ワンピースでワクワクさん 作:ゴロリ
ハンコックの下で修行を始めて2年。覇気はまだ操れないがそれなりに強くなったと思う。マーガレット、アフェランドラ、ロリコック様ことパンジー、中ぺこちゃんことネリネ、等の将来有望な護国の戦士からはそれなりに尊敬を手に入れることができた。強さと俺の提供する食材の美味さのためだ。俺の能力は瞬間冷凍瞬間解凍が可能。新鮮な海の幸、山の幸が食べられる。
レッドラインの出島は船としていくつかに分割して全てこっちに持ってきた。その時にヒューやアマエンボンなどの離脱希望者には船を与えて出て行ってもらった。ヒューは能力も口の固さも信頼している。海軍に万一捕まっても奴隷のことは話さないはずだ。アマエンボンもそこそこ能力が高いし、革命軍に入ると言っていた。あの頭の固さなら海軍に跪くことはないと考えた。
カームベルトの航海はとても危険だった。魚人に海獣を捕まえさせ、その海獣に船を引かせることでスピードを上げたが、それでも何度か海王類に食われた。しかし、海王類の歯はレッドラインを噛み砕けず、胃も消化できず、結局は吐き出した。
岩の船は女ヶ島の港にくっつけた。ここでも出島のようになって生活している。農業と修行に加え服作りもやらせている。
ある日、女ヶ島にフィッシャー・タイガーがやってきた。なぜかカリファを連れて。
「天竜人の奴隷だったらしい。故郷に帰りたいと言って俺達の船に乗ってきた。だが、故郷に帰ったところで海軍に捕まり天竜人の奴隷に逆戻りするだけだろう。何度も説明したんだが、それでも帰りたいと言って聞かなくてな。お前から説明してくれないか?」
「お願いします。幼い妹を母が一人で育てているんです。心配で心配で。せめて一目でも会って、無事だと伝えるだけでも」
なるほど。カリファの言葉はきっとウソだろう。いくらなんでもバタフライ効果でCP9の娘が天竜人の奴隷にはならないだろう。罠と考えるのが妥当だ。コアラが俺の元にいるから代わりに用意された罠なのだろう。
フィッシャー・タイガーには、奴隷を故郷に送ることの危険性を伝えていた。海軍に捕まってマリージョアに送り返されるだけだ、と。だから原作のような悲劇は生まれなかったようだ。よかったね。
「その前にフィッシャーさん。この娘、体ができあがってますよ」
俺はカリファを疑わしそうに見ながら言う。ちょっと遊ぼうかなと思ってね。
「うっ。……あっ」
カリファはビクッとなったが、乙女の恥じらいっぽい仕草で誤魔化した。かわいい。おもしろい。
「うん? 成熟していると言いたいのか?」
「セ、セクハラです」
セクハラですもらってしまった。ちょっとうれしい。
「いいえ。この娘、鍛え抜かれてますよ。かなり。幼少期から特別な訓練を受けていたんじゃないですか?」
「そうなのか? 細く見えるが。いや、人間の体のことはよく分からんからなあ」
俺の言葉でカリファに注目が集まる。フィッシャーの仲間や護国の戦士達もカリファの体をマジマジと見つめる。
「や、やめてください! セクハラです! 私は森で育ちましたから、危険な野生生物と戦えるよう鍛えてました! それだけです!」
「どうなんだ?」
フィッシャーは護国の戦士を見る。
「鍛えてるようだけど、それは私達も同じだからね。特別って風には見えないわ」
「うんうん」
「そっかなあ。私はなんか怪しい気がするんだけど」
「ちょっと触ってみてもいい?」
「セクハラです」
「えっ」
セクハラをガードに使ってきたか。やるな。
だが、お前がスパイだということは既に俺にバレている。勝ち目はないぞ。後はいかに利用するかだ。
「ちなみに故郷は?」
「キューカ島近くの島です」
「なるほど」
とその時、ハンコックも港にやってきた。
「いくらワクワクの友人とは言え、わらわの許可なく島に立ち入ることは許さぬ。海賊の男なら尚更じゃ」
フィッシャー・タイガーは彼女の恩人。本来なら感謝感激で迎えたい相手だろう。しかし今は人が大勢いる。奴隷解放の立役者にいい顔をすれば彼女の過去が疑われてしまう。だからこういう言い方をしたんだろう。
いきなり奴隷だったとは思われないだろうがな。実際、俺のクルーに奴隷時代のハンコックを知っている元奴隷の女のいるが、「あの3姉妹に似てるなー」と言うくらいで、俺が正体をバラすまで気付いていなかった。ハンコックは大人びたし、三女の顔はゴツくなったものの、大ぺこちゃんの顔はものすっごく特徴的なのに、それでも気付いていなかった。七武海と奴隷というギャップの大きさが思考を塞いでしまっているのだろう。
俺はハンコックに近づいていく。
「ここにいる全員をメロメロで石にし、その後に俺とフィッシャーのを解いてくれ。話したいことがある」
「うん? そこまでする必要があるのか?」
「ああ。誰にも聞かれたくない」
「いいじゃろう。ただしつまらんことじゃったなら、そなたの修行内容を3倍にする」
「問題ない」
ハンコックはキリと真面目な顔になる。
「戦士達! そして招かざる客達よ!」
ハンコックの声に皆が注目する。もっとも、声を出す前からその美貌に皆が見入っていたが。
俺は目をつぶることで防いでみる。いけるかな?
「メロメロメロウ!」
声を聞いた瞬間、意識が飛んだ。
次に目覚めとき、目の前にハンコックがいた。彼女の隣にフィッシャー・タイガーもいる。他の皆は石になっている。カリファ、アーロン、ジンベエもだ。メロメロメロウはうまく決まったようだな。俺は石化に抵抗するつもりだったが、失敗に終わったようだ。痛み作戦か目をつぶる作戦。どちらが失敗したのだろう。記憶が飛んでしまって分からない。
とかく、俺の話を済ませよう。船内で仕事中のやつが出てこない間に。
「さあ、そなたの話とはなんじゃ?」
ん? ハンコックの声が若干曇っている。見ると、目も潤んでいるな。
俺とフィッシャーの石を解くのに時間差を作り、その間に感謝を伝えたのだろうか。
「ええい! 見るな! 用件を言え!」
ハンコックは後ろを向いて顔を隠してしまった。せっかく珍しい表情が見れたのに残念。
「ええっと、実はそこの娘。タイガーさんが連れてきた元奴隷を名乗る娘のことですが、実は僕は彼女のことを知っています」
「ほう」
「奴隷時代の知り合いか?」
タイガーが尋ねる。
「うん? そなた奴隷じゃったのか?」
ハンコックがタイガーの言葉を聞き、俺に尋ねる。言ってなかったっけ?
「ええ、僕は奴隷でしたよ。天竜人のね」
「なんと……」
「しかし彼女はその時の知り合いではないです。航海している時にどこかの島で見ました」
「そうか。その時に拾ってやれればよかったな」
「いえ、そういう方ではありません」
「うん?」
「彼女は政府の人間です。タイガーさんに近づいたのはスパイのためでしょうね」
「な、何ィ!?」
「何じゃとお!?」
驚愕するハンコックとタイガー。
ハンコックは怒り、石のカリファに近づいていく。壊すつもりかもしれない。俺は体を張って止める。ハンコックに抱きつく形になった。
「何故邪魔をする!」
「利用価値があります! 逆に政府を罠にかけます!」
「むっ」
ハンコックはピタリと止まった。その姿勢のまま俺を見つめる。
ふと、ハンコックの口端がつりあがった。悪そうな顔だ。これも珍しい。
「おもしろそうじゃ。言ってみよ」
「はい。彼女の偽者を使い、政府をおびき寄せ、偽者のフィッシャー・タイガーを殺させる。それをデンデンムシで中継するのはどうでしょうか? 人間の奴隷を故郷に返そうとしたフィッシャー・タイガー。その善意を利用した政府の罠。こういう形です。後日、フィッシャー・タイガーは奇跡の生還を果たすわけですが」
「ほう」
ハンコックはさらに笑顔になった。タイガーは難しい顔であごを摩っている。
彼は人間嫌いだが、人間と魚人の差別を無くそうとしているオトヒメの努力を知っているからな。憎しみを煽るやり方はしたくないのかもしれないな。
「偽者はどうする? バレないか?」
「精巧な人形を作りましょう。ちょうどそこに石の型の型がある」
俺は石になったカリファを指差した。
「なるほど。じゃが型の型とはなんじゃ?」
「石を使って型を作り、その型に人形用の液体を流し込んで人形を鋳造します。ですから石は型の型に当たります」
「なるほど。分かったがへんてこな言い回しはやめよ」
ちなみにこの間、俺はハンコックに抱きついたままであった。ラッキースケベではない。狙ってやった。
中継用のデンデンムシは発信用も受信用も政府が独占している。とは言え、高値で買えないこともない。この世界には裏取引が当たり前に存在している。だが、今回は九蛇が元々持っていたやつを使わせてもらうことにした。ハンコックが商船を襲った時に偶然手に入れたものだ。
とは言え、発信だけしても意味はない。受信してもらう必要がある。特に映像を出す場合はスクリーンも必要になる。
こんな高値のものを持っていて、俺達が中継するのを手伝ってくれる人。
まあ映像は望めそうにないな。音を勝手に流そうか。ドラゴンなら世界中にスクリーンを用意してくれそうだけど会えないし。
あっ、いいことを考えた。音のデンデンムシを世界中にバラまくという体でスカーレットに会いに行こう。新世界に行く理由がなくて困ってたんだよね。
でも、彼女の場合はディアマンテに殺されるから、骨を強化するだけでは足りないな。どうしようか。海軍に守らせるか? でも守る理由がないからなあ。ドフラミンゴは一夜で全部やっちゃうから証拠が集められない。うーん。
一旦カリファ以外の石化を解除する。ハンコック、フィッシャー・タイガー、俺の口からこの場の皆にカリファにスパイ容疑があることを伝える。同時に、政府をおびき出し、罠にかける計画のことも。
もし政府が罠にかからなかった場合「カリファは一目家族を見ただけで故郷を去らねばならない。故郷に留まれば天竜人の奴隷として再びマリージョアに連れ出されてしまうからだ」などと説明して終える。これはこれで同情を誘える。政府にとってマイナスとなるはずだ。
俺は早速カリファの石を使って型を作った。方の素材はその辺の地面だ。その後、その型に樹液を流し込んで固める。これが人形のボディとなる。色付けはおもちゃ屋の主人に任せる。俺も塗れないことはないがフィギュア作りのプロには負ける。服はカリファのを着せればいいだろう。フィッシャー・タイガーの人形も同様の方法で作った。フィッシャーは嫌がったがこれも作戦のため。石になってもらった。
ところで、海軍は魚人が陸に上がったところを殲滅する気でいるはずだ。だから、フィッシャー・タイガーの人形をある程度海岸から離れた場所へ移動させないと出てこないだろう。誘導場所はカリファが知ってるだろうから、後で目覚めさせて地図にマーキングさせよう。ハンコックがかわいいポーズで頼めばウソは言わないはずだ。カリファとしてもそこにおびき寄せたいわけだからウソをつく理由がない。
この移動の間、人形を2足歩行させるのはとても難しい。単に移動させるだけでも難しいが、海軍の目を欺くような自然な動きをさせるとなると不可能だ。そこで俺は、人形を飛行物体に乗せて運ぶ方法を考えた。これならば歩行ではないから難しくない。まあ簡単でもないが。
気球で狙った位置に運ぶのは難しい。グライダーも難しいし移動方法として不自然。海軍への警戒心を解くためには、シャボンで飛んでスクリューで進む”ボンチャリ”がいいだろう。ふつうヤルキマンマンマングローブから離れるとシャボンは消えてしまうが、コーティングや俺の能力で固めれば維持できる。
さあ、工作の時間だ。