ただし、久しぶりに完成まで漕ぎ着けられたせいで話自体は破綻してます。
リハビリと自戒へ布石のため、頭の中にあるゴチャゴチャを吐き出す為の回だとご理解下さい。次話から真面目に書きます。面倒事に巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした。
「・・・・・・ん?」
ロードが目を覚ましたとき、そこは冬木の学校前ではなく、薄暗くジメジメした地下牢でもなかった。
景観の良い、街全体が見渡せる冬木一の高級ホテル『冬木ハイアットビル』のスィートルーム。
デカすぎるその部屋の寝室に、これまた馬鹿でかい図体で聳え立つように存在しているキングサイズのダブルベッド。そのど真ん中である中央付近。
そこが今、彼が彼女として存在し、実在している空間座標の名前である。決して何処かの平行世界で美遊の兄を名乗る少年が囚われていた牢獄ではない。
サーヴァントとマスターの間では定番になっている、なんらかの夢イベントか?
否、ロード・エルメロイⅡ世ことヴェルベット・ウェーバーのサーヴァント、征服王イスカンダル ライダーが違うと告げている。
「ならば夢だな。忘れよう」
あっさりとロードは、決断を下した。
未練はない、迷いもないし躊躇もしない。即断即決である。
己が夢の中で出した諸々の推論も含めて一切合切金輪際、綺麗さっぱり忘却の泉の底へ投げ込んで蓋をしてしまった。
彼にとって王とは、そう言う存在である。
王の放った言葉とは、そう言う意味である。
臣下は王を支える者。王は臣下に夢を魅せ、導く者。
果たすべき役割が違うのだ。
征くべき指針を考え、指し示すのは臣下の役割ではない。
だからこそ彼女は考えるべきことを考える。考えなくて良いことは考えない。
普段であるならば弟子たちが未熟なことと、何よりも考えなしな脳筋が揃っているせいでそうはいかないのだが。
今、彼でもある彼女の側には王が居る。姿は見えなくとも憑依している魂の存在は常に感じ続けている。
王が側にいるとき、考えるのは自分の仕事だが、導き指し示すのは自分の役割ではない。
決断と決定は王の役割であり権利なのだから。仕える臣下がするべき事柄では断じてない。
そう割り切っているからこそロードは、退嬰のことには驚かないし狼狽え騒がない。慌てもしない。
当然だ。歴史上最大の覇王に仕える臣下たる者、この程度のことで狼狽え騒ぐようでは修行が足りないーー
「マースタ☆ おっはよー♪
ねぇねぇ、女の子になったボクのおっぱい枕で寝た感じはどう?
気持ちいい?気持ちいい?
いやー、そんなに感触を褒められると照れちゃうなボクー♪ でへへ~」
「うおわぁぁぁぁぁぁっ!?」
ロード・エルメロイⅡ世、大絶叫。
狼狽え騒いで醜態さらし、逃げ回るようにベッドの脇へと全力逃避。完全に敗残者のそれである。どう脚色して美化しても英雄譚には描けない。絶対に。
征服王イスカンダルの臣下としての意地と矜持、そして誇りでさえも吹き飛ばして忘れさせられるのが女の子のおっぱい力。
時に美少女のおっぱいは世界を救うのだ。バカにしてはならない。
「な、なななななななななななな!?」
「名? だからボクの真名はシャルルマーニュ一二勇士が一人、アストルフォだってばー。忘れないでよー、愛しのマイ☆マスター♪」
「誰が愛しのマイ☆マスターだ!
と言うかなんだ! マイとマスターの間にある星は!? どういう意味があって、どういう価値がある!? て言うかむしろ、どうやってやるんだそれ!?
人の言語に絵文字を入れる手法など、存在しないはずなのだが・・・」
イスカンダルについて詳しくなる過程で世界史全般に詳しくなったロードには、当然のように言語学にも一定の知識が身についている。
だから日本のマンガ文化関連でその手の手法が取られていることにも納得しているのだが・・・さすがに人と人との会話の中で再現する方法までは知っているはずもない。むしろ魔術を使ってさえ無理な気がする。
頭の中に直接☆マークが浮かんだのだが、アレはいったい・・・・・・。
「ボクの固有スキルだよ!」
「意味ないなそれ! いったい何のために使う、なんの逸話が具現化したスキルなんだよ! シャルルマーニュ伝説に、☆マークが出てくる文章ってあったっけ!?」
満面の笑みを浮かべて擦り寄ってこようとするライダーを懸命に押しとどめながらロードは、先ほど少し集中することで見ることができたサーヴァント アストルフォのステータス欄を思い出して頭を抱えてしまう。
彼、もとい彼女のステータス画面はハッキリ言って無茶苦茶だった。各種能力のランクやスキルなどは問題なく確認できるのに、そこかしこがイタズラ書きで埋め尽くされていたのだ。
ロンドンに置いてきたバカ弟子の提出してきた答案を彷彿させられてしまい、二重の意味で苦痛である。辛いのだ。主に、胃が。
「・・・確かにサーヴァントの中には能力を隠蔽する術や宝具を持っている者は珍しくもない。あの黒いバーサーカーなど、その筆頭と呼ぶべき存在だろう。
だが・・・いったい何をどうしたらステータス画面にイタズラ書きができるようになるんだ・・・? あれって意図的に操作できる物だったっけか?
聖杯で願いを成就させなくても、この謎を解いただけでグランドの位階を授かれること間違いなしだぞオイ」
その場合、彼の師であった先代エルメロイ一世の死は本格的に無駄になってしまうだろう。なにせ彼の得意としていたのは降霊魔術。死者の魂を解析し、分析し、正しく評価し直して正当な使い方を導き出す術において右に出る者はいない。
当然だ。神童の名は伊達ではないのだから。
・・・だが。いや、だからこそ彼ならば聖杯による英霊召喚でなくとも、英霊アストルフォの持つ特殊な性質を解き明かすことは不可能ではなかったはずなのだ。
最低でも理由付けぐらいならば可能であったはず。それだけでも時計塔のお偉方の度肝を抜くこと請け合いである。
何故なら今、時計塔に一三人しかいないロードの一人であり、一番の異端児と呼ばれている現代魔術課の講師ロード・エルメロイⅡ世である自分自身が度肝を抜かれて理由説明を求めているのだから。
最後まで道が交わることのなかった師の死から、約十年。
つくづくあの時のことを思い出して色々と考えさせられる平行世界聖杯戦争であった。
「ーーん? 起きたかマスター。ならば丁度良い。朝餉の用意をせよ。
私は朝目を覚ました後、まず朝ハンバーガーを食すことを日課としている。
貴様のサーヴァントとして当然の要求だ。まさか否やはないだろうな?
もっきゅもっきゅ」
「・・・って、なぜお前まで居るんだセイバー!? 敵だろお前は! 今回も前回も、たぶん、それ以外でも!
あと、朝飯寄越せとか言ってる割にテーブルの上には山盛りのハンバーガーがあるように見えるのは、ボクの目の錯覚か!?」
「愚かな。これはモスバーガーだ。マクドナルドのハンバーガーではない。
朝ハンバーガーと言えばジャンクフードの王様とも呼ぶべき、マクドナルドのビックマックバーガーに決まっているだろう?」
「細かいなぁ、おい!」
もう何がなんだかよく分からなくなってきたが、どう言うわけだか昨夜まで敵だったはずの黒いセイバーこと、アルトリア・ペンドラゴンがソファーの上にふんぞり返ってハンバーガーの山を食べ崩しながらロードを眺めている。
敵意は感じられないが、食欲は無限に感じられる。間違いなく召喚者のエンゲル計数を破壊し尽くすタイプのサーヴァントだ。金持ち専用の特殊クラスに指定すべきだろう。
だってそうでもしないと、聖杯戦争を勝ち残って願いを叶えるために召還したサーヴァントを養うために、勝ち残って手に入れた聖杯を使わざるを得なくなるし。
元が取れないのではなく、そもそも魔術儀式として成立すらしていない。完全に破綻し切っている。壊れすぎだ。
(なぜ衛宮切嗣は、こんな奴を召還したんだ? 割に合わないことこの上ないじゃないか。
あれか? アインツベルンが資産家で、金が有り余っていたからか?
ーー死ねよリア充、滅び去れ)
自分が如何に慣れぬ日本で金に関連する苦労を強いられたのか、あの魔術師殺しには小一時間ほど説教してやらねば気が済まない。
徳用ホッカイロ10パックが400円。たったこれだけのことが自分の魔術師としてのプライドをどれだけ傷つけたことか思い知らせてやらねば腹の虫が治まらなーー
「ーーあれ? ボクとライダーが戦ったセイバーのマスターって、魔術師殺しの衛宮切嗣で合ってたよな・・・? ん? 違っていた様な気も・・・?
ーーダメだな。夢のせいでおかしな方向に記憶が錯綜している。少し頭を冷やしてこなければ・・・。悪いがセイバー、朝飯は少し待ってろ。
とりあえずシャワーを浴びてくる・・・」
「ん? 私は別に構わんが、気をつけろよ?
下手したら死ぬぞ。いろんな意味で」
「・・・?? なんのことを言っているんだよ、お前は・・・」
「だから、今シャワー室を使っているのは、美遊・エーデルフェルトだと言っているのだ」
「ちょ、ま! それ早く言、えーー」
ガララッ。
ーーなんというバッドタイミング。ギリギリで取っ手に伸ばした手を引っ込めて「た、助かった・・・」と胸を撫で降ろしたロード・エルメロイⅡ世ことヴェルベット・ウェーバーの身に人生最大級の不幸が訪れ、扉の方が勝手に開いて中から出てきたのは、ああ・・・なんと言うことだろうか。
生まれたままの姿でバスタオルも巻いていない、スッポンポン美遊ちゃんその人であった。
美「・・・・・・」
エ「・・・・・・」
美「・・・・・・・・・」
エ「・・・・・・・・・」
美「・・・・・・・・・・・・襲っていい?」
エ「ーーなんでだよ!? 逆だろ普通、立場的に!
メインヒロインらしく、怒鳴るか殴りかかってくるか悲鳴上げるかどれかを選べ!
それが出来ないと言うのであれば、せめて前を隠せ!見えちゃってるだろ!?
・・・て言うか隠してくださいお願いします。
堂々とされると経験ないんで、どうしていいか分かんないんです。いや、マジで」
美「ん。わかった。じゃあ、服着てくるからベッドで待ってて。すぐ戻るから」
ガララっ。
再び閉じられ、ホッと一息つくロード・エルメロイⅡ世。
ふう、これでもう安心・・・・・・・・・じゃない!
「ーーどうするんだよ! ただの一時凌ぎじゃないか! 完全に蜘蛛の巣に捕らえられちゃってるだろう!?
どうすればいい!? どうしたらいい!?
なんでこうなっているのかサッパリ分からないが、とにかく今は逃げ出す手段を考え出さないと・・・て言うか、金ピカ王様はどうした!?
アイツ経験豊富そうだし、こう言う時には頼りになりそうだ!」
「金ピカならプラモを買いに、中心街とやらへ向かったぞ。
ライダーがパジャマを着て貴様と同衾を楽しみ、私は夜マックを嗜んでいる最中におきた出来事なのだが、『見よ、セイバー! この百式という名の黄金色に輝くスマートでスタイリッシュな奴! 素晴らしい! 我は気に入ったぞ。これを十万個ばかり購入したいのだがどうか?』そう問われたのでな。
面倒ではあったが『その数を買うなら会社ごと買い取った方が早いぞ、恐らくだがな』と答えてやったら『そういうものか』と真顔で唸りだし、金子を求めて銀行に金の延べ棒を大量にーー」
「待ってくれ! 何かすっごいデジャブってるんだけど今!
・・・つかお前等って、そんなに仲良かったっけ? めっちゃ仲が悪かったように記憶してるんだけど・・・」
「それは恐らく、違う私だろう。
少なくともこの私は、貴様らと顔を合わせたことはない。
まぁ、所詮我らは英霊の写し身。影とでも呼ぶべき存在だからな。記憶は召し上げられても今この場にいる私に引き継がれるわけでもないのだろうさ」
割り切った態度と口調で言い切った後、少しだけ雰囲気を変えて彼の黒き騎士王は遠くを見るような視線をどこかへと向けて、
「・・・尤も本物のアーサー王は未だにカムランの丘から帰らること叶わず、天に召されることも出来ず、ただただあの丘で永遠に咽び泣き続けているのかと思うと些か哀れではあるがな・・・。
ーーとは言え、彼の気高き騎士王と私には本質的な意味での関係がないのも又事実。
なにしろ私はオルタ(反転している)だからな。
失敗した名君として死んだアーサー王の可能性の一つが具現化したに過ぎない身としては、縁も縁もない原点に然したる感慨がわかないのも否定しようのない事実ではある。
故あまり気にするな。少なくとも、私は貴様と貴様の王の功績を認めている。我がマスターとして迎えるのも吝かではない程にはな」
「ーーおい、ちょっと待て。今なにか良い話に混ぜて物凄く気になりまくる発言が混ざってなかったか?」
「だから気にするなと言うに。
ーーさて、では改めて問おう。私と共に歩むか?
歩むか、歩むんだな。よし!
今ここに、契約は完了した。私は貴様の盾となり、剣となろう。
なので差し当たっては、マックを追加で買ってきてくれ。大至急な」
「せめて選択肢ぐらい出せよ! マスター権限を拒否する権利すらないのか、このパチモン聖杯戦争には! 押し売りにも程があるだろ!?」
まさかのセイバー自身から強制的に押し売られるサーヴァント契約である。
どこぞの平行世界では「問おう、あなたが私のマスターか」と礼儀正しく問いかけてきてくれた騎士王少女は騎士道を貫く高潔な騎士の中の騎士であったからこその存在であり、必要があれば略奪も殺戮も行う暴君の道を選んだ黒き騎士王には決して通ずる事のない理想的な展開である。妄想なのだ。
気高くも美しい、でも少し抜けてて腹ペコな美少女という男たちの理想を込めて喚ばれたのが騎士王アルトリア・ペンドラゴンという存在。
対して黒き騎士王アルトリア・オルタは、半端に真逆。
腹ペコ美少女で美しいが、気高さではなく気位が高い。あと、スゴい我が儘だ。言い出したら聞くまで引かない押しの強さがある。
にも関わらず目の前の敵に対してのスタンスには一切変わりなく、敵は切る。それ以外の概念を持ち合わせていないのかと問いかけたいほど徹底している生粋の「敵見たら斬り殺すちゃん」なのである。
違いがあるとすれば自分が“そう”であると認めるか否か、それだけだ。
そしてこの黒ずくめの少女は、明らかに認める方だ。自分は人殺しであると、真顔で平然と堂々と断言できる暴君であるが故に、我が儘を言うのにも躊躇いがない。遠慮もない。
拒否れば切る。ただ、それだけだ。
「・・・それって、ただの我が儘なお子さまじゃね?」
「ふむ。我がマスターが望むというのであれば、今この場で聖剣の露払いに使ってやっても良いが?」
「わあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
平凡なツッコミであろうとも命懸けで言わねばならない。それが暴君の治世と言うものである。
今ここに、暴君アルトリア・オルタの治めたとされる白亜の理想都市エルサレムは信仰の聖地ではなく、マックの聖地巡礼における最大のパワースポットとして地上に顕現する!
頑張れロード・エルメロイⅡ世! ベディビエールは居ないけど、代わりにアストルフォを伴って歴史修正に挑むのだ! 人理焼却阻止の使命は今、君の手の委ねられた!
「聖杯戦争は!?」
ーーどちらも立派な聖杯戦争ではある。
意味合いも目的も世界観までもが、全く違うだけで・・・。
「ーーまた違う女と話してる・・・・・・!!」
「ぎゃーっ!? ネグリジェ着た女子小学生が黒いオーラ纏ってオルタ化しかかってるー!?」
「あははははっ! よーし、ボクも負けてられないぞー! 変身だー! おー!
えーい! キャスト・オフ!!」
「ぎゃーっ!? 騎士に見えないアホ騎士がパジャマ脱ぎ捨てて中身見せたら、穿いていなかったーっ!?」
「今帰ったぞ皆の者! 王の凱旋だ!祝うが良い!
ふはははは! 見よこのガンプラを! 数量限定生産の特別品だぞ!
やはり我のLUCは伊達ではないな!」
「なんかどっかの英雄王が、どっかの征服王と同じ様なこと言い出してるーっ!?」
「もっきゅもっきゅ。ごくん。・・・ふぅ、なかなかに良い味だったな。
ーーでは次に挑むのはフィレオフィッシュに・・・」
「お前いい加減、食う以外にも何かしろよ! さっきから食べてばっかじゃんお前だけ!
て言うかよく考えたら、お前が原因のすべてなんですけど!? 事の元凶が一番気楽そうに飯食ってるって、アンリマユより酷くないですか!?」
「ふっ。王道とは唯一無二の物。
そして我が王道とは即ち! 食う寝る遊ぶ!
以上だ」
「本当に聖杯へ掛ける願いは、どこへ行ったんだー!!!!!!」
叫ぶロードと襲う美遊。
食べるセイバー・オルタと、造り始めるギルガメッシュ。
そして、脱ぐTSアストルフォ。
今日も聖杯戦争の一日が(無駄に)過ぎ去り終わろうとしている。まだ何もしていないのに・・・。
ーー聖杯って、何のために誰が求めている物だったっけ?
状況が混迷しすぎたので、次回に続きます。
注:ギルはセイバーの気高さとかを苛めて愛でたかったので、苛めがいの無くなったオルタには執着ありません。
注2:美遊(聖杯)の頭が悪くなったので、聖杯戦争全体が頭の悪い結界に包まれました。