「はやてちゃんへの闇の書の侵食が・・・進んでるみたいなの・・・」
シャマルからその報告を聞いた時、私の---私達の未来が闇に葬られてしまったように感じた
主の定期健診の結果が未だ快方に向かわない事に疑問を抱き始めてすぐ分かったことだった
魔力の蒐集を行わない事に対する、闇の書から主への侵食
その影響は、主の両足どころか、その命までも脅かそうとしていた
「・・・畜生ぉ・・・何で・・・何ではやてが・・・」
ふと目を遣ると、ヴィータが涙を堪えられない様子でいた
「折角家族になれたのに・・・これからも温かく暮らしていけると思ってたのに・・・何ではやてがこんな目に遭うんだよ!!」
「ヴィータちゃん・・・」
「・・・」
主の現実を嘆くヴィータ
今にも泣き出しそうな表情でヴィータを抱きしめるシャマル
苦痛に耐えるような顔で押し黙るザフィーラ
しばらくの沈黙の後、私は決断した
「・・・皆、蒐集を始めるぞ」
この提案に3人がこちらを見る
「悲しむ暇はない・・・主の命のためにも、一刻も早くしなければ」
「だが・・・いいのか?シグナム」
ザフィーラが静かに訊く。それは主の思いについてだろう
蒐集は、魔力を持った生物や魔導師から魔力の源リンカーコアを奪う行為だ
主の命のために蒐集を行う事を・・・主自身はおそらく良しとしないだろう
だが私達は、闇の書の守護騎士である私達は、何と引き換えても主の命を守らなければならない
それが・・・私達の役目だ
「ああ・・・分かっている」
「・・・そうか」
気に掛けてくれたこと、礼を言う、ザフィーラ
「明日から蒐集を始める・・・くれぐれも主やエックスには気付かれないようにしよう」
(主はやて・・・あなたの意に背くこと、御許しください。エックス・・・すまない、主は、主だけは失う訳にはいかないんだ・・・)
八神家に家族が増えてから数ヵ月、季節は冬になり、外の空気は身を切るように寒い
窓の傍から外を見つめるはやての息がかかり、あっという間にガラスが曇る
「・・・っくしゅん」
思わずくしゃみが出たはやて その肩に暖かい毛布が掛かる
「寒くないかい?」
「ん・・・ありがとな」
「どう致しまして」
2人は朗らかに笑みを交わす
「最近冷え込んできたから、はやても体には気をつけてくれ」
「分かってるって・・・それにしても、こんな寒いのにみんな何処に行ったんやろなー?」
「そうだね」
今家に居るのははやてとエックスの2人だけだった
シグナム達は用事があると言って出かけている
ここ数日、人数は違えど4人の内誰かが外出していた
エックスとしては怪しむ気は少しもないのだが、時々見る思い詰めた様子に何かを感じていた
(そういえば、あの検診の次の日からだったな・・・)
其処まで考えた後、エックスは思考を終える
(あまり僕やはやてに知られたくないだろうし、これ以上は野暮だな)
この時、シグナム達が自らの主のため戦っている事を、エックスは知る由もなかった
蒐集をしていたヴィータは焦っていた
「くそっ・・・こんなんじゃ全然足りねぇ!」
「落ち着けヴィータ。焦り過ぎては蒐集に支障をきたすぞ」
「こんなときに落ち着いてられるかぁ!」
シグナムが宥めていると、シャマルから念話で連絡が入る
(2人とも、今海鳴市に強い魔力の反応があったわ!)
(ほんとか!)
(よし、行くぞヴィータ)
2人はその反応の場所へと急ぐ
「遅いなぁ・・・」
「確かに遅過ぎる・・・」
いくら時間が経っても、4人は帰ってこない
長年の経験から察したのか、エックスは次第に不安になってきた
(・・・何か嫌な予感がする)
「はやて、僕は今から4人を探してくる。だから先に夕食の準備をしていてくれないかな?」
「うん、気をつけてなエックス」
「勿論さ」
そう言って家を出て走り出すエックス
その姿は僅かながら焦燥感に駆られているように見えた
しばらくすると、見慣れた人物が見えてくる
「・・・シャマル?それにザフィーラも・・・何であんな所に」
住宅の屋根の上に居る2人と話すため、周囲に人がいないか確認し壁蹴りで屋根まで登るエックス
「何をしているんだい、2人とも」
いきなり声を掛けられ、驚いて振り向くシャマルとザフィーラ
「エックスくん!?」
「エックス!?何故此処に・・・」
「驚かせてすまない。僕はみんなの帰りが遅いから探しに来たんだ」
そこまで言って2人の元に歩み寄る
エックスが2人がさっきまで見ていた方を見て、驚いた
「・・・これは!?」
エックスが見たのは、彼が見たこともない未知の技術---魔法を駆使して戦う、2人の家族と見知らぬ2人の少女だった
「おらぁぁぁ!」
自分の相棒とも呼ぶべきデバイス『グラーフアイゼン』で相手を殴り飛ばすヴィータ
その重厚な一撃を、対峙する少女は自慢の防御で防ぐも威力を殺しきれず大きく吹っ飛ぶ。だがすぐさま体勢を整え、立て直す少女---高町なのはは自分の防御が押し切られたことに衝撃を隠せなかった
「くっ・・・」
そこへ猛然とした勢いで追撃を仕掛けるヴィータだが
「だから・・・話を聞いて!!」
なのはの持つ杖のデバイス、レイジングハートから繰り出された魔力の弾に阻まれる
「くそっ!」
それらを捌きつつチラッと横を見ると、シグナムと魔導師の少女フェイト・テスタロッサが互いのデバイスで激しく戦っていた
(援護は期待出来ねぇな・・・あたし1人でやるしかねぇ!)
そう考えながら最後の弾を弾き返す
「・・・ッ!」
と同時に時間差で飛んできた誘導弾が直撃してしまった
衝撃で後方へ飛ぶヴィータの目に、まさに大技を撃たんと構えるなのはの姿が入った
(まずいっ!)
そう思った時、ヴィータの後ろから魔力でない異質なエネルギー弾がなのは目掛けて発射された
「ディバイン---!?」
なんとかこれを直前で防御したなのは
「うわっ!」
するといきなりヴィータは後ろから誰かに抱えられる。俗に言うお姫様だっこの体勢だったため若干、いや、かなり顔が赤かった
その誰かはそのまま近くの道路へと着地する
「ふぅ・・・怪我はないかい?ヴィータ」
その聞き覚えのある優しい声にヴィータははっと顔を上げ、自分を助けた者の顔を見た
「エックス!?」
そう分かった途端、ばつの悪そうな表情で目を逸らすヴィータ
その様子を見たエックスは優しく言った
「今は何も訊かないから安心してくれ」
「・・・おう」
返事に満足したように軽く笑って、エックスは目の前に降りてきたなのはの方を向く
向いたままヴィータに言う
「ここは僕に任せて、ヴィータは先に戻るんだ」
「な・・・でも!」
「大丈夫・・・僕に任せてくれ」
決意に満ちた言葉と、いつもと違う青い装甲を身に纏うエックスの背中を見て
「・・・分かった。ぜってー無事に帰ってこいよ」
「ああ・・・分かった」
ヴィータが無事に離脱したのを確認するとエックスは目の前の人物に集中する
「あなたは・・・さっきの子の」
「僕はあの子の家族だ」
「そうですか・・・あの!」
なのはは声を張り上げる
「私、高町なのは!あなたは?」
「僕はエックスという」
「エックスさん・・・話を聞いてくれませんか?」
その平和的な提案にエックスは悩むように目を閉じる
それは提案を呑むかどうかでもあったが、人間と戦えるのか?という思考でもあった
だがすぐに目を見開き、迷いを払うように右手をなのはに向ける
「・・・僕は家族を守る。僕の家族を傷つける者は・・・誰であろうと倒す!」
そう叫ぶと同時に右手を武装、エックスバスターへ変形させる
それを見て、なのはもすぐに構え、空中へ飛ぶ
今、魔導師と青き英雄の対決が始まった
「これでっ!」
なのはは数発の誘導弾を展開し、エックスへ発射する
それをエックスは素早く走ってかわしつつ
「はぁ!」
バスターを連射して誘導弾を撃ち落し、撃ちこぼした弾をダッシュを用い回避
すぐさま追撃がこないのを確認すると、エックスはすぐさま近くの壁を蹴って同じくらいの高さまで瞬時に跳び、相対する
「速いっ!」
驚きながらもなのはは魔力弾を生成し迎え撃つ
自分に真っ直ぐ向かってくる弾丸に動揺することなく、冷静にエックスはバスターのチャージを開始
射線上になのはがいないのを見て
「でやぁ!」
小振りながらも先程より大きいエネルギー弾を撃った
それは迎撃してきた魔力弾をあっさり砕き、なのはの右方へ大きく逸れて飛んで行き、消滅する
「なんて威力・・・!?」
全力でないとはいえ自分の攻撃をあっさりと打ち負かしたエックスに視線を向けるなのは
その目の前には、いつの間に移動してきたのか脚を大きく振り上げ今にも一撃を叩き込まんとする青い英雄の姿が
「きゃああ!」
咄嗟にレイジングハートで防ぐ。だがレプリロイドの脚力はすさまじくなのはの相棒はバキッと嫌な音を立てる。そうして尚防ぎきれないその威力で地面に叩き落され、そのまま気を失ってしまった
相手の意識を刈り取ったのを見てそのまま着地し、バスターを下ろすエックス
だが、そこには安堵の表情ではなく、苦々しく顔を歪めて立つ1人の“レプリロイド”が居た
まるで自らの行いを恥じ、慙愧するように
そこへ戦い終えたらしいシグナムが降りてきた
「エックス・・・」
「シグナム・・・無事みたいだね、よかった・・・」
「シャマルから連絡を受けた。ヴィータを助けてくれた事、礼を言おう」
「気にすることないさ、家族だからね」
「む・・・そうか」
そこまで言った後、シグナムは申し訳なさそうな顔で
「エックス・・・今まで黙っていてすまなかった」
「・・・」
シグナムが謝っていることをそれとなく理解していたエックスは気にした風もなく言う
「謝る必要はないよ。・・・僕やはやてには言えない事情があるんだろう?」
「お前・・・もうそこまで」
「でも、もし良かったら僕にその事情を教えてくれないか?」
ここまで見透かされて、これ以上隠す訳にはいかないと悟ったシグナムはそれを了解した
「分かった・・・必ず話そう」
「ありがとう・・・それじゃあ、家に帰ろうか?はやてが待ってる」
「そうだな・・・主を心配させてしまった」
そうして2人はシャマルやザフィーラと合流し、はやてが待つ家へと足早に帰っていった
でたぁ!エックス隊長の踵落としだぁー!
NOSからのちょっとした変更点だったりします