ワンピースでワクワクさん   作:ゴロリ

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魚人島での一年

「あっ、タイガーさん! 帰られましたか!」

「皆ー! フィッシャー・タイガーが帰ってきたぞー!」

 

 俺が逃がした人魚は本当にフィッシャー・タイガーだった。魚人達からとても人気があり、皆が目を光らせて彼を見た。

 

「ところでタイガーさん、そこにいる人間の子どもは?」

「ああ、ちょっと旅の途中にやらかしちまってな。その時にこいつが助けてくれたわけだが、当のこいつは魚人を助けたってことで人間に嫌われちまった。だからここまでつれてきたわけよ」

「なんと! そんなことが!」

「おのれ人間め! 許せない!」

「人間と言ってもこいつだけは別だ。俺の客としてこの島に住ませてやってくれ」

「あっ、はい! そうですね!」

 

 フィッシャー・タイガーはまず王のもとへ挨拶に行った。俺は王の間に入ることを許されず、王子達と同じ部屋に入れられた。

 

「お話は聞かせていただきました。災難でしたね」

「ええまあ、疲れましたよ。あいつらの悪どさには」

「全身傷だらけのようですが、大丈夫なのですか? 医務室などに行かなくとも」

「それは大丈夫です。表面だけケガしているように見せかけていますが、中は能力で治癒しているので。これも治せます」

 

 俺は皮膚を流体化させ、再び固体化させる。

 

「いぎっ、いたたっ」

 

 激痛が伴うが、仕方ない。特に天竜人の奴隷のマークは消しておかないといけない。

 切り傷や火傷の跡は綺麗さっぱりなくなった。フィッシャー・タイガーの奴隷マークは、どうしようかな。タイヨウの海賊団を作るだろうから無視でもいいのかな。

 

 王子と適当に話していると、フィッシャー・タイガーは話を終えたようで部屋に入ってきた。

 

「王が歓迎の宴をやってくれるらしい。お前にも俺の仲間として招待状がきた」

 

 フィッシャー・タイガーはポンと招待状を渡した。俺の名前はワクワクになっていた。まあこれが名前でもいっか。元々名前なかったし。ゴリラがワクワクくんって呼んでたし。

 

 宴はふつうに参加した。フィッシャー・タイガーは握手を求められたり旅の話を聞かれたりしたが、笑顔を装ってウソの冒険を語っていた。

 俺はほぼ無視だが嫉妬や憎しみの対象になることはあった。

 

「どうやってタイガーさんに近づいたんだ? 人間」

「どうせお前もタイガーさんを捕まえた人間とグルだったんだろう。何が狙いだ?」

 

 のような感じでつるまれた。タイガーや王子が庇ってくれたので暴力は受けなかった。

 宴が終わると街を案内され、そのうちフィッシャー・タイガーの幼馴染という人魚の家を紹介された。ここが今後俺の家になるという。

 

 この家は父母と子どもが二人で、父と11歳の長男が魚人、母と8歳の長女が人魚だった。父は軍人で母は喫茶のウェイターをしていた。

 

 俺は主に子ども達と遊んで過ごすことになった。ここで俺の能力が大いに生かされた。ガンプラのようなおもちゃ、精巧なフィギュア、秘密基地。なんでも簡単に作ることができた。特におもちゃは天竜人のガキを喜ばせるために質の高い物を作っていたから、長男は満足げだった。妹の方は服や人形を喜んだ。

 俺のおもちゃは近所の少年にも評判になり、俺のおもちゃを求めて少年達が遊びにくるようになった。いやさ大人も欲しがった。

 

 俺に怒る大人もいた。「軟弱な人間のおもちゃなどいらん! こんなもの作るな!」とか、逆に「無料で売るな! うちのおもちゃが売れなくなるじゃないか!」とか。俺としても金が欲しかったので作ったおもちゃはおもちゃ屋に売ることにした。俺自身が直接おもちゃを売るとおもちゃ屋のシェアを奪うことになって憎まれるだろうからやめておいた。

 

 おもちゃ造りに並行して肉体の訓練や能力の訓練も行った。

 肉体は走ったり筋トレしたり子ども同士で組み手をしたり。能力の訓練はより速く、より大きく切り裂いてみたり、皮膚を固める防御や金属の流体による攻撃を練習した。

 

 船造りもやってみた。深海なのでスクリューで進む潜水艦を作った。失敗を繰り返す中で、スクリューの形や強度など最適な物を探した。動力は足でこぐものから始めたが、すぐに俺の能力で水を気化させてタービンを回す方式に切り替えた。

 実験には地元の少年にも付き合ってもらい、水中で潜水艦が壊れる度に助けてもらった。が、俺自身も溺れて死なないようにするべく、水中で氷の膜を張ったり水から気体を抜き出して呼吸する練習を行った。

 

 

 ところで、俺の住む魚人街はスラムに当たる。海賊や不良少年の溜まり場となっており、人間の俺は不良グループにケンカをふっかけられることも少なくない。俺は身の安全のためにグループに入り、多対多のケンカに持ち込んでいた。また、自身のグループの少年達を強化するため修行にも誘っていた。

 俺は安全第一なのだが、この多対多のケンカについてはむしろ率先して戦闘に加わった。グループ内の信頼を得る目的もあるが、この世は大海賊時代。原作介入を考えるとできるだけ戦闘経験を積んでおきたい。子どものケンカは死ぬ確率が非常に低いので経験にはもってこいだ。

 身体能力は魚人に劣るので、能力や道具を使って補った。抗争の時は、シャボンで浮かびスクリューで進むホバークラフトに乗り、空中から敵に突っ込んでいく。手には水筒を持ち、中にある水を飛び出させ、様々な形に固めながら、ある時は敵の攻撃を受け止め、ある時は薙ぎ倒す。ホバークラフトを壊されても、流体に戻して再び固めれば新品に早戻り。

 ほぼ無敵の戦法。これをすればほぼ無傷で勝利できた。が、肉体の鍛錬もしたいので、ときたま降りて戦った。

 

 

 俺のグループはケンカに連戦連勝だった。養父がフィッシャー・タイガーの親友ということで、彼に憧れる屈強な少年が集まっているし、おもちゃの力でグループの人数自体も最も多かった。俺の戦術と武器も有効だった。

 戦いの中で、同盟を結ぼうという少年グループ、逆に復讐を誓うグループもでてきた。復讐を誓うグループもまたそれぞれ固まっていった。いつしか魚人街の少年グループは、俺たちのグループとホーディ・ジョーンズのグループに二分されるようになった。

 俺たちのグループは訓練をするので平均が強かった。対して、ホーディのグループは魚人の元ネタがサメだったりダイオウイカだったりで元の身体能力が高く、凶暴だった。

 

 この二つのグループが衝突するのは必然。戦いの火蓋は、ホーディによるおもちゃ屋襲撃という形で切って落とされた。

 

「魚人の面汚し共め! 人間なぞに絆されやがって! 死をもってつぐなえ!」

「お前こそがこの街の不幸の元凶だ! お前が死ね! ホーディ・ジョーンズ!」

 

 俺達のリーダー、クロマグロの魚人キタジ。そして敵のリーダーホーディ・ジョーンズ。彼等の一騎打ちと同時に他のメンバーも戦闘を始めた。

 

「死ねえ! きゃっきゃ!」

 

 俺の方にはちっこいサメの魚人が襲いかかってきた。俺はホバークラフトに乗ったまま車体を傾け、氷の棒を振るう。

 棒が敵の顔にぶつかる寸前、敵は顔よりも大きく口を開く。と、一瞬にして口は閉じられ、氷の棒は噛み砕かれた。

 

「無駄無駄ァ! きゃっきゃ!」

 

 俺は面食らってしまった。俺の氷は空気が少なくとても硬い。鉄のように硬い。それを噛み砕ける力とは一体……。

 と、この隙に攻撃されたら危なかったが、敵は氷の食事を優先するようでかかってこなかった。

 

 もう一度棒を振るったら、また噛み砕いてくるのか?

 俺は残った水筒の水で氷を作り、再びちっこいサメ目掛けて振るう。

 

「無駄ァ!」

 

 サメはもう一度噛み砕こうとするが、その前に氷を流体に戻す。そしてやつが歯を閉じた瞬間、再び氷に戻す。

 

「んっ!? んんっ、んんんーっ!」

 

 やつの口は閉じたまま氷で固まってしまった。それを開くことはできない。サメの顎を閉じる力はすさまじいが、開く力は悲しいほどに弱弱しいのだ。

 

「シャアッ! オラァ!」

「んぐっ、んぎゅっ」

 

 俺は慌てるサメを氷の棒でタコ殴りにする。全力で頭を殴っても痛い程度しか効かないのはいつものことだ。このサメと身長差はあまりないが種族として筋力に差がありすぎる。ギアセカンドのように筋力を能力で高める方法も練習してみよう。

 このサメはやがて涙目になって逃走した。敵の幹部の一人が敗れたことで俺のグループは盛り上がる。しかしそれとほぼ同時、敵からも歓声が上がる。

 

「さすがはホーディ!」

「キタジは死んだ! お前達はもう終わりだ!」

「命乞いは無駄だぞ! 人間に肩入れしていたんだ! お前達の最後は死しかない!」

 

 これまで全体としてこちらが優勢だったが、リーダーが落ちたことで敵も盛り返してきた。いや、それでも平均はこちらの方がかなり強いのだが、敵の幹部と何よりホーディの攻撃で一人また一人とダウンしていった。

 

「ワクワク! どうする!」

 

 長男のハギノが慌てて近づいてきた。

 

「ホーディをやるしかない! 俺たちで!」

「ホ、ホーディを!?」

 

 長男は慌てたが、俺にはまだ余裕があった。能力をフルに使った戦いをやっていない。ホバークラフト戦法は無敵である。

 と、ホーディの方から水鉄砲が飛んできた。俺はホバークラフトの内側に入ってやり過ごす。ホバークラフはシャボンが割れて一瞬落ちるが、俺の能力でシャボンは復活し再び浮く。が、船体自身も水鉄砲のダメージを受けたようで、スクリューの回転が悪くなっていた。これも俺の能力で復帰させる。

 これで大丈夫。

 

「俺をやるって?」

 

 ふと、上方から低い声が聞こえた。見上げるとそこには真っ白な顔。ホーディ! 速い! なんて身体能力!?

 

「ワクワク!」

 

 ホーデイが拳を振り上げる。俺は顔の皮膚と骨を全力で固体化させる。

 

「ふん!」

「ぐっ」

 

 すさまじい衝撃と痛み。一瞬意識が飛ぶ。俺の体はホバークラフトを突き破って地面に叩き込まれる。

 だが、拳が顔に当たったときに、ベキっという音も聞こえた。あれはホーディの骨が折れた音だろう。悪魔の実で強化された骨には魚人の骨も太刀打ちできなかったということ。そもそも骨はサメより人間の方が固いが。

 

「グッ、なんて硬ぇ顔してやがる。この野朗!」

 

 怒ったホーディが俺に蹴りかかる。俺はダメージで動けず、わき腹の辺りを蹴り飛ばされる。

 グウッ、肺にきた。息がやばい。でもあいつもバカだな。また骨の砕ける音がしたぞ。あいつの足の指は砕けたはずだ。

 

「ぐわああああっ!」

「リーダー!」

「何をした! 人間め!」

 

 ホーディは足を抱えて転げまわる。

 俺は人の心配をしている暇がないくらい苦しい。

 

「ぜひゅっ、ぜひゅっ」

 

 呼吸がやばい。骨にはダメージがないと思うが、内蔵が。

 

「ホーディは倒れたぞ! チャンスだ!」

「倍返しだ!」

 

 と、今度はこちらのグループが攻勢に出た。もともと平均はこちらが強い上、相手は最強のリーダーを失ったわけだ。目に見えてこちらのグループが優勢になり、敵は逃げる準備を始めた。

 

「まだだ! まだ俺は戦える! 逃げんじゃねえ! 逃げんじゃねえぞテメェ等!」

 

 と、そこでホーディが叫んだ。

 

「ぐ、ぐふっ」

 

 ホーディは痛みに顔をしかめながら立ち上がる。

 

「ホーディ」

「お、おいテメェ等! 誰か刀か槍持ってるやついるだろう! 貸しやがれ!」

「ムッヒッヒ、これを使えっひ」

 

 ダイオウイカの魚人がホーディに槍を投げ渡す。ホーディは左手でそれを受け取った。

 

「あいつだけは殺す……」

 

 ホーディが怒り狂った野性の目で俺を睨む。

 顔は怖いが、足一本、腕一本。あの鈍らでこの俺の防御は突破できないはず。

 

 こちらも動けない俺を庇うように長男等が前に出る。

 

「うおおおおおおおおお!」

 

 ホーディは叫び、突っ込んできた。速い! ダメージ前より速い!

 

「ぐわっ!」

「ぎゃあっ!」

 

 俺を守る少年達がやり一本で次々と吹き飛ばされていく。

 これはやばい。本格的にやばい。

 できれば使いたくなかったが、あれをやるしかない。

 

「ふんぐぅううう!」

 

 俺は付近にあるホバークラフトの残骸を手に持つ。特に鉄の部分に意識を傾け、部分的に液体化させる。

 

「死ねええええ!」

「お前がなああああ!」

 

 最後の少年を吹き飛ばし俺に向かってくるホーディ。俺はやつに向けて液体化させた鉄を振るった。

 

 今だ!

 

 さらには、その鉄を空中で気化。鉄の沸点は2800度を超える。膨大な熱が目の前で弾け、爆風が俺とホーディを襲う。

 

 固まれ!

 

 俺は瞬時に俺自身と周囲の水蒸気を固体化させる。爆風の熱を和らげ、衝撃に耐え抜くために。

 ホーディはまともに爆風を食らい、吹き飛ばされる。

 俺もやつほどではないが吹き飛ばされた。

 

「んぎゃああああああああああ!」

「ぐぎぎぎぎっ」

 

 表面は硬くとも身体を通る衝撃は受けきれない。俺は全身をズタズタに打たれ、完全に動けなくなった。

 

 

 この爆発を機にリュウグウ王国の兵士がなだれ込み、抗争は終わった。ホーディなどの魚人はすぐさま医師の下へ連れて行かれたが、俺は人間ということで後回しだった。

 もっとも、この間に能力を使って自力で回復を行ったが。

 

 この大抗争は王国内でも話題の種となり、王が直々に仲裁することになった。

 結果はケンカ両成敗。リーダーのホーディとキタジは懲役3年、また抗争に参加した少年等全員が軍役1年となった。俺は人間なので深海での訓練は無理だった。また、ホーディ一派が俺への憎しみをさらに高めており、魚人島でこれ以上生活するのは危険だった。俺は人間の島へ移住させられることになった。

 

「ホーディがふっかけたケンカとは言え、やりすぎたな。すまんが俺でも庇い切れん」

「いえ、タイガーさんに謝っていただく必要はありません。僕の責任です。この結果は」

「そうか。しかし、お前がホーディと相打ちとはな。知ってはいたが悪魔の実とは恐ろしいものだ」

 

 フィッシャー・タイガーは慰めの言葉を述べた後、直々に俺を人間の島へ送ると言ってくれた。

 俺が職人として生きたいと言うと、タイガーはトムという凄腕の職人のいるウォータセブンを薦めた。俺はそこへ送ってくれるよう頼んだ。

 

 出発の日。養父、養母、義姉、義兄、おもちゃ屋の店長、またキタジグループのメンバーが兵役を抜け出して見送りに来た。

 

「お前は俺達の仲間だ! 兵役が終わったら必ず会いに行くからな!」

「連絡寄越せよ!」

 

 魚人島に来て1年弱だったが、とても濃い日々だった。人魚は美人だった。

 俺が海賊団を作るなら若い人魚の娘は必ず入れる。

 

「じゃあな! また会おう!」

「おう! そうだな! そろそろ行くか!」

 

 俺はそう言って潜水艦に乗り込む。フィッシャー・タイガーはシャボンを抜けて海に入る。何故かおもちゃ屋の店主とその一家も海に入った。

 

「あれ、店長も来るの?」

「応よ! 店はホーディにつぶされちまったし、お前がいないと商売が成り立たないからな! それに俺の夢はおもちゃで世界に平和をもたらすことだったんだ! いつまでも魚人島にいちゃあ夢は叶わない!」

 

 おもちゃ屋やってるからか、子供みたいな発想だな。おもちゃで世界平和は無理だろう。

 まあ、この人の奥さんと娘は美人だからいた方がうれしい。一人で自由に暮らすのもおもしろそうではあったけど。

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