ワンピースでワクワクさん 作:ゴロリ
レイリーの元には先日逃げた奴隷の大半が集結していた。自力で隠れている者や、既に海軍に捕まってしまったものや、シャボンディ諸島から逃げた者もいた。
レイリー達は今日が海軍の掃討戦だという情報をつかんでいた。情報提供者はにょん婆ことアマゾンリリー先々代皇帝のグロリオーサ。彼女はレイリーの古い知人であり、自身の後輩達を匿うようレイリーに頼まれ承諾していた。グロリオーサの情報がなくとも、海兵や人攫いの動きを調べれば今日明日あたりが危ないと予想はできた。
レイリーはシャンクスに脱出艇を用意するよう頼んでいた。彼がこの諸島に到着するのもちょうど今日だった。船の方向はシャンクスのビブルカードにより掴んでいた。その方向にある港へ逃げることになるが、港へ続く道は全て通行止めになっているし、港は完全に海軍に占領されている。戦いは避けられない。しかし、レイリー、シャクヤク、グロリオーサ、オイル等の力を合わせればよほど相手でない限り突破できる。問題は海兵との戦闘中に応援を呼ばれないことだった。
レイリーは海軍の予想移動経路の橋を壊したりナターネの能力でトラップを仕掛けさせた。ほとんどが油で滑らせるトラップだったが、着火つきのものも作った。火の壁によって海兵の移動を制限するためだ。
また、海兵に出会ってしまった時の対処法として、人質法を提案した。誰かが海賊役になり、残りを人質にして逃げるというもの。海軍は表向き奴隷を取り返すとは言えず、天竜人の部下を取り返すことになっているから、殺せないはずであり、人質は有効だと考えられた。また、海兵は正義を信じているため、本当は奴隷を捕まえたくない者も多くいるのだ。その人達に職務怠慢をする言い訳を与える意味でもいい作戦だった。
さて、午前6時頃に遠くで火が燃え上がった。誰かがナターネの罠にかかったのだった。それと同時に元奴隷達も脱出を始めた。
元奴隷達はシャクヤクを先頭に歩いた。レイリー、オイル、グロリオーサ等は遊撃を担当した。
シャクヤクが始めに遭遇した敵は人攫いチームだった。
「うおっ、いっぱいいんじゃねえか!」
「多少傷つけても構わん! 撃て!」
人攫いチームはいきなり発砲してきた。元奴隷達は主に足を撃たれ、機動力を失う。頭を撃たれて死んだ者もいた。
シャクヤク等の活躍で人攫いチームは撃退できた。しかし、何人かの元奴隷は銃に怯えてどこかへ逃げてしまい、戻ってこなかった。シャクヤクは再びシャンクスのビブルカードの指す方へ歩き始める。ケガ人は巨人族の元奴隷が手に持った。
続いて傷だらけの海賊達と遭遇した。海賊達は「お前達のせいで俺達も危険に!」と難癖をつけてきたが、シャクヤクがボコボコにして黙らせた。そして「坊や達には人質作戦を頼みたいわ。その方が坊や達にとっても安全よ」と笑顔で言い、承諾させた。
次に遭遇したのは賞金稼ぎだった。彼等はそこそこ強く、プライドもあるようで、奴隷ではなく海賊を狙った。海賊はピンチとなったが、シャクヤクが賞金稼ぎをボコボコにして助けた。これにより海賊はシャクヤクを信頼した。
この頃、オイル・ナターネはマグマ人間サカズキと遭遇してしまっていた。ナターネが油を撒き、赤犬に引火させることで、そのグローブは火の海となった。多くの犠牲者が出たが赤犬は引かなかった。実力は赤犬が上だったが、ナターネも熱風による加速と炎による視界遮断をうまく利用し、掴ませなかった。
レイリーは覇王色の覇気により雑兵や人攫いを片っ端から気絶させていた。CPの5人組と遭遇したこともあったが楽に倒した。
この頃、白髭二番隊隊長レッド・コメットが13番グローブに着いた。そこら中に油があり地上はうまく走れない。また、奴隷を探すのも地上では視界に限界がある。よって彼は空をけり、元奴隷を捜索することにした。
彼は運よくシャクヤク率いる元奴隷をすぐに見つけることができた。シャクヤクとは知り合いだったので、互いに警戒して無駄に時間を使うことはなかった。
しかし程なく、シャクヤク等は海軍と遭遇してしまった。しかもそこの指揮官が光人間ボルサリーノが現れた。間違いなく世界最速の男であり海軍でも最強かもしれないと言われている。
焦るシャクヤク。レッド・コメットはずいと前に出て、一対一の戦いを申し出た。ボルサリーノも部下には奴隷の確保を命じ、自身はコメットと戦闘を始めた。
開始直後からとても激しい戦闘であり、ボルサリーノのビームが四方八方に飛び散り、爆発した。爆風は海兵奴隷共に散り散りにし、シャクヤクの付近の残ったのは半分程度になってしまった。
シャクヤク、ハンコック等を中心に道を塞ぐ海兵を倒し、駆けた。元奴隷達の鬼気迫る勢いに、海兵達はまさかの劣勢だった。
素人対訓練した兵。ふつうは勝負にもならない。しかしこの時、海兵達には迷いがあった。逃げる奴隷を捕まえることは果たして正義なのかと。上からの命令は絶対だと理解しているが、海兵とて人間である。むしろ、人より正義感が強いから命を賭して海賊と戦えるのだ。心に反する戦いは彼等の覇気を削いだ。逆にコメットやシャクヤクは正義の戦いに覇気を増していた。
元奴隷達がバリケードを越え、逃げていく。素人相手にまさかの敗北。
海兵達は羞恥を覚えながらもデンデンムシに向かって叫んだ。
「元帥! 5番ゲート突破されました! 応援をお願いします!」
「何だと!? ボルサリーノがやられたのか?」
「いえ! 中将は”赤い彗星”こと白髭二番隊隊長レッド・コメットと戦闘中です!」
「何!? 白髭の!?」
センゴクは驚きつつも、急いで自身の作った布陣を眺めた。
5番ゲートの近くにガープがいた。嫌な予感がしつつもデンデンムシをつないだ。
その頃、ガープは部下達を叱咤激励していた。
「いいかお前達! 海兵たる者上からの命令は絶対だ! いくらやりたくない任務だろうと断ることはできん! むしろそういう時こそ心を鬼にせよ。何せ相手は劣勢を理解しておるから必死だ! 油断していると思わぬしっぺ返しをくらうことになるぞ!」
クザンなど元々やる気がないのだが、奴隷確保という任務に嫌気がさし、だらけきっていた。部下に腕を引かれてズリズリと動いていた。
「ガープ! 聞こえるかガープ!」
センゴク元帥から通信があった。
「なんじゃ。うるさいの」
「5番ゲートに天竜人の部下が現れた! 3番方面へ逃げているから今すぐ迎え!」
「ふん。分かったわい」
ガープはそう言うと通信を切った。
部下達に緊張が走る。やりたくない任務だが、ガープに命じられてしまえばやらねばならない。
しかし、ガープはなかなか命令を発しなかった。どころかデンデンムシの受話器を置いたまま動いていなかった。
「ぐがー。ぐがー」
なんとガープは立ったまま寝ていたのだ。
「ええーっ!? 寝てるー!?」
「このタイミングでー!?」
部下達が一斉に突っ込んだ。こういう時こそ心せよと言っていたのにこれはどういうことか。
しかし、部下達はふっと気楽になった。これでやりたくない任務を実行しなくて済むかもしれない。
ガープの応援がなかったので、シャクヤク等はすいすい進むことができた。が、港に近づくとさすがに海兵やCPが多くなってくる。一人、また一人と元奴隷が捕まっていく。人質作戦はある程度有効だった。強行派の海兵やCPにはあまり通じなかった。
不意に、シャボンディ諸島の空が暗くなった。強風が体を煽る。小雨が降り始める。徐々に勢いが強くなっていく。
不意に突風が吹いた。海兵達が一方に左右に吹き飛ばされ、真ん中が開く。もう一度突風が吹く。元奴隷は吹き飛ばされ、ちょうどあいた真ん中の道を通っていく。人為的だとしか思えない。
「なっ! 貴様は!」
「ドラゴン!」
いつの間にいたのか。革命家ドラゴンは元奴隷達の殿に立っていた。
その頃、港の軍艦にも動きがあった。
「赤髪です! 赤髪の船がまっすぐこちらに向かってきます!」
「舐めやがって! 迎撃だ! 迎撃!」
赤髪海族団対海軍。海上の戦いが始まった。
奴隷の動き、そしてその先に赤髪海賊団が現れた。センゴクは赤髪が奴隷と組んでいると考えた。戦力を赤髪に集中させるよう指示を出す。
ところが、赤髪と反対方向からとんでもない船がやってきた。
「元帥! 白髭です! 白髭のモビーディック号が60番グローブ方面にやってきました!」
「何ィ!?」
可能性はあった。二番隊隊長のレッド・コメットがいたからだ。しかし、レイリーとレッド・コメットが手を組むとは考えづらく、どちらか一方だけが奴隷脱出の手引きをしていると考えていた。そして赤髪が現れたことからレイリーの方だと思ったのだ。
だが、白髭が来たとなると、無視はできない。戦力を割かざるをえない。
加えて、革命家ドラゴンの存在も気になった。まだ革命軍にそれほど力はないが、ドラゴンの思想は誰よりも危険だ。ガープの子どものため才覚も間違いなくある。ここで始末しておきたい相手だった。
「ガープ! 起きているのは知っているぞ! お前がドラゴンの相手をしろ!」
「何!?」
どうせガープは奴隷相手には戦わないのでドラゴンと戦わせることにしたのだ。息子相手にも戦わない可能性はあるが。
ボルサリーノとレッド・コメットの戦いは佳境を迎えていた。
「おっかしいねえ。あんたそんなに弱かったかあ?」
「ぐっ」
ボルサリーノのビームがレッド・コメットの左足に刺さる。これでレッド・コメットは両足を貫かれたことになり、あえなく崩れ落ちた。
ボルサリーノはデンデンムシを取り出した。
「センゴクさん。終わりましたよ。どちらに行けばいいです?」
「ああ。2番グローブに向かってくれ。天竜人の部下はそこにいる。冥王と赤髪が妨害してくるだろうから心してかかれよ」
「冥王ですか。いまさら何しに出てきたのやら」
ボルサリーノは通信を切り、光になって移動しようとする。
しかし、不意に体が実体化した。
「うーん。まだ死んでなかったかあ。往生際が悪いねえ」
レッド・コメットがボルサリーノの足首をつかんでいた。手に武装色を纏っており、ゆえに光化が妨げられたのだ。
ボルサリーノは自身を掴む手首にビームを放つ。レッド・コメットは手を引いてよけ、瞬時にまた足をつかんだ。また撃つ。また手を引いて避ける。また撃つ。また避ける。
「まったく往生際が悪いねえ」
ボルサリーノはビームの出力を上げて放つ。レッド・コメットは手を引くが、地面に当たったビームが爆発し、爆風が二人を別ける。
「ぐはっ」
レッド・コメットは近くの木に叩きつけられ、前のめり倒れる。ボルサリーノは無傷でレッド・コメットの手前に現れ、大きく足を振り上げる。
「終わりだよお」
ボルサリーノは振り上げた足を光化させた。瞬間、光速の足がレッド・コメットの後頭部に降りぬかれる。
「おっ、とっと」
が、光の足は微妙に目標から逸れてしまった。
いや、地面が揺れて対象と姿勢をずらされた。
「俺の息子は生きているか?」
「白髭ぇ」
世界最強の男。白髭ことエドワード・ニューゲートが大勢の部下達を連れて立っていた。
この戦いは海賊、海兵、一般市民に多数の死傷者を出しながら、海軍の敗北で終わった。奴隷は大半が脱出。海軍は一度捕まえた奴隷を白髭等に取り返される始末で、最終的に捕らえた奴隷は10にも満たなかった。殺してしまった奴隷の方が多かった。
何より海兵の犠牲が大きかった。白髭とロジャー一味という大海賊を同時に相手にするには、海軍側に覇気が足りなさ過ぎた。結局、奴隷に対する罪悪感、自身の正義を信じられなかったことが戦況を大きく左右したのだった。