ワンピースでワクワクさん   作:ゴロリ

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水攻めワクワク

 とある長官△△の日記

 

 午前5時00分、天竜人居住区に高さ50センチの洪水発生と報告あり。天竜人の安全確保を第一に、原因究明を求める。

 午前5時02分、洪水の原因は地下から噴出する水と判明。しかし噴出の原因は不明であり噴出箇所が複数確認される。同時刻、奴隷が逃走を始めたと報告あり。首輪の鍵の確保にも人員を割くこととする。

 午前5時03分、ジョーズン聖を模した人形が少なくとも100体以上流されているのを発見。職員が4つほど救出したがいずれも人形だった。

 午前5時04分、天竜人の居住区複数に火の手が上がったと報告あり。

 午前5時05分、首輪のない巨人族の奴隷が暴れていると報告あり。洪水の高さは1mとなった。

 午前5時08分、首輪のない奴隷が数十人まで膨れ上がったと報告あり。脱走者が爆発的に増える危険性を考慮し、海軍に応援を要請する。私も現場に向かうことにした。

 

 午前5時20分頃、現場に到着する。図ったように天竜人の居住区一帯のみが水で満たされており、水の高さは2mほどあった。火は刻一刻と激しさを増していた。調理を任されている奴隷の放火もあるだろうが、能力者もいるようだ。

 水は下方へと進んでいく。木片をつかむ奴隷達が崖のほうへ流されていくのが見えた。魚人や人魚は常人が走るより速く泳ぎ、崖へと逃げていた。

 

「天竜人の命を最優先だ。逃げる奴隷は放っておけ。どうせレッドラインは降りられん。雲の道を降りる船だけは守っておけ」

「了解です!」

「ぎゃああああ! 魚人がああああ!」

「天竜人確保! しかし心配停止状態です! いえ、あっ、ま、マネキンでした!」

 

 最も優先すべきは天竜人の命。本来ならばそう難しくないはずだが、マネキンで情報が錯乱していた。また、CPの実力者には悪魔の実の能力者が多い。彼等が水に入って天竜人を救出するのは困難であり、逆に常人では救出した天竜人を安全な場所へ移動させるのが困難だった。海のないマリージョアには救出用のボートが不足している。職員は泳げない天竜人を背に乗せて泳ぐ必要があった。さらに、そこへ魚人の奴隷から攻撃を仕掛けられることもあった。ただでさへ魚人の筋力は常人の10倍だが、水中での戦いとなればさらに差が開く。常人の職員になす術はなかった。

 

「チッ」

 

 指示だけ出している場合ではない。そう判断した私は目に見える範囲にいる天竜人のもとへ月歩で飛んだ。

 

「何やっとるかえ! もっと速く来る、ひっ!」

 

 1人の天竜人を抱え、月歩で魚人の攻撃をかわす。かわしながら水中に嵐脚を放つ。

 

「ぐぎゅっ」

 

 魚人は切り裂かれたが、死んでいないようだ。胸を抱えて逃げ始めた。

 止めをさしている暇はない。月歩で天竜人を高所に移動させる。再び水面へ飛ぶ。

 

 そうして13人の天竜人を救出し終えたが、全員にはまだまだ及ばない。私は天竜人の家中も捜索することにした。

 

 自分を偉いと思っている人間は最上階を私室としている場合が多い。私は最上階から捜索に当たっていった。しかし火で最上階が燃えている場合は燃えていない部屋のうち最も高い部屋から入っていった。

 最上階が燃えている家については、天竜人が無事であることは少なく、既に殺されていたり、大怪我を負っていたり、人質にとられている場合が多かった。もっと言えば男の天竜人を殺して女の天竜人を人質にとるパターンが多かった。

 人質については、私の剃で一瞬で反逆者を仕留め、奪還できた。問題は大怪我を追ってしかも瓦礫にはさまれている場合だ。私にとって瓦礫が重いということはないが、下手に動かすと崩れて下にいる天竜人が死んでしまう。この場合に慎重を要するから手間取ってしまう。

 

 約半分の家を調査し終えた頃、部下から通信が入った。

 

「長官、崖の上に飛行物体を発見しました! 人影も見えます! 奴隷が逃げているようです!」

「いや、奴隷とは限らん。この手際のよさは首謀者の可能性もある。月歩で追いかけろ」

「了解!」

 

 さて、この居住区に我々に立ち向かってくる魚人はほぼいなくなった。後は部下だけでも何とかできるだろう。

 問題は天竜人を人質にとったまま崖方面へ降りていった連中だ。

 

 なかなかの覇気の持ち主が三人いた。

 1人は魚人を束ねる男。人間の奴隷達を彼方へ投げ飛ばす怪力。水中での剃のようなスピード。水による攻撃。全て厄介だ。おそらく水中では私も敵わん。

 もう1人はこの居住区に放火した男。油を自由に操る悪魔の実の能力者。確かオイル海賊団の船長、懸賞金2億4000万のオイル・ナターネだったか。

 そして最後の一人。覇王色の覇気で見張りと天竜人を一斉に気絶させた男がいる。こいつは特定できなかったが、下手をするとCPゼロでも一対一では危ないかもしれん。

 天竜人の安全が第一だ。ことによっては逃亡を認めることになるやもしれんな。

 

 

 --ワクワク視点--

 

 作戦は順調だった。

 水と共に勢いよく飛び出した俺は、そのままフィッシャー・タイガーにキャッチされた。突然溢れた水に家事をしていた女奴隷達が悲鳴を上げて逃げていったが、これはある程度狙い通りだった。崖のエレベーターのある方向へ逃げていったからだ。

 タイガーは俺を担いだまま近くの巨人族の奴隷に接近した。この男は座ったまま眠っていた。大きすぎて家に入れないから外で寝ているのだろうか。

 とかく、俺は水で氷の鍵を作り、この巨人の首輪を外した。タイガーは巨人の耳元で叫んだ。

 

「お前の首輪は外してやったぞ!」

「うわぁっ!? び、びっくりした。なんだおめぇ。こんな朝っぱらから。というか水が出てるじゃねえか。なんでだ? 危ねえな」

「お前の首輪は外してやったぞ! 暴れながら崖の方へ逃げろ! ついでに逃げてる女を一箇所へ集めておけ! 後で女達の首輪を外してやるから!」

「えっ、首輪? あっ、ねえじゃねえか! マジか!?」

 

 この巨人は鈍かったが、20秒くらいで作戦を理解してもらった。

 水に足を取られた奴隷を拾ってもらい、ついで一箇所にまとめてもらう。こうすれば俺が首輪を外す時に早い。

 

 外にはこの巨人以外にも何人か屈強な男がいた。人間も魚人もいた。俺達はまず彼等の首輪を外していった。戦力を整えるためだ。

 魚人には「協力してくれ」と。人間には「適当に暴れてくれ」と頼むことが多かった。

 

「へっ、おもしろいもん見せてやるぜ」

 

 屈強なおっさんの中に悪魔の実の能力者がいたのは運がよかった。彼は油を操る能力者で、天竜人の居住区を次々と燃やしていった。また、油を固めることで鍵を作り、首輪を外すこともできた。水に対しても、油は水に浮くことのワンピース式理論で、水面を走ることができた。

 

「ロリゴ、お前また捕まっていたのか」

「ワ、ワクワクくんの声!? 魚からワクワクくんの声!?」

 

 裏切りゴリラも外にいたので助けてやった。だが、やはり一人でとっとと逃げていった。

 火と水に気付いたか、天竜人、護衛の役人、奴隷が次々と家から飛び出し、逃げ始めた。水に道を遮られて動けない人や溺れている人もいた。

 この段階で天竜人のマネキンが水に流れるようにしておいた。役人は騙されて水に飛び込んでいき、運が悪ければ魚人達に刈られていった。

 

 戦力をあらかた整え終えると、次は宮殿の中に攻め込んで行った。天竜人の宮殿は全部で19あった。フィッシャー・タイガーはその全てに攻め込み、全ての奴隷を解放するつもりだった。

 しかし、油の能力者と、彼より遥かに有能なある男がいたことで、役割は3分の1程度に減った。

 

「君達、水攻めはやり過ぎじゃないかね」

 

 俺達がある宮殿に入ろうとした時、その男は俺たちの隣に降ってきた。

 

「首輪をしていないようだが、味方か?」

「敵ではない。ここへは天竜人の財産を拝借するためにやってきたんだ」

 

 おだやかな口調と強者の覇気。フィッシャー・タイガーも戦ってはタダでは済まないと感じたことだろう。

 この男、冥王レイリーであった。

 

「財産狙いか。俗物だな。俺の邪魔はしないでもらいたいが」

「邪魔か。奴隷を解放するつもりなら、私も協力するつもりでいるが」

「そうか。それはありがたい。何ができる?」

「戦闘にはそれなりに自信がある。首輪についても鍵がなくとも外すことができる」

「なるほど。僥倖だ」

「タイガーさん。この人は本物の強者だ。この人と俺たちと油の人と、手分けして宮殿を攻めよう」

「ほう。思ったより若い声だな」

 

 フィッシャー・タイガーは少し考えた後、スッとレイリーの目を見た。

 

「ふん。いいだろう。ここは任せる」

「任された。ふふっ。誰かと共闘するのは久しぶりだな」

 

 レイリーはたった一人で勢いよく宮殿の奴隷を解放していった。また、役人の援軍を覇気で気絶させてくれた。

 フィッシャー・タイガーはCPとの戦闘でそれなりに手こずった。六式のいくつかを使う護衛や能力者もいたからだ。水浸しの一階と地下では楽に勝てたが。

 また、俺は魚だと認識されており、フィッシャー・タイガーが戦っている間に奴隷の首輪を外していくことが可能だった。そうやって戦力を増強してCPと戦った。CPが強すぎて勝ちきれない時は、全ての奴隷を解放し終えた直後に逃げた。

 油の能力者はフィッシャー・タイガーよりさらに旗色が悪かった。魚人以外の戦力を彼に集めることでなんとか負けないようにした。CPが強い時はタイガーが応援に行くこともあった。

 

 奴隷の中には泳げない程衰弱している者や泳げない悪魔の実の能力者もいた。

 彼等は主に協力者の人魚が運んだ。が、人手が足りない時はフィッシャーが水没地の外側まで投げ飛ばした(水の塊に乗せて投げたので着地時に水がクッションになりケガはしない)。1キロ近く投げたと思う。とんでもない怪力だ。それでもエレベーターには届かないので自力でエレベーターまで走るか誰かが後で運ぶ必要があるが。

 

 そうして一通り全ての建物を見終えた。まだどこかに奴隷がいるかもしれないし、溺れている人もいるだろう。が、あまり時間をかけすぎると応援がやってくるからここらが限界だ。水が浅くなると魚人の利も消えてしまうしな。

 

 俺たちは5人の天竜人を人質に取り、居住区から撤退を始めた。

 道中、マネキンを乗せた気球が空高く上がっていくのが見えた。騙されたCPが月歩で追いかけていくのも見えた。やはり気球を作っておいてよかった。

 

 水深40センチくらいのところでタイガーは泳ぐのを止めて走り始めた。最寄のエレベーターまで2キロくらいの地点だった。500mほど前方で、巨人がこちらに手を振っているのが見えた。

 

「時間短縮のため、だ!」

 

 タイガーは言いながら俺を投げ飛ばした。あまりの加速度に一瞬意識が飛んだ。

 ボフッ、という音と共に巨大な手のひらに包まれ、俺は止まった。

 

「魚? なんで魚?」

 

 俺は魚くんを割いて手足を出し、手のひらから飛び降りる。

 骨を強化しながら着地。それなりに痛い。

 

「はい並んで並んで! 首輪を外しますよ!」

「えっ! 魚人!?」

「というか手足そこ!? 魚の腹から足!?」

 

 ツッコミを無視して次々と首輪を外していく。

 おおっ!? ゴルゴン三姉妹発見! めちゃかわっ! 未来のデブ妹も今はめちゃかわっ!

 

「ありがとう! お魚さん!」

「ありがとう!」

「あっちへ逃げろぉ! 乗り物を用意してあるぞ!」

「あ、あっちだね!」

「信じるぜ! 信じるしかないからな!」

 

 元気な人はすぐさま走っていく。衰弱している人はよろよろと動く。巨人が見かねて彼等を手のひらに乗せる。

 ありがたい。でも俺の作ったエレベーターに巨人が乗ったら壊れると思う。どうしよう。階段ならギリギリ進めるかな?

 

 走るスピードに合わせていくつかの集団ができた。最も速いのがロリゴ含めた屈強な男達だった。一人天竜人の人質を抱えている男もいる。

 

「こっちです! こっちですよ!」

「おお! 人魚の姉ちゃん! なんかあるな!」

 

 おもちゃ屋の夫人が屈強な男達を呼ぶ。ここが最寄のエレベーターだ。できれば衰弱している人達に使いたかったが、あの身勝手な男達に「お前達は後! ケガ人や病人が先!」と言っても反発するだろうからな。仕方ない。先頭を譲ろう。

 

 次の集団は巨人とその手に乗っている衰弱した人達。彼等には俺がエレベーターへ案内することになりそうだ。近いしな。

 次の集団は魚人と彼等に担がれている人魚。また、人質の天竜人が3人。彼等はフィッシャー・タイガーが案内すればいいだろう。

 最後の集団はふつうの人間達。ゴルゴン三姉妹もそこにいる。と言っても彼女等を一般人というにはかなり足が速いが。妹2人は巨大なヘビになって他の人間を助ける余裕まである。あそこの案内は、おもちゃ屋の主人に任せることになりそうだ。少しこころもとないが、最後尾にはレイリーと油の能力者がいるから逆に一番安全かもしれない。人質の天竜人も一人いる。

 

「あっ、れ? あいつらの乗った箱落ちていっちまった。どうするんだ?」

 

 巨人はエレベーターが降りたのを見て立ち止まる。俺は巨人に向かって叫ぶ。

 

「あそこにエレベーターがあるでしょ! あそこ! 見えますか!」

 

 俺は500mほど先の崖を指差す。

 

「エレベーター? それは知らないが、さっきの姉ちゃんのところにあったようなやつがあるな」

 

 巨人はうなずき、エレベーターへと走っていく。

 大きな歩幅ですぐにたどり着き、人間を地べたに降ろす。

 俺は魚くんを脱ぎ捨てて走る。

 

「はあ、はあ、はあ。げほげほっ」

 

 1分ほど遅れて到着。しんどっ。1キロ近く全力で走ったからめちゃくちゃしんどい。凹凸の激しい山道だったしな。

 

「皆さん箱の中に乗ってください。げほっ、ごほっ。ああっ! 巨人さんは乗らないで! 壊れちゃう!」

「ええっ!?」

 

 一番頑張った巨人さんが乗れないのはかわいそうだけど、壊れちゃうからね。仕方ないね。

 

「巨人さん、ここに階段があるのが見えますか?」

「か、階段? バカ言うなよ! こんな幅に俺の体は入らんで!」

「いえ、ですが階段の隙間に指は入りますよね?」

「指? そりゃあ入るが、それがどうした?」

「この隙間でロッククライミングしてください! それしかありません!」

「ロ、ロッククライミング!? それは無理だ! いくら俺の体がお前の10倍くらいあるからって、レッドラインは高さ1万メートルだぞ! お前は高さ1000mの壁を登れるか!?」

「300mごとに休憩できるようになっています! 頑張ってください! やるしかありません」

「300m!?」

 

 巨人は疑わしそうに下を覗き込む。

 

「う、ん。おっ? 確かにでっぱりみたいなのがあるな! だったらいける、のか?」

「やるしかないです! やりましょう!」

「く、くううっ。せっかく奴隷から解放されたと思ったら、この始末! い、いやさ! 巨人の誇りを見せる時だ! こんなもんにビビっちゃあ名折れよ!」

 

 俺は巨人が言い切る前にエレベーターを降下させ始める。人間達から小さく悲鳴が上がった。まあ怖いよね。エレベーター。しかもこのエレベーター自由落下で加速して途中からブレーキ使うからね。

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