ワンピースでワクワクさん   作:ゴロリ

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レッドラインで島作り

 筒の周りを潜水艦が完成するまでの仮の住居とする。外でも活動ができるように、巨大なシャボンを筒の周りに張っていく。後から中にある水を抜く。ふつうは不可能だが、俺ならばシャボンに穴を開けてもそこを強化しておけばシャボンは割れない。穴を開けたまま維持し、シャボンの内側の海水を気化させて圧力を上げ、海水を外側に流していく。おもちゃ屋の娘ファンファンと彼女の友人達にも手伝ってもらう。そうして筒を中心に半径20mほどのドーム型の空間ができた。水を捨てる作業は約2時間かかった。

 

 この間に、元奴隷達には食料の確保と戦闘訓練を要求しておいた。もう少し休憩してもらってもよかったのだが、本人達が「仕事をください」「掃除でも皿洗いでも何でもやります」「殺さないで」と迫ってきたから仕方ない。

 食糧確保と言っても、ここは深海だし彼等は弱っているので彼等だけではドームの外側に行くこともできない。よって俺の知人の魚人に海の森へ移動させてもらい、そこで彼等の採集を手伝う形で食料を得させた。海の森は魚人島の一部だが王宮から離れておりリュウグウ王国とは見なされない。たぶん見なされない。よって兵士に見つかっても捕まることはないはずだ。食料はここに滞在する期間の分だけではなく、潜水艦で移動する間の分も必要だ。保存方法は心配ない。俺の能力でいつでも瞬間冷凍と瞬間解凍が可能だ。栄養のバランスを考えなければ海王類を一匹しとめただけで一年は楽に暮らせる。実際にそれをやったらビタミン不足で死ぬと思うがな。

 戦闘訓練について。多くは望まない。一般的な海兵に出会った時に逃げれる足の速さ。海に落ちたときに一人で船まで泳げる体力。マストを上げる腕力。現段階ではこの程度で構わない。ただし、子どもにはとても期待している。コアラが若くしてあの強さになったことを考えると、奴隷の屈辱は人間を強くすることもあると思われる。もっとも彼女の場合は助けてくれた魚人を家族に売られたという罪悪感の方が大きいかもしれないが。

 奴隷には腕や足がない者もいた。彼等にはとりあえず俺の能力で義腕義足をつけておいた。義足はかなり喜んでくれた。義腕もないよりはマシだと思われる。ところで、足はあるが腱がなくて動けない人もいた。デコイ・ナタリーという13歳のかわいらしい娘なのだが、彼女は悪魔の実の能力者でもあった。ナデナデの実を食べたそうで最高に気持ちいいマッサージができるという。あえて聞かないが、天竜人の夜の世話をさせられていたと予想できる。とかく、実際撫でてもらうと、あまりに気持ちよくて疲労が一瞬で吹き飛んだ。彼女には他の元奴隷と違い俺専属のマッサージ師として残ってもらった。将来にわたって手放したくない逸材である。

 

 

 潜水艦の設計について。この世界にはコンピュータがないので有限要素法は使えない。

 今までの俺は、実験的に小型のモデルで強度を試した後に、拡大した倍率の何乗で壊れやすくなるかの理論式を調べ、その理論式に想定最大荷重あてはめて壊れる時の5倍程度の強度になるよう製作していた。

 この理論式もいい加減であり、5倍という数字を信じることはできない。ふつうに壊れることが多々あった。だが、俺の能力を使えば強度を水増しできる上、壊れてもすぐに修復できるので、大雑把でもいいと思っていた。それよりも物を作る喜びを優先していた。

 だが、38人が乗る大型の潜水艦となると勝手が違ってくる。

 

 何よりもまず、能力で船全体の強度を水増しできない。俺の力の及ぶ範囲は自分の頭を中心とした半径1mくらいの球体内。10人乗りでもスクリュー以外の強度を水増しできなかったが、今回はスクリューさえ水増しできるか怪しい大きさとなる。また、壊れてしまった時に、修復するまでに移動時間がかかる。船内から能力が届く範囲に傷ができるとも限らない。あまり何度も壊れて修復してというのはうれしくない。

 

 しかし、出発まで時間はあまりない。海軍はコーティングが完了し次第こちらに向かってくるだろう。タイヨウの海賊団がどれだけ粘れるかは分からないが、長くとも1ヶ月、短いと1週間くらいだと見積もっておくべきだろう。

 あまり設計に時間をかけられない。ある程度いい加減に大きさを決め、厚めにしていく。潜水艦の材料は主にレッドラインを使うことにする。硬さもしなやかさも鋼鉄より優れており集めるのも簡単。材料としてこの上ない。窓はシャボンを俺の能力で固めてガラスのようにする。シャボンも軽くてしなやかさに優れるので材料としてすばらしい。

 

 ほぼ寝ず設計し約1日で終わった。滅茶苦茶頑張った。疲労困憊だったがナタリーのマッサージにより回復は早い。

 3時間の睡眠の後、食事を済ませてすぐに部品作りにかかった。ボディはとても大きくスクリューは精度も要求されるので骨が折れる。

 

 材料は筒の底にあるレッドラインを使った。ボディは外形を作った後に内側を液体にして取り除いた。スクリューは大雑把に鋳造した後に削ったり接合したりを繰り返して寸法を整えた。整えたと言っても、流体の計算ができないからスクリューの形は効率がいいか分からないし、寸法も物差しで何箇所か測っただけだが。

 

 部品作りの最中、なでこ(撫で娘であり『な』タリー・『でこ』イだから。顔も化物語のなでこっぽい)が突然悲鳴を上げた。

 

「ぎゃあああああああ!」

「て、敵襲か!」

 

 俺は慌てて周囲を見渡した。ジンベエがこちらに近づいてきていた。右手に巨大な海王類、海草を敷き詰めた巨大な網を持って。くれるというのだろう。さすがはジンベエさんだ。これで食糧の不安は当分なくなった。

 ジンベエの前方には元奴隷達と彼等を運ぶ魚人もいた。

 

「なでこさん、あれはジンベエさんだ。見た目は怖いが優しいから大丈夫だ」

「ひぃっ。ご、ごめんなさい。ごめんなさい。悪気はなかったんです」

 

 なでこは俺とジンベエに忙しく頭を下げる。

 ジンベエは海王類と海草をシャボンの外に置き、ふくれっ面でシャボンに入ってきた。

 

「ふん。ここでも化け物扱いか。せっかく食糧をわけてやろうというのに」

「ごめんなさい! ごめんなさい!」

 

 なでこは腱がなく立てないので這ってジンベエの前へ移動し、土下座した。何度も何度もデコを地面に打ちつけて謝った。

 

「も、もうよい。これではわしが悪者みたいじゃないか」

「なでこさん、ジンベエさんにマッサージして差し上げましょう。こちらからもお返ししないといけませんから、ちょうどいい機会です」

「は、はい!」

「待て! わしは魚人を天竜人から解放してくれた恩に報いるために協力することにしたのじゃ! 礼はいらん!」

「ひぃっ」

 

 なでこがジンベエに這いよると、ジンベエはさっと逃げた。なでこは泣きそうな顔で俺とジンベエを見回した。いや、早くもポロポロと涙が落ちている。

 ファンファンが不意に近づいてきた。

 

「実はさっき、海の森にホーディの一味がやってきたの。人間はもちろん人間に協力する魚人や人魚も許さないと言って襲ってきたの。かなり危なかったんだけど、そこにジンベエ親分がやってきて、ギリギリ助かったのよ」

「ああ、あいつらが。それは助かったな」

 

 キタジに続いてあいつらも脱走か。あるかもしれないとは思っていたが危なかったな。

 

 ジンベエは俺達が潜水艦で脱出するまで護衛を務めてくれるらしかった。かと言って馴れ合うつもりはないようで、シャボンの端に腕を組んで座っていた。

 ジンベエが持ってきた海王類は俺の能力で角切りにして凍らせた。肉の全ては船に入らないので。残りはジンベエに返した。ジンベエは「わしがやると言ったのだからその肉は全てお前達の物だ」と言って、肉を受け取るのではなく魚人島に売り、売ったお金を全額俺達にくれた。まさに仁義に生きる漢だった。

 

 部品作りは約3日で終わった。即座に組み立てに移る。重くて俺一人では運べない部品もあるので、ジンベエ等にも手伝ってもらった。

 運ぶのには人数が必要だがくっつけるのは俺一人で行う。能力を使えば一瞬で接合できるからだ。ネジやクギは必要ないので作ってすらいない。

 

 組み立ては1時間ほどで終わった。早速深海に放り込んでみることにする。が、ジンベエから待ったがかかった。

 

「タイの大兄貴を呼んでくる。進水式には呼ぶよう言われているのでな」

 

 人間嫌いのタイガーも俺には心を許したのだろうか。もしくは単なる義理か。

 

「私もキタジさん達呼んでくるね」

 

 ファンファンもそう言って魚人島へ向かった。

 

 進水式をするつもりはなかったが、魚人達がやる気なのですることにした。元奴隷達に料理の用意を命じる。元奴隷だけあって動きは早い。

 

 しばらくして、フィッシャー・タイガー率いるタイヨウの海賊団、キタジ率いるキタジの一味、ついでに白髭海賊団の部下も一人やってきた。

 大勢の怖い顔の巨大な人たちに囲まれて元奴隷達は縮こまる。俺も内心ビビッた。

 

「ほう。これが潜水艦か。シャボン無しで深海を進むという」

「さすがはうちの技術部顧問だぜ。鼻が高い」

 

 フィッシャー等は感心したようだった。

 力自慢達が潜水艦を持ち上げ、シャボンの外へ出していく。俺はシャボンが破裂しないように能力で強化する。

 潜水艦が完全に水に入る。観衆から歓声が上がった。

 

 俺はシャボンの簡易空間を顔周りに作り、舟に水漏れや異常がないか外側からチェックしていく。次に中に入り、中にも異常がないかチェックしていく。

 一応異常なし。次にスクリューなどを起動させてみる。

 まずはゆっくり動かす。異常なし。徐々に速度をあげていく。うっ、酷い音が出た。どっかで何かの固有振動数に当たっちゃってるのかな。まあゆっくり動かせばいっか。

 

 一応成功だと皆に伝える。歓声が上がった。

 不意にフィッシャー・タイガーが近づいてきた。

 

「今後の予定は?」

「もともとは東の海にいけたらいいと思ってましたが、この船のスピードではカームベルトを超えるのは無理ですね。グランドラインのどこかの島に移住することになります」

 

 東の海は海賊も海軍も最弱だからちょうどよかった。原作改変も楽しめるしな。でも今はまだ行けない。もっといい船を作らないと。

 

「どこの島に行くつもりだ?」

「レッドライン付近でおもちゃ屋の夫婦と合流します。植物の苗、エターナルポース、衣服等の新生活に必要なものは用意してくれているはずです。無人島のエターナルポースがあるならそこへ移住します。なければ、おそらくレッドラインを加工して島を作ります」

「島を作るだと!? 可能なのか?」

「ええ。厳密には島ではなく出っ張りですが」

 

 話していると白髭の部下らしき男が近づいてきた。

 

「奴隷解放の首謀者はお前等二人で合ってるよな」

 

 突然ぶっきらぼうに言った。フィッシャー・タイガーがムッと眉を顰める。警戒している感じだ。

 

「協力者なら他にもいますが」

「そうか。だったらそいつらも集めてくれ」

「何が目的だ?」

 

 フィッシャー・タイガーが白髭の部下を睨む。場に緊張感が高まっていく。

 白髭の部下は軽く両手を挙げて敵意はないと示した。

 

「警戒はしないでもらいたい。いや何、今回のことで親父がお前達を気に入ったらしくてな。会って話がしてみたいと言ってるんだ。会ってくれねえか?」

 

 いきなりそう来たか。あの人のことだから息子にとか言い出しそう。俺の正体を知って幻滅しなければね。

 いや、本来はとてもありがたい申し出だけどね。天竜人の奴隷は故郷に帰ることも海軍を頼ることもできないから、安全のためには白髭にかくまってもらうのが一番いい。

 だけど、今の俺は美女を囲った生活まであと一歩のところにいるんだ。ここで失いたくない。でも安全は欲しい。うーむ。

 

「断る。世界最強だかなんだか知らんが馴れ合う気はないと言っといてくれ」

「そうか。残念だ」

 

 と、フィッシャー・タイガーはあっさり断った。

 白髭の部下は俺を見る。

 

「えーっと、会うだけならいいのですけど、仲間を待たせていますし、この人たちを見捨てることはできないので、今すぐというわけには」

「そうか。なら俺もしばらく同行しよう。お前みたいなガキが船長じゃあ心配だしな」

 

 その言葉にキタジ一味がぴくんと反応した。

俺もうげーっとなった。幸せの空間に指揮り屋が。安全を考えるといてくれた方が助かるけども。

 

「こいつはちっこいが中々やるんだぜ」

「頭もいいし戦闘もなかなか強い。ナメてかからない方がいいですよ」

「ふんっ、ガキに言われてもな」

 

 キタジ等があおるように言うと白髭の部下も煽り返した。嫌な雰囲気になってしまった。ここはさっさと出発してしまおう。

 

「で、ではそろそろ出航しましょう。長居しているとリュウグウ王国の軍隊も来てしまうので」

「そうか。じゃあ俺達も出航しよう。タイヨウ海族団も今日が船出だ。深海の旅は同行しよう」

「あ、ありがとうございます」

「ふん。これくらい当然のことだ。魚人は義理を守る」

 

 フィッシャー・タイガーはそう言うと白髭の部下を睨んだ。ありがたい申し出だが、なんか俺を取り合って争ってるみたいだな。俺は男だし「やめて! 私のためにケンカしないで!」とか言うキャラじゃないんだがな。

 

 さて、出航する。

 俺は動力室でスクリューを回しつつ、操舵手の男に使用法を教える。

 

「右に押したら左に、左に押したら右に、下に押したら上に、上に押したら下に行くようになってるブレーキは俺がかける」

「う、うむ」

 

 20歳くらいの男だが、大役を任されて緊張しているようだ。見ていておもしろい。

 

「おいおい、航海士はいないのか?」

 

 白髭の部下は不満げに言った。そんな高尚な人間は存在しない。ただしファンファンが海を知っているし魚と会話して波の状況を把握できる。

 

「いませんが、人魚のファンファンさんが波を把握できます」

「そんなんで大丈夫か? グランドラインを舐めてると痛いめ見るぞ」

 

 その通りではあるが、面倒くさいなこいつ。

 

「ワクワクさん! 前方巨大魚出現! あっ、いや、今アーロンさんが殴り飛ばしました!」

「後方異常なし!」

「1時から3時異常なし!」

「4時から6時同じく!」

「7時から9時同じく!」

「10時から12時も同じく!」

 

 見張り達が早速声を上げる。今は魚人の護衛がいるので見張りは必要ないが、練習だと思えばやっておいた方がいいよね。

 なお、見張りは交代制であり、余った人にはトレーニングを課している。白髭の部下にはそっちを見てもらいたかったが、あまりにもお粗末過ぎて教えることは何もないかもしれない。

 

 途中何度か巨大魚や海王類に遭遇したが、フィッシャー・タイガーとジンベエが簡単にやっつけた。俺達は1時間ほどで海面に出た。能力使いっぱなしで精神的に疲れた。なでこにマッサージしてもらおう。

 ファンファンに外に出てもらい、魚と会話して彼女の両親の居場所を尋ねる。南東の海で見かけたらしい。

 

「では、お達者で」

「お前達もな。簡単に海軍に捕まるんじゃねえぞ」

 

 タイヨウの海族団と別れる。彼等は世界を回って奴隷にされた魚人を解放していくらしい。ヒューマンショップで買い物をしていたのは天竜人だけではなく、各国の大商人や貴族や王もだからね。

 一気に心細くなった。海中最強の男を失ったわけだからな。これでハーレムができているならまだしも白髭の部下がいるからリラックスできないしな。

 

 レッドライン付近でおもちゃ屋夫婦と久しぶりに合流。娘と両親は抱き合って喜びを分かち合った。

 木造の船で逃げた奴隷があれからどうなったかを聞いた。

 

 まず、ゴロリ達は島につくなり方々へ逃げ出した。海賊に自分を売り込む者やチームで動く者もいたが、ゴリラは一人で逃げていたようだ。

 ハンコック等はレイリーに匿われた。レイリーは知り合いの漁師や海賊のツテを借り、彼等を故郷へ帰していっているようだ。俺の影響でたくさん助けちゃったから大変だろうな。故郷に帰すにしても、ハンコックの故郷なら問題ないが、海軍支部が強いところだと海軍に捕まって奴隷に逆戻りだしね。その辺はどう対応するんだろうね。

 

 おもちゃ屋の夫婦は農業用の苗とログポースを手に入れていたが、エターナルポースはなかった。あれは高いので容易には手に入らない。残念だが仕方ない。レッドラインで島を作り、こそこそと暮らすことにしよう。

 

 レッドラインの出島。海からは見えないように周りを高い岩で囲う必要がある。この囲いは高潮や海王類対策にもなる。壁に囲まれた中で太陽の光を通すために、ある程度の広さが必要だ。最終的には壁の高さ50m、出っ張りの長さ300m、レッドラインに沿う長さ1000mくらいで作ろうかなと思う。一から全部作ることもできるけど、そうすると時間がかかるから、ちょうどいい出っ張りを探すことから始める。

 

 ちょうどいい300mくらいの山形の出っ張りを発見。長さはレッドライン方向への長さは2キロくらい、高さは100mくらいあった。

 まずは船着場を作り、潜水艦とレッドラインを固定して泊める。

 船から出て階段作りに励む。慣れているのであっという間だ。頂上に到達。レッドラインを液化させ、内側の岩を端に寄せいく。その端で固定。壁となる。このパターンで頂点をへっこませてその分を壁にしていく。壁の厚さは3mくらいにする。

 

 2時間くらいで高さ5mくらいの壁になった。もうこれでいいような気もする。外からは見えない。

 さて、生活する上で重要になるのが水源作り。俺の能力なら瞬間的に沸騰や冷凍ができるから海水で問題ない。バケツに海水を汲んで運ぶこととする。水を貯蓄する池は作る。畑にも必要だしな。

 池作りもあっという間に終了。元奴隷達にはバケツで水を汲んでおくよう指示しておく。

 俺は力自慢を集め、潜水艦でシャボンディ諸島を目指す。農業用の土を手に入れるためだ。

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