これはゾンビですか?──いいえ、弟(笑)です。 作:どらどらおー
今日は6月25日の日曜日。
歩は昼前に何処かに出掛けていき、その後俺以外の3人も出掛けていった。
セラは俺も誘ってくれたが、迷わずに断ることを選択した。
何故なら、行き先はボウリング。きっとその後はショッピングだろう。そして、歩とユーの仲直りイベントが発生するはずだ。
俺と歩は現在喧嘩中のような関係であり、俺が行くことによってそのイベントを邪魔してしまうのは、ただの愚策でしかない。
それに、他に考えなければならないことがある。
特に急を要するものは、間近に控えた大先生の登場だ。
原作の流れとしては歩達が京子と戦った後に大先生が襲来、大先生が優勢なところで京子の体を夜の王が乗っ取り、大先生が大ダメージを受ける。という感じだ。
俺が現場には赴くのは確定次項。考えるべきは介入するとして、どこ割り込むかである。
京子戦は全面的に参戦しない。歩達に最低限の戦闘経験を積ませるためだ。
大先生戦をどうするか。
俺も戦闘経験は積んでおきたい。俺のステゴロ戦法がどこまで通用するのか、オーラはどの程度まで使ってよいのか、大先生で検証させてもらいたい。
もっとも、威力以前に当たるかが問題だと思われる。
歩達が現段階で戦っても実力差がわかる程度で、実践経験と呼ぶにはほど遠い結果になるのは目に見えてる。
うん、大先生戦は俺が貰おう。その場合、歩達はビックリするだろうが。俺の力については扱いきれない不思議な力があると説明しただけで、未だ実際に力を見せた訳じゃないし。
ではそれまでに今よりもオーラを使いこなせるようにしておかなければ。凝縮は置いといて、力加減とか移動速度とか視力、出来るようならオーラを手足のように操る技術も使えるように。
次は、夜の王の件だ。大先生戦の最後に出てくる予定の人物。俺が大先生戦に介入しても乗っ取り現象を起こしてくれるのかが気になるところ。
もし乗っ取りが起きなかったら。歩達の疑いは晴れずに大先生と敵対してしまうだろう。
……いや、俺が大先生に負ければ、夜の王が俺を脅威ではないと判断して原作と同じような流れで出てくるかもしれない。
もし俺の仮説、夜の王が女王の呪いを恐れているというのが当たっているのなら、居場所がバレて相当焦っているはず。
ならば、一刻も早く死ぬために顔を出す可能性は跳ね上がる。
よし、今日の予定は決まった。オーラの練習と予想の裏付け作業だ。
オーラは凝縮しなければ感知されないようだから、練習は人がいないところならばどこでもできる。《最後の晩餐》は感知されるみたいだけど。
裏付けはあのペットショップに行けば容易に可能だ。焦っているならまだペットショップで働いているということはないだろう。
▽▼▽▼▽▼
予想通り、夜の王はあの日を境にペットショップを辞めていた。
店員に「夜野さん、今日は居ないんですか?」と聞いたら一発だった。
夜の王はそれなりに女王が恐いらしい。
ここで気にすべき点は、これによって京子の動きが変わるか否か、である。
……どうなんだろうなぁ、見当がつかん。これは祈るしかないか。変わったらその時考えよう。
それはそうと、そろそろ時間も遅くなってきた。
今日は動き出した時間が遅かったし、ここまで来るのにもオーラの練習しながら歩いてきたからな。気付いてないうちに結構な時間が経っていたのだろう。
とは言っても時間はあるし、帰りも練習兼ねて歩いて帰るか。
薄暗い街灯に照らされながら歩く、家までの道。
時間的に晩飯に間に合いそうになかったので、歩に「飯いらん」とメールして、帰り道のめれんげで食ってきた。
少し前までは治安の問題で夜中に出歩くことなんて少なかったが、こっちに来てから夜の散歩も悪くない気がしてきた。
なんと言えば良いのだろうか、静かで落ち着くのは確かなんだが……匂い、とでも言うのか。俺は夜特有の匂いのようなものが嫌いじゃないようだ。
それに、人通りも少ない。歩きながらオーラの練習をしてても全く問題がない。
昼間は多少人通りがあったために大っぴらには出来なかったが、今ならその辺に落ちている木の枝とか石ころとかをオーラで掴んだり投げたりしても大丈夫だ。
そうそう。オーラについてなんだが、まだまだ精密な動きこそ出来ないが、何かを掴むことくらいは出来るようになった。後、視力強化と移動速度強化も出来た。視力強化は動体視力も同時に強化されるようだった。すごく便利。流石はチート級と言うところか。
そんな風に引き続きオーラの練習をしていると、あっという間に家に到着した。
その家の前では歩が携帯を弄っていた。
「おい歩、そんなとこで何してんだ?」
「和馬か。……お前こそ、どこまで飯食いに行ってたんだよ。前にも言っただろ、今はこの辺りに──」
連続殺人犯がいるから危険だ、その言葉が出る前に俺の言葉を被せる。
「それこそ前に言っただろ?俺は扱いきれてないにしても不思議な力があるんだって。それくらい大丈夫だ。……まあ、気はつけるけど」
歩は抗議の目を向けてくるが、実際京子に襲われても初撃に致命傷をもらわなければなんとかなりそうだしな。
そして、特にこれ以上この話題に用はないので、話を変える。
「ところで、無事にユーと仲直り出来たみたいだな」
俺は歩の表情や様子を見ても、何一つ変わったところ等は分からない。しかし、あたかもそれらしく振ってみた。
「……ああ。……昨日はすまん、俺が悪かった」
おっと、謝られるか。そういうつもりではなかったんだが。この際だ、俺も形だけ謝っとくか。
「俺も急に殴って悪かった。後悔はしてないけどな」
「いや、そこは普通に謝るところだろ」
おっと、口が滑った。
なにはともあれ、これで冥界人とかユーの正体とかに関する質問を答えてくれるようになるかもな。
すると後は吸血忍者関連とヴィリエ関連の情報を引き出すだけか。ヴィリエはリリアに聞けばいい。リリアは自身が知られても良いと判断したものだったら大体教えてくれる。夜の王が暗殺しに来たことも教えてくれたし。
吸血忍者の情報は正直優先度低いから原作通りのペースで開示してけば良いだろう。
「そんなことより、そろそろ中に入ろうぜ」
「ったく、"そんなこと"で片付けるなよ」
その後家に入ったら顔面蒼白のセラが居たり、ユーに冥界人とかの説明をされたりと、大まかにだが大体原作通りだったので割愛する。
さあ、いよいよついに明日。この世界に来てから初めて自分からハッキリと原作に介入する日だ。
ただでさえずれてしまった歯車を、今度は自分から歪めようというのだ。俺はその形容しがたい不安と興奮から目を背け、床に着くのだった。
待ってくださっていた方がいると信じて一言。お待たせしました!
次回はちゃんと戦闘します。文字数が間に合えば、ですけど。
主人公の戦闘においての縛りは
オーラの凝縮不可、《最後の晩餐》使用不可
という縛りです。凝縮しなくてもオーラって強いですからね。十分普通に殺り合えます。
そしてそろそろオリ主が居ることによる不具合が徐々に現れてくる……はず。
では、また。