Fateプリズマ☆ロード   作:ひきがやもとまち

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ロードとライダーとの出会いは十年前の「偽りの聖杯戦争」の時だったと言う設定にしたので、タグにオリ設定を付け加えました。

ストレンジとは似て非なる別の並行世界で行われた歪な儀式だと解釈ください。
あと、今回は前半と後半で雰囲気が一変します。
カオス化しますので、そのおつもりでお読みください。

*この作品はフィクションであり、登場するすべてのあらゆる存在は原作と一切関係しておりません。


2話「混沌状況」

 平行世界からの追っ手に対処すべく、二人は美遊が身を寄せているエーデルフェルトの屋敷に礼装でもあるカレイドステッキを取りに戻った後、ようやく震源地たる円蔵山に向かっていた。

 

 何を悠長なと思うだろうが、あいにく小学生は戦えないのだ。武器を取りに行くのは仕方がない。

 

 本来ならばカレイドステッキのサファイアは待機形態になって常に美遊と一緒に居るべきなのだが、保護者のルヴィアが「運命の殿方と出会いましたの」とか戯言をほざいて怪しげな惚れ薬を開発中だったため、阻止するのに忙しくて別行動を取っていたのだ。

 

「あんのテンプレお嬢様めぇぇぇっ!!! お前のようなタイプはメインヒロインにはなれんのだから、とっととサポートに回れ! サブが出しゃばるな!

 あと、私の好みはクーデレ系だ!」

 

 怒りのあまり罵声の他に関係ないことまで喚くヴェルベットだったが、美遊はしっかりと彼女の好みを把握して脳のフォルダに永久保存した。

 

 後日、ロードが苦労することが確定したところで山の頂上に到着。

 二人の前には抉られたように出来たクレーターが広がり、中心部には赤い髪を左右に結んだ凶悪そうな表情の少女ーーではなく。

 

 金髪を長いツインテールにし、無表情を顔面に張り付けた鉄仮面のごとき美女ーー

 

「アンジェリカ・・・っ!!」

「お久しぶりです美遊様。ベアトリスはこちらへ跳ぶ為の門を開くのに最大出力のトゥール・ハンマーを使ってしまったため休息中でして、私一人がお迎えにあがりました。

 さぁ、バカンスはもうお終いです。一緒に向こう側へ戻りましょう。エリカ様も美遊様のお帰りを心待ちにしておられますよ」

 

 恭しい仕草での一礼を、一欠片の敬意を感じさせることなくやってのける女に、ヴェルベットは静かに憎しみと怒りを抱いた。

 

 態度はどうでもいい。似たような奴は毎日見ている。

 なにしろ時計塔始まって以来の祭位(フェス)の階位しか持たぬロードであり、本来なら当主は悪魔な妹の義兄である神童ケイネス・エルメロイ・アーチボルトだったはずなのだ。代理としても傀儡としても頭を下げたい相手では決してないだろう。

 にも関わらず、弟子たちが優秀すぎるが故にその師である二流魔術師にも形式上、礼儀を欠くわけにはいかず、結果として裏と表ができあがる。

 だから慣れているので気にならない。

 

 ーーだが、“その鎧”を身につけている奴が欺瞞で礼を示すのは、堪らなく不快すぎて怒りを抑えきる事が出来ない。ただ、それだけだ。

 

「・・・あなたたちエインズワースは未だに考えを改めないの? お兄ちゃんを閉じこめて人質に使い、私を聖杯として使用し世界を救済する・・・。

 ーーそんなことが本当に可能なの?」

「無論です。原因不明のマナの枯渇、全ての生物にとって猛毒となる、まったく未知の粒子に満たされたドライスポットの発生。危機に瀕した星が根底からルールそのものを置き換えようとしているとしか思えない。

 そして、旧来のルールの上で設計・生産された生き物は新世界では生きられない。

 だからこそ、星に残された全てのマナを集めて旧世界最大の大魔術を行うのです。聖杯たる美遊様を使って「人類を新世界でも生きられる生物に置き換える」それこそ、我がエインズワースが聖杯に託す願いなのです」

 

 美遊は迷った。

 どんなに言葉を取り繕っても、一人の命が世界より重いわけがない。

 だからもし、自分を犠牲にして世界と人々を助けることが出来るなら、それで全てを救済し、救うことが出来るならーー

 

 

 

「やれやれ・・・見当違いも甚だしいな。とんだ茶番だ」

 

 

 

 場の空気を静かにぶち壊す、“鉄の香り”がする少女の声。

 アンジェリカは、その時初めて美遊の隣にいる可笑しな服を着た少女に気づいた。

 そして“苛立つ”。

 エインズワース家の悲願を果たすために、己を捨て、感情を捨て、救済のために戦う自分に“苛立ち”などという感情があった事に多少の驚きを感じながら、少女を睨みつける。

 

 そして、“空間から剣を出現させる”。

 

 彼女が使うサーヴァントの宝具、ゲート・オブ・バビロン。あらゆる宝具の原典を呼び出し射出する、この能力ならばたかが小娘一人、一瞬で消し炭にできるだろう。

 

 なのにーー

 

「聖杯による救済、だと? 解せんな、そんなものに意味があるというのか? 仮にそれで救われたとして、その後どうなる? ただ救われただけの連中をどうするつもりなんだエインズワースは?」

「それは・・・」

「貴様等は世界を“救う”事しか考えていない。“導く”事をする気がない。小綺麗な理想を並べ立てるだけの小娘に世界は重すぎる」

 

 やれやれと、一撃必殺の宝具に狙われながら少女は平然と肩をすくめる。

 

 まるで、圧倒的な強敵と相対することなど日常茶飯事だとでも言うかのように・・・。

 

「なによりも、それが一門の悲願だというなら、なぜ美遊君にはっきり言わないんだ? 人類のために死んでくれ、と。

 お前を泥の中に突き落とし、永遠の苦痛と孤独を味合わう生け贄になってほしいのだ、と。

 どうして晴れ晴れと誇らしげに、そう語らなかったんだ?」

「ーーそのようなふざけた」

「そんなふざけた申し出があるかって? たかがこの程度でか」

 

 アンジェリカは絶句した。

 相手の目には狂気は見えず、むしろ理性だけが無限に見える。

 そんな相手が、魔道を収めた魔術師でありエインズワースが使役する兵隊ドールズの一人である彼女が思わず“恐怖する”程の内容で、真っ直ぐに舌鋒鋭く、これ以上なく正気で痛罵してくる。

 

「ただ個人の欲望だけで、神意も大儀もなく万国を踏み荒らそうというのでもない。最果ての海をこの目にしたいなんて妄想ひとつで、居並ぶ軍神やマハラジャの栄誉も誇りも奪い尽くして、なお彼らに轡を並べさせようというわけでもない。たかが少女一人を甘言をもって唆しておいて、お前たちは自分の夢を叶えようというのか」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 アンジェリカは答えられなかった。

 “答えなかった”のではなく、答え“られなかった”のだ。

 

 それは少女の言が正しいと感じたからではなく、その矮躯から発せられる“砂塵”の臭いが彼女を萎縮させてしまい、声を出すことができなくなっていたからだ。

 

 まるで、“主の威を借る鼠が、忠誠心を楯に己が所行を正当化する気か?”と誰かに詰問されているかのような・・・・・・

 

 否、そうではない。

 誰か、ではなく誰かたち。もしくは・・・大勢の何者かに、だ。

 

 ここには自分たち以外の誰もいないのに、人除けの結界も発動しているはずなのに。

 にも関わらず、この場には自分たち三人とは別に“何千人もの何者”の気配で満たされつつあり、この場を征服しつつある彼ら全てに槍の矛先を向けられているような、そんな錯覚に恐怖してしまって指先ひとつ動かす事ができなくなっていた。

 

「それと最後にもう一つ。お前たちの言う大魔術では人類は救えないぞ」

「ーーっ!?」

 

 これには流石に反応を返さざるを得なかった。

 認められるような内容ではなく、無視できるような内容でもない。

 問いただした上で処断すべき暴言だ。子供だからと言って情状酌量の余地など微塵もない。

 懲罰を下し断罪する。その意志を持って動かない体を無視して無理矢理ゲート・オブ・バビロンを展開しようとした矢先

 

 

 

 

「それら粒子がなんであれ、ガイアもアラヤも反応していないところから見て、星のシステムに異常が発生しているのは間違いないだろう。

 その原因、星が異常を起こし、アラヤが機能しない理由とはーーおそらくエインズワースが成そうとしている聖杯戦争に使われている“泥”にある」

 

 

 

 アンジェリカは声を失った。

 美遊もまたヴェルベットを凝視したまま思考が停止している。

 

 彼女の言葉は、それ程までに有り得ない発言だったのだ。

 

「ば、バカを言うな! エインズワースは世界の救済を目指している! そのエインズワースが原因で世界が滅ぶだと? 侮辱にも程があるぞ!」

「そう考える方が道理が通る。

 ガイアは星を守るためには人類をも滅ぼそうとする。

 アラヤは人類を守るためには星をも滅ぼそうとする。

 その二つの相克によって成り立っているのが、この世界だ。どちらかが崩れただけでシステムは別の物に置き換わるだろう。それは分かる。

 ーーでは、その崩れた原因は・・・崩した何者かは何だ? いや、誰だ?

 間違いなく居るぞ。悪意と妄執と願望によって聖杯を汚染しようとする輩が。純粋なエネルギーの塊でしかない聖杯を汚染して、自分に都合良く使うつもりが自らも汚染されて傀儡とされている愚かで哀れな道化師が」

 

 論文を読み上げるように、経験済みの出来事を語るように淡々とした口調で続けたがーーここで声音が変わる。

 

 まるで、恭しく主に奉答するように。主の好敵手に主君からの書状を手渡し、読み上げるかのように。

 厳かに、厳粛に、なによりも歴史上最高の覇王から派遣される使者に選ばれた栄誉を誇らしく思いながら

 

 

 

 

 

「ーーなぁ、そうは思わないか? 英雄王ギルガメッシュよ。

 ボクが仕える主君は、影武者ごときに乗っ取られるお前程度に倒されたことをお怒りだぞ。宴を続けるから早く戻ってこいだとさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『雑種如きが付け上がるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!!!???」」」

 

 美遊、アンジェリカ、サファイアが三者三様に震え上がった。

 何処かから轟いたその怒声には、凄まじく強大な“威”が込められていた。

 たかが小間使いや願望器ごときでは抗うことなど出来うるはずもない、圧倒的すぎる“王気”。

 

 物理的な支配力さえ有するそれを、ヴェルベット・ウェーバーと名乗っているロード・エルメロイⅡ世・・・いやウェイバー・ベルベットは平然と受け止める。

 

 

 

 

 やがてーー“本当のソレ”が顕現した。

 

「ーーふん。相も変わらぬ忠勤ぶりよな、小僧。いや、今の姿には似つかわしくない呼び名だったか。改めよう。

 久しいな幼童。まさかとは思うが、我の命を違えておるまいな? 我は別れの際に申し付けたはずだぞ。「忠道、大儀である。努その在り方を損なうな」と。

 ーー我を失望させるような答えを返せばどうなるか・・・言うまでもあるまい?」

「違えるわけがないし、忘れたことさえ一瞬たりとも無い。

 あの言葉は、ボクがボク自身で手にしたはじめての勝利だ。死んでも忘れられないだろう。

 なにより、ボクの忠誠心を認めてくれたのは、あのバカ以外ではお前が最初だったからな。一応、その、なんだ。・・・か、感謝していなくもないんだからな!」

 

 途中からツンデレが混じってしまうあたり、永遠にデレないツンデレ先生の異名は返上すべきだと思う。所詮、元ヘタレなへっぽこ魔術師だった。

 

「ふむ。その言や良し。我は何かを盲信する者は好まぬが、貴様は数少ない例外だ。実に小気味よい。自らの強固な意志で王に魂を捧げるその生き様、それを我は賞賛するぞ。

 ーー少なくとも思考を放棄し、何かを崇め縋った結果、魂が腐り落ちた事にも気づけぬ虫けらよりは遙かに好ましい」

 

 ジロリ、と。

 その“黄金の英霊”の赤い瞳で睨まれたアンジェリカは恐怖に震えた。

 

(有り得ない・・・有り得ない、有り得ない、有り得ない、有り得ない!

 私は依然、サーヴァント・アーチャーを憑依させている! 鎧も魔力も宝具すらも消えていない!

 では、誰だ! コイツはいったい誰なのだ!?

 アーチャー・ギルガメッシュに外見こそ酷似しているが中身は全く別物の、クラスカードでは制御しきれない桁外れの力を持ったーーまさか、正真正銘本物の英雄王ギルガメッシュのサーヴァントだとでも言うのか!?)

 

 答えにたどり着いてはいるが、自らの信ずるエインズワースへの忠誠心がそれを否定する。

 エインズワースが開発した英霊召喚システムでは同じ英霊を同時召還することはできない。自らの纏うギルガメッシュも、片割れが何処かへと落ち延びたとはいえ、力と宝具の大半は彼女の手中にある。

 もはや、あれは半端な英霊もどきだ。大した脅威にはなるまい。

 

 だが、こいつは違う。別次元すぎる怪物だ。

 視線を合わせることさえ全身を奮い立たせなければ不可能なほどに、目の前の英霊からは強大すぎる魔力と圧迫感を感じ取れる。

 

 

 ーーエインズワースの英霊召喚は完全ではなかったのか・・・?

 

 自らが地面だと信じていた物に対する疑念が、彼女から“覚悟”を奪った。

 膝が震え、体力に関係なく座り込んで立ち上がる事ができなくなった。

 落ちぶれて三流の道化ですらいられなくなった賊の捨て駒など、手ずから殺す必要性を認めないとして、ギルガメッシュはウェイバーに向き直り、改めて試すかのように問いを投げかける。

 

「それで? 貴様はこれをどう解析する?

 王命を守って十年を生きたのなら、その間を無為に過ごしてはおるまい。貴様からは以前には無かった誇りを感じる。あの騎兵の女も今の貴様を見れば迷わず殺しにかかってくるであろうよ。

 そんな貴様から見て、此度の茶番はどう写る?

 王が許す、申してみよ。傾聴に値するならば、聖杯とやらいう杯のひとつも報償としてくれてやろう」

「相変わらず偉そうだなお前・・・。まぁ、いいか。もう慣れたし、疲れるだけだから話を先に進める。

 ーーまず、今回の聖杯戦争は十年前の“アレ”とは全くの別物だが、同じく“偽り”だ。それは保証する」

「・・・・・・あの醜い贋作に、再び我ら英霊が踊らされていると、そう言うことか?」

「ああ、本来ならサーヴァントはクラス適正にあう英霊をマスターとの相性に応じてランダムに、あるいは縁の品を使って目当ての奴を引き寄せやすくするシステムだった。が、今回のクラスカードとやらは違う気がするんだ。

 その証拠に、そこにいる奴が憑依させているお前は、十年前にあのバカの宝具を破ったときとは比べものにならないほど弱い。多分だけど、クラスに押し込めてるだけじゃなくて、弱体化を代償に目当ての英霊だけを限定して喚べる類の魔具にしたんじゃないかな。

 一枚につき一人を喚べるけど、それ以外は誰も喚べない。英霊自身も大幅なステータスダウンをする代わりに術者に憑依させることが可能。

 それだったら大量生産が可能だし、クラスカードは召喚媒体にすぎなくなって負担も減る。現界を維持するのに必要な魔力は余所からーーおそらく“泥”から取ってきてる。そんなところじゃないかな」

「・・・・・・つくづく魔術師共も学ばぬな。あの悍ましい汚水を、まだ万能の願望器だと信じ込んでおるのか?」

「伝説とされている名門アインツベルンが八百年かけても単独では成就が不可能だった大魔術儀式だぞ? たった一家で本物が作り出せると信じる方がどうかしてるのさ。

 ーーにも関わらず成就を願うってことは、そう言うことだろう?」

「・・・その結果生み出されたのが、またしても己等自身では報いきれぬ道具か。人の心を付けてはいるが半端な偽物だな。このようなガラクタをエインズワースとやらいう賊は生み出し続けていると言うわけか。

 ーーもはや、肉片ひとつも残すことを認めぬ。せめて散りざまで我を興じさせよ。盛大な花火として打ち上げてやれば、この醜き時代も少しは見栄えが良くなると言うものだ」

 

 怒りと殺意を込めた瞳で空間をーー空間の先にあるエインズワースの城を睨みつける英雄王だが、意外にも今すぐに攻め落とすとは言い出さなかった。

 我慢や忍耐とは無縁なはずのこの英霊。大人しく座して待つなど、絶対に有り得ない。いったい何を企んでいるのか?

 

 不審を覚えるウェイバーに対し、英雄王はふいに、イヤらしく淫らに嘲って見せる。

 

「そう言えば、幼童。貴様ーー今は無き主と再会したくはないか?」

 

 瞳に愉悦を浮かべながら、英雄王はロードに悪魔の誘いをかける。

 無論、この問いに対するウェイバーの答えなど考えるまでもない。

 

「会いたいさ、決まっている。だからって、こんな茶番劇にアイツを喚ぶなんて有り得ないぞ? わざわざ喚びだして主君に恥をかかせてからお帰り願うような臣下がいてたまるか。断固拒否する」

 

 その“期待通り”の答えに満足し、忠臣に対して英雄王は、王として褒美を与える。

 おぞましくて淫靡な笑顔を浮かべながら、思いっきり愉しそうに。

 

「よくぞ言った。それでこそ、あの男の忠臣よ。褒美を取らす。

 まずーー『クラスカード・ライダー』!」

「はぁ!?」

「続いてーー英霊召喚用に未使用令呪をひとつ!」

「ちょっと待てぇぇい!」

 

 大声で抗議するウェイバーを愉しくて仕方がないと言いたげな表情で爆笑しながら、王は自分とは別の王に仕える、古今に比類無き忠臣の疑問に応えてやる。

 

「痴れ者が! 我は世界最古の英雄王ギルガメッシュ。

 クラスカードや令呪のひとつやふたつ、持っているに決まっているではないか!」

「お前の宝具チートすぎるんだよ! 攻撃特化のエヌマ・エリシュよりもそっちの方が汎用性高すぎて便利すぎるだろうが、この歩くチートが!

もう、どこの平行世界でも主人公はれるレベルだぞ! 英雄王が異世界に進出だぞ! なのに、なんでまだこの世界に居続けてるんだよぉぉ!!」

 ーーそれと、ひとつふたつどころか、何故か三つもあるんだけど!?」

「ふははははっ! そんなもの決まっておろうが!

 その方がーー面白いからよっ!!」

「だと思ったよ! この慢心王め、別の平行世界で月にでも召還されて地味めな女子高生に全裸を晒してドン引きされろ!」

「そのような些事などどうでも良い! 今、我は猛烈に悦しんでいるのだ。それだけで、貴様の人生は釣りがくるのだぞ? もっと悦べ貧乏人!」

「雑種じゃなかったのかぁぁぁぁぁっ!!!!!?」

 

 完全に十年前のツッコミキャラへと退行してしまっているロードと、基本的には俺様系わがままキャラのギルガメッシュの相性は驚くほど良かった。

 

 ・・・案外、十年前に行われた偽りの聖杯戦争でこのコンビが生まれていたら優勝していたかもしれない。その場合、ウェイバーは今とは別の人格になっているのだろうが、どちらにしても苦労性になっていた事だけは間違いない。

 

 苦労の星の元に生まれた彼、もとい彼女の人生に幸あれ。

 

「さて、それでは止めを刺すとしようか。

 ーー令呪をもって命じる。ライダーのサーヴァント征服王イスカンダルよ、貴様の臣下たる幼童、かつてウェイバー・ベルベットと名乗っていた小娘の身にサーヴァントとして“永遠”に憑依せよ!」

「おぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!!!」

 

 本来ならば絶対不可能なルール違反を、絶対命令権たる三つの令呪を全て消費し、命じた者は人間の限界を遙かに越えすぎている英霊の、そのまたチートサーヴァントで、この場所は元々アインツベルンが聖杯戦争で使用する予定だった大聖杯が埋まっており、大聖杯の役目は霊脈からエネルギーを吸い上げて蓄積し生け贄にするためのサーヴァントを降霊させることであり、おまけに使用寸前で“器”が居なくなったことによって使用されずに放置され、それでも設置されてはいるのでエネルギーは集め続けていて、本来ならば使用するはずだった聖杯戦争が勃発しなかったせいでエネルギーが溢れかけており、平行世界の壁を破って来た迷惑なお客様のせいで時空の壁が薄くなっていることもある。止めとして、このクラスカードはライダーのサーヴァントとしてイスカンダルを喚ぶ事のみにしか使えない代物だった。

 

 ・・・ビックリするぐらい条件が整いすぎていた。

 これは、もはや運命の類だろう。Fateである。

 この物語は彼が彼女となって英霊に振り回される物語である。

 

 ーーやだなぁ、そんな聖杯戦争・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまぁ、そんな訳で。

 結果として、こうなりましたとさ。

 

「訴えてやる・・・」

 

 涙目で長身の英雄王を見上げながら睨みつけているのは、ブカブカの赤マントを羽織り、お子さまサイズの銅鎧を無理矢理着させられ、ライダーのサーヴァントのコスプレをしている風にしか見えないお嬢様系美少女だった。ぶっちゃけ七五三だった。

 

 誤解を恐れずに正直に言おう。

 これはーー萌える!

 

「ヴェルベットぉぉぉぉぉっ!!!!」

「うおぉぉぉぉっ!?」

 

 萌えの塊を見せつけれらた事で、英雄王に萎縮し動けなくなっていた美遊の理性が月の彼方にまで完全に蒸発した。

 今の彼女にはスキル・理性蒸発Aが追加されている。英霊アストルフォ以上だ。暴走しまくっている。状態異常に等しい。神をも恐れぬ今の美遊に、エインズワースのことなど欠片ほども頭にない。

 

 突如としてロード・エルメロイⅡ世ことヴェルベット・ウェーバーは、女子小学生の魔手によって生まれてはじめての貞操の危機にガチで陥らされるはめになったのである。

 

「はぁはぁ・・・ロリっ子がお子さま鎧着て私を誘惑してる・・・これならくんかくんか、すーはーすーはー以上を犯してもーー合法だよね?」

「違法に決まっているだろうが! 押し倒すな、臭いを嗅ぐな、胸を揉むな、尻を撫でるな、唇を奪おうとするなぁぁぁっ!!!」

『美遊様が平行世界から来た聖杯で、向こうには未知の粒子が広がっているとは・・・これはどういう事でしょう? 早く姉さんと連絡を取らないとーー』

「そっち!? お前が今気にしてるのそっちなの!? 今更すぎるだろうが! と言うか言葉が話せるなら疑問に思ったときに躊躇わず尋ねろ、このポンコツ礼装! そうでないと講義が滞るだろうが!

 ーーあと、今はとにかく助けてください! お願いします!」

「はっはっは。なかなか愉快な見せ物だぞ道化。貴様には魔術師よりも道化師の方が向いている。

 ーーよし、折角だ。

 もう一人道化を喚んで盛り上げるとしようっ!」

「やめてくれぇぇぇぇぇっ!!!!!!」

「ーー告げる。

 前略、以下略、以下省略。

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よーー!」

「ぜんぜん呪文唱えてねぇぇぇぇっ!!!!」

 

 ここぞとばかりにチートを連発する英雄王。

 性格的な理由で相手を蹂躙することばかりに使用しているゲート・オブ・バビロンだが、使い方次第では世界を割るだけのエヌマ・エリシュより遙かに性能がいいのだ。

 実際、聖杯もどきも蔵には有ったりする。本気で探せば簡単に世界救済できちゃうのだ、このチートなキンピカ様は。本当にチートにも程がある。

 

 そして今、彼は全力でロードを弄んでおり、その為ならば出し惜しみする気は微塵もない。愉悦のために世界と人類を滅ぼせる王に倫理など通用しない。我が法なのだ。

 

 

 

「初めましてだね、マスター! あ、自己紹介した方がいい? いいよね? やるよ! ボクはサーヴァント、ライダー。真名はアストルフォ。

 本当は男のはずなんだけど、なぜか女の子として喚ばれたみたい。よろしくね、マスター!」

「またTSしたぁぁぁぁっ!!!!」

「他の女にヴェルベットを渡すくらいなら、私がこの槍で・・・!!」

「ちょっ、それゲイボルクじゃね!? やめろ! つか、マジでやめてお願いだから! 洒落にならないから、その槍本気で洒落になれないから! ヤンデレはいやだぁぁぁぁっ!!!! 助けてバカライダーぁぁぁっ!!!」

「え? 呼んだ? ーーあ、でもボクはバカじゃないからね!ただ、ダメなだけだからね!!」

「紛らわしすぎるぅぅぅぅっ!!!!!

 あと、役立たずすぎるぅぅぅぅっ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・カオスだった。これ以上なくカオスだった。

 偽りの聖杯戦争など問題にもならないレベルでカオス過ぎた。

 

 

 

 

 かくして本来ならば参加していない、頭しか使えない美少女二流魔術師が、考えることが不可能な理性の蒸発したTS美少女サーヴァントを従えて強制的に参戦させられたことによりエインズワースの目論見は思いも寄らぬ方向へと歪められていくこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、戦意と信念と自信と誇りと生きる意味を見失って呆然自失しているアンジェリカの事は誰の頭からもスポーンと綺麗さっぱり忘れ去られ、思い出されるのは翌日のことだったりする・・・・・・。

 

つづく




もう訳わからん状況ですね。
基本ギャグ作品ですので、合理性とか求めないで頂けると助かります。
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