Fateプリズマ☆ロード   作:ひきがやもとまち

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更新遅くなりすぎて申し訳ありません。
何度か書き直した結果、結局「事件簿」とプリヤのごった煮にしてみました。

なお、美遊ちゃんとイリヤがベストカップルなのは私も大賛成ですが
やはりプリヤのヒロインに美遊ちゃん以外は有り得ないと考える作者の欲望によって
美遊ちゃんが今話からメインヒロインとしてレギュラー入りします。

ただ、序盤のクールでちょっとツンケンしていた頃よりもデレた後の方が好きなので
今話でもセリフが多くなるのは終わり近くなったあたりです。
その頃には完全にデレてます。作者の妄想美遊ちゃんですので原作とは別人だと認識ください。


1話「恋する聖杯」

 冬木市の中心を左右に隔てるように流れる未遠川にかけられた冬木大橋。

 その上を平行世界からの来訪者、美遊・エーデルフェルトは強い絶望を胸に歩いていた。

 

 彼女は悩み、迷っていた。

 

 向こう側の世界に置いてきてしまった兄のこと、自分を聖杯として使おうとしたエインズワース家のこと、保護者となってくれたルヴィアから聞かされた話では、どうやら自分とともに渡ってきたとおぼしき英霊を呼び出すクラスカードが暴れ回っているらしいこと・・・。

 

 考えすぎるあまり頭がパンクしそうだった。

 

 だから美遊は、考えるのを止めた。

 彼女の精神的安定を維持するにはそれ以外に手がなかったのだ。

 

 自分は一人だ。

 こちらの世界には誰もいない。

 私の事情を知ってる人なんて誰も居るわけがないーー

 

「ーー失礼、見たところ魔術師の素養は誰よりも高いが、訓練を受けているようには見えない。大方、儀式に巻き込まれた“神稚児”が、抜け出しきれずに苦しんでいると言うところだろう。

 理解に苦しむな。せっかく厄介な儀式から生き延びたというのに、君は何のためにこの“大魔術儀式のための地”に居続ける?」

 

 思わず美遊は振り返った。

 居るはずのない理解者の存在に、疑惑と不審と混乱とーーほんの僅かな嬉しさを感じて。

 

「・・・なるほど、笑い話ではないが馬鹿げた話だ。こんな子供を触媒に使って魔法を成そうとはな。

 ふん。先祖代々受け継いできた一族の悲願か・・・。確かに、この広い世界に通用させるには小さすぎるだろう」

 

 ハッキリとエインズワースを否定した人物の姿を視界に収め、美遊は呆然としてしまった。

 

 その人物は年老いて背の曲がった、いかにも偉大さを感じさせる老魔術師ーーなどではまったくなく、変なロゴの付いたXLサイズのブカブカTシャツを着た同い年くらいの美少女だったからだ。

 

 美遊でなくても呆然とするだろう。当然のことだ。

 

 ーーと言うか、いい加減着替えるんだ、時計塔に一二家しかないロードの階級を叙された名門・エルメロイ家の当主代理よ。そろそろ悪魔のような妹に殺されるぞ。

 

「話を聞かせてもらえないか? 戦闘以外でなら力になれる部分も少しくらいはあるだろう」

 

 そう言ってロリロード略してロリードは、慣れた仕草でTシャツの下に履いているスパッツのポケットから取り出した使い捨ての魔術礼装ーーチュパチャプスを口にくわえ、鋭い眼差しで美遊を真っ正面から見据える。

 

 ーーチュパチャプスをくわえた裸Tシャツの美少女が、睨むように同性の美少女を見つめるシーンは、微妙に背徳的だった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イリヤと言うらしい銀髪の少女と正面衝突という形で邂逅したロードは、彼女の兄と名乗る男子高校生ーー外見的特徴に共通点が皆無なところから見て間違いなく義理の兄弟だろうーーから、お詫びをかねて夕飯に招待された。

 

 これに対してロードは礼儀正しく丁寧に、だが断固として謝絶した。

 

 衛宮士郎と名乗った少年はこっちが心配になるほどのお人好しだったが、その一方で人の好悪の感情に対する極端までの鈍感さを兼ね備えた・・・・・・ようするに典型的なラブコメ主人公属性の持ち主だったのだ。

 

 間違いなく、それが原因だろう。

 明らかに自分たちを殺したそうな目つきでこちらを睨みつけてきている妹の憎悪と嫉妬の視線に終始気付くことなく士郎少年は、お詫びは無用と礼儀正しく頭を下げるロードの頭を「しっかりしてて良い子だな。うちのイリヤにも見習ってほしいよ」と言いながら撫でていたが・・・・・・あの後、彼は無事に生き残れただろうか? 赤い瞳が灼眼に見えるほどに妹殿が怒り狂っていたのだが・・・。

 

 

 ーーまぁ、それはそれとして。

 

 今現在解決すべき問題は彼女である。

 川が流れている土地では水から調べるのが基本。

 ただそれだけの理由で冬木大橋と書かれている巨大な陸橋を渡っている最中に出会った異端のーー正確に表現するのならば、異郷の少女、美遊・エーデルフェルト。

 

 平行世界での本名は、朔月美遊。

 

 どう見ても人間の少女が持つには多すぎる魔力を小さな身体に蓄え込んでいる・・・ようするに神稚児だ。現代の都会では非常に珍しいが、マイナー宗教が信奉されている辺鄙な土地の小さな集落などでは結構見かける存在であり、ロード・エルメロイⅡ世としてはそれほど珍重する必要性を感じない。

 

「・・・つまり、君の他にも神稚児はいるんだ。別段、世界に君が一人きりというわけではないさ」

 

 美遊は思わず言葉を失った。

 あえぐように紡がれた言葉は反論の形を取った単なる条件反射でしかなく、その声にも言葉にも力は微塵も込められていない。

 

「で、でもダリウスはーーエインズワース家の当主は私の事を『この世界に残された本物の奇跡』って・・・・・・」

「ああ、別におかしな話じゃない。

 そもそもエインズワースの魔術は“初めから破綻していた”んだ。良い成果など出るはずもない。そうなれば必然的に外部の奇跡にすがるしかないさ。その果てで見つけた物を唯一無二と思いこみたくなるのもまた必然だろう? 君の父親も似たようなものなんじゃないかな。

 ふん、行き詰まった魔術師一族の平凡な末路だな。そんな愚行に幼い少女を巻き込むとは・・・・・・つくづく魔術師という生き物は常人とは相容れないものだ」

 

 「俺が世界を救う神話を作る」。

 狂気を孕んだ執念を持ってそう断言したダリウスをーーいや、ダリウスの名を騙るジュリアン・エインズワースの妄執を「愚行」の一言で切って捨てたロードは平然とコーラを口に運び、その自然体な少女の姿を美遊は言葉もなく見つめ続けることしかできなかった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 ーー橋の上での出会いの後、「場所を変えよう」と言ったロードに導かれて二人がやってきた場所は、漫画喫茶の個室だった。

 パソコンのディスプレイとキーボードが備えられた机の前に二人分の椅子が置かれており、彼女たちはそこに腰を下ろしてジュースを飲んでいる。

 フリードリンクなのでロードはコーラを選び、美遊にはオレンジジュースを持ってきた。

 

 当たり前だが、美遊はこんな場所に来たことはない。

 そもそも十歳児の女の子が来ていい場所でもない。

 ロードが子供と聞いて最初に思い浮かべたのが、弟子の一人である「天才バカ」だったことが理由なのだが、どうでいい余談である。

 

 とりあえず、一息付いたロードはパソコンのOSを確認した後、美遊に詳しい事情説明を求めた。

 

 当然ながら、美遊は全てを話す気などサラサラなかった。

 見ず知らずの「時計塔から来た魔術師見習い」を名乗る、変なTシャツを着た怪しすぎる少女に話していいような内容では断じてないのだから。

 

 ーーいや、そもそも付いていって良い相手ですらなかった。

 

 漫画喫茶に到着するまでの間、二人は延々と周囲から好奇の視線を向けられていたことに現時点では気付いていない。

 有名な古いゲームのタイトルロゴが書かれたTシャツを使って裸Tシャツ姿を披露している外国人美少女の後ろから、これまた美少女のクール系女子小学生が随伴しているのだ。

 

 これを世のオタクたちが見過ごす理由など、どこを探しても見当たらない。

 

 結果、エーデルフェルト家にお世話になり、ハウスメイドとしても働いている美遊は、明日の朝にはご近所様から色々と問いただされる羽目にあうのだが・・・。

 現在の彼女はその確定した未来を、幸か不幸か未だ知らない・・・・・・。

 

「おそらくエインズワースの行っている聖杯戦争は、状況を“演目”という概念に置換することで限定的ながら魔法を超えるレベルの大魔術の行使を可能とした儀式魔術の一種だろう。

 クラスカードという魔具を依り代にして、クラスに依存させる事で能力を著しく限定し、英霊を召還させることに成功した所までは見事だが・・・まぁ、偶然だろうな。

 本来、英霊を召喚するのではなく力だけを憑依させるなど固有結界内でも難しい。向こうから選ばれたのなら話は別だが、その逆は絶対に有り得ない。

 なんらかのルール違反をしているとみるべきだろうな。問題はそれを成すのにナニを代償に支払っているのかだが・・・」

 

 “いつも通りに”魔術を解体し始めるロード。

 魔術の破壊者は今日も平常運転らしい。

 

 一方で美遊は、自分が必要以上のことまで彼女に語ってしまったことに、今更になってようやく気付く。

 

 当たり障りのない範囲までと自分に言い聞かせていたはずなのに、気が付けばエインズワースはおろか、兄と父、ひいては自分が平行世界からやってきた聖杯であることまで、事細かに説明し尽くしてしまっていたのだ。

 

 

 元来の人見知りなうえに兄と父以外でまともな会話を交わしたのは元の家族だけしかいない美遊は、いわゆるコミュ障である。

 そんな彼女にここまで自然に身の上話をさせてしまうロードは、根本的にどこかおかしい。

 

 

 彼女、ヴェルベット・ウェーバーと名乗る時計塔の魔術師見習いの少女は、まさに『異端』だった。

 

 自分の異端さは、たんに与えられている力によるものに過ぎず、本質的に美遊は一般人でしかない。

 

 魔力の高い低いで魔術師としてのランク付けは決定される。

 が、魔術師として優秀ならば優れた人間である・・・などという理論は成立しない。

 

 なにしろ、魔術師としては二流のロードが、魔術の最高学府たる時計塔で最も成功した一人に数えられ、山の様に受講者が殺到する超人気者になっているのだから・・・・・・。

 

 

「エインズワースが失敗した理由の一つは、世界中から礼装を集め、それを自分たちの魔術に触媒として利用したことだろうな。

 礼装は歴史ある魔術師の家系が代々受け継いできた秘奥。使いこなすには一族秘伝の魔術回路を受け継ぐ事が必須条件になる。が、魔術回路は血縁者以外には適合しない。無理矢理同調させるには、それなりに無茶と言うかルール違反をする必要がある。だからこそ、あくまで触媒としての使用に留めたのだろうがね。

 ふん、他の魔術師と協力するのではなく、盗み取った魔術を自分の物のように扱い、上手く行かなければガラクタ扱いか・・・・・・ファック」

 

 魔術について淡々と、しかし情熱と愛情と誠意を持って語る彼女の姿は時計塔の名物講師の名に相応しく、

 

 ーーまるでアーサー王を導いた魔法使いのマーリンみたいな人・・・。

 

 美遊は衛宮の家で兄から与えられた絵本の中にあった物語の一つを思い出し、少女の思案顔に少年を騎士王へと導いた、偉大な魔法使いの背中を重ね合わせた。

 

 そして同時に、自分の胸の内に灯った微かな熱を自覚する。

 

 ーーなんだろう・・・。胸がドキドキする。

 ーーウェーバーの思考に耽る横顔が、すごく愛おしい・・・。

 ーーもっと見ていたい。もっと知りたい。もっともっと、その理知的な声を私に・・・私だけに聞かせて欲しい・・・。

 

 頬を紅潮させ、瞳を潤ませている美遊の異変には一切気付かず、ロード・エルメロイⅡ世は自分の思考に没入し続ける。

 

 ーーそんな彼を見た教え子の女子学生たちが「集中している先生の横顔って理知的でとっても素敵!」と騒ぎ立てていることを、彼だった頃の彼女は当然ながら知らない。

 

 ーーどこの誰がラブコメ主人公なのか、ロードは自分の胸に手を当てて考えるべきだと思う。

 

「魔術は人間のありとあらゆる部分に食い込んでいる。

 それは文化であり民族であり民俗であり信仰であり芸術であり血統でもある。生活そのものを使用条件に組み入れることで大魔術を成そうとした家まであるくらいさ。

 それこそ生活の全て、食事や睡眠さえも周期に乗っ取って行うことで“根源”を目指そうとしたんだ。まぁ、結局失敗に終わったが」

 

 見た目お嬢様の知的美少女であるロード・エルメロイⅡ世ことヴェルベット・ウェーバーはごく普通の口調で、碩学もキュビズムも理解し使いこなせる十歳児、天才少女美遊・エーデルフェルトでさえ知らなかった事を、まるで一般常識であるかのように平然と語ってみせる。

 

 美遊の頬は、既にこれ以上赤くなりようもない程に真っ赤っか。

 瞳はうるうる、視線は完全に恋する乙女。

 胸の前で両手を組んでキラキラお目目でロードを見つめる仕草は、お前はどこの少女マンガのヒロインだ!と全力ツッコミされる事受け合い。

 

 また一人、ロード・エルメロイⅡ世は女性を落とした。

 今度の相手は十歳の女子小学生らしい。

 

 ーーはたして、ロードは時計塔の女子生徒たちから無事に逃げ延びることができるだろうか・・・?

 

「他家の礼装を利用することは自らの魔術の、ひいては自らの一族が積み重ねてきた過去の否定だ。

 魔術師とは過去に縛り付けられ、過去に盲従するのが当然だと教えられて育つ生き物だ。生まれる以前から魔術という物語に浸ってきた魔術師は、抗うにせよ受け入れるにせよ、必ずその内面まで浸食されることとなる。その物語を否定すると言うことは自分自身の今までを否定するに等しい。

 自分で否定した自分が神話を作る? 当然不可能だろう。成功するためにはまず、“自分は成功できなかった”事を認め、受け入れるところから始めるべきだろうな」

 

 やれやれとでも言いたげに肩をすくめる仕草が妙に決まっている。

 それがまた美遊の乙女心を刺激してやまない。

 

 

 ーーやめて! 私のハートの残りHPはもう0よ!

 

 

 ・・・やはり漫画喫茶は箱入りお嬢様には良い影響を与えない場所だった・・・。

 

「歴史と複雑に溶け合った魔術の深淵を知るために何世代も努力を重ねてきた魔道の家系が、突然神秘のつまみ食いをして相性の良さそうなパーツをつぎはぎするばかりでは、成功の可能性は万に一つもない。

 その結果として神稚児などという民族伝承に縋ってでも“成就”を目指す・・・どう考えてもバッドエンド一直線だろう、このムリゲー」

 

 そう言ってコップに注がれた黒い液体を飲み干すロードは、どこから見てもダンディな美男子系美少女だった。・・・最後に一言に目を瞑ることが出来れば、という前提条件付きだが。

 

 

 ーー美遊の乙女心は、とっくの昔に恋心に置換されていた。

 その早さは置換魔術のみに特化したエインズワースの魔術行使を遙かに凌駕する。

 

 恋する女の子は、例外なく魔法が使えるのだ。

 これぞ、この世の真理である。

 

 

 ーーしかし、ロードが飲んでいる黒い液体はコーヒーではなくコーラである。その事は決して忘れてはいけない。

 

 

 非常に大雑把ながらも最小限度の説明を終えて落ち着いた解説魔ロード・エルメロイⅡ世、女性名ヴェルベット・ウェーバーちゃんは椅子に深く座り直す。

 

 まだまだ言い足りない部分が多いが、これ以上の時間はないかもしれない。

 確認のためにも隣に座っている妹や弟子たちと違って大人しい少女、美遊に顔を向けて声をかける。

 

「ところで美遊君。君に一つ確認したいことがあるのだがーー」

「なにヴェルベット、何でも聞いて。私のことはなんでも教えるし答えるから。

 結婚指輪のサイズ? 理想のプロポーズをされたい場所? 欲しい子供の数? それともーーYes.No.・・・?」

「い、いや、そう言うことではなくてだね・・・と言うか最後の一つは子供が言っていい内容ではないと思うのだが・・・ま、まぁ、それはともかく」

 

 コホンと咳払いするフリをして、美遊から一歩分だけ離れようとするヴェルベット。

 そして、離れた一歩分+もう一歩分距離を詰める美遊。

 合計すると(プラス)一歩分二人の距離が近づいた計算になる。

 

 一歩下がって二歩進む。

 日本一有名な歌の歌詞をも無視して突き進むのが乙女の恋心。

 恋する女の子を止める事は最強の雷神の槌を持ってしても不可能なのだ。

 

 ようするにーーヴェルベット・ウェーバーの人生はこの時点で詰んでしまったのだ。まるでエインズワース家の魔術と平行世界の地球人類のように。

 

 

 ーーうん、ぜんぜん上手くない。

 ひっどいブラックユーモアでしたね、ごめんなさい。反省します。

 

 

「と、とりあえずは美遊君。君がこちらの世界に来てからどれくらいの日数が経っているのか、丼勘定で構わないから数えてくれないか?・・・・・・ちょ、顔が近い顔が近い。口と口がくっつきそうだから離れたまえ!」

「・・・私が来てからの日数? ・・・三ヶ月くらいかな? ちょっと多めに見積もってだけど。・・・最初の数日は数えるどころか考える余裕もなかったし、ルヴィアさんに拾われてからの数日も曖昧だから、一週間近い差が出てる可能性があると思うけど・・・」

「十分だ、ありがとう。ーーとりあえず、調べ物があるから少しだけ離れてくれないだろうか? ・・・・・・あとその・・・・・・胸が当たっているから、出来るならば外して欲しいというか何というか・・・・・・。

 ・・・・・・いや、そんなにガッカリした顔をされると罪悪感がだね・・・わ、わかった! 終わったら君が満足するまで相手をするから今だけは! な? な? 頼むよ、この通り一生のお願いだ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むぅ」

 

 美遊は明らかな不満顔だったが、一応は納得して引き下がってくれた。

 その事で安堵のあまり胸をなで下ろすヴェルベットこと、時計塔で抱かれたい男ナンバー1の二つ名を持つロード・エルメロイⅡ世。

 彼女は、これでも立派な時計塔の重鎮です。

 

 

 ーーだが、彼女は自分が徐々にダメなラブコメ主人公と同じ言動をし始めていることに気付けていない・・・。

 

 

 しかし、いくら色ボケしててもロードはロード。

 こんな時でも頭はしっかり働いており、立ち上げたパソコンで気象情報を調べ始める。

 

「・・・? 何をしてるの?」

 

 ロードの意図が読めない美遊は、魔術師としては異端過ぎる彼女の突飛な行動に、疑問符を無数に浮かべながら問いかける。

 

 

 回答は、ロードが冬木市の地震発生回数を見た直後に“実体験を伴って”教えられた。

 

「当たりだ。やはり、ここ数日で回数が増え続けている。

 ・・・これは、そろそろだろうな・・・」

「え・・・? 一体なんのこーーきゃっ!?」

 

 美遊の疑問に対するこれが答えなのか、ここ数日多発していた小さな地震が、今日に限ってはやたらと大きく、周囲からも多数の悲鳴が上がる。

 

「・・・どうやらご到着のようだ。今のは宝具を解放したな、属性は雷のようだが威力が凄まじい。確実に対人ではなく、対城クラスだ」

「雷に対城クラス・・・ベアトリス!」

「平行世界の人間と会話するのは君に続いて二人目か。やれやれ、こんなことならもう少し準備をしてくるべきだった・・・。

 まぁ、今更言っても仕方ない。出陣しよう美遊君。場所は、どこか適当に、そこいら辺へとはいかないがね」

 

 悠々と立ち上がって指示を出すヴェルベットに慌てた様子は微塵もない。

 さすがに、美遊もここまで来ると彼女の異常性に気付かざるを得ず、戸惑い気味に問いを投げかける。

 

「ど、どうしてそんなに落ち着いていられるの・・・? 敵は私たちを殺しに来てるのに!」

「そんなものはとっくに慣れている」

 

 平然と答え、ヴェルベットは心のスイッチをロード・エルメロイⅡ世“ではなく”、ウェイバー・ベルベットへと切り替える。

 

 

 ーーやはり、英霊相手に戦を挑むのならば王の臣下として挑みたい。

 

 

 そう考えた上での結論だった。

 

 だからこそ、今の状況で今の彼には、こう言わねばならぬ義務があるだろう。

 

「そう初っ端から諦めてかかるなよ。とりあえずブチ当たるだけ当たってみようじゃないか。案外なんとかなるかもしれないぞ?」

 

 さっきまでの繊細そうな美少女とは別人に見えるほどに快活で屈託がなく、王様に仕えるのが嬉しくて仕方がない見習い騎士の美少年を連想させる無邪気すぎる笑顔を浮かべるヴェルベットを見て、美遊の思考は再びピンク一色に染まる。

 

 

 

 

 

 ーー結婚式では、絶対に白無垢にしよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー心に誓う美遊の脳裏に、自分のために敵に捕まってしまった兄、衛宮士郎の笑顔はーー浮かんでこなかった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー恋する女の子は強すぎる上に、家族に冷たすぎる!

 

つづく




次回は一応バトルです。
美遊ちゃんも活躍させます。
まだイリヤは活躍しません。
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