これはゾンビですか?──いいえ、弟(笑)です。   作:どらどらおー

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 「──ちょっと本気で行きますよ?」

 

 

 その言葉に、俺は真っ先に変身を警戒した。しかし思惑とは裏腹に、大先生は変身する素振りすら見せなかった。

 

 その代わりといってはなんだが、大先生の動くスピードが上昇した。

 

 ただしそれは移動速度であり、攻撃速度に変化は見られなかった。

 

 これが、大先生の"変身前"の身体能力のみの本気だろう。

 

 だとしても変身前でこれほどの身体能力。『最強』と呼ばれるだけのことはある。

 

 そしてさっきからずっと、大先生は搦め手のような攻撃や呪文は使ってこない。始めこそダブルを使ってきたが、それ以外の攻撃は読みやすく直線的で、狙いが分かりやすい。

 

 それが意味する事とは、大先生は明らかに俺を警戒しているということ。故に、奥の手や本来の戦い方を隠している。俺が攻撃しようとせずに、回避に専念しているから尚更に。

 

 

 「んー、困りましたねぇ。こちらからの攻撃は全部避けられて、反撃する気配は見られないとなると、時間稼ぎが目的ですかぁ?」

 

 

 その言葉にハッとなって歩たちを視界に入れたが、どうやら歩達は俺と大先生の戦闘を固唾を飲んで見守っていた。

 

 良かった、歩が京子を襲ってなくて。たぶん今は誰も歩を止める人が居ないからな、あの場所。

 

 俺の右頬すれすれに剣閃が走ったことで、俺の意識は再び目の前の大先生へと引き戻される。

 

 

 「……反撃したくても出来ないんですよ。反撃させたいんなら攻撃のペース落として隙を見せてもらわないと」

 

 「面白い冗談を言いますねー。余所見は出来るのに反撃が出来ないなんてー、矛盾してますぅ」

 

 

 露骨に目線を動かしたわけでもないのに何でそこまで分かるんだよ。

 

 洞察力も人間離れしている大先生に軽く恐怖を覚えながらも、そろそろ反撃してもいい頃合いかと考えた時、突然大先生は攻撃の手を止めた。

 

 

 「このままだと埒が明きませんねー。……ホントは使いたくなかったんですけどぉ、仕方がありませんねぇ」

 

 

 一拍置いて、大先生は口を開く。

 

 

 「ノモブヨ、ヲシ、ハシタワ」

 

 

 まてまてまてまて!流石にもう集中力が持たん!

 

 俺は阻止するために一息に近付く。が、呪文を詠唱しながらでも戦える大先生の間合いには、素手の俺はそう簡単に入ることは出来ない。

 

 

 「ドケダ、グンミーチャ」

 

 

 もたついている間にも、呪文は着実に紡がれていく。

 

 

 「デー」

 

 

 《最後の晩餐》!!

 

 ……ついにやっちまった。大先生の前で、そしてユーの目の前で使っちまったよ。

 

 リリア曰く一瞬の違和感程度らしいけど、バレる可能性があるのは極力使いたくなかったんだが、そうも言ってられない。

 

 だって初めこそ負けても良いかもとか気楽に考えてたけどさ、よく考えたら俺……この状況で負けたら捕まるよなって。普通に考えて俺って危険だもんなって。

 

 おっと、そろそろ時間だ。

 

 ごめんなさいと思いつつ、心臓の位置にオーラを纏ったそれなりの威力の掌打を叩き込む。

 

 呼吸を乱して一旦詠唱を中断させてしまえば変身出来ないだろう。

 

 ついでに武器も取り上げてその辺に投げ捨て、時間停止を解く。

 

 

 「リブ──ッラ!」

 

 

 言い終わると変身の光が大先生を包み、同時に重低音を伴う衝撃に襲われた小さな体がぐらりと揺れる。

 

 そのまま前のめりで崩れ落ちるように倒れこんだところを難なくキャッチする。

 

 大丈夫だ、息はある。

 

 手加減したつもりだったが、予想よりも威力が出てしまったので普通に心配した。もしかしたら、衝撃を知覚したタイミングが変身後だったから耐えきれたのかもしれない。……いや、実は死んでたけど生体の宝珠で生き返ったとかありそう。

 

 ともあれひとまず終わったと安心した途端、手触りに違和感を感じた。

 

 少しヒンヤリとした、程よい弾力と瑞々しさを感じさせるスベスベとした手触り。本来布に覆われていなくてはならないその感触は今、ダイレクトに伝わってくる。

 

 ……変身解除したら自分で服作らない限り全裸でしたっけ。

 

 いち早く察した俺は素早くTシャツを脱ぎ、大先生に着せる。

 

 夏場故に俺のTシャツしか着せる物がなかったが、一応大事な部位は隠れた。大先生がロリっ子であることが不幸中の幸いであった。

 

 気絶している大先生を抱っこして、歩達の元へと帰ると、全員に唖然とした表情で出迎えられた。

 

 

 「和馬……お前、力が使いこなせないから使いたくないとか言ってなかったか?」

 

 「うん、言ったな。でもあれからも我流で扱う為の練習はしてたし、それでもまだ全然扱いきれてない事は確かだ。だから攻撃は最後の一発しかしてないし、それも威力の加減を若干失敗しかけた。我ながら、下手すればどっちかが死んでたと思うよ」

 

 

 ははは、と笑って誤魔化すと、歩は呆れた様に頭を掻いた。その時だ。

 

 

 「まさか、彼女が倒されるとはね。君は一体、何者なんだ?」

 

 

 声の主は京子。しかし中身は夜の王で間違いないだろう。やはり出てきたか。

 

 京子に乗り移った夜の王は周囲に暗い青色の霧を漂わせながら、こちらを見据えている。

 

 そしてその手にはさっき俺が投げ飛ばした大先生の魔装錬器と、気絶させられたユーの姿があった。

 

 

 「……お前、京子じゃないな。ユーをどうするつもりだ!?」

 

 「なに、少しユークリウッドを借りるだけさ。大丈夫、殺しはしないよ」

 

 

 このままだとユーが連れ去られてしまう。殺しはしないって言っても、原作2~3巻中盤くらいまでをぶっ飛ばす勢いで焦っているとなれば……何するか分からんな。

 

 でも今の俺ではどう頑張っても逃げきられてしまう。交渉もしたいし、せめて体温が元に戻ってから会うことができれば良いんだが……。

 

 

 閃いた。

 

 

 《最後の晩餐》を使用する。

 

 大先生との戦いで上がった体温も下がりきらないままに使ったことで始めから体温が高い状態だったので、もう既に少し頭がクラクラしてきた。

 

 そんな中で取り出した俺の携帯を京子のポケットに忍ばせ、解除する。

 

 ヤバイぞ……副作用のせいで体温が異常に高い。頭はガンガンするし、意識は少し朦朧としている。

 

 それでも腕の中には大先生がいる手前、男の意地で踏ん張り、耐える。

 

 周りの声は既に聞こえない。それでも歩の問いに聞く耳を持たない夜の王が、去る間際に何か一言二言残したことは分かった。

 

 そして、夜の王は霧と共に姿を眩ました。

 

 直後、歩とセラが俺に向かって何かを言っていた。が。

 

 悪い。もう限界だ。

 

 俺は大先生を歩に押し付け──意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 




いつかのあとがきで、戦闘の縛りで《最後の晩餐》は使用不可と言ったな?……あれは嘘だ。
どうも、どらどらおーです。
見ての通り、オリ主という存在の副作用がこれからじわじわ出てきます。注意してください。

話は変わりますが、いつのまにかユニークアクセス数が4桁を越えてました。ありがとうございます。
当初、私はユニークアクセス3桁を目標にしておりました。素晴らしい作品なのにあまり両方を知ってる友人が居ない元ネタに、作者の駄文を考慮するとそれでも高望みしてるとすら思っていました。
しかし、私は確信しました。
やっぱり、私の周りの友人は偶々知らない奴ばっかりだったんだな、と。
私はこれからこの事実を胸に、堂々と布教していこうと思います。
それでは次話でお会いしましょう。
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