ワンピースでワクワクさん 作:ゴロリ
フィッシャー・タイガーはいつになったら奴隷解放に動くのだろうか。原作の細かい時間を覚えていない。正直一年経ってもまだ奴隷解放していないことに驚いているくらいだ。
俺がホーディとの実戦を望んだのにもこの奴隷解放が関わっている。俺も男なので、かわいい奴隷を解放してちやほやされたい。うまくいけばこの世界一の美女といわれるハンコックの気を引くことすら可能なのだから。しかし今の実力では命を失う可能性が非常に高い。だから、能力をなんとか使って格上と戦っても死なない自信をつけたかった。
結果は少年ホーディ程度と相打ちだから、自信は砕け散ったわけだが。
それでも点数稼ぎを諦めるわけではないぞ。トムのもとで勉強し、兵器を作り、フィッシャータイガーに提供する。その兵器を奴隷解放に生かしてもらう。奴隷の女の子達に何かしら恩を売ることができるはずだ。
また、女の子達の奴隷マークをはがすこともできる。これで何人かのハートを手に入れてやる。指名手配が怖いから大々的にはやらないけどね。
特に問題なくウォーター・セブンに辿りついた。しかしトムの周りには問題があった。彼は海賊王の船を作った大工として政府の役人にマークされていたのだ。
元奴隷で逃亡した身の俺やフィッシャーがいれば彼の立場が悪くなる。そもそも役人に見つかれば俺たち自身も危ない。
しかし、そこで魚人という種族が役に立った。彼等は水中で会話ができる。役人の船は深海まで追ってこられないが俺には潜水艦がある。よって深海で授業を行い、トムの知識の一端をわけてもらった。
俺が欲しかったのは気流とワイヤーのしなりの計算方法。俺はレッドラインから降りるためのエレベーターと高所から爆撃するための気球を作るつもりだった。マリージョアから逃げるにはレッドラインを降りる必要があるが、天竜人の乗り物を奪うのは多くの死人が出るし、降下先で待ち伏せされる。勝手にそこかしこにエレベーターを作っておけば、相手の目を欺ける。
3日程でなんとかエレベーターのイメージはできた。後はレッドラインの強度を調べてからでないと進められない。気球はすぐにでも作れる。
と、知識をもらったので、お礼を言って僅かばかりのお金を渡し、ウォーター・セブンを去ることにする。フィッシャー・タイガーは次の島まで無事に送り届けると言ってくれた。しかし俺は安全とは反対のことを申し出た。
「レッドラインにエレベーターを作ろうと考えています。奴隷が逃げるためのエレベーターを。逆戻りになりますが、シャボンディ諸島へお願いします」
「何だと!?」
その日はおもちゃ屋の主人も交えて奴隷解放計画について長々と話し合った。
フィッシャー・タイガーは俺を無事に送り届けたらすぐに奴隷解放に動くつもりだったようだ。ただし、手足で崖を登ってマリージョアに攻め込み、なんとか鍵を奪って奴隷を解放し、天竜人を人質に取りながら天竜人の乗り物を奪い、崖を降りるというお粗末な作戦だった。
俺はエレベーターで登ることで体力温存し、また降りる位置を複数にすることで待ち伏せを防ぐことを提案した。鍵を奪う方法についても、居住区に単純に攻め込むのではなくダムを崩壊させて水攻めをしてから攻め込む。そうすれば魚人や人魚にとって有利になるし、役人達は天竜人の命を守ることに意識を傾けなくてはならないから奴隷への対処は遅れる。
おもちゃ屋も協力を申し出た。俺は天竜人のマネキンを大量に作ってダム崩壊の水の中に流すことを思いついた。役人は慌ててマネキンを救出することになるだろう。
天竜人の顔と服は俺がある程度覚えている。俺の主人だったガキを喜ばせるために、ガキやその家族のフィギュアを作ったことがあるからだ。
また、気球を使ったダミーの逃走も思いついた。エレベーターで逃げていると気付かせないために、気球にマネキンを乗せて飛ばすというものだ。
これらの提案は全て受け入れられた。
ところで、この話をしながら俺はとても勇敢な気分になっていた。ついつい「俺もやるぞー! 攻め込むぞー! 鍵造りは任せろー!」と叫んでしまった。俺もフィッシャー・タイガーと共に攻め込むことを前提に話が進んでしまった。
しかし、レッドラインへ移動する最中、俺は安全にやり過ごす方法を思いついた。魚コスプレである。この世界には巨大な魚がいくらでもいる。水攻めの時にダムにいる魚になりきって動けば危険は少ない。能力を使えばほぼ完全な偽装も可能だ。
「まずは自分より一回り大きい魚を仕留めます。皮を剥ぎ、骨を残して中の肉と内臓を抜きます。悪魔の実の力で骨を強化しつつ、ハンドルのようなものをつけて背骨を波打てるようにします。最後に剥がした皮をもう一度貼り付けていき、自分の目の部分だけ穴を開けてガラスを張ります。にんにんにん。にんにんにん。にーん。魚くん1号のできあがりー」
1時間くらいで作れた。能力のおかげだな。
ダム破壊工作もこの魚くん一号を着て行おう。俺の能力ならば接近さえすれば楽に加工できる。海楼石以外は。
さて、レッドラインに到達した。おもちゃ屋一家はひたすらマネキン作りにいそしむ。俺はエレベーターの製作を始める。
土台なしに製作は難しいので、先に階段を作る。レッドラインを部分的に液化させ、重力で海に落とす。残った部分の形を整えて階段にしていく。ラブーンの頭突きでびくともしなかった岩の大陸も俺の能力の前にはゼリーのようなものだ。ただ、融点がとても高いので近くにいると熱い。火傷よりは冷えの方がマシなので、氷の鎧を纏うことにする。
3時間で高さ300mほどの階段が出来上がった。階段の幅はフィッシャー・タイガーが歩けるくらい十分大きいものだ。
次に、エレベーターが通る壁を作っていく。これもレッドラインを鋳造して作る。鋳造と言っても型はなく俺のフィーリングで作り、後から寸法を合わせるが。
ワイヤーの材料はフィッシャー・タイガーに運んでもらった鉄の塊。これを俺のフィーリングで長細いワイヤーに変えていく。後で寸法を合わせる。
できあがったワイヤーを穴の開いたはりに通し、エレベーターの本体をワイヤーの端と端に2つくっつける。この本体は木製だ。材料はフィッシャー・タイガーに持ってこさせた。この木で人間の奴隷が逃げるための船も作る。
半日で高さ300mものエレベーターが出来上がった。次にきちんと動くかどうか試験する。エレベーターを上げる時は俺の能力で車輪を回してワイヤーを巻き上げる。下げる時は自重だ。一端のエレベータが下がると一端のエレベーターが上がる仕組みになっている。また、エレベーターのワイヤーはふつうのエレベーターと違ってスピードの制限を機械が行っていない。自分でブレーキを使って安全に落ちる必要がある。
試験運転は成功した。安全を考えるともう何度か試験した方がいいが、時間がないのでさっさと続きを作る。
ワイヤーの強度を考慮してエレベーターは300mの高さごとに乗り換えるものとする。また、休憩用に10mかける20mの長方形の一階を作っておいた。とかく、再び階段造りから始める。
延々とこの作業を続けた。俺は鋳造に慣れていき、作業効率は上がっていった。が、高くなるにつれて材料を運ぶのに時間がかかるようになってきた。高さ1万メートルは伊達じゃない。
結局頂上までエレベーターを通すのに2ヶ月かかってしまった。たった一人でこれほど大掛かりな装置を作れたことに自分で驚いてしまうが。ただ、エレベーターの高さは9000mくらいだと思う。マリージョアはさらに高い位置にある。レッドラインの高さはだいたい1万mであって、低いところは7000mくらいで崖が終わっていたのだ。
この崖からマリージョアまで直線距離で3キロ近くある。強靭な奴隷にとってはわけのない距離だろうが、怪我人や衰弱している奴隷には辛い距離だ。もう少し近くにエレベーターを作っておくべきか。ただ、マリージョアから最短距離の場所には天竜人の乗り物がある。あそこに見張りの役人や海兵もたくさんいるからあまり近づくのも危険だ。
さて、俺は別のエレベーターつくりに励む。フィッシャー・タイガーは材料を運びつつ、マリージョア近辺を望遠鏡で探り、地図を作っていった。ダムを決壊させる場所、水の流れ、兵士の動きなどのシミュレーションをするためだ。
そうしてさらに半年が過ぎた。エレベーターは5箇所完成した。俺は能力で地下を掘り、ダムへと到達した。
おもちゃ屋は2000体ものマネキンを完成させ、気球まで作っていた。フィッシャータイガーが大量のマネキンを俺の作った地下道や気球の中へ入れていく。
そうしているうちに水が通る地下道が完成した。ダムと地下道を隔てるのは俺が作った氷の壁のみ。これを溶かせばいつでも洪水を起こせる。
問題は洪水を起こすタイミングだ。夜ならば見張りの目を欺けるが、人間の奴隷が溺れて死んでしまうかもしれない。かと言って昼ならば見張りに見つかって簡単に殺されてしまうかもしれない。
いろいろと考えた結果、夜明けのやや前に共に攻めることにした。奴隷の朝は早い。役人は時間交代で朝方は少ない。天竜人は睡眠中。奴隷は頭がはっきりしている頃だが、役人は夜の見張りで疲れたやつとまだ眠いやつばかり。天竜人は眠くて動きが遅い。
さて、ついに作戦決行の日がやってきた。魚くんに乗り込み、地下道から氷の壁を見上げる。フィッシャーも地下道で待機。おもちゃ屋の主人と婦人はダミー気球の打ち上げとエレベーターへの案内をするために上で待機している。おもちゃ屋の娘は人間の奴隷が乗るための船を隠している場所からエレベーター付近まで引っ張る役だ。彼女一人での力では無理だが彼女は魚と会話でき、魚に船の輸送を協力してもらうことで船を動かせる。
砂時計の砂が落ちるのを待つ。心臓がバクンバクンする。失敗は許されない。
俺は生き残ることができるか。