青き英雄、異世界に来たる   作:波歩

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遅れて申し訳ないです・・・NOSからこの遅れっぷりが変わらないのが無念

今回謎のオリジナルな展開とか謎戦闘があります。久しぶりなのにひっどい!




9

夜が更け多くの家の灯りが消え寝静まるころ、まだ消えていない灯りが1つ暗闇の中微かに光を灯し続けている。

その光の源は、その家の主を除く5人分の人影を形作っていた。

静寂の中、テーブルの真ん中の席に座る青年が口を開く。

 

「さぁ、聞かせてくれないか」

 

青年---エックスの、ただ素直に、かつゆらぎの無いその問いに4人の騎士は僅かに俯き、押し黙った。

その中から1人、一歩前に出た人影---シグナムが問いに返した。

 

「私から話そう・・・」

 

未だその表情には躊躇の色が見えていたが、青年の顔を一目見て、覚悟を決めたように続けた。

 

「・・・主はやてへ闇の書の侵蝕が進んでいる」

 

そうシグナムが切り出し、エックスは大切な家族の1人に迫る生命の危機を知ることになる。

 

 

 

 

 

事情を話し終えたシグナムが顔を上げエックスを見る。今まで黙っている形で隠し続けた事実はあまりに残酷であり、そこにはいつもの穏やかな雰囲気等微塵も感じられない、悲しみに暮れた様子のエックスがいた。

 

「・・・今まで隠していてすまなかった」

 

沈痛な面持ちのまま再び頭を下げるシグナム。その謝罪にエックスも応える。

 

「謝らなくてもいいよ・・・はやてや僕の事を想ってそうしていたのは分かってる」

 

だから顔を上げてくれないか?というエックスの言葉にシグナムは顔を上げるが、その表情は暗い。

 

「・・・すまないな」

 

「気にしてないさ。それで、今の状況は・・・?」

 

漂っていた悲壮感を瞬時に消し飛ばし、すぐさま戦士の顔となったエックスの様子は、経験豊かな守護騎士達であっても軽い驚きを覚えるものだった。

どんな現実であろうと受け止め、力の限り全力で抗う。

その見た目からは想像できない程永い時を過ごし、戦い続けたエックスがその身に刻み込んだ経験値は計り知れない。

 

「あまり良いとは言えないわ・・・」

 

やや言いづらそうにシャマルが答える。

 

「今も侵食は進んでる・・・このままだとはやてちゃんは・・・」

 

「・・・そうか」

 

テーブルに顔を伏せ、しぼり出すように答えるシャマル。他の3人もいたたまれない気分だった。

消え入りそうな返答にエックスはほんの少し目を閉じ考えるようにした後、4人に宣言するように言った。

 

「僕に蒐集を手伝わせてくれないか?」

 

その発言は、4人は---エックスに事実を隠す為尽力していたシグナムは特に---驚愕する。

すかさずその宣言に待ったをかけるシグナム。

 

「エックス!」

 

「はやての命が危ないのを、唯黙って見ているなんてできない」

 

「だが・・・」

 

戦いを好まないエックスを巻き込むことだけは避けたかったシグナムだが、その本人からの要望に応えあぐね、葛藤する。

 

「僕は魔導師じゃないけれど戦う事は出来る。戦力にしてくれないか・・・?」

 

「エックス・・・」

 

「お前・・・」

 

「エックスくん・・・」

 

シグナム、ヴィータ、シャマルの3人が困ったように見る中、

 

「我は参加させてもいいと思うが」

 

ザフィーラが静かに、だがはっきりとそう言った。

 

「おい、お前!」

 

「ザフィーラ!」

 

シグナムと同じ意見だったシャマルとヴィータが席を立ちかけるのを無視して続ける。

 

「主とエックスには隠すつもりだったが、既にこうしてエックスにはバレている・・・それにエックス自身の希望・・・決断した事だ」

 

それでも止めるのか?とザフィーラは言う。

エックスは確固たる意志の如く表情を変えず、シグナムは目を伏せ、シャマルは上がりかけた腰を落とし、ヴィータは立ち上がりかけた格好のまま、皆押し黙った。

 

やがて観念したかのようにシグナムが口を開く。

 

「・・・分かった。エックス、頼めるか?」

 

「いいのかい?」

 

エックスのその声色は、感謝と確認という2つの感情が込められていた。

 

「ああ、手を貸してくれるのならお前程心強い者はいない」

 

葛藤は消え、吹っ切れたように言われた家族(シグナム)からの称賛。

 

「なら、期待に応えられるよう精一杯頑張るさ」

 

エックスからしてみれば、これ程活力に満ちる称賛はなかった。

 

 

 

 

 

 

話もまとまった事で、明日に備えて床に就こうと皆解散する。

 

「おい・・・」

 

が、何故か戻ってきたヴィータにエックスは呼び止められた。

 

「何だい?」

 

「あー・・・その・・・」

 

ポリポリと頬を掻き、目を逸らしているヴィータを見かねて、膝を落とし目線を合わせる。

 

「急いで言わなくても大丈夫さ。君のペースで話してくれればいい」

 

「・・・おう」

 

普段ならエックスのこの気遣いはヴィータからしてみれば余計な世話だと突っぱねるだろうが、素直に受け取ることにしたようだ。

一呼吸置いた後にヴィータは言う。

 

「さっきは助けてくれて・・・ありがとよ・・・借りにしとくぜ」

 

そっぽを向きながらも感謝の意を示す家族の姿にエックスは微笑みながら

 

「どういたしまして。また頼りにしてくれ」

 

「そ、そうかよ」

 

話は終わりだ、と目を背けたままズカズカ部屋に戻る後ろ姿に嬉しそうな苦笑いをうかべるエックス。

 

「うん、じゃあおやすみヴィータ」

 

「おう・・・おやすみ」

 

陰に隠れたヴィータの顔も、どこか嬉しそうであった。

 

 

 

 

みんなが寝静まった後、僕は1人考え---悩んでいた。

 

さっきは僕も戦える、なんて言ってみんなを納得させたけれど、実際の所まだ躊躇している。

 

その理由は他でもない。あの時僕が撃退した魔導師の少女の事だ。

 

ヴィータに危機が迫っていたとはいえ、僕は---レプリロイドであるにも関わらず人間を撃ったのだ。

 

この行為は間違いなくレプリロイドの基本原則に反する行為である。おそらく僕はイレギュラー認定されてもおかしくない事をしてしまった。

 

不本意ではあったけど、英雄と呼ばれた僕のこの行為。

 

それでもイレギュラーと呼ばれるのは構わない。僕は何を敵に回しても家族を守ると決めたのだから。

 

しかし、あの少女---最初に平和的解決を提案してきた少女とは、近い内にもう一度会うことになるだろう。

 

聞いた所によるとあの少女は時空管理局(様々な次元世界の治安を守り、ロストロギアと呼ばれる危険な遺物に対応する組織らしい)の関係者のようで、確実に僕もマークされるだろう。

 

いざ再会した時、僕はまた武器を向ける事が出来るのだろうか?

 

再び人間と戦えるのだろうか?

 

闇の書の事情を話す訳にもいかない。

 

ならばやはり、戦う事を選択せざるを得ないのか・・・

 

きっと迷っていて勝てる程優しい相手じゃない。

 

だから悩んでいる暇なんてないのに・・・未だ割り切れずにいる自分が情けなかった。

 

こんな時ゼロだったら、と唯一無二の親友を思い浮かべていると・・・ふとある言葉を思い出した。

 

それは最後に会った時、僕がサイバー空間に消える直前にゼロが誰にともなく独り言のように言った言葉。

 

 

 

 

 

『俺は、悩まない。目の前に敵が現れたなら・・叩き斬る・・までだ!』

 

 

そこまで思い出し、はっとした。

 

そうだ、悩む必要なんてない。

 

僕は僕の家族を守る。

 

そう、目の前に敵が現れたなら・・・

 

 

 

「撃ち払う・・・だけだ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

明くる日、改めて決意を固めたエックスは蒐集に参加していた。

 

エックスは今回が初めてということで、今日はシグナムとシャマルの3人で蒐集に来たのだが、ここで予想以上のエックスの実力を目の当たりにする事になる。

 

 

 

 

 

3人からやや離れた所にこの無人世界に生息する魔力を持った生物が居る。

 

「私が先行してそのまま前衛を担当する。エックスは後ろから援護を頼む。シャマルはリンカーコアの摘出準備をして待機だ」

 

「了解」

 

「分かったわ」

 

そしてタイミングを見計らい

 

「・・・行くぞ!」

 

シグナムが手に持った長剣、レヴァンティンを構えながら目標の獲物へと駆け出す。

 

少し間を空けた後にエックスもこれに続く。

 

 

 

アルマジロにも似た巨大な体躯の生物との距離はあっという間に縮まり、近づいてくる炎のように赤い騎士に気付いた生物はその発達した強靭な腕を振り上げ、猛然と接近してくるシグナムを狙って叩きつける。

 

「ふっ!」

 

しかしそれを予知していたようにシグナムは横へ軽く跳び、そのままスピードを落とさずに走る。

 

そしてその勢いで高く跳躍、腕を振り下ろした格好の隙だらけの頭に向かう。

 

「はぁぁぁ!」

 

気合いと共に一閃。当然動けない相手は避ける事など出来ず、頭部に細長く鋭い傷をつくる。

 

 

 

これで終わりかと思いきや

 

「グガァァァァァ!!」

 

「くっ!」

 

その生物は傷等気にしないとでも言うかのようにすぐさま立ち直り、下から腕を振り上げる。

 

斬りつけたシグナムも紙一重で回避。

 

「浅かったか・・・!」

 

この生物は外皮が強固な外殻に覆われていて、いくらシグナムの強力無比な斬撃であっても、深い傷を負わせるのは非常に難しいのだ。

 

回避した後空中に留まっていたシグナムにもう片方の腕が迫る。

 

即座に構え直し、迎え撃つ体勢に入る。

 

だが、シグナムの耳に聞き慣れない射撃音が入ってきていた。

 

「ゴグァァァ!?」

 

その生物の腕に巨大な輝く弾丸が穿たれ、その外殻を貫いた。

 

「させるか!」

 

「・・・エックス!」

 

その弾丸は青い戦士、エックスのバスターから放たれたチャージショット。威力と貫通力を兼ね備えるそれは、エックスの十八番でもある。

 

 

 

巨大な生物は目の前のシグナムから自らの腕を撃ち抜いた相手のエックスへと狙いを変える。

 

「ゴアァァァァ!」

 

雄叫びを上げ傷を負っていない腕を振り上げ、振るう。

 

その圧倒的リーチを誇る暴力は少し離れた程度の間合い等軽く無視して、青い戦士を粉砕せしめんと向かう。

 

しかし、この生物は知らない---知る由もなかった。

 

自分が叩き潰そうとしている戦士が、数多の戦いを潜り抜けた“英雄”と呼ばれている事を

 

自分より遥かに巨大な敵を幾度と無く打ち倒した事を

 

 

 

 

 

振り下ろされた腕を緊急加速、ダッシュを用いて軽くかわし再びバスターを構える。

 

相手は巨体、ならば狙うは・・・

 

「そこだっ!」

 

連射された弾丸は寸分の狂いもなく相手の左膝へと全て命中する。

 

「ググウ?!」

 

突然の片足への衝撃に堪えきれず、巨大な生物は苦痛に呻き前方へ倒れる。

 

周囲の地面が揺れる。それに怯む事無くエックスは助走をつけた後、跳んだ。

 

そして空中でバスターをチャージ。威力は中程度、最小限に留めておき狙いを定める。

 

「行けぇっ!」

 

放たれたバスターは相手の頭部、刀傷の付いた部分を目指し飛ぶ。

 

またしても手を振り下ろした格好の生物に、避ける術は無く直撃する。

 

「!・・・」

 

その直後、糸の切れた人形のように力無く倒れ込んだ。

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

相手が動かなくなったのを見てエックスはバスターを戻し、シグナムの元へ駆け寄った。

 

「怪我はないかな?」

 

「ああ大丈夫だ。助かった、エックス」

 

礼を言ったシグナムはそれにしても、と続ける。

 

「やはりお前の実力は相当なものだな。未だ計りしれん」

 

「そうでもないよ。場慣れしてるだけさ」

 

其処まで話した後、エックスは倒れた生物に近寄る。

 

「多分まだ息があると思うよ。蒐集可能じゃないかな?」

 

「お前、それも見越してあの加減が出来たのか・・・」

 

驚いたように見つめるシグナムに、エックスはなにとはなしに答える。

 

「一応、対象の鹵獲任務の経験があったからね」

 

「成る程な・・・」

 

「ごめんなさーい、今到着しました!」

 

話している内にシャマルがやって来て、すぐに蒐集が開始される中、ふとシグナムの脳裏に1つの疑問が過ぎる。

 

(よく考えれば、あの射撃の正確さ、鹵獲任務の経験・・・あいつは昔何処かの組織にでも所属していたのか?)

 

彼女もまた、英雄と呼ばれた青い戦士の過去を、まだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い帰り道の途中、エックスがあっと思い出したように声を上げる。

 

「そういえば食材買わないといけないんだった」

 

「ほう?」

 

「あらあら、そうなの?でも明日でいいんじゃないかしら?」

 

「僕が個人的に買いたかったからね・・・まだ時間もあるし、ちょっと行ってくるよ」

 

2人と別れ、エックスは急いで駆け出した。

 

 

 

 

暫くして、買い物袋を片手にエックスは歩いていた。

 

目当ての物が割り引きされていたからか、足取りは軽い。これもはやてのアドバイスの賜物だろうと1人ごちる。

 

普段は大抵庭の見える位置で座って本を読んでいるエックスだが、料理のレパートリーを増やす事に余念がなく、時々新しい料理に自ら挑戦している。

 

これから作る予定の料理について思考していたのだろう。その顔は綻んでいる。

 

 

 

その思考のせいか、今日の蒐集の疲れが出たのか、自分に近づいて来る気配に気付くのが遅れてしまった。

 

 

 

「・・・!」

 

自分に迫る気配に気付きゆっくりと振り向く。

 

「誰だ?」

 

袋を地面に置き、一瞬光に包まれて後青い装甲の姿となったエックスが問う。

 

するとエックスの前に2人の人物が空から降り立つ。

 

1人は黒いマントに身を包み、金色の鎌を携える金髪の少女。

 

もう1人はその少女よりも背が高い、やや露出の多い服装に犬耳のついた女性。

 

「私は時空管理局の嘱託魔導師、フェイト・ハラオウン」

 

「でもってその使い魔のアルフ」

 

名前を名乗り、そのまま少女---フェイトは言葉を紡ぐ。

 

「分かってると思うけど・・・私と一緒に来て、事情を話して欲しい」

 

「・・・」

 

可能ならば穏便に事を済ませたいのがひしひしと伝わる言葉に、エックスは一瞬だけ迷う。

 

しかしその迷いを振り払い、毅然として答えた。

 

「断らせてもらう。事情を話す訳にはいかない」

 

そして腕をバスターに変形させ、向き直る。

 

それを見てフェイトも一瞬躊躇うも、覚悟を決めたようにデバイスを構えた。

 

「なら・・・あなたを拘束する!」

 




NOSの時にあった、「ぼくのかんがえたさいきょうのゼットセイバー」の設定とかもまたいつか書こうかと思います。
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