これはゾンビですか?──いいえ、弟(笑)です。   作:どらどらおー

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 「何故、お前がここにいる……」

 

 「ごめんなさい、こちらの台詞です」

 

 

 両者、緊迫した空気が漂う。

 

 このまま戦闘になるなら夜の王はほぼ確実に死に、周囲にも被害が出る。それは困る。

 

 現状で止められるとするなら俺だけ。覚悟を決めて歩みを進める。

 

 

 「すみません、俺がその子を連れてきちゃったみたいです。……尾行されてることに気づけなくて」

 

 

 二人に呼び掛けつつ近づく。

 

 俺の介入にリリアは少し後退りし、そのリリアの様子を見た夜の王は俺に対しても警戒心を顕にする。

 

 予想外の反応だったが、これは使えそうだ。

 

 リリアは謙虚で臆病な性格、絶対に勝てると踏んだ相手にしか仕掛けない。よって力が未知数な俺には自分の力を隠そうとするはず。実際、それは俺を尾行していたことからも明らかだ。そうなれば夜の王も手出しはしない……と思いたい。

 

 

 「……君は誰かな?」

 

 「そうですね……和馬って呼んで下さい。夜野さん」

 

 

 この二人相手に俺が使っても不自然じゃないワードは"ふうりんかにゃん"と"夜野"くらいだ。早くお互いの名前呼んでくれねぇかな、すごく話しづらい。

 

 

 「女王とはどんな関係かな?」

 

 「女王?この子のことですか?」

 

 

 我ながら臭い芝居をしてるかもしれないが、俺なりに何も知らない無知な人物を演じてリリアを指さす。

 

 

 「ああ、その子はヴィリエの女王リリア・リリスだ。知らないとは言わせないよ」

 

 「ヴィリエの女王?ヴィリエってどこですか?」

 

 「嘘は……吐くなよ?」

 

 

 夜の王からの視線がよりいっそう厳しいものに変わる。

 

 それでも何らかの力があることはもうリリアにバレてるから良いとして、情報があることだけは絶対に知られてはいけない。説明できないし、バレると絶対に面倒なことが起こる。

 

 俺にはシラを切り通す以外の選択肢など存在しないのだ。

 

 

 「……すみませんけど、俺はあなた達が今すぐにでも何かしでかしそうなほど険悪な雰囲気になる理由については何も知りませんよ。でも、なんとなく二人とも強いことだけは分かるんです。だから……退いてくれません?」

 

 

 恐らく、夜の王が唯一恐れているものは女王の呪い。でなければ、死にたがっているはずの夜の王がリリアと対峙してここまで緊迫した空気にはならない。だからこの申し出、夜の王は確実に受ける。

 

 

 「……」

 

 

 否定しないということは、リリア次第で丸く収まる可能性が高い。この流れでリリアを押さえ込めれば俺の勝ちだ。

 

 

 「リリア、でいいかな?」

 

 「はい、ごめんなさい」

 

 

 ややこしいなその返事。"はい"って言ってるし、それでいいんだろうが。

 

 

 「リリアも退いてくれないか?じゃないと俺……」

 

 

 言いながら、俺は賭けに出る。失敗しても現状維持、成功すれば……リリア相手に脅しをかけられるかもしれない賭けに。

 

 その賭けとは、オーラの凝縮。

 

 リリアは《最後の晩餐》を使った時に、魔力のような波動を感じたと言っていた。それは即ち、ちゃんとオーラを感じることが出来るということ。

 

 チート級の能力者ばかりの世界ですら異常だったんだ。これゾンの世界でもこの量のオーラは充分異常なはず。

 

 そう信じて自分の体から流れ出るオーラを塞き止め、集め、凝縮する……というイメージをする。

 

 これは正確には技術であり、能力ではない。故に俺にも出来るという保証はどこにもない。どこにもないが──

 

 

 「……怒るぞ?」

 

 

 その瞬間、膨大な量の純白のオーラの奔流が俺の身を中心に吹き荒れる。

 

 タイミングは完璧。が、精々無限を100万に凝縮した程度なので、オーラも光り輝くとまではいかなかった。それでも初めてにしては上々の結果と言えた。

 

 その効果は十二分にあったようで、

 

 

 「ご、ごめんない!ごめんない!ごめんないっ!」

 

 

 リリアはペコペコ頭を下げながら、姿を消した。

 

 それに応じて俺も、凝縮したオーラを霧散させると同時に《最後の晩餐》で離脱する。

 

 残された夜の王はただ一人、

 

 

 「お前は一体……何だ?」

 

 

 呟いた。

 

 

 

 

 

 ▽▼▽▼▽▼

 

 

 

 

 

 ちらりと時計を見る。時刻はおよそ8:30。

 

 ペットショップでの一件の後、俺は真っ直ぐ帰ることも出来たのだが、またリリアが尾行して無いとも限らないので、無駄に《最後の晩餐》を使って警戒してたらこんな時間になってしまっていた。

 

 使うときはどこかも見えない場所に入ってから使い、ダッシュで別の場所に移動してから解除するとかいう面倒なことを4回もやってきた。仮に見られていたとしても、瞬間移動系の力に見えるはずだ。

 

 そういう経緯でお疲れモードの俺だったが、次の瞬間にはそんな疲れも一気に吹き飛んだ。

 

 ふと目を向けた視線の先、そこで歩とセラが戦っていたのだから。

 

 オーラを使って二人の戦う墓地まで近づく。

 

 よしよしよしよしよし!!きた!

 

 セラと歩がここにいるという事象が意味することは一つ。完全に原作に突入したということである。

 

 そこで、満を持して今日契約したばかりの新品の携帯を取り出す。

 

 

 ムービーモード!

 

 

 こそこそと二人の戦闘シーンを録画する。二人はお互いに気を取られているようでこちらには全く気づいていない。

 

 十数秒程録ったところで動画を保存し、携帯を仕舞う。これで俺が現場に居合わせたという証拠は残った。

 

 これを見せればもう言い逃れは出来まい。ちゃんと説明してもらってから、正式に"歩の世界"に入れてもらおう。

 

 これで俺の抱えていた大きな問題が一つ、解決した。

 

 俺は自然と口元から溢れる笑みを抑えつつ、帰路についたのであった。

 

 

 

 

 

 ▽▼▽▼▽▼

 

 

 

 

 

 帰ってきて早々、俺はハルナとセラには目もくれずに歩に対して動画を突き付け、こう言った。

 

 

 「なあ、歩。そろそろ話してくんねぇか?……全部」

 

 

 俺は交渉相手に歩を選んだ。至って妥当な判断である。ユー相手だったら言霊が怖いし。

 

 歩は動画を見せられ、言い逃れは出来ないと判断したのか、ちゃんとみんなを集めて話してくれた。

 

 ユーとの出逢い、ハルナとの遭遇、セラの訪問。

 

 自分は死んでゾンビになったということ、ユーが歩をゾンビにしたネクロマンサーだということ、ハルナが魔装少女だということ、セラが吸血忍者だということを。

 

 

 「和馬、黙ってて……悪かった」

 

 

 歩が深々と頭を下げる。

 

 その光景は俺に少なくない罪悪感を抱かせた。

 

 しかし、俺はその罪悪感をぐっと飲み込み、言葉を紡ぐ。

 

 

 「……いいよ、初めから何か事情あるのは分かってたからな」

 

 「……え?」

 

 「一回も歩からユーについての説明無かっただろ?だから言いにくい事なのかなって遠慮してたんだよ」

 

 「……悪かった」

 

 「そう思うなら次からはちゃんと言えよ。俺だってある程度は力になれるからな」

 

 「ああ、そうするよ」

 

 

 そして、お互いにニッと頬を弛める。

 

 

 『もう どっちが兄か 分からない』

 

 

 ……転生してるからねこっちは。現実では大学生やってたから精神年齢はこっちの方が若干上なんだよ、実際。

 

 ま、それはおいといて。

 

 

 「歩が全部話してくれた事だし、俺も改めて自己紹介するわ」

 

 

 リリア達と会って、一つ決めたことがある。

 

 情報はともかく、俺のオーラについては話そうと思う。両親との旅行中で急に目覚めた謎の力ってことで。

 

 もう既にリリアと夜の王に知られている。ならば今のうちにぶっちゃけた方が楽だと思ったからだ。

 

 それに半ば強制だったにしても、歩だって秘密を打ち明けてくれたんだ。だったら俺も、誠意を見せたい。

 

 

 「俺の名前は相川和馬、15才の無職だ。……それと、俺にも大きな秘密がある」

 

 

 

 「それは──」

 

 

 




どうも、全話で次戦闘しそうな雰囲気を醸し出してたのに結局スルーした、作者です。
お待たせしました、漸く原作に突入です。次話から夜の王編です。
……他に書くことも思い浮かばないんで、また次話でお会いしましょう。ではノシ
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