バチ
「東。」
残っていた牌をめくり、席が決まる。
(苅安賀は既に潰れたか。・・・新道寺とさすがインターハイチャンピオン・・・闘志をたぎらせるか。)
「1回戦と印象が違いますね。何があったんですか?」
「新道寺の人か・・・なに、覚悟を決めただけですよ。」
「覚悟?」
「10:1でマイナス分だけ血を抜くだけです。簡単なことでしょ?」
「・・・すばらしくない。」
「私達の麻雀は命の取引・・・点棒取られて笑ってるやつらとは違うんだよ。」
誰も何も言えなくなった。
可もなく不可もない至って普通の配牌である。
こんな時は安くても速度でガンガン上がるのが本気の小春である。
3巡目
「カン!!」
2222
「さらにカン!!」
4444
バチ
「チー!!」
「カン!!」
ここまで小春が一気に進めたが
「チー!!」
新道寺が追いかけてくる。
「ポン!!」
しかしここまで
「ツモ三槓子2300オール。」
小春は削りにいく。
ギラリ
宮永照は自身の能力発動を発動した。
照魔境・・・部内ではそう呼ばれている私の能力・・・。
それは現在の相手の力量や本質を見抜く・・・癖や傾向なども見えてしまう能力。
[小娘・・・王を直視するとはワシに対して死を意味する。]
何度も自身を助けてくれた鏡に対戦相手の清水ではなく、老人が写し出された。
そのさらに奥には邪気、狂気、モノノケの類いが控えている。
周りを見渡すとそこには雀卓など存在せず、いつの間にか自分が白装束を着て目の前の老人に跪いていることに気がつく。
[寄越せその鏡はワシに相応しい。寄越せ、寄越せ、寄越せ!!]
涙目になりながらも鏡を抱えて首を横に振る。
その姿はとても幼く、幼児が玩具を渡したくないと駄々をこねているようにしか見えなかった。
一瞬高圧が無くなる。
宝物の鏡を覗くと背後から死神が鎌を降り下ろしている。
・・・避ける。
[小娘・・・誰が避けてよいなどと言った。今死すべきである。王の直視とは万死に値する。]
王と名乗る老人の背後から化け物達が私を押さえつけ、頭を地面につけさせる。
鏡で頭を守る・・・。
なぜ私は麻雀をしていたはずなのにこんな場所にいる。
なぜ・・・。
過去最高速度で頭脳を回転させる・・・力むことで爪が剥がれているが気にもせず、なぜどうしてと考える。
そのうちなぜ私は麻雀をやっているのだろうと考えるようになり、最後には王が鏡を欲しているのなら渡せばよいと考えるようになる。
・・・しかし渡そうとしても腕が鏡を離そうとしない。
「離せ!!離れろ!!」
[どれ、ワシが離してやろう。]
ザシュ
「ひぁぁぁ!?」
手首を死神が切り落とす。
痛みに転げ回る私に王は
[用済みだ。消え失せろ。]
「は!?」
見馴れた光景・・・普通の雀卓だ。
王は存在せず、前には清水、横にも苅安賀と新道寺がいる。
鏡は前に存在しているが、それは私の物ではなくなっていた。
・・・安物の手鏡が私の鏡になっていた。