これはゾンビですか?──いいえ、弟(笑)です。 作:どらどらおー
オーラ。
それはフィクション能力によって扱うことを許された、圧倒的素敵ぱわー。
それを纏うことにより、ほんの一瞬で超人になることを可能とする。
大岩を軽々持ち上げ、車よりも早く駆け抜け、空も自由に飛ぶことが可能。
更に、フィクション能力者の中にはオーラを手足のように扱える者がいる。人によっては、針に糸を通すような精密な動きまで出来るようになる。
そんな、万能とも呼べる力。
俺は今、その力を利用して空を飛んでいた。
向かう場所は墓地。
少し前、歩とハルナが大先生に会いに行くと言って家を出ていった。
その暫く後、ユーとセラが慌ててミストルティン先生を持って出ていった。
つまり、そろそろ俺の出番だ。
なので俺は午前中に前もって下見しておいた観戦ポイントへ移動している。
着いた先では京子と歩、そして今到着したセラが激しい戦闘を繰り広げている。
ここからでは、叫ばない限りあちらの声は聞こえないという距離。そこでオーラで視力を強化し、戦闘の流れとレベルを観る。
普通なら見えないであろう人間離れした高速戦闘も、オーラで視力強化したことにより、ハッキリと見ることが出来る。
今は京子が竜巻を操って二人を圧倒している。戦闘技術のレベル的にはセラと京子が圧倒的に高い。歩と比べて、だが。
しかし歩は、技術では二人に及ばないまでも、ゾンビの身体能力とその不死性にモノを言わせた特攻という自身の強みをよく理解した戦い方が強力な武器として機能している。
それでも、京子の方が二人よりも一枚上手のようだ。これは歩と比べて戦闘経験が多く、セラと比べて強力な力を有していることに起因するだろう。
二人が付け入る隙があるとするならば、それは京子の慢心。そんな戦いだ。
俺は、少し安堵した。オーラのお陰で全ての攻撃が視えているからだ。セラの超高速の剣閃でさえも。これが視えていないようでは、大先生に挑むなんて出来ないだろうから。
そしてついに京子が死に、即座に生き返った。
俺はズボンのポケットに忍ばせておいた耳栓に手を伸ばす。一応聞こえないとは思うが、念のためだ。
戦場は大木の方へと移る。
ユーは相変わらず京子に押されているが、その状況もすぐに逆転する。
「死んで」
ユーは、その言葉を発した。俺は聞こえてないが、明らかに発した瞬間を確認できた。
何故なら言葉を発したであろう瞬間、ユーから濃密な青い何かが吹き出したからだ。
あれは、オーラの凝縮に近いのかもしれない。根本は多分別物だが、性質は似ているものがあるのだろう。
ユーは幾度かそれを繰り返すが、遂に京子が自身の耳を潰した。
そこからはまたも攻守逆転、そしてあっさりとユーが負けてしまった。
それに応じて、戦いの舞台は戻る。
「……よし、そろそろ俺も移動するか」
役に立ったかどうかは分からないが、一応は役目を終えた耳栓を再びポケットに戻し、平静を崩さぬよう、高まる鼓動を押さえながら目的地へ向かう。
ここからが正念場その1だ。手加減し過ぎてもお互いに死ぬことはないだろうが、やり過ぎるとそれは殺し合いに発展する可能性を孕んでいる。
俺の加減と大先生の機嫌次第ってところか。そもそも俺より大先生の方が強い可能性も十分ありえるけども。
「終わりましたね……」
「お前、ボロボロだな」
「あなたは気持ち悪いです。全く、そんなに強いのなら、最初からその姿で戦って貰いたいものですね。気持ち悪いですが」
俺が皆の声をハッキリと聞き取れる範囲に到着した時は、丁度京子が倒された時のようだった。
「ハルナ、生きてるか?」
「あ、当たり前だろっ……あたしを誰だと思ってんだよ」
距離はまだある。しかし焦ってはいけない。何せ俺は決めているのだ、飄々とした感じで颯爽と割り込むと。
「ユー」
「ヘルサイズ殿」
「おーい、根暗マンサー」
「なあんだ、生きてんじゃん」
もうお互いに見える距離なのに、皆さん俺には気付かない。後、数メートル。
『終わったの?』
「ええ、歩がやってくれましたよ」
「ちゃんと息の根を止めてやらんとな」
あ、やば。後で誤解を解きやすくするためにも、ここは止めておかないと。
「おい、止めるなよ。こいつは生かしておく訳にはいか──」
「ストップ」
歩の腕を掴んだ俺の登場に、ユー以外は驚愕を隠せないでいる。俺、まさか気配でも消せてたのかな?
そんな疑問はさておき、歩は言う。
「おい和馬。なんでお前がここにいるかは知らないけどな、こいつは俺を殺した犯人だ。止めるな」
「ちょっと待てって。もうすぐ大先生って人が──」
「あなたがアユムさんですねぇ?ウチの生徒に何をしてるんですー?」
……来ちゃったよ。ベストタイミングで。
「アリエル先生……助けて……」
そして安定の京子ちゃんクオリティ。これだから女は信用ならねぇ。流石にここまでのはなかなかいないだろうけど。
歩とハルナは必死に大先生に説得を始め、京子は女優顔負けの演技を継続させる。
京子はなぁ……小悪魔くらいが丁度いいのになぁ……。
その中で俺は一人、そんな場違いな感想を抱いていたが。
「と言われましてもー、この子は良い子ですしぃ、何より──少なくとも今、あなたがしようとしていることがぁ、いけないことだと思うんですがぁ?」
「歩、今は引け」
「おい和馬、何を言ってるんだ。こいつはな、してはいけないことをしたんだ。離してくれ」
「ちょっとだけ待っててくれってば。話、つけてくるから」
俺の言った意味を理解したのであろう。ハルナが、
「はあ?あんた、大先生とやるつもり?勝てるわけないじゃん、バカなの!」
小馬鹿にするように言ってきた。
しかし、既に大先生はポケットから両手を出すと同時に日本刀に似た剣を握り、戦闘準備を終えている。
「そうですよー?あなたは魔力も感じられませんしぃ、一般人ですよねぇ?そんなあなたがぁ、どうして庇うんですー?」
そう言う割にはやる気満々だな、というツッコミは置いておく。
「どうしてだろうな?……気になるだろ?」
「そうですねぇ、とても気になりますー」
大先生はニコニコと、俺はニヤリと笑う。
そして俺が動こうとした矢先、予想外にも大先生が動いた。
──速い。
だが、見える。表情一つ変えずに幾つもの剣撃を繰り出す大先生の一挙手一投足が。
俺は冷静に、歩を蹴飛ばして集団から距離を取る。
その間にも攻撃は続いたが、最小限の動きですり抜けていく。
「見かけによらずお強いですねー。ここまで避けられる人なんて、なかなか居ませんよー?」
「……とか言って、油断させるんだろ?」
俺は真後ろに全力で裏拳を放つ。
手応えは一瞬で霧散し、大先生の顔が若干強張った。これは分身を作り出す技術、ダブルだ。知ってる人なら警戒しない訳がない。
「どうして……気づいたんですかぁ?あなたの位置からではー、見えないはずですよねぇ?」
「さあ、どうしてだろうな?」
思いの外善戦出来ていることに逆に緊張を覚えながらも、ニヤニヤとした笑みは消さない。
「そうですねぇ、私も一応『最強』の名を持ってますからねぇ、舐められたままではぁ、困るんですよぉ。ですので──」
「──ちょっと本気で行きますよ?」
すみません、字数的に持ち越します。以上です!