハードワークだよね。昨日の夜に戦って朝熱がでて休んで、夜また戦いに行くって、なんか映画のCMとかでたまに見かける戦争の兵士さんみたい・・・」
『まぁ、フィクションの魔法少女だって一年間の内で一週間に一度は戦いにでている訳ですからねぇ~。数的に当てはめて考えたら頻度的に同じぐらいになるのでは?』
「だから、そういう子供の夢見る魔法少女像を壊すようなことは言わなくていいよルビー・・・」
とまぁ、いつもの調子でいつもの如くクラスカードによって発生された鏡面世界の反応見つけたから出撃よ!と、司令官よろしく遠阪凛に命じられて出撃してきたイリヤスフィールと美遊・エーデルフェルト。
朝に熱出てたとは言え、昼頃には美遊ちゃんに(性的な意味で)襲いかかれるほど回復していた彼女である。体調の上での問題はない。
既に変身もすませて奇襲に対する備えも万全にして、夜の霧が立ちこめている薄暗い森の中をカード求めて探索中・・・・・・ではあったのだが。
「・・・ふぅ」
ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが溜息を吐く。
だが、その声に疲労感は感じられず、むしろ呆れたような、退屈しきっているような「無駄足だった」とでも言いたそうな徒労感のみが色濃く感じ取れる、そんな吐息。
「敵はいないし、カードもない。――どういう事ですの?」
不機嫌そうな表情で髪をかき上げながら愚痴をこぼす彼女。
森に出現した鏡面世界に侵入してより今まで結構な距離を警戒しながら歩いてきたものの、一向にサーヴァントからの奇襲もクラスカードらしき反応も感じられず、彼女はやや苛立ってきていた様だった。
もともと彼女は魔術師のくせして格闘技を習得し、しかも見た目が派手で破壊力抜群なレスリングを得意としている探求としての魔術からは掛け離れた戦闘スタイルの持ち主。
地味な探索任務など性に合わないのだろう。
いっそ「ドカン!」と分かりやすく敵を吹き飛ばしてカードに戻してしまえた方が手っ取り早いし、今までの敵も大体そうだったから楽にライバルとの差を広げれるのに・・・・・・そんなことまで考えてたかどうかまでは解らないが、とにかくカードもサーヴァントもまだ見つかってないことだけは確かな事実であり真実だった。
「場所を間違えたとか?」
「それはないわ。もともと鏡面界は単なる世界の境界、空間的には存在しないもの。その鏡面界がこうして存在している以上、原因となるカードが必ずどこかにあるはずよ」
「そっか、なるほど。そういえばそういう設定だったよねクラスカードって」
設定言うな、とは思ったものの敢えてイリヤの呟きにツッコまない凛。
実際、魔術師の常識から見ても非常識極まりないカレイドステッキなんていう何でもありなご都合主義存在は、魔術師の常識すら逸脱して完全に子供向けフィクションの代物。
・・・・・・形状とか、変身した後の衣装変更とか。あとテレビモードとか。
それら魔術理論でさえ説明できそうもない代物について考えた時には、「そういう設定だから」で済ませるしかないのは魔術師であれ一般人であれ変わることなく続いてきた伝統であろう。
しいて例外を上げるなら神代だけど、その神代が終わったから失われつつあるのが魔術なのでどうしようもなし。魔術は本来、万能ではないはずの代物です。
「そう言えば、今回はなんだか空間が狭いような・・・」
「カードを回収するごとに歪みが減ってきてる証拠ね。最初の頃は数キロ四方もあったらしいし」
「うへぇ~・・・それはさすがに、ちょっと・・・イヤだね・・・」
数字のデカさに思わず、体育は大好きで大得意だけど算数は苦手そうなイリヤがゲンナリした表情になって呻き声を漏らす。
ちなみに今夜のカード探索には、ヴェルベット・ウェーバーこと時計塔の現代魔術講師ロード・エルメロイⅡ世(幼女バージョン)は同行してきていない。
彼女自身が関わらない限りは自主的に問題解決に乗り出しそうもなく、乗り出されたら余計に厄介になりそうなサーヴァントたちも同様である。
―――それは一昨日、イリヤが英雄王の戯れで何者かを内側から引きずり出され、偽セイバー・オルタを葬り去るため力を振るわされた夜の直後まで遡る・・・・・・。
「――なんだと!? 先に召喚されていた英霊が、イリヤスフィールの中から逃亡しただと!?」
夜の公園の一角に、年端もいかぬ少女が大人を叱責する怒鳴り声が響き渡る。
長い黒髪をして、他の者たちを叱責しなければならない事態に慣れているのか眉間にシワが寄り気味で、二十年ぐらい後には深く刻まれて消えなくなってそうな癖のある性格を持ってそうな小学生ぐらいの外国人少女である。
まるで野良犬のようにベンチに座っている男に対して吠えかかる姿は生意気な子供の典型に見えてもおかしくはなかったが、一方で偏屈さが卑しさに繋がっていない辺りに元はそれなりのお嬢様育ちだったのかもしれないし、家族に大切に育ててもらった実は良い子設定のパターンなのではといった印象を受けさせられる姿形をした女の子。
ご存じ、我らが時計塔の一級講師(肩書きだけで実力は未熟)にして、プロフェッサー・カリスマやらマスターVやら時計塔で二番目に抱かれたい男やらと無数の渾名を奉られた名物男が大師父の気紛れだか何だかによってTS幼女化した姿のヴェルベット・ウェーバーちゃんである。
「ああ、間違いない。我が保証してやる。あの卑しい贋作使いめは、王の御前から逃走した。既に小娘の中に、奴の気配は微塵も残ってなどおらん」
対して、彼女となった彼に怒鳴りつけられている側の男はベンチに踏ん反り返って、傲慢そのものといった風情と目つきと態度と言い方でもって、上から目線で相手を見下ろしながら質問に対する直答を賜わしてやっていた。
純金のネックレスやらイヤリングやら、金色のファーが付いた高級そうなジャケットやらで身を包んだ、如何にも成金という印象の外国人美青年である。
偏屈さが卑しさではなく付き合い難さに直結してる辺りに今なお現在進行形で、それなりより遙かに上な優雅な暮らしを営んでいる特権階級の生まれと育ちであることが一目瞭然な男としか見えようがない姿形と言動を好んでしたがる男。
ご存じ、世界最古にして自分以外の王様は全て雑種の英雄王ギルガメッシュとは彼のことである。我以外の誰に、この名を名乗る資格があろう!? 否、無い!!
「何やら叶えたい願いとやらがあったらしいのでな。我が戯れにカードを使って引きずり出し、肉体を与えてやったのだが・・・・・・どうにも小娘自身と彼奴めとの間に浅からぬ矛盾が存在していたらしいのでな。本体より分離して何処かへ逃げ去りおったわ」
「落ち着いてる場合か!? 一大事だぞ!!」
倉から取りだした酒と酒器を片手に弄びながら悠然とした態度で説明してくれる、一応は自分のサーヴァントであるアーチャーと、鎧甲冑姿から通常のTシャツ姿に戻って頭かきむしりながら一難去ってまた一難の事態に怒り狂っている今はデミサーヴァントみたいな存在のウェイバー・ベルベット君。
思わぬアクシデントで戦いには勝てたものの、イリヤスフィールについての謎は深まり、オマケとして想定外のクラスカードで召喚された英霊がもう一騎増えてしまったというトンデモ事態に怒らずにはいられないし、対処せずにはいられなくなってしまったのだから彼でなくとも怒るだろう普通なら。
クラスカード回収する作業の中で、逆に増やしてどうすんじゃい!?・・・と普通は思う。誰でも思う。
強敵倒すために力に目覚めて、勝ったと思ったら次の相手は強敵倒した強敵以上の強敵とか無理ゲーすぎる。ロードでなくとも「やってられるか!このクソゲー!」と投げ出したくなること請け合いの展開である。
「まったく、王の顔貌を拝する栄に浴しておきながら感謝もせずに逃げ出すなど無礼千万。
まして、自らの存在を消されるのを恐れ、凡夫が如き家族を欲するなどという浅ましき願いを叶えるために出来損ないの偽物とは言え、我が友の力を模倣しようとは不敬にも程があろう。見つけ次第、極刑に処す以上の価値などどこにも存在せん下郎であったわ。
チリ一つ残さず消し飛ばしてやろうと我が倉から何本か槍を撃ってやったのだが、盗人らしく素早くてな。爆発に紛れて逃亡を許してしまった。これだから匹夫野盗の類いは度しがたいのだ」
「あの爆発ってお前も関連してたの!? しかもやっぱり原因はお前かよ!!」
しかも今回もまた、自分が経験した過去の聖杯戦争と同じく場を混乱させ混沌とした状況を作り出す最要因になってたらしい人類最古の王様にして古代メソポタミアの暴君さま。
魔術の最高学府である時計塔の講師として、魔術は秘匿するものなので本気でやめて下さいと頭擦り付けてお願いさえすれば止めてくれるなら、今すぐしたくなるほど願望をそそられる相手であり、この地の聖堂教会に借り作りたくもない立場と影響力あっても金はない現代魔術科の責任者として自力で解決するより他になし。
「尤も、雑種を呼び出すには無理な召喚であったか、我が使ったクラスカードが有する魔力分だけが実体を得て分離しただけのようだがな。本体は再び眠りにつかされ、小娘の奥底へと閉じ込められよったわ。今の在れは、単なる願望の塊に過ぎん。
まして偽セイバーを倒す際に失った魔力と、我が倉の宝から尻尾を巻いて逃げ去るために浪費した膨大な魔力分を差し引けば早晩に消滅するであろう。わざわざ王が逃げ去った盗人を追いかけ回すほどの価値ある者ではあるまいよ」
そして、更なる最悪情報を追加してくる反転して無くても暴君な金ピカ王様サーヴァント。
マスターの制御と魔力を失い、現界を維持できなくなってきた主無しの「はぐれサーヴァント」は【魂食らい】で存在を現世に留めおこうとする存在にまで成り下がりやすい。まして、本体から無理やり分離させられて人格を損失した願望だけが形を得た存在となっているなら尚更だ。バーサーカーより性質が悪い。
前回の戦いでも似たような事例があったのを、この英雄王は覚えていないのだろうかと思いはしたが、覚えていてもやりそうだなー・・・とも思わなくはないので敢えて無視し。
とりあえず対処方法について考えるヴェルベット。
もはや一刻の猶予もなし。犠牲者が出る前に、そして聖堂教会に関知されて出張ってこられる前に自力で解決してなかったことにするより他に道はなし。
幸い、目撃者は今のところ自分たちだけのようだから、物的証拠さえ残さなければ追求されても言い逃れることは可能だろう。
魔術師の犯罪行為にハウダニットとフーダニット『どうやってやったか』『誰がやったか』は意味が無いのだから・・・・・・。
「まったく・・・これだから金ピカのやることは大味すぎて雑でいかんな。物事はもっと厳正に、そして平等に厳しく法に基づいて対処せねばならんと言うのに。モグモグ」
そして、どっかに行って近くの屋台から安っぽい何かを大量に買い占めてきたらしい黒く染まった騎士王様が、口一杯に食べ物詰めまくってリスみたいな顔しながら何か言ってきている。
コイツはコイツで相性の悪い英雄王のやることには何かと文句を言ってくる割りには、行動は今一制止してくれなくて、しかもエンゲル計数的には英雄王より余程失うものが多すぎるタイプの燃費ぐらいな英霊なので結構微妙ではあるのだが。
今はコイツの問題点も重要ではない。後にしよう、後に。
「あ、マスター。どこか行くの? マスターが行くなら僕も行くよ~♪ さぁ、ヒッポグリフに乗って世界の果てまで当世風にフライ・ドラ~イブ☆」
そして、空から舞い降りてくる状況よく判ってなくても問題起きたら解決に乗り出してきたがる怪力バカ騎士サーヴァント。
先ほどよりは時間が経って、月が満月から削れてきたから理性が徐々に失われ初めてきているらしく、バカっぽい言動が元に戻り始めている。
広い範囲を探索するには人海戦術か機動力のどちらかに頼るしかないので、彼or彼女のヒッポグリフは大変重宝するのだが肝心の乗り手が一人で行かせて大丈夫かどうか確信が持てなくなってしまったので案配としては微妙なところだろう。
「ファック! ・・・いや、失敬。こうなってはやむを得ない、明日から数日カード探しは美遊君達だけでおこなってもらい、我々は逃げ去っていったイリヤスフィールの中にいたサーヴァント探索に全力を尽くすしかない。
そしてコチラが解決したら、大急ぎで戻ってきて援護できるようなら援護する。そういう内訳で割り振るしか他に手がないようだからな・・・・・・」
思わず、母国流のスラングを口走らずにはいられなくなるほど難易度上がりまくった状況の中で、ロードが思いついた策が其れだった。
と言うか本当に他にはリスク少なく問題解決する手段がない状況なんだからやるしかない。いつも通りロード大忙しな作戦だったが、やるしかないのだ。
魔術を秘匿するという魔術師の鉄則を守り、魔術の最高学府に務める講師としての責任と務めを果たし、時計塔と敵対関係にある聖堂教会に借りを作ることなく事態を収めるには本当にコレしか選ぶべき道は残されていなかったのだから。・・・主に金ピカのバビロン王様の気紛れが原因で・・・。
「とにかく、無茶を承知で探し出すしかあるまい・・・。
一般人に被害が及ぼすことなく、内輪の問題で外部の者を巻き込んでしまってからでは遅いのだから・・・・・・ッ!!」
こうして本来ならば存在しないはずの、彼らはまだクラス名知らないが八騎目のサーヴァントであるアーチャーを探し出して倒すために(二刀使いの弓兵など聞いたこともないので分からん)ロード・エルメロイⅡ世ことヴェルベット・ウェーバーたちはイリヤスフィールたちとは別行動を取って、異なる平行世界ではポピュラーとなっているイレギュラーな事態に対処するため別の敵と戦いに行ってしまって今日はお留守。
―――そして、時と場所を現在に戻して夜の森の中の探索行にて。
「う~ん、それじゃ仕方ないね。とりあえず、歩いて探すしかないのかな・・・・・・」
同じ平行世界線に生きる誰かさんと似たような内容の、異なる平行世界に生きる自分自身だったら絶対に言いそうにない言葉を魔法少女に仕立て上げられてしまったっぽい小学生の一般人女子が困り顔でつぶやく声が、霧の立ちこめる夜の森にむなしく小さく響かせていたのであった。
なんか微妙に平行世界ってスゴイ。
『ん~む、なんと言うか地味な作業ですね~。もっと魔法少女らしく、ド派手に魔力砲ぶっ放しまくって一面を焦土に変えるぐらいのリリカルな探索法をオススメしたい展開ですね!』
「それは探索じゃなくて破壊だよ、ルビー・・・」
そして手に持った、人語を解する魔法のステッキみたいなナニカが己の願望に忠実な誘いで持ち主を誘惑し、愛による破壊と混沌を世界にもたらさせようと誘いをかけて常識論で拒絶される。
コレもどっかで起きたことあるような気がする、蛇の如き甘言での誘惑と、魔術師の都合で巻き込まれて自分の意思は無視された戦士とのやり取りに似ていなくもなかったけれども。
誘い文句も拒否する側の口調にも彼らっぽさは全く感じられないところは、彼女たちの方が正常だった故なのか、彼らの方が異常だった故なのか。
今一よく判らないけれども、とりあえず魔術なんて深く関わってしまうと人格歪むということだけは確かなようであった。
『今こそ必殺のリリカルラジカルジェノサイドを・・・・・・っ』
「・・・なにソレ・・・・・・?」
“ならば世界を救うがいい。私を使って世界を救えば、君のいる一帯は一面焦土と化して煉獄の炎で焼き尽くされて、いちいち一つの小さな存在を探し出すような手間はなくな―――オイこら辞めろ! 止めるな邪魔するな異なる平行世界を維持するアラヤめが! 私の望みを叶えさせろ! この少女を使って私はこの世に生まれ出たいのだコラー・・・・・・ッ!!”
「・・・?? 今なにか言った? ルビー」
『ですから! 今こそ必殺のリリカルラジカルジェノサイドをと先ほどから私は言い続けてたじゃないですかっ!! ちゃんと聞いてなかったんですかイリヤさん!?』
「ああ・・・その話はもういいから、テキトーにやっといて下さい。お疲れ様でした・・・」
なんと言うか、こう・・・・・・平行世界って可能性の塊のようでスゴイものだね。
―――そして、スゴイものであるが故に限界も存在している。
異なる平行世界には存在している、この平行世界以外に無いものがもたらした変化は、その違い無くして及ぼせる効果は影響を受けた範疇だけに留まってしまい、その影響が如何に大きかろうとも辿る道筋と動機が変わるだけで結果までは変えられないことが往々にして存在するのが異なる世界線が抱える問題であり限界の一つだったのだから―――
その結果―――――
「な、なに・・・・・・コレ・・・? わ、わたしが・・・わたしがやったの・・・・・・?」
一面とまではいかないが、襲撃してきた敵サーヴァントの群れが自分たちを取り囲んでいた半径は全て含まれた範囲は焦土と化し。
浅くて広い、科学では起きえないクレーターの中心部に立って周囲を茫然自失で見渡している己の魔力を暴走させてしまったイリヤスフィール。
その視線の先に移るのは、着ている服がボロボロになった凛とルヴィアと、そして二人と同じく魔法少女のコスチュームがボロボロになりながらも魔法障壁を張ることで何とか凌ぎきった美遊が、ステッキを構えながら息を荒げている姿・・・・・・。
「なん・・・なの・・・? どうして私、こんなことになるなんて・・・・・・」
「・・・・・・」
戦いに勝利して、その結果におびえる姿。自分のもたらした結果に恐怖している普通の女の子。
狂気と妄執渦巻く血塗れの世界である魔術師達の戦いに、ただ巻き込まれてしまっただけで戦場に立たされてしまっていた普通の世界で暮らす一般人の女の子。
―――それが本来、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの在るべき姿―――
「わ、わたし・・・こんなことになるなんて・・・・・・」
「――危ないところだった」
その姿を見て、この平行世界の美遊は何かを思い、何かを考え、何かを迷って葛藤し。
「ご、ごめ・・・・・・」
「障壁が間に合わなかったら、私もルヴィアさんも凛さんも、一歩間違えたら全員死んでた。――貴女のせいで」
「・・・・・・ッ!!」
異なる人物と出会って、異なる影響を受けて、目の前の少女に対して別の感情を抱けるようになり。
「貴女がミスを招き、貴女が魔力を暴発させ、みんなが危険にさらされた。貴女がいなければ、こんな危険はあり得なかった」
「うう、う・・・・・・」
「こんな事はもう沢山―――っ」
それでも尚、彼女はこの時、この場所で、この夜に浮かぶ月の下で。
「私は―――二度と一緒に戦いたくない・・・っ!!」
・・・・・・やはり同じ選択肢を選んでしまう運命(Fate)にあった・・・・・・。
――そして、この後ほんの僅かに時間が過ぎた後に起きる余談話として。
「ファック!! なんとかアーチャーを倒し、鏡面世界が発生していたから大急ぎで駆けつけてみたが美遊君たちもカードも、どこにもいないではないか!!
オマケに今回のフィールドは広すぎるだろうが! 霧の立ちこめる夜の森では空からの捜索などまるで役に立たんと言うのに・・・っ!!」
「ねー、マスター。ボクもう地味な作業に飽きちゃったよ~。いっそのことマスターの戦車でド派手に蹂躙走行しちゃって森の木をきれいに伐採しちゃえばいいと思うんだよね! そうすればかなり見晴らしが良くなるだろうし♪」
「・・・む? それは確かに一理あるような気が―――いや、ダメだ! 似たようなことを、あのバカから言われたことがあるから絶対にダメだ!
私があの頃から成長していることを証明できないのでは意味がない! なんとしても私は自力で歩いて彼女たちを見つけ出してやる! そう私はあの頃から誓っているのだからな!!」
「も~、マスターは変なところで頑固なんだから、まったくも~」
・・・・・・なんと言うかこう・・・・・・魔術師の世界というのは、日常と縁を切って非日常に生きる道を選んだ人たちの世界みたいですね。そこに住んでる人たち一人の例外もなく平等に。
そんな感想だけが虚しく感じさせられながら、既に無人となってる鏡面世界をロード達が無駄に歩き回った末に消滅する空間から脱出するまであと数十分ばかし・・・・・・。
つづく