ワンピースでワクワクさん 作:ゴロリ
俺の一味に入った魚人達、元奴隷とその家族の人間。全員集めて今後の予定を話し合った。
まず、今から2年間は準備期間にすると説明した。トレーニング、船作り、勉強をし、本格的な航海に備える。
しかし、魚人達は俺にとても期待している。トレーニングだけではつまらないだろうから、お試しでちょっと活動させる。
「ここに集まってくれた魚人、人魚の皆は、多かれ少なかれ人と魚人の間の差別をなくしたいという共通の夢を持っていると思う。正しいか? そう思ってないなら手を挙げてくれ」
俺は尋ね、周囲を見回す。質問の仕方の問題もあるかもしれないが、誰も手を挙げなかった。
「誰も手を上げていない。指導者として、俺は皆からこの夢を託されたと認識させてもらう。無論、ここにいる皆の一人一人が夢を掴もうと努力していくのであり、俺だけが夢を叶えるわけではない。皆で叶えるのだ」
力強く宣言する。うおおーっ、と声が上がった。
「うおおーーっ!」
「よっ、英雄!」
「きゃーっ、かっこいいーっ!」
決まったな。人魚達はかわいいな。
「ここで、差別をなくすための3つの戦略を提案する。海賊狩り、経済や食料の支援、道楽の提供の3つ。初めはこちらから人間側に提供するばかりになると思う。徐々に人間側からも支援してもらうようにする。最終的に、互いに助け合い、支え合う形に持っていく」
「ほーっ」
「さすがです! やはりワクワクさんはすばらしい!」
パチパチと拍手をもらう。元奴隷も忠誠心の高い娘は人魚に負けじと声を張り上げている。
「これから2年はお試し期間とする。シャボンディ周辺で小規模に活動する。例えば海賊狩りなら、海上で格下の海賊を確実にしとめる。一般市民や海兵を直接助けると信頼を得られると思うが、誰も見ていない場所で賞金首をやっつけても問題ない。経済支援の話になるが、賞金首を捉えて得た金は、全額、シャボンディ諸島への経済支援へと回す」
「えーっ! 全額!?」
「もったいないねえなあ」
「でも、すごい! そんなことやったらヒーローじゃん! 皆私達のこと好きになっちゃうよ!」
「そういうことだ。これで信頼を得ることができる」
人魚はやっぱり反応が素直でかわいいなあ。
「最後に道楽の提供。これはおもちゃを提供するだけになる。ゆくゆくは人魚のダンスを見せたり豪華料理を振舞ったりするつもりだが、今のシャボンディ諸島に人魚が近づくのは危険すぎる。お試し期間では安全を徹底的に優先する」
「でもよ。海兵と交流してたらここが政府にバレちまわないかい?」
ヒューが尋ねてきた。これはその通りだ。
「こことはやや離れた場所に人間対応用の居住スペースを作る。それでもここがバレてしまったら戦闘になるかもしれない。政府対応者は細心の注意を払うように」
「このリスクは負うってことだな」
「そうだ。もしものために潜水艦で逃げる練習もしておく」
潜水艦への移動を速くするために、滑り台みたいなやつも作っておこう。
「実は懸賞金をバラまくのも危険だ。直接金を渡すより腹を空かせた子どもに飯をやったり病人に薬をやるようにするべきだ。さらにこの活動は早朝のみとする。天竜人、人攫い、海兵に出会わないためだ」
「海兵も?」
「子どもに魚人が近づくのを見て誘拐だと勘違いされる可能性がある。戦闘になってしまう」
「ゆ、誘拐!?」
「近づいただけで誘拐!? なんで!?」
「それが魚人差別という問題の根深さだ。人間は力の強い魚人を恐れている。背の高さ、筋肉の膨らみだけでも本能的な恐怖を感じてしまう。これは理解して欲しい。魚人の皆も、巨大な海王類を見れば恐怖するだろう。そういう本能の壁がある」
「ああ、確かに」
「でも海王類は人間じゃないし」
「アーロンさんはどうだ? 恐くないか?」
悪いが例に使わせてもらうぞ。アーロン。
「あっ、確かに。アーロンさんはおっきくて恐い。ホーディも」
「確かにね」
「ホーディはただのクズだ! 今の俺達の敵じゃねえ!」
「お前あいつの目の前で言えるか?」
「い、言えるとも」
「ウソつけ」
うむ、納得してもらえたようだ。
「この壁を理解した上で現実を乗り越えてもらいたい。とかく、まだまだ準備期間だということを忘れないように」
これで一旦説明を終える。
次に個々人の話に移る。能力、性格、友人関係などを尋ね、ここでの役割、トレーニングの内容、部屋割りなどを決めていく。部屋割りだがかわいい人魚は俺の近くに住まわせるぞ。家も優先的に建てていく。当然の権利だ。向こうもそれを望んでいるしな。人魚は歩くのがしんどいから水路も作ってやらないとな。
そうして新しい生活が始まった。魚人達が慣れるまでは、水汲み、農作業、トレーニング、勉強、と人間と同じ生活だけやらせた。人魚は農作業が難しいので、養殖や海の森作りに励んでもらった。
俺は人魚用の家、人魚用の水路、魚人用の家、よそ者対応用の出島の順に作っていった。それも終わると2年後に出航するための船作り。魚人の中に大工が数人いたので彼等にも手伝ってもらう。
2ヶ月経ち、ようやく海賊狩りにゴーサインを出した。ただし強さや連携の上手さに一定のラインを作り、合格者だけを送り出した。俺も潜水艦で現場に向かった。
シャボンディ諸島は折り返し地点であり新世界へ向かう海賊の全てが集う場所だ。さらに現在シャボンディ諸島は大荒れで海賊が横行している。島の沿岸部にはいくつもの海賊船が止まっていた。初戦なので念には念を。海兵と海賊の戦いを見学し、弱いと判断してから攻めることにしていた。
だが、近くの1隻の軍艦が8つの海賊船に対し劣勢。今にも沈没しそう。これを見てみぬフリするのもなあ。
「なあ、ワクワク。助けた方がいいんじゃねえか?」
「うーん。そうだなあ。海から決して出ないという条件で戦おう。船底から船に穴あけちゃって」
「よしきた。いくぞ! 野朗ども!」
「よっしゃ! ワクワク一味の出陣じゃい!」
「うおおぉおおおお!」
魚人達が嬉々として海賊船に突っ込んでいく。
命のやり取りに対する恐怖はないんかな。まあ魚人街の連中が中心だし、兵役もやってたから、戦闘には慣れているかもしれないけど。
魚人の攻撃で船は穴を開けられ、沈んでいく。一方的だ。当然のように一方的だ。
やっと魚人の存在に気付き、海に入る海賊が現れた。魚人に劣らぬ巨体。だが、水の中だから鈍い。魚人の敵ではない。
「き、貴様等ァアアアア! 俺等の船になんてことをしやがるううう!」
「へっ、遅いぜ。オラア!」
「ぐっ、くそっ。水のせいで……」
一方的。めちゃくちゃあっさり勝っちゃいそう。
全ての船が沈んでいく。大勢の海賊が海に飛び込む。
俺は戦闘からやや離れた位置で、魚人と比肩しうる危険な敵がいないか目を光らせる。
うむ。いないようだ。
だが、船長らしき男を発見。服装が一番偉そうでゴツいし、部下が慌てて助けに入っている。悪魔の実の能力者らしく、溺れている。
「やつが船長だ! 溺れている今がチャンス! 仕留めろ!」
叫んだが聞こえていないようだ。海軍の大砲もうるさいしな。
しょうがない。俺が行くか。
「どっせえええええい!」
能力を限界まで発揮して潜水艦を加速。人魚を超える速さでデカいおっさんに突撃。
「シャークオンダーーーーッツ!」
アーロンの技に似ているので。
「ぎゃぼほおおおお!」
「うわっ」
「へ、ヘッドぉおおおお!」
見事にクリーンヒット。おっさんは海を飛び出て吹っ飛んでいき、また海に落ちた。
俺も勢いが残っていたので少し海を飛び出て、程なく着水する。そのままUターンして近くの魚人の元へ。
「ワクワク! すげえタックルだったな!」
「どうも。あいつが船長だから拾ってきて。海軍に渡して賞金をもらって」
「おう! いいぞ!」
その後も魚人の活躍があって簡単に勝てた。海上なので海賊は逃げることもできず、全員捕まってしまった。俺は勝利を見届けて撤退。海軍には俺の存在は秘密だ。
今回の海賊は船長が5000万で部下と全部合わせると1億7000万の賞金首だった。本当はほぼ全て俺達の力で倒したが、海軍と協力して倒したということになり、もらえたのは半分の8500万ベリーになった。ケチられた。もともと全額寄付するつもりだから問題ないけど。8500万ベリーでも十分大金だしね。ボロい商売でんな。
翌朝、お金を持って市場へ向かう。魚人が市場に出たら騒ぎになるので、貴族っぽい格好をしたヒューに購入させた。食料は俺の能力で瞬間冷凍する。金がかなり余ったので、服も買いにいく。酒も買いにいく。ふとん、ベッドも購入。経済を回すのが重要だからね。仕方ないね。
おっ、ストリートチルドレンのたまり場を発見。今回の魚人にはここへ向かわせることにしよう。