艦隊これくしょん 横須賀鎮守府の話 特別編短編集   作:しゅーがく

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※他の特別編企画とは関連はありません。


特別編企画 第1回目 『結婚』
おめでとう! これで結婚ねっ! その1


 エアコンをガンガンにつけた状態で、毛布に丸々ことってこれ以上ない至福だと俺は思うんだ。

そんな至福を味わっていた俺の毛布を剥ぎ取る輩が居た。

 

「おいっ! 急に剥がすなっ……って……?」

 

 起きた俺の目の前に居たのは、ある紙を握り締めた艦娘数人。

その紙があまりに特徴的だったので、目を凝らして見ると、それには『婚姻届』と書かれていた。

 そして俺の今置かれている状況が掴めない。

そんな俺を無視して、俺の目の前に居た艦娘数人のうちの1人。赤城が何かを話し始めた。

 

「『艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話』特別編っ! おめでとうっ! これで結婚ねっ!」

 

「はい?」

 

 ドンドンパフパフ言わせている中、俺だけが状況を掴めていない。

 

「いやぁ~。そんなわけだからさ、紅提督ぅ?」

 

 そんな訳が分からない俺に、ずいずいとにじり寄ってくる艦娘。

その手には、かなり記入が済んでいる婚姻届がある。そして、何故か俺の名前まで入れられていた。夫の欄に。

あとは、俺が持っている印を押すだけみたいだ。

 ちなみににじり寄ってきている艦娘は全員で6人。

 

「早く」

 

「印を」

 

「寄越しなさいっ!」

 

「出さないのなら」

 

「力づくで、かも!」

 

 じわじわと前線が押し上げられている俺は、壁際まで迫られていた。

誰に迫られているかというと、赤城と金剛。鈴谷、秋津洲、夕立。ちなみに時雨の声もしているので、何処かに居るんだろう。

その何処かが、俺がもっと早くに気付いていれば良かったのだ。

 

「あったよ。紅提督の印鑑」

 

「何っ?!」

 

 俺の目と鼻の先までにじり寄ってきていた5人が光の如く消え、時雨がいるであろうところに群がる。

そして、俺がベッドから降りて確認するころには、時既に遅し。

ドヤ顔で皆が婚姻届を見せつけてくるのだ。

 

「え”っ?」

 

「え? じゃないですよ。さっき言ったじゃないですか」

 

 そう言って、赤城はプラ板で出来た看板を俺に見せてきた。

 

「『艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話』特別編っ! おめでとうっ! これで結婚ねっ!」

 

「はい?」

 

「いや、ですから……」

 

 呆れたような素振りを見せて、赤城は言う。

 

「そういうことですよ、旦那様?」

 

「はいぃぃぃいいいいぃぃぃぃ?!」

 

 朝一番で俺の絶叫が鎮守府でこだました。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 俺はそのまま6人にひっつかれながら食堂に行くんだが、通る艦娘の目が痛いの何の。

というか何で皆、泣きそうな顔しているんだ?

 

「んふふ~。紅ぅ? 美少女6人に囲まれて幸せでしょ?」

 

「そうよね?」

 

「僕もそう思う」

 

 俺の両手を自分の身体に巻き付けて言う鈴谷に、背中から身体を密着させてくる夕立と時雨。

なんというか、動きづらい。ちなみに、赤城は右側の脇腹、金剛はその反対側だ。はたから見たら、もしかしたら合体ロボかなんかに見えているだろうな、とか現実逃避しながら食堂に入る。

 皆、俺を見る視線がなんとも言い難い。痛いんだけど。

 

「まぁまぁ、旦那様は何にしますか?」

 

 そう言いながら、脇腹から離れない赤城に今更だがツッコミを入れる。

 

「なぁ、今思ったんだけどさ」

 

「はい」

 

「何で俺? は? つか『艦隊これくしょん 提督を探しに来た姉の話』ってなんだよ」

 

「えーと……ですね…………前作『艦隊これくしょん 艦娘たちに呼ばれた提督の話』の続編で、旦那様のお姉様が旦那様を探しに来るという話ですけど?」

 

「いや、知らないし。というか、遠い記憶に『艦隊これくしょん 艦娘たちに呼び出された提督の話』っていう題名があるんだが」

 

「あぁ、それはお気に入り登録者1000人突破記念の時ですね。それ以来、どこぞの異世界のハーレム金剛さんが云々って話や年末年始、バレンタインデーとホワイトデーの話でしたからね」

 

「うん? 待った」

 

 俺はカウンターで注文を言って、そのまま席に座って赤城に止めを入れる。

 

「待ちませんよ。それと、今は私たちの旦那様なんですから」

 

「脈絡がおかしい上に、訳わからん」

 

 そう言いながら俺は、取り囲まれた席から辺りに助けを呼べそうな艦娘を探す。

そうすると大井が居た。なんだか誰かを探しているみたいだが、俺は構わず声を掛ける。助けてもらった後に、一緒に探せばいいからな。

 

「おーい、大井!」

 

 そう俺が呼ぶと、大井は慌てながら小走りで来てくれた。

なんだか俺の記憶にある大井って、もうちょっと落ち着きのある艦娘だと思ってたんだが。

 

「あー、ありがとう。大井。それでだな。ちょっと赤城たちを引き剥がして」

 

 言い切る前に、大井に遮られた。とんでもない言葉で。

 

「探しましたよ、紅さん! はいっ! サインと印鑑お願いしますっ! コレにサインと印鑑押してくださるのなら、私は全力で助けてあげますよ?」

 

 この全く状況の掴めないところで、俺は何も言わずに大井から紙を受け取って、赤城たちの妨害を受けながらもなんとかサインと印鑑を押すことに成功。

その紙を渡す間際に、俺は見ちゃいけないものを見てしまった。否。気付かない方が幸せだったのかもしれない。

 

「んふふ~! 来ましたわー!! コレでっ! 私はっ! “結婚”っ!!」

 

 状況を全く掴めず、置いていかれてばかりの俺の目の前、もう訳が分からなかった。

完全に思考を放棄した方が良いのかもしれないとさえ、思ってしまう程だった。

 刻々と目の前に起きる状況は、時が過ぎていく程に酷くなっていくことにも、今更ながら気付いた。

 

「ということで、さぁ! あなた、こっちに」

 

 手を差し出され、反射的に手を取ると、そのままその場から引っこ抜かれた。まるで人参の様に。

そして、そんな人参の目の前ではとんでもない事が起きていたのだ。

 

「私の旦那様になしているんですか?」

 

「あら、私のよ?」

 

 辺りが光に包まれて晴れたかと思うと、そこには艤装を身に纏った大井と赤城が居た。

そして、さっきまで俺の横に居た金剛、鈴谷、秋津洲、夕立、時雨も艤装を身に纏っている。場所は食堂。

もう滅茶苦茶だ。

 

「違いマース。”私”のダーリンデース」

 

「おい、金剛。いつぞやの金剛に戻ってるぞ」

 

 俺の声も聞こえてない、完全に目のハイライトが消えた金剛が大井を睨んでいた。

 

「いんや~、鈴谷のだよー?」

 

 ニヤニヤしながら鈴谷は言うが、どうしてニヤニヤ出来るのか俺には分からない。

 

「大艇ちゃんの桜花の攻撃、喰らいたいかも? 金剛さんと鈴谷さんは無理でも他なら、40mmでも余裕で貫通するもんね」

 

 多分、効果ないと思う。意味ないぞ、秋津洲。

 

「最近出てきただけの、クレイジーサ○コレ○が何言ってるの? それに、君たちじゃ、”僕”の夫は守れないからね。駆逐艦に守れないものはないからね」

 

 なんだか時雨がこれまでに見たことないオーラを発している。そして、いつの間に改二になったんだろうか。

 

「”私”のなんだけど……皆、何好き勝手言ってくれるのかしら? 遠方から単艦で帰ってこれるくらいに、屈強な艦娘じゃないとそれこそ、”私の”主人は守れないわ」

 

 夕立は怒髪天を衝いていたので、俺は目を逸らした。触れない方が良いと思う。

 

「そもそも、貴女たちでは旦那様をまn(自主規制)」

 

 放送禁止用語が大量に出てきたので、少し本文では消させてもらったが(※急なメタ発言)、ここからは皆さんに見せられない。あれ、俺何を言って……。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 その後、俺を中心に艦娘7人によるバトルが始まってしまった。

言っていて恥ずかしいが、何も気付かない俺のせいでこうなってしまったのだ。

今は少し距離を置いて傍観しているだけだが、これまでに聞いたこともないような怒号が飛び交い、ザ・女同士の喧嘩みたいになっている。

 指揮官の立場としては、あれの仲裁をしなければならないんだろうが、元凶は俺なのでそんなことは出来ない。俺に飛び火が来ることは確実だったからだ。

 そんな俺にどこから来たのか、加賀が話しかけてきた。

 

「提督」

 

「おはよう、加賀」

 

「おはようございます」

 

 隣の席に座った加賀は、俺と同じ方向を向いてバトルを傍観する。

てっきり加賀なら止めに入ると思ったんだが、どうやら止めないみたいだ。

 

「やってますね」

 

「あぁ。……俺は今、とてつもなく胃薬が欲しい」

 

「そうですか」

 

 淡々と話す加賀に、俺は少しばかり愚痴を溢した。

これくらいいいだろう、そう思ってのことだ。だが、この発言が火に油を注ぐことになるとは思わなかった。

 

「何故ですか?」

 

「状況が掴めてない上に、俺って……いいや、言っても仕方ない。それよりも、まだ練度は99に到達してないだろう?」

 

「してますよ? この前の出撃で全員の練度が99になりました。それと『番犬艦隊』と秋津洲さんはそもそも出撃出来ませんので、政府に掛けあって戸籍を作りました。勿論、私たちもですが」

 

 そう言って加賀はあるものを俺に見せてきた。

戸籍抄本と書かれたその紙に、加賀の顔写真が貼られている。姓名もあるみたいだが、加賀に隠されてしまった。だが、戸籍抄本によれば住民票は横須賀鎮守府に置いてあり、軍属ということになっている。年齢は20みたいだ。

 

「は?」

 

「だからケッコンではなく結婚なんですよ。まぁ、皆さんが戸籍を作ったのは全て、紅さんと結婚するためですし」

 

 今更気付いたが、加賀も俺のことを『提督』とは呼ばずに名前で呼んでいた。

 

「え? いや……いつの間に?」

 

「結構前から掛けあっていましたので、どこでとは言えませんね。ですけど、戸籍抄本が届いたのはつい昨日のことです。あとコレも」

 

 加賀が長い袖から出して俺に見せたものは、何というか始めてみたものだ。

俺はマジマジと見て、それの題名を読み上げる。

 

「雑誌か? ゼ○シィ? あー……」

 

 完全に寝耳に水だ。俺はすぐに加賀から離れ、立ち上がる。

 

「ちょっと悪い。急用思い出した! じゃあ!!」

 

 加賀の返事も聞かずにそのまま俺は走る。そんな俺をバトルしている7人を除いた艦娘たちが、待ってましたと言わんばかりに動き出した。

 動き出した艦娘を見て、俺は走る速度を上げて食堂を飛び出していく。

後ろからは追いかけてくる足音が何人とあった。だが、俺は立ち止まらない。何というか怖いのだ。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 本部棟を逃げ回り、外に出た俺はそのまま警備棟に走り込んだ。

勿論、匿って貰うためだ。すぐにロビーを通り過ぎて、門兵に挨拶をするとそのまま階段を駆け上がって、武下の居る部屋に飛び込んだ。

 

「急にすみません! 匿って下さい!」

 

「うおっ?! 急にどうしたんですか?」

 

 飛び込んできた俺に驚いた武下さんは、座っていた椅子から立ち上がって、俺の方に来る。

 

「なんだか艦娘がおかしくて……戸籍だとか結婚だとか言って……」

 

 そう言うと、武下さんは何かを察したみたいだった。

肩で息をする俺の肩に手を置いた武下さんは、俺にあることを教えてくれた。

 

「その騒ぎ、私たちも加担してます。すみません。こんな大事になるとは……」

 

「どういう、意味、ですか?」

 

 息が戻らない俺は、途切れ途切れに訊く。

 

「部下が艦娘から戸籍に関して相談されたらしいんです。それを聞いて私たちは、紅提督に知らせること無く動き出してしまい、このようなことに……」

 

 俺のことを『紅提督』と呼ぶのにも違和感がある。だが、そんなことよりも動いてしまったことと、結果を想像出来なかったことを申し訳なさそうに話す武下を見ていると、怒る気にもなれなかった。

 

「そうですか。……分かりました。ですが、匿ってもらいますよ?」

 

「はい」

 

 武下さんはそう言って、廊下に居た門兵を呼んであれやこれやと言って、部屋に戻ってきました。

 

「いつまで持つか分かりませんが、とりあえずは休んでいて下さい」

 

 そう笑った武下さんの背後にあったものに、俺は目が離れる訳がなかった。

何故ならそこにはゼ○シィの名前が大きく書かれていたダンボールがあったからだ。

 

(武下さんもグルかっ?!)

 

 俺は心の中で叫んだのであった。

 

 




 今回より始めました、短編集を書かせていただいています。しゅーがくと申します。あらすじ(という名の別物)を読んだ方はご理解していただけていると思いますが、作中に特別編を出すと大変読みにくいということで、こういう形を今回から取らせていただきました。

 しょっぱなから飛ばしてるなぁ、って思った方々。これは前々よりお知らせしていたので、仕方のないことです! 許してください!!

 ということで、今後ともよろしくお願いいたします。

 ご意見ご感想お待ちしています。
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