ワンピースでワクワクさん 作:ゴロリ
元奴隷はシャボンディ出身が最も多かった。子持ちが3人いて、子どもは全員赤子や幼児。心配だろうから家族をここへ招待することに決定。恋人が心配という声もあったが、男はダメです。なんで俺が男のために危険な場所に行かにゃあならんのか。
運よく東の海出身の子持ち奴隷もいた。奴隷というより天竜人の妻だったらしいが。ドーン島の貴族の娘だったが両親が死に家が没落、夫は自殺、母子2人で再出発という時に天竜人に見初められた。故郷に5歳の息子を残してきており、心配で仕方ないと言う。くいなとベルメール死亡フラグ破壊のために、出航決定。
他にも子持ちや妹弟が心配という声はあった。夫を連れてくると俺の女が減ってしまうが、子どもだけつれてくるわけには行かないから夫も移住させることを受け入れる。ただ、2人乗りの潜水艦では詰めて乗っても俺と女と子どもで限界。夫持ちは新しい潜水艦が完成するまで待機だ。
俺は子どもの顔を知らないし、ここに来るよう説得もできないので、子どもの捜索は元奴隷に行ってもらう。この時に海兵に捕まる危険性がある。このリスクを下げるため、島を出る元奴隷には、皮を剥いで奴隷の焼印を消すことを義務付けた。その上で、身体能力や演技力も一定のラインを作った。海兵に勝てないのは仕方ないが、逃げることもできないのはキツいからね。俺は子どもの筋力だから女を抱えて走るのは無理だ。
変装用に顔を変えることも義務付けた。これは整形ではなく、おもちゃ屋が特殊メイクをし、俺が能力で貼り付ける。整形はせっかくの美人が台無しだからやらない。
半年間みっちり鍛えさせた。女達は能力の合格ラインに達していった。皮を剥いだ跡も消えた。
シャボンディ諸島から家族の回収を始めた。近いから航海の危険が少ない。
シャボンディ諸島はまだ荒れたままだった。むしろ余計ひどくなったかもしれない。人攫いが貧困から抜け出せず海賊になったり、逆に家族や恋人を攫われた側が政府に怒って海賊になったり。街は若者を天竜人に取られて労働力不足。復興が進まない。海兵はこの世の不条理にやる気をなくす。余計に海賊が暴れる。やるせなさからドラッグに手を染める。女は汚いおっさんに体を売る。
シャボンディ出身の女達は衝撃を受けていた。あまりにも記憶と異なる景色。知り合いの死。
運よく3組のうち2人の子どもと1人の夫は回収できた。残り1人の子どもは天竜人に売られてしまっていた。この夫は行方不明。もう1人の夫は子どもを食べさせるために自分の身を天竜人に売っていた。
残念ながらこういう結末になってしまった。俺はあえてこの話を元奴隷皆で共有した。一番の狙いは、天竜人に対する怒りを思い出させ、トレーニングにより一層力を入れてもらうことだ。男達の俺に対する不満を再び天竜人に向けさせる狙いもあった。
とかく、シャボンディはひとまず片付いた。ようやく東の海に行ける。
元貴族ヒロアの息子、ポール君の回収。くいなとベルメールの死亡フラグ破壊。
原作ではくいなの死因は階段からの転落になっていた。これはウソで本当は男になって生きている可能性もあるが、一応死と仮定して助けに行く。しかし「金輪際階段を使うな!」と言っても意味はないだろう。階段はどこにでもあって日常的に使うものだ。彼女を救うのはとても難しい。確実に救うなら自然系の悪魔の実を食べさせるしかない。もしくは誘拐して牢の中で監禁。確実ではないが、俺の能力で骨を固定してしまう手もある。彼女が階段から落ちて死ぬとしたら、後頭部を打つか、転んだ拍子にナイフや刀が内臓に刺さるか。後頭部なら骨を強化しておけばダメージを減らせる。内臓に刺さる場合も、脳や心臓ならば頭蓋骨やあばらがあるので弾ける。
くいなの誘拐はかわいそうだしコウシロウがいるからたぶん無理。自然系を食べさせるのも悪魔の実を見つけられないから無理だ。俺の能力で骨を固定してしまうのが現実的だと思う。成長できなくなるから世界最強の剣士は諦めることになるだろう。いつか体を元に戻すために俺を探す旅に出るのだろうか。これは願ったり叶ったりだ。
ベルメールの死亡フラグ破壊はたやすい。彼女は金がなくてアーロンに税を払えず殺された。ならば俺が金をあげればいい。俺は武器、船、おもちゃを作れる。岩石を溶かし金や銀を抽出することもできる。金には困らない。
ヒロア、ファンファンと共に潜水艦に乗り込み、出発する。今回はジョイではなく娘のファンファンに協力してもらう。ジョイは大きく3人で詰めて乗っても潜水艦に入らないからだ。2人乗り潜水艦と人魚の泳ぐ速さは短距離ならほぼ互角だが、長距離では潜水艦が断然速い。人魚は疲れるが、俺の能力は疲れないからな。カームベルトを抜けることを考えると、潜水艦で突っ走る方が安全だった。
潜水艦は3人でもかなり密着している。俺が後方でスクリューを回し、ファンファンが前方で舵を取る。ヒロアは俺の後ろで俺を抱く格好だ。ポールが来たらファンファンの前に座ることになるだろう。かなり苦しくなるが、子どもだから入ると思う。
ファンファンは時折魚に話しかけて方向を確認する。巨大魚や海底火山の危険も教えてもらう。そうして脅威を避け、順調に進んでいく。
「ここからカームベルトだよ。この潜水艦の速さならたぶん大丈夫だけど、気を引き締めてね」
「と言っても俺は前が見えないんだ。ファンファン、俺達の命はお前に任せる。頼んだぞ」
「ワクワクくんって本当に10歳?」
緊張の中、とうとうカームベルトへ。
海流がなくなった。横向きの力が減り、潜水艦の速度が増す。
「で、出たー! 下に下に!」
早くも海王類を見つけたらしい。ファンファンは叫び、大慌てで舵を上に上げる。潜水艦は下へ向く。
慣性の力で体重がふっと軽くなる。落下のような浮遊感も。
「はあ、はあ、はあ」
ファンファンは脂汗がびっしょり。エロい。
ふと、船内が暗くなった。一瞬遅れて、正面からすさまじい衝撃がきた。
「ぐげっ。く、苦しっ」
「ぎゃあああああ!」
船が回る。目が回る。ファンファンとヒロアが泣き叫ぶ。あまり口を開けてると舌を噛むぞ。
たぶん、海王類に直撃はしていない。直撃したらもっと吹き飛ばされて加速で意識が飛んでいるはず。だが、巨体の近くを通ったことで、巨体の周りの乱流に飲み込まれたのだろう。この乱流だけでぶちかまされるような衝撃を感じたということだ。
潜水艦は壊れてないぞ。俺が硬化をかけ続けているからな。
「ファンファン、速く舵を取れ! じっとしてたら食われるぞ!」
「ひい、ひい、ひい。な、なんでそんな冷静なの!」
「もう慣れた!」
怖くはあるが、なんか理性で恐怖を押さえつけられるんだよな。慣れだと思う。
その後、ぎゃあぎゃあ言いながらなんとかカームベルトを抜けることができた。その時、ヒロアは気絶して泡を吹いていた。一般の人間には耐えられない負荷がかかっていたようだ。
一旦近くの無人島に停泊し、ヒロアを起こす。
「はっ。わ、私は一体……」
カームベルトを突破したことを伝える。
「うっ、うっ。うわああああん。うええあああああん」
ヒロアは泣いて喜んだ。それだけ怖かったのだろう。
食事やトイレ休憩を取ってから、再び出発。目指すはドーン島だ。
グランドラインのような異常気象もなければ巨大魚にも滅多に遭遇しないので、あっという間に到着した。
「私は、帰ってきた! 私の故郷! ゴア王国に!」
ヒロアはまた泣いて喜んだ。いいことしたなあと思う。
でもここで海兵に正体がバレたりしたら台無しだ。変装中であることを忘れるなと念を押す。
ゴア王国はとても高い壁に囲まれていた。中に豊かな街があり、外は森が広がっている。一部海面にも面している。森にはゴミ溜めがあり、貧しい浮浪者もいて、危険な生活を送っている。この壁のために浮浪者は中に入れない。港もチェックが厳しい。門はあるが入るためには衛兵のチェックを受ける。ふつうならば。
俺ならば能力で簡単に壁を崩して中に入れる。
森から抜けて壁に行き、俺の能力で中に入ることにした。道中は危険なので、ファンファンは留守番してもらう。フーシャのある村には入ってもいいと言っておいた。
ヒロアと共に森を歩く。木々が鬱蒼と生い茂り、ヘビや狼が獲物を狙う。奴隷だった頃のヒロアなら進めなかっただろう。今はトレーニングの成果もあってスイスイ進める。
2時間くらいで壁に到達した。けっこうしんどかった。こんなところで生活してたらルフィやエースの強くなるのも頷ける。
互いに服の汚れを落とし、気を引き締めなおす。
「あなたはお母様。私は息子という設定で」
「ええ。行きますよ。ゴンタ」
なかなか様になってるな。では、壁を溶かしましょうか。
壁を溶かしていくが、出た瞬間を見られるとマズい。薄皮一枚残し、ちょこんと目の高さに穴を開ける。周囲をうかがう。ここは人がいる。往来がそれなりに多い。場所を変えよう。
ヒロアの記憶を頼りに、壁の向こう側に人のいなさそうな場所へ移動。壁を溶かし、薄皮一枚残して目の部分に穴を開ける。周囲をうかがう。人気はない。よし。
壁を溶かし穴を開け、2人で中に入る。穴の周囲をもう一度溶かし、穴をふさぐ。
「ポール、今会いに行くよ」
俺たちはポールを探して街を歩いた。ヒロアが絶対に信頼できるという友人を見つけた。没落する前の家のメイドだという。正体を明かし、そのメイドに話を聞く。
「ポール様はナントカープ卿の養子になりました。お嬢様が世界貴族の婦人になられましたので、出世の可能性を見込まれて。しかし、お嬢様がフィッシャー・タイガーに誘拐されたと記事が出てからは、ナントカープ卿は心変わりされたようで、遺棄するとも」
「そんな……」
危なかったね。脱走したために息子がピンチになっていたとは。
あのゴミ山で貴族の息子が行きぬけるとは思えない。あと少し遅れていれば死んでただろうね。
ナントカープ卿の屋敷に行き、そこのメイドにポールの居場所を尋ねる。離れの小屋で寂しそうに座っているらしい。
メイドに連れられそこへ行くと、うじうじ泣きながら座っているポール君がいた。ヒロアはすぐさま抱きついた。
「えっ」
「ポール」
感動の再会かもしれないが、バレるからそういうことはするなよと。
俺はメイドに抱きつき、口と足を接合する。これで口は開かないし足も動かなくなった。かわいそうだけど、こっちは命がかかっているのでね。
「んぐーーー。んむむむーーーっ」
メイドは涙ぐみながら手でジタバタする。俺はそっとつぶやく。
「彼女達が脱出したらあなたの拘束も解きます。ただし大声を出さないでくださいね。僕達が捕まりそうになったらあなたを恨み殺してしまうかもしれませんよ」
「ん、んむむーっ」
メイドは涙目で頷いた。かわいそう。案内してくれただけなのにね。
ポールはヒロアの服の中に入り、おんぶされた状態で屋敷を出て行く。距離をとったのを確認し、メイドの拘束を解いた。
「はひゅーっ。はひゅーっ、はひゅーっ」
かわいそうなメイドに頭を下げてから、俺も屋敷を出た。
ファンファンはおそらくフーシャ村にいる。ヒロア、負われたポールと共にフーシャ村目指して山を降りる。
「くっくっく。バカな女がガキ連れてやってきたな。おい、あり金全部置いていけ。服も脱げ。いや待てよ、こいつよく見りゃいい女じゃねえか?」
山賊に囲まれてしまった。銃をこちらに向けている。ウザい。やはり治安悪いところはウザい。
「母上、何が」
「安心して。大したことないわ」
「できるだけひっついてください」
「はい」
俺はヒロアを抱きしめ、ポール、ヒロア、俺の全身を硬化させる。さらには水蒸気を固め、氷のよろいを纏っていく。
「おい、動いていいとは言ってないぜ」
山賊が俺の近くに銃弾を放つ。俺は構わず氷を纏う。
「なんだ? 急に寒気が」
「旦那、さっさとやっちまいましょうぜ」
「どうせ娘とガキが1人ずつ、ビビッて何もできやしませんぜ」
「ふっ。それもそうだな」
山賊たちが俺たちに近づいてくる。
あえて待つ。あえて接近させる。
今だ!
地面を一斉に気化させる。爆風、熱風が山賊たちを吹き飛ばす。
「うびゃああちちちちっ!」
「いでででえええ! 何だこりゃあああ!」
「あぢぃー! 燃える燃える!」
山賊達は地面に痛みと熱に泣き叫ぶ。しばらくして、どこかへと走っていった。あの先に川でもあるのだろうか。
その後は特に問題なく、フーシャ村に到着。ヒロアはポールを降ろす。
原作第一話の舞台。感慨深いね。のんびりしたところだ。
「おーい! 人魚がいるらしいぞー!」
「人魚だって!? おとぎ話じゃないんだから」
「本当だって! 来てみろよ!」
ファンファンは話題になっているようだ。
住民が駆けるほうへ俺達も近づいていく。おおっ、ルフィ発見。ちっちゃいけど分かりやすっ。あの間抜けな顔は間違いない。マキノも発見。明らかに1人だけ輝いている。天竜人に見つかったら妻にされそう。
ファンファンは畑で生野菜を齧っていた。彼女がおいしいと喜ぶと、農夫も喜んで次へ次へとあげていた。太るぞ。
「ファンファン!」
「あっ! ワクワクくん!」
追手は来てないが、急いだ方が無難だ。
ファンファンを背負い、港へ歩く。重い。
壁の中では、「ポールを連れて4人で戻る」としか説明していなかった。これではくいなやベルメールの元へ行く理由がない。だが、航海中にそれっぽい理由を見つけておいたぞ。
「はっきり言います。カームベルトを渡ったときのあの衝撃。危険さ。ポールに耐えられるとは思えません。ヒロアさんでさえ気絶してましたから。下手したら死にます」
「えっ、でもっ」
ファンファンが驚いたように言う。ヒロアも驚いていたが、俯きながらつぶやく。
「私も、実は無理ではないかと思っていました。ですから、東の海で生きる方法を考えていました」
まあ当然だわな。
「私もそれに賛成です。ヒロアさんとポールには東の海で暮らしてもらうことにします。先日の会談で言っていたと思いますが、家族と暮らす方法は3つ考えられます。家族を壁に招くか、壁ではないどこかに隠居するか、海軍をひっくり返すか。この真ん中、壁ではないどこかに隠居してもらいます」
「でも、どこかって?」
「今から探します。海軍支部がなく、それでいて海賊に打ち勝てる正義の賞金稼ぎでもいればちょうどいいですね」
はい、これでコウシロウ捜索決定。簡単に見つかるといいけどな。