「ふああ・・・」
教室の中、私はついぼんやりとしてしまった。
最近、宝条プロに所属したてで慣れない事があって大変だからなあ・・・。
「ヤッホー、星奈!」
後ろの席にいる真純が、元気に話しかけてきた。
「星奈、日本史のテスト何点だった?」
「え? 六十二点だったけど・・・」
「私は九十点。アイドルになったのだから、更に勉強しないと成績キープは出来ないわよ!」
「う・・・、伊織と詩織は何点だったの?」
「二人とも四十五点だって」
下には下がいたか・・・。でも、真純の言うとおりかも。まだレッスンしかしてないけど。
○数日後○
私達神風エンジェルガールズメンバーは、宝条プロに集合している。
「はい、皆さん、今日から一か月、メンバー一同でアイドル育成合宿をしてもらいます」
静かながらも力の入った声でプロデューサーが言った。
「えええ!?」
皆驚いた声だ。
「あたし、こんな子達と一緒にいるのは嫌だから」
戸塚さんが不満そうに言った。
「結束を固めるために、共同生活をしてもらいます。泊まる所は、事務所の裏にある宿舎です。あそこで衣食住の面倒は見ます。まず今日は、スケジュール表にもある通りボーカルレッスンと撮影を行います。早く着替えて集合して下さい」
そう言うと、宝条プロデューサーはドアから出て行った。
○レッスン室○
レッスン室には、神風エンジェルガールズの楽曲『大志と希望』が流れている。
「皆、この曲でお客さんを楽しませるのよ。そのためにも、発声練習、頑張って!」
講師の大きな声が響いてくる。
朝早く起きて事務所に来ているからか、正直言ってまだ眠い。他の人達も、皆がそうみたいだ。
「はいっ!」
アイドルなのだからこれしき、と自分に言い聞かせる。
「あ~♪ あ~♪ あ~♪」
「もうちょっと力強く!」
「あ~♪ あ~♪ あ~♪」
「もう少しお願い!」
休憩も入れて、数時間程ボーカルレッスンを行った。
「まだまだって所ね。でも、時間はあるから、こつこつ努力して成長していって!」
講師が、物足りなさそうに言った。
○撮影スタジオ○
今から、神風エンジェルガールズをPRする為の資料写真を撮影するのだ。
「カメラマンの倉持です! よろしく!」
快活というか暑苦しそうな感じの若い男性のカメラマンだ。
「じゃ、倉持さん、よろしくね」
「はい。まずは姫子ちゃん、お願いします」
カメラの前に立った戸塚さんは、むすっとした、機嫌の悪そうな顔だ。
「・・・・もうちょっとカメラの方向いて、笑顔笑顔」
カメラ目線になったのはいいが、笑顔とは言い難い作り笑いだった。
「倉持さん、すみません。笑った顔は、凄く可愛いのですが・・・」
「い、いえ、気を落とさないで下さい。次、詩織ちゃん」
詩織は、私が不安になるくらい可愛い笑顔を振りまいていた。
「はい、いいよ、うん、すごく素敵!」
カメラマンは、嬉しそうな声を出した。しかし。
「うーん、とてもいいんだけど、アイドルなんだから、もう少し色気とかそういうのも減らして欲しいなー」
詩織は、少し調子に乗りすぎていたみたいだ。
「あっ、はい」
伊織と真純と私は、緊張が表れていて笑顔があまり出来ていなかった。
そして、最後のメンバー集合写真。自慢じゃないが、私、真純、詩織、伊織四人はプライベートでも仲が良い為、まあ連帯感があった。しかし、戸塚さんはまだ知り合ったばかりで、仲良くなってないから、一人浮いた感じだと、カメラマンや宝条プロデューサーに言われた。
慣れない事も多いし、何かますます不安になってきた。