Fateプリズマ☆ロード   作:ひきがやもとまち

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更新遅れに遅れて申し訳ありません。
コハエースとか読んでたら頭ごっちゃになっちゃいまして・・・。

それと今話から話もキャラも致命的なほど崩壊します。作者の予想を超える崩壊具合ですので原作ファンの方は読まないでください。
それと美遊ちゃんがかなり酷い事になりますので彼女のファンの方々は絶対に読まないでください。


3話「平行世界聖杯戦争開幕」

「正直、かなり不安ではあるけど・・・今は、あんたに頼るしかないわ。

 ーー準備はいい?」

「う・・・うん!」

 

 緊張した声で返事をする幼い銀髪の少女と、年長者としては情けない限りの発言を偉そうな態度でする十代半ばの黒髪ツインテールのテンプレなツンデレ少女。

 

 二人は今、深夜0時の市立穂群原学園高等部の校庭にいた。

 明らかに子供が外を出歩いていい時間帯ではない。巡察中の警官に見つかったりしたら強制的に交番へと補導されるのは確実だろう。

 

 だがーーそれは“普通”の子供であればの話。

 あいにくとツインテールの少女、遠坂凜が属する世界では夜こそがホームグラウンド。昼間は大人しく深窓の令嬢を演じてはいても、その内実は魔術の名門、遠坂の現当主であり五大属性を生まれ持った化け物である。

 常識など通じるはずもない。

 

 ーーが、彼女が下駄を預けた相手、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは掛け値なしの一般人であり、戦闘訓練も魔術教練も一切受けていない素人であり、あげくは昨日の今日で実践投入された完全無欠の学徒兵である。

 ほぼ、死んでこいといっているに等しいのだが、言っている本人に自覚はない。なせばなると楽観視しまくっている。

 ちなみに学徒動員は亡国の前兆であり、敗亡寸前の悪足掻きでしかないというのが一般認識である。

 

 だが魔道とは常識の埒外にある外法の技なので一般論は通じない。

 ゆえに魔道を納めた彼女に倫理や常識は、存在していない。

 ーー魔術師とは異常者を超美化した言葉ではないかと思うのは気のせいだろうか・・・?

 

 そして始まる、別世界へと渡るための離界(ジャンプ)

 

「えっ・・・な・・・なにをするの?」

「カードがある世界に飛ぶのよ。

 そうね・・・無限に連なる合わせ鏡。この世界をその像のひとつとした場合、それは鏡面そのもの世界。

『鏡面界』そう呼ばれるこの世界にカードはあるの」

 

 初めて目の当たりにする超常現象に目をパチクリするイリヤに対し、慣れた口調で説明する凛。

 遠坂家の悲願は第二魔法『平行世界の運営』である。鏡面界も無数に存在する平行世界のひとつであると解釈すれば、この状況を歓迎こそすれ驚く道理はない。

 ーーが、イリヤは昨晩に徴兵されたばかりの、単なる現地人の少女である。これから自分が戦わされる事すら教えられていない。

 これでどうやって神秘の具現たる英霊と戦えと言うのだろうか?

 つくづく魔術師という生き物は常識を無視しまくる生き物である。

 

「な・・・なに、この空・・・?

 ううん、空だけじゃない・・・」

 

 先ほどまでいた場所の物とは明らかに違う縦横に走る光のラインによって正方形の格子模様に区切られた頭上に広がる空。

 その不気味さに戸惑い驚くイリヤだが、状況は、そして凛は時間を与えてくれない。

 

「詳しく説明しているヒマはないわ!

 カードは校庭の中央! 構えて!」

「え? 構えて、って何で?・・・・・・な、なんか出てきたー!」

 

 説明もなく、戦い方のレクチャーもなく、ただただ魔術礼装カレイドステッキに選ばれて魔法少女にされたイリヤを「自分のサーヴァント(奴隷)」と決めつけて戦場に連れてきた凛。

 にも関わらず、彼女自身が初の実戦。すなわち初陣である。

 初めて戦う相手が英霊、主戦力は実戦経験どころか訓練未経験の学徒兵。

 この場にロードがいれば「やってられるかこのクソゲー!」とコントローラーを放り投げるに違いない程の超高難易度ステージだ。完全に詰んでいる。

 

 ーーが、幸か不幸かこの場にいたのは二流魔術師ロード・エルメロイⅡ世ではなく、ケルトの大英雄クー・フーリンが用いた『心臓を穿つ』という結果を先に作ってから槍を放つ、因果を逆転させた必中不可避の魔槍ゲイ・ボルグを扱うもう一人の魔法少女にして異世界の聖杯たる美遊・エーデルフェルト。

 ・・・結果など見るまでもない。

 

「「・・・へ?」」

 

 現界したばかりのサーヴァントの左胸から深紅の矛先が飛び出したと思ったら、絶叫どころか登場の際にあげるべき雄叫びすら叫ばせてもらえずに消滅していくライダーのクラスとおぼしきサーヴァント。

 余談だが、彼女の出番はこれで終わりである。やはり幸運Eで活躍は無理だったか・・・。

 

 ライダーを消滅させ終わった深紅の魔槍は、あり得ない軌道を描いて持ち主の手元へ戻っていく。

 帰ってきた槍の宝具としては最高峰に近い最強の対英霊兵装をしっかりと握りなおして、美遊はその矛先に憎い恋敵の心臓を穿つシーンを夢想する。明らかに病んだ目つきだが、実際ヤンデレているのだから仕方がない。

 

 ヴェルベットに馴れ馴れしく接するピンク髪のお邪魔虫。悔しいが、今の美遊が適う相手でないことは理解できた。

 エーテル体で肉体を構成するサーヴァントは魔力量が桁違いだ。聖杯とは言え覚醒にほど遠い美遊では戦っても勝てない。

 だからこそ、この槍を使いこなすことを優先し、投擲を我が物とした。今の彼女が放ちさえすれば、死なない相手以外ならば確実に一撃で仕留められる。

 

 どことなく暗い笑みを浮かべ、美遊は自分が修めた技術に満足する。

 

「フフ・・・ヴェルベットは私の物。私だけを見ていればいいの。私以外を見ちゃ、ダメ・・・。その時はこの魔槍が貴女の心臓を・・・」

「え・・・だ・・・誰・・・・・・?」

「え、えと・・・お、オーーーッホッホッホ!!

 まずは一枚!カードはいただきましたわ!」

 

 見ず知らずの暗い笑みを浮かべる少女にドン引きしつつ、イリヤは何時でも逃げ出せる姿勢のままで疑問を投げかけ、別人の高笑いが反応する。

 

 若干のタイムラグがあったのは、ここしかないタイミングで接近し、必殺の一撃をいれて仕留めるというのが彼女が考えていた作戦であり、魔槍を投擲して遠距離からの一撃で確実に仕留めるという、ある意味チート戦法は発想すら頭に存在していなかった。

 それを成したのが、自分がついこの間拾ったばかりの幼い少女であることに驚きはしたが、まぁ勝利は勝利である。要は目的のブツを手に入れられれば良いのだ。

 『地上で最も優美なハイエナ』の異名を持ち、世界中の争いに好き好んで介入して荒稼ぎするのが収入源の宝石魔術の大家は何処にいようと平常運行であるらしい。

 ーーつか、自分の妹と決めた相手が浮かべる嗤いは無視して良いものなのだろうか? やはり魔術師の精神は異常だ。精神汚染がデフォルトなのかもしれない。

 

「こ、このバカ笑いは・・・!」

「無様ですわね遠坂凛! 相手の宝具が発動するより先に一撃で仕留めるのは対英霊戦闘を考慮する上で真っ先に考えておくべき事でしょうに!」

「ぐっ・・・アンタにしては珍しく完全な正論ね・・・。いったい誰に入れ知恵されたのよ!? 絶対アンタが考え出せるような作戦じゃないでしょうが!」

 

 知りません。むしろ誰か教えて下さい。

 金髪ドリルヘアーのゴージャスドレスお嬢様ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの心の声を翻訳すると、こんな感じになる。

 全く訳が分からないが、それを素直に言えるのような性格ならば時計塔編入一年目にして被害総額200万£などという馬鹿げた数字を喧嘩沙汰ぐらいで出しはすまい。

 

 ようするに、事態は必然的に悪化の一途をたどる事となる。

 

「しかも魔術師が相手の現界が完了するまで何の準備もせず、手をこまねいて突っ立っているだけとは・・・とんだ道化ですわね遠坂凛!!

 肉弾戦特化の魔術師が時計塔主席候補だなんて、二百年の歴史を持つ名門遠坂の名が泣きますわよ!」

「ぐ、ぐぐ、ぐぐぐぐぐ・・・・・・!!!」

 

 言い返したい。むしろ、延髄めがけてマジ蹴り放ちたい。

 だが、それでは先ほどの発言を自分自身で肯定してしまう事になる。それは断固として拒絶したい凛としては、唸って怒りを無理矢理押さえつけるしかない。

 我慢など向いていないにも程がある性格の魔女が、である。間違いなく長くは持つまい。

 

 破滅の爆弾が爆発するときが一秒づつ近づいてくる中、

 状況にそぐわぬ冷静で大人しい、それでいて年齢を感じさせない幼い少女の鈴を転がす音に似た涼しげな声が場に響く。

 

「いや、そもそも英霊と戦うのなら相手の真名を探るのが最優先事項だろう。美遊君のゲイ・ボルグが特別すぎるチート武器なだけで、ふつうの英霊は一撃必中にして必殺の遠距離射撃武装など持ってはいないのだからな。

 ーーと言うより、お前らちゃんと聖杯戦争について調べてきたか? いくらなんでも場当たり的な印象が強すぎるんだが・・・」

「「誰!?(ですの!?)」」

 

 突然の呼びかけ&問いかけに対して過剰に反応する名門魔術師二人は、手に宝石を構えながら振り返る。

 

「ヴェルベット・・・! 私に会いに来てくれたの・・・!!」

 

 なにやら一人で早合点し始めて、妄想で頭がピンク色に染まり理性が蒸発した聖杯の魔法少女は、誰よりも空気を読まず相手の意志も尊重しない。恋する乙女は誰もがバーサーカーなのだ(嘘)

 

「あ、アイツはお兄ちゃんを誑かした雌狐・・・!!」

 

 実は魔法少女を引き受けた最大の理由が、恋する兄が延々と語る見ず知らずの少女に対する嫉妬だった本来の主人公。正義のヒロインが生まれる動機が嫉妬で良いのだろうか? 恋する乙女は時にアヴェンジャーとなる。

 

(おや~? どこかしら違和感というか懐かしさというか同類の気配がする子ですねぇ~。もしかして、大師父さんになにかされた人でしょうか?

 ま、可愛いので何でもオーケー!可愛いは正義!

 だから、イリヤさんは正義であり、彼女で遊ぶのに使えそうな人材はいつだって大歓迎ですよぉ~!)

 

 ロードの正体に薄々気づきながらも自らの愉悦を優先して黙秘を選ぶ、どこぞの英雄王みたいな魔術礼装。愉しければいい快楽主義は誰の影響なのだろう? どこぞの魔法使いでないことを切に願う。

 

「ねぇねぇ、マスター! あれ! あれ見てよ!

 三階建て以上のお城が真っ白だよ!すっごいねぇ~。いったい幾らしたんだろうね?」

 

 西暦八世紀のフランスから来た英雄は、自分の時代では権力者の象徴として建築されたとしてもおかしくない出来映えと華麗さを誇る白亜の宮殿(穂群原学園を中世時代感覚で言い表した)に驚嘆し、探検したいという欲求を抱いて即座に実行に移す。

 

 最後に残ったロードは、いつも通りのゲームのロゴTシャツ姿で口にはチュパチャプス。どこから見ても一般的な小学生だが、彼女の発する言葉がこの場にあって一番魔術師らしいというのは、魔術師という存在に対する懐疑の念が増すには十分すぎる理由だろう。魔術師や英雄なんかに関わると禄な事にならない(どこかの平行世界の正義の味方より)

 

「まして、クラスという存在に固定された英霊は本来持っている力や宝具がいくつか使用不可になる。

 おまけにクラス特性で鬼門とでも言うべきクラスまであるしな。相性次第で有利にもなるし不利にもなる。強い英霊が必ず強力なサーヴァントとして現界するとは限らないし、強ければ必ず勝てるわけでもない。

 なによりも宝具こそが英霊を英霊たらしめる絶対的な象徴だ。これの性能が分かれば対処もしやすい。相手によっては致命的な弱点があったりもする。

 まずは真名を探る。可能であればこちらの手の内を見られる前に殺す。これが聖杯戦争における基本中の基本だと、時計塔の文献にあっただろう?」

「時計塔? アンタ、時計塔所属の魔術師かなんかなの?

 いくらなんでも執行者には見えないけど・・・」

「気にするな、ただの見習いだ。

 おまえたち天才には遠く及ばない、祭位(フェス)の二流魔術師さ」

 

 肩をすくめて見せるロードことヴェルベットだが、美遊はこの仕草が一番トキメくのだ。平時でさえも理性蒸発:Aが付与されている今の彼女に見せて良いものでは断じてない。

 

「はぁ・・・ふぅ・・・RRRaaaaRRRaaaaーーーーー」

 

 ほら、狂化スキルが付与された。

 付与されたばかりの現時点ではランクDであり、フランケンシュタインと同程度のパラメータアップしかしていないが、これからどうなるのか予測も予想も絶対不可能。

 乙女の恋心が、聖杯として利用されるはずだった少女を、この平行世界聖杯戦争最大にして最悪のダークホースへと変貌させた。

 

 ーーエインズワースの命運は如何に!? つか、勝負になるだろうか?明らかに個人戦闘能力に差が生じ始めているのだが・・・。

 

「私の名はヴェルベット・ウェーバー。見てのとおり魔術師見習いだ。

 日本人ではないが、育ての親が日本在住でね。帰省しようと帰国してみたら地脈が乱れまくっていると冬木在住の知り合いから連絡を受け、何の役にも立たないとは思ったが、とりあえず来てみたところ別の空間から帰ってきたばかりの時計塔主席候補二人に鉢合わせしてしまったと言うわけだ。少なくとも、私にはそちらと敵対する意志はない。

 言っておくが、君たちの中のどの魔術師と戦うはめになっても死ぬのは私ひとりだぞ」

 

 胸を張って、無力ぶりをアピールする時計塔に十二家しかないロードの名を持つ一族の当主代理にして、時計塔で最も成功したひとりと称えられる名物講師。

 彼の内弟子とは異なり、この場にいるメンツは彼女の言葉に呆れはしなかった。

 ただ、それぞれが異なる色の瞳と視線でさまざまな思いや想い、そして恋慕と嫉妬をもって彼女に強い関心を抱いただけである。

 

 ある意味では現在までの人生において一番注目された瞬間であったかもしれない。

 普段は講師としてしか注目されず、自分が望んでいる魔術師として注目されたいという願いは叶うことはないと割り切った上で努力し続けてきた彼としては、些か不本意な姿でだが願いが叶ったのは素直に嬉しかった。

 

「聖杯戦争を勝ち抜くにしろ生き抜くにしろ、最低限の情報は集めておくべきだ。時に情報は戦局を一変させる。相手が伝説や神話上の英雄たる英霊たちならばなおのことだ」

「・・・貴女が先ほどから言っている『聖杯戦争』とは一体なんですの・・・?

聞いたことのない名前ですが、何らかの魔術儀式の名称かしら?」

「私も聞いたことがないわよ、そんな儀式。

 これでも私たちは今年度の主席候補で名門出身。ウェーバーなんて聞いたこともない新参の魔術師一門が知っている程度の情報はとっくの昔に取得済みよ。バカにすんな」

 

 プライドを大いに傷つけられた二人のエリートが、不快感を隠そうともせずに反論する。名門の中では比較的リベラルな彼女たちだが、それでも新参や寒門にむける感情は決して好意的なものではない。

 そういう風に教えられて育つのが魔術師であり、それこそが“力”の源である以上しかたがない事でもある。

 現代の魔術師にとって最大の力とは、何百年、時には何千年以上の闇にしがみついていた強烈な思想そのものであり、いくつもの世代で増幅され続けた執念である。自らの思念で世界に干渉するには、自分の願いや祈りは「世界を変えれる」と心から信じなていなくてはならない。

 謂わば信仰心を超えた盲信、もしくは狂信の域にある感情。それが、世界に対して作用し、まるで呪いのように変質させる。

 

 だからこそ、歴史ある魔術師一族は強く、強い魔術師ほど己が一族の受け継ぐ思想を信じる。信じ抜いて信仰する。

 魔術師の通弊たる閉鎖的な価値観の原因は、まさにこれであった。

 

「では、伝説の名門アインツベルンが千年の長きにわたり探求し続けてきた第三魔法『ヘブンズフィール』については、どこまで知っている?」

「アインツベルン・・・? 聞いたことのない家名ですけれど、古い北欧貴族かしら?」

「アインツベルンって・・・たしかイリヤの家じゃないの!」

「ええっ!? わ、私は何も知らないよ!?」

「落ち着け、今教えてやるから、とりあえず落ち着け。収拾がつかん。

 ーーと、言いたいところだったのだがな。どうやら招待していない客人が宴に来てしまったようだぞ?」

「「「・・・え?」」」

 

 三者三様のポカンと口を開けた間抜け面をさらす美少女三名。

 そして、徐々にヤバい目つきになってきたバーサーカーもどきの美少女一名。

 混沌とした状況に突然介入してきた、四人目の美少女。

 

 漆黒の甲冑に身を包み、ゴーグル型の仮面で可憐な素顔を隠した矮躯の少女騎士。

 生前は伝説に名を残すほどの偉業を成し遂げた事実を雄弁に語る、邪悪な気配を纏った禍々しい大剣を握るセイバーのサーヴァント。

 

 “ナニカ”に汚染され、反転してしまった元は誇り高き騎士の英霊。

 彼女の真名。それはーー

 

「法による統制こそが世界の真理。

 我こそが世界で唯一人、ブリテンの正当な支配権を有する絶対者である。

 皆、余を称えよ。余の名はウーサー・ペンドラゴンの息子、アーサー・ペンドラゴン」

「って、またお前かアーサー王!!」

 

 ロード、怒りと恐怖の絶叫。

 そう、彼女こそ偽りの聖杯戦争において最強のセイバークラスとして召喚されたサーヴァント。騎士王アルトリア・ペンドラゴン。

 本来ならばこの時空において呼び出されたとき、すでに理性は失われており、聖杯への執着と未練だけで現界を保たせていた。

 無理を通すため大幅に弱体化し、相性の上ならともかくパラメータ的に見たら圧倒的に格下のサーヴァント、イリヤスフィールに憑依した名も無き英霊によって消滅させられる存在だった。

 

 ーーそう。本来の時空においては、そうなるはずだった。

 だが、この時空では些か事情が異なる。

 確かにアーサー王は現界当初、意志と力を失い亡霊のように未遠川周辺を漂い、聖杯の気配を感知したときだけ実体化して人を襲う一種のアサシンと化していた。

 しかし、この時空には聖杯を知る人物がすでに大きく関与してしまっている。言うまでもなくロード・エルメロイⅡ世こと、ヴェルベット・ウェーバーちゃんだ。

 彼女たちは偽りの聖杯戦争で互いに争いあった仲であり、含むところはない。が、ヴェルベットことウェイバーのサーヴァント、征服王イスカンダルが放った一言は未だにセイバーの心を蝕んでおり、それが理由で聖杯への願望がさらに強化されていた。

 

 そこに現れた当事者たるウェイバー。

 当然のようにセイバー覚醒。憎しみと執着から「この世すべての悪」に汚染されてオルタ化。セイバー・オルタとして変質した意識を手に入れる。魔力のパスがそもそも存在しない召喚のため、戦闘力は完全解放状態がデフォルト。

 

 セイバー・オルタ、ウェイバー及び聖杯(美遊&イリヤ)を感知。

 その聖杯、置いてけぇぇぇっ!!!

 

 ・・・となって今に至る。

 

「やべぇ!みんな、早く空へ逃げろ!!

 ヤツが・・・ヤツが来て爆撃を始めるぞぉぉ!!!」

「はぁ? ヤツってどこの誰よ?」

「だいたい、どうやって空へ逃げますの? 飛行魔術なんてわたくしたちでもステッキで変身しなくてはできませんわよ?」

「ああぁもう!! 

 なぜかこんな時だけ反応が鈍い、如何にもなバトルマンガヒロイン!」

 

 いまいち危機感に乏しい聖杯戦争参加経験なしの二人にロードは激しく苛立つ。普段ならば慣れたものだが、今だけは違う。落ち着いてたら殺されるというか、巻き込まれて死ぬ状況なのだ。

 なにしろ、セイバーことアルトリア・ペンドラゴンが聖杯に執着するように、彼女にこそ執着心を抱いている唯我独尊の暴君が身近にいるのだ。

 欲しい物を手に入れるためなら城でも国でも壊して奪い取る、傲岸不遜な人類最古の英雄王に周囲への被害を押さえる良識、魔術は秘匿するものという魔術師の常識などはいっさい存在しない。

 

 である以上、ヤツがこれから取るだろう行動はただひとつ。

 

「フフフ・・・セイバーよ。妄執に墜ち、地に這ってなお、お前という女は美しい。

 今度こそ剣を捨て、我が妻となれ。これが王の下した決定だ」

 

 この世は宇宙の果てまで我の庭。がモットーの空気読む気がない英雄王がヴィマーナに乗ってやってきた。空からの宝具一斉爆撃で穂群原学園は壊滅状態だ!

 

「あ、危なかった・・・。とっさにゴルディアス・ホイールを喚びだしてなきゃ、今頃あの世だったな・・・」

「わーい!マスターとタンデム、タンデム♪」

「お前どこから、いつ沸いてでた!」

 

 今の今まで忘れていた役立たずの英雄アストルフォが陽気に騒いでロードに抱きつく。ただでさえ狭い御者席にイリヤたち三人に加え、体格的には女子高生くらいのアストルフォまで乗れば定員オーバーもいい所だ。ぎゅう詰めのすし詰め状態である。満員電車よりも狭くて苦しい。

 

「く、苦しい・・・ちょっとルヴィア!アンタ、その胸取り外しなさいよ! 無駄にでかくて邪魔になってんのよ、この牛乳!」

「な・・・! 貴女に言われる筋合いはありませんわ遠坂凛!

 貴女こそ、無駄に付きまくっているその余分な筋肉をどうにかするべきでしょう。汗くさいったらありませんわ、この脳筋」

「なぁぁぁんですってぇぇぇぇぇっ!!!」

「なぁぁぁんですのぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「うるせぇぇぇぇぇっ!!!黙れお前ら!作戦を考えられないだろうがぁ!」

「あはははっ!なんだか楽しいね、マスター!」

「く、苦しい・・・潰される・・・」

 

 騒ぐ三人と楽しむ一人。

 そんな四人の下敷きになっている一人の存在に誰も気づいていないこの状況。

 

 だが、もう一人忘れられた少女がいる。

 彼女こそがこの状況を打破し、完膚無きまでに崩壊させる切り札となり得る最強のジョーカー。

 

 

 爆撃によって生じた爆発で巻き上がる煙がゆっくりと晴れていく中、この場に居るべき最後の一人が姿を現す。

 

 精緻な装飾もなければ磨き上げた艶もない。闇のように、奈落のように、ただ底抜けに黒い甲冑を纏った“影”としか形容しようのない異形。

 無骨な兜に覆われた頭部に細く穿たれたスリットの奥に、燠火のように爛々と燃える双眸の不気味な輝きだけが、ある。

 何の特徴もなく没個性で、見れば見るほどに細部がぼやけ、その容姿を正確に捉えられない黒い騎士の英霊に、ロードは見覚えがあった。

 つか、ここまで来るとナニカの呪いを感じざるを得ない。

 

「Aathur・・・・・・」

「バーサーカーぁぁぁぁっ!?」

 

 そう。彼の黒き騎士こそがアーサー王伝説にその名を唄われた英雄。

 王に仕え、王を裏切り、王を救うことが出来ずに悲嘆と嘆きの中で無念の死を遂げた円卓最強の騎士。

 偽りの聖杯戦争で戦い、破れ、王の腕に抱かれて、王に看取られながら逝った彼に、もはや聖杯に願うような願望はない。

 

 だが、そんな彼だからこそ、今の主君を放置することは出来なかった。

 仮初めの物にすぎないとは言え、与えられた第二の命、その今際のきわで彼は確かに王へと伝えたはずなのだ。

 

「貴方こそ最高の王であった。貴方の元に仕えた誰もが、そう思っていました」

 

 ーーと。

 この言葉は王への感謝。変わらぬ忠誠と永遠の友情。

 そして「貴方は間違ってなどいない。貴方に仕え裏切った者たちもまた、その思いだけは変わらない」そう伝えたかっただけなのだ。

 しかし今、彼女は墜ちて暴君となった。彼の言葉が彼女を追いつめ、狂気に走らせたのならば、それは自分の罪だ。

 罪は今度こそ償う。

 彼の王に裁かれたいという願いは果たされた。ならば、今度は私が裁こう裁くことで彼女を今度こそ救って見せよう。

 此処に再び、英霊サー・ランスロットにも聖杯に託す“願い”が生まれ、聖杯ーー美遊はその願いを叶えた。

 

 こうして三度目の命を与えられた湖の騎士ランスロット。

 剣術の腕ならば王をも上回ると言わしめた最強の騎士が最強のサーヴァントとして改めて現界する。

 

 ーーまぁ、憑依した対象に狂化スキルが宿っており、空で泥棒猫と戯れている(ように見えた)シーンを目の当たりにした結果ランクが一気にEXまで上がってしまったせいでバーサーカーとなってしまったが、其れはご愛敬。能力値はセイバーとして召喚された時の物になってます。

 

「再び我の許しを得ずに我の邪魔をする気か、狂犬めが・・・・・・」

 

 空気読まない英雄王がなんか言い出した!事態はもはや収集不可能だ!

 

「ランスロット卿か。円卓への出仕ご苦労。

 それで? その剣はなんのつもりだサー・ランスロット。王たる私に剣を向けるなど神に弓引くがごとき大罪だぞ?」

「Aathurrrr!!!」

「ふん。愚かな、モルドレッドと同じく私に逆らうか。

 ならば是非もなし。その首、王自らの手ではね飛ばして玉座の間に飾ってくれる!」

「おいおいセイバーよ。夫の言を無視するなど、お前がウルクの民であれば死罪だったぞ?

 ふん、まぁいい。特別に許す。早く我が褥で花を散らせ。其れで今回の件は不問にしてやろう」

「Aathurrrrrrrrrrrrrr!!!!!!!」

「もう滅茶苦茶だなオイ!! これどうやって収拾つけたらいいんだ!?

 ーーっつか、エインズワースはどうなった!?」

「わーっ!ヒポグリフよりも早ーい!」

 

 背後からTS英霊にハグされつつ、もはや誰も覚えていない疑問をどこかの誰かに投げかけるロード。

 そんな彼女を一瞥することなく、最強サーヴァント三騎による手加減なしのガチバトルの幕が切って落とされようとしている。

 

 

 

 

 冬木市民は生き延びることができるかーー?

 

つづく




私が書くとギャグにしかならなくて嫌ですね。
いっそ真面目にロードを書くためにもハリポタにTS転生させようかと考えています。

それと、期待している方はいらっしゃらないでしょうが、次回に冬木市崩壊規模の戦闘は起きませんよ?
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