小秋の試合は攻めが一切なかった。
堅実であり、普通の麻雀である。
ただ、観客は清澄の原村や私に注目していただけに落胆の表情を浮かべずにはいられなかった。
「小秋、つまらない試合だったな。」
「まーな。まぁやることやったからいいっしょ。」
「・・・さて、決めてきますかね。」
「全飛ばし見たいなー。」
「わかってるよー。うふっは!!負けちゃうとか考えてるわけ?」
「ないない。ガキに負けるわけないじゃん小夏がさ。」
「だっよねー。」
不吉な会話を廊下でする2人だった。
「・・・まだ、終わらない!!必ず勝つ!!」
高鴨は恐怖に打ち勝つために叫ぶ。
自己暗示の一種、狂わなければ勝てない。
咲はなぜ姉があんなにボロボロに負けたのか大会中わからなくなっていた。
元凶の鷲巣小春は先鋒で対戦できない。
しかし、同格の狂人鷲巣小夏とは戦える。
「上手くいかないな。」
本の中の主人公なら姉と戦うまでがメインストリートで、あっただろうが、ここは現実。
小説のような都合の良い出来事が起こるわけがなかった。
「スポンサーはネリーをここで試してる。・・・ネリーは麻雀中堅国で優勝できなければ将来は破滅。ネリーはお金がいるの。」
金、金、金。
行動理念である彼女は金が全て。
そんなネリーに大きな壁・・・金と対なす命を削り合う雀士・・・鷲巣小夏が牙を向く。
「始まった・・・か。」
日本のプロ雀士・・・しかもトップクラスが1つのモニターを囲んで小夏の打ち方を見ていた。
「やはりcrazyな打ち方ですね。」
「いーや、その中に理詰めにされた技術の結晶が彼女達の麻雀☆」
プスンプスン
「・・・恐い。」
「先輩方、そんなに恐いんかわからんばい。」
元鹿児島工業高校から千葉マリン生産に加入しているプロ雀士、島津西が話す。
プスンプスン
「・・・ぼんくら。」
「・・・勉強不足☆」
「fool(馬鹿)です。」
「ちょ、直球!!」
「鷲巣姉妹は例えるとするなら・・・万年自鳴鐘。国宝級の古い打ち方でありながら、パターンは無限大。それでいてデジタルの穴をついてくる攻撃をする。」
「デジタルの穴か?」
「デジタルの穴は機械的過ぎて相手の気持ちを考えなくなるところ☆全て確率論でやるから究極のアナログには勝てない☆」
プスンプスン
「・・・完璧。」
「そうなんか。わからんばい。」
「はやり的にはそれが小鍛治だと思ってたんだけど・・・それをも凌ぐアナログが彼女達だからね☆」
「champion・・・いや、王ですかね。」
「王ですか。」