これはゾンビですか?──いいえ、弟(笑)です。 作:どらどらおー
「貴様が相川和馬だな?私は保守派吸血忍者のサラスバティという。貴様に話がある」
「……何の用ですか?」
今サラスさんが来るのは予想外だったが、来る心当たりはある。なので予想はつくが一応聞いてみる。
「率直に言わせてもらう。我々に力を貸してはくれないだろうか?もちろん、タダでとは言わん」
やはり、その話だよな。セラが報告したんだろう、色々と。
吸血忍者も侵攻してくる対象が対象だからな。慢性的な戦力不足なのだろう。だとすればセラを一瞬で倒す程の人材は欲しいと考えても不思議ではない。
そして、それに対しての答えは初めから決まっている。
「条件がある。今の吸血忍者のトップに会わせてくれ。保守派と革新派の各トップに。そうすれば当分雇われても良い。俺も雇い主の顔位は把握しておきたい」
この目的は、言わずと知れた元勲老の暗躍をサラスにいち早く察知してもらう為だ。元勲老は出来る限り早めに片付けておきたい。
「この私が直接雇うという事では不満か?」
「そうだな。"我々"に力を貸すんだろ?だったら組織として雇って欲しい。ある程度の事情は知っておきたいからな。それに、他の条件的にも都合が良い」
都合が良いのは俺にとって、という話だが。
お互いに敵対は避けるとは思うが、万一の時は一方的に居場所や顔を知られているのはこちらが圧倒的に不利だ。
そもそも俺は、頭領、彩香ちゃん、セラ、サラス、トモノリには手を出す気は無いが、他の吸血忍者に対してはそうでもない。だから裏切られれば普通に反撃するつもりがあるからな。
「他の条件は何だ」
「目的が一致しない事があれば契約は破棄させてもらう。例えば間接的にでも俺達に危害が加わるような事、非人道的な事をする場合が目的の不一致に該当する。それ以外ならパシリから戦闘まで俺の出来る範囲で、何でもやらせてもらうよ」
しかし、俺だって敵対したい訳じゃない。故にこの条件は敵対する要因を初めに伝えておく、ということに他ならない。
俺が軽視されず、慎重に接してもらえるのであれば、これで人類吸血忍者化計画も発動することはないだろう。
俺の戦闘力がどういう風に伝わっているのかは分からないが、サラスが護衛を引き連れて直々に来た時点で軽視されている訳ではなさそうだからひとまずは大丈夫そうだ。
「雇われるというわりには、些か金銭的な話が抜けていたと思えるのだが?」
「それは全部そっちに任せる。これだけ条件を出しておいてそこまで口を出すつもりはない。絶対に俺の力が必要な時ってのはあんまり無いだろうから、歩合制でも全然構わない。働いてないのに金貰ってたらむしろ契約が切りづらくなるしな」
「ふむ、そういうことなら話を通しておこう。いずれ決まり次第、使いの者を出す。……邪魔したな」
サラスもそれなりに忙しいのだろう。用件を済ますと速やかに部下を連れて颯爽と帰っていった。
その一部始終を見ていた歩が、物申す。
「……お前、絶対に15才じゃないだろ」
「歩が思ってる以上に外国ってのは進んでるんだよ」
呆れた風に、されど的を射た指摘をされたが、俺は事もなさげに返す。
「それにしても和馬は交渉事が手慣れているように見えますが?」
「全然手慣れてなんか無いだろ。俺は一方的に要求を言っただけだし、相手はそれを聞いてただけだからな」
事実、どんな状況なら手を貸すしどんな状況なら敵対する、ということしか言ってない只の確認作業でしかない。だからこれは交渉とは言わないと俺は思う。
「……どこか腑に落ちませんが、良いでしょう。そういうことにしておきましょう」
一拍置いて、続ける。
「ところで、彼女は何故ずっとあなたにくっついているのですか?」
ああ、ツッコんでくれるのね。ずっと放置されるとばかり思ってたよ。
「さあ、サラスバティと同じような理由なんじゃないの?だから2人とも助けてくれない?そろそろ骨抜きにされる自信があるぞ」
「「……」」
「結局放置かい!」
静かに部屋を出ていった2人に対する俺のツッコミも虚しく、2人は俺を見向きもせずに居間を離れた。
「大先……アリエル、アリエルの奴は承けないですよ。規模が違いすぎるだろうから。ヴィリエの問題はヴィリエで解決してください」
大先生って言おうとすると、密着度が上がります。具体的には当たります。
嬉しいんだけども、嬉しいんだけども!……クーデター参加する気無いしなぁ。突っぱねないといけないのが心苦しい。
「確かにぃ、私も和馬さんにお願いしたいことはありますが~、それを頼むためにー、普通こんなことまではしませんよぉ?」
「じゃあしないで下さい」
「そんなにぃ、私は魅力がありませんかぁ?」
大先生はあからさまにシュンとした雰囲気を醸し出し、声のトーンを落とす。
あーもう、ちょっとあざといけど様になってるからこちとら罪悪感マシマシなんだよ。
「魅力的過ぎるから刺激が強すぎるんですよ」
これは早めに説明しておいた方が良いだろう。
「……確かに俺はあなたを倒しましたけど、それは俺の特殊な力そのものが強かっただけで俺自身は強くないんです。しかも先に言っときますけど、何れこの力は消えます。確実に。この力は先天性ではないですし、急に発現したモノです。だから本来ならいつ急に消えてもおかしくないんですよ」
「へぇ~、そうなんですかぁ。それはとても興味深いですねぇ」
「はい。なので放してくれませんかね?」
「え~、嫌ですぅ」
これを話してもまだやるか……逆に何をお願いされるのかちょっと怖くなってきたんだが。
仕方がない。これは切り札として残しておきたかったんだが。
「……豆腐」
言葉を発した瞬間、ピクリ、と少し大先生が固まったような気がした。
「知ってますか?豆腐って京豆腐以外にも美味しいモノは沢山あるんですよ?」
いや、これは気のせいではない。確実に効いている。
「それでも、京豆腐が好きなのであれば紹介できそうな場所は幾つかあるんですが……」
俺はこれを好機と見て、一気に攻め立てる。
因みにこの世界には、元の世界に存在していた物が少なからず存在する。名前は若干変わったりしていても大体似たようなものが。
ならば、リサーチもしやすいと言うもの。
実際に行って確認した訳ではないが、使用している特定の水や、製法が元の世界の物と一致するのであれば、高確率で同じような店ではないかと予想できる。
元の世界では大先生の影響で一時期豆腐にハマった俺だ。多少のことなら知っている。
「とりあえず、解放してもらえればうっかりどこかの情報を漏らすかもしれませんね」
数秒の逡巡。
もはや俺には大先生が心の中で豆腐と何を天秤にかけているのかは預かり知ったところではないが、これの結果次第では今後のカードの切り方が変わってくる。
そして、大先生が下した結論とは。
「……それはぁ、ズルいですよぉ?」
やはり、豆腐はジョーカーだということだった。
和馬は大先生のことをアリエルと呼び捨てにしているのに敬語を使っているというアンバランスに慣れてない、どうも作者です。
これは一応現段階での仕様ですので深くは突っ込まないで下さい。お願いします。
今回、後半がグダった事は後悔してますが、このままいきます。でなければ大した内容でもないのにまた一から書き直ししなければいけなくなるので。
次回は夜の王orその代理との邂逅です。よろしくお願いします。