「おし、到着っと。そういえば鈴木。お前達は何を買いに行くんだ?」
後ろで「このまな板!」「この乳袋!」などと、言い争っているアルベドとイビルアイを傍目にガガーランが尋ねてきた
(始めはお互いに、鈴木とこんなことをしたよ!羨ましいでしょ!みたいなちょっとした自慢争いで微笑ましかったのだがなぁ… どうしてこうなった?)
「実はちょっと事故があって、彼女の衣類一式が全滅してしまって…」
(何も着てなかったからなぁ…)
こちらも言い争ってる二人をスルーしながら続ける鈴木悟
一度止めようとしたが、例の如く「モモンガ様/お前は黙ってろ!」と言われたのである
「ああ、それで彼女は男物の服を着ていたのか、そういう趣味かと思ってたぜ」
後ろでティアがハァハァ言いながら「鈴木、いい仕事をした」ティナが「これが美少年だったらなぁ」とか言ってるが無視をする
「なるほど、そういう訳か… よし、それならお姉さん達に任せておけ」
オネエさんの間違いでは?とも思うも、勿論黙っておく
「そうね、彼女は素材がいいから、着せ替えとか楽しそうね」
「任せて、ちなみに予算はどれくらい?」
「え?」
ガガーランに続き、何故か皆協力的であった
確かに自分には、女性物なんてよく分からないし、下着などアルベドだけでは不安だし、
「えっと、これくらいで…」
「お、結構奮発するな鈴木。これなら結構いい物が買えそうだな」
「うん、イケルイケル」
「それじゃ、そういうことで」
そう言うと、ガガーランとラキュースはお互いに目配せをし、未だにイビルアイと言い争いをしていたアルベドの脇をガッチリと掴んだ
「え、あのこれはどういう?」
言い争っていた所に、急に脇を掴まれ困惑するアルベドを他所に、ガガーランが続ける
「それじゃ、こちらのお姫様はこっちで何とかするから、鈴木にイビルアイ。お前達は喫茶店でも行って待っててくれ」
「そういえば、昨晩A子が興奮気味にすっごい安くて、とても美味しいお店があったって電話してきて、あとで行ってみようと話をしてたわね」
「うん、それはいいアイデア」
「うん、これはチャンス」
女性陣が凄く遠まわしな台詞(一部直接的)を言い、一斉にイビルアイの方を見る
「え?」
唯一話についていけなかった、イビルアイはその視線に狼狽える
するとガガーランが
(何ボケっとしてんだ!せっかくチャンスを作ってやるんだからモノにしろ!)
と、目で訴えてきた
(い、いきなりそんな事言われても、心の準備が!)
そう返すも
(そうよイビルアイ!これは千載一遇のチャンスなのよ!)
(ガンバレ)
(拒否権はない)
(え゛え゛え゛え゛え゛え゛~)
全員から目でGOサインを送られた
そんなアイコンタクトを瞬間的に交わすと
全員が『頑張れよ』という感じでイビルアイにウインクをする
「それじゃ、行ってくるわ。あとで喫茶店で合流な」
「え?え?モモンガさまぁぁぁぁ~」
アルベドは、自分の膂力なら振り払うのは簡単だと分かっていたが、下手に振りほどいて万が一、モモンガの知り合いを傷つけでもしたら申し訳が立たないと思い、何とかしてほしいと主に助けを求めるも
「お願いしますね~」
そんなアルベドの気持ちも気づかず、笑顔で送り出す鈴木悟であった
そしてそのまま引きずられていってしまった
「そ、それで、ど、どどどどどうする?鈴木?」
そのイビルアイの言葉でふと我に返る鈴木悟
「ど、どどどどうしましょう?」
今までは他の人が間にいたのでまだ平気だったが、急に二人きりになったことでヘタれる二人であった
「と、取りあえずその喫茶店とやらに行ってみるか」
「そ、そうしましょうか」
喫茶店に行けば、何か話題が思いつくだろうと考え、二人とも歩き出した
それは、ただ問題を先送りにしただけという事に気が付かずに…
そして、ちょっと入り組んだ道を歩くこと数分
「えーっと、確かここら辺のはずだ」
携帯端末を取り出し、地図を確認するイビルアイ
「ああ、そこの角を行った先か。って、何だこの建物は?本当にこれが喫茶店か?」
その言葉が示す通り、少し先に小さな砦のような建物が建っていた
本当に喫茶店なのかと、中を確認しようと近づいた所
店の看板に『メイド喫茶ナザリック』と書いてあるのに気が付いた
「え?」
「どうした鈴木?」
「い、いえなんでもないですよ」
(偶然…なのか?いや、アルベドがこちらにきたことだし、他の者もこちらに来ていてもおかしくないはず… 何で今まで考え付かなかったんだ?しかし、昨日の今日でこんな店を作れるものなのか?いや待て、もしかしてクリエイト・フォートレス/要塞創造に似た魔法か?それともグリーンシークレットハウスみたいなアイテムを使えば簡単にできるな…)
そんなことを考えていると
「おい、何をしているんだ鈴木?早く行くぞ」
「あ、すいません。今行きます」
慌ててイビルアイの元に行き、自動ドアを開き入店すると、来客を知らせるチャイムの代わりなのか「騒々しい。静かにせよ」という渋い謎の男の声が聞こえた後に、「お帰りなさいませ、ご主人さ…ま゛!」という驚きの声が唱和した
しかし、当の二人はあまりの内装の豪華さに目を奪われ
そんな驚きの声も気づかなかった
「何だこの豪華な内装は…」
「本当にここが、格安な喫茶店なんですかイビルアイさん!どう見ても超お高そうなんですが…」
「そのはずなんだが…」
(でも、何か雰囲気がナザリックに似ている気がするなぁ)
そんな事を話していた二人の周りで
「まさか御方の方から来られるとは…」
「隣の方は、御妃様なのかしら」
「いきなり作戦が躓いてるけど、どうするっすユリ姉!」
「どうするのですわぁ?」
「これは… ピンチ」
「ボ、ボクに聞かれても…」
などの声がボソボソと聞こえたが、当の本人は考え事に没頭して、イビルアイは内装の豪華さに圧倒されており気が付いていなかった
一方その頃
「う~ん…
「ガガーラン、娘の交際を心配する父親みたい」
「お前… せめてお袋って言えよ…」
「そういえばガガーラン」
「ん、なんだ?」
「ガガーランって、童〇大好きなビッ〇野郎なのに、鈴木は襲わないの?」
ティアが真面目な顔でガガーランに尋ねる
「おいおい、俺はそこまで見境なしじゃないぞ。さすがに友人の想い人には手を出さねーって」
「あなた… いつの間にそんな気遣いが出来る子に… お母さんは嬉しいわ…」
双子がうんうんと頷く中、ラキュースが手で口を押え、よよよといった風に嘘泣きをする
「お前ら… さすがに怒るぞ?まあ、冗談はここまでにして、お前さんにはちょっと悪いことをしたな」
途中から引きずるのも何だなと思ったガガーランが、小脇に抱えなおしていたアルベドに声をかける
「まあ、なんだ。これからお前さんは鈴木と暮らすんだろ?つまりそれは大きなアドバンテージだ。それならうちの姫様にもちょっとしたチャンスがないとフェアじゃないだろ?」
確かにその通りだとは頭では思うが、心は納得できないアルベドは反論しようとするも
「代わりと言うのもなんだけど、私達で鈴木さんを悩殺できるようなコーディネートを考えるから、それで手を打たない?」
ラキュースからそんな提案がきた
愛するモモンガを悩殺できるという知識が、一時の我慢で手に入れれるならと気持ちが傾き
「し、しかたないわね。今回のことは不問とします」
そう返していた
そしてこの時全員の意見が一致した
(あ、こいつチョロイ)×4
「じゃあ、決まったことだし、そろそろ服を選びに行きましょうか」
ラキュースの言葉で皆が歩き出すも、ふとガガーランが止まる
「どうしたガガーラン?」
ティアがガガーランに尋ねる
「いや、何でもない気にするな」
再び歩き出すガガーラン
(でもま、そのちょっとした時間で進む関係ってのもあらーな。でも、うちの姫様には少し厳しいか?)
そんなことを思い、笑いながら
ガガーランはおっとこまえ!
クレマンちゃんや、たっちさんもやらないとなぁ…