学園アイドル   作:茜寧々

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第四話 差と努力と

「遅くなってすいませーん!」

その時、ガララッと教室のドアが開いて、一人の生徒が入ってきた。

「おー、若松、そういえば久しぶりだな」

世界史の先生と入れ替わって教室にいた担任が言う。

「は、はい…」

「とりあえず席に着け」

若松碧(あおい)。超が付くほど有名な大人気アイドルだ。

幼少期は子役タレントで、その頃から人気があったらしい。噂によると、最近では、女優やモデル業にも手を伸ばしているそうだ。

 

私より少し遠くにある席に若松さんが座った瞬間、チャイムが鳴る。次の教科は、現代文だ。

世界史は苦手だけど、現代文はどちらかと言えば得意な方だ。前の授業で懲りたこともあるので、今度は寝ないで授業を受けようと思う。

「そこ、緑川!」

早速呼ばれた。今度はちゃんと聞いていたから大丈夫だ。

「はい、この時の主人公の気持ちは…」

 

「正解!」

よかった、大丈夫だった。レッスンの後に予習しておいたお蔭でもあったのだが。

ちらと周りをを見回すと、居眠りをしている人が何人かいた。若松さんもその中の一人だった。

 

「じゃあ今度は…春日!」

「へっ!?」

詩織と伊織は…二人とも熟睡(というほどでもないが)していた。ちなみに真純はちゃんと先生の話を聞いていた。

「「か、春日って…伊織(詩織)の方だよね!?」」

「いいや、二人共だ。一問めを春日詩織、二問めを春日伊織に答えてもらう」

「「「聞いてませんでした!」」

「二人共立ってなさい」

あ~…私の二の舞になってしまったか…。

「じゃあ、かわりに秋月と若松」

真純はともかく、若松さんは答えられるかな…と思ったその時、若松さんは顔を上げた。

「「はい」」

「まず、第一問を秋月」

「はい、『花咲くとき』です」

「正解。次、第二問を若松」

「はい、『心』です」

「正解。二人共よくできたな」

わ、若松さん、すごい…! 寝ていたと思ったら、ちゃんと答えたし…。やっぱり、何と言うか違うなあ…。

 

 

現代文の授業が終わり、次の化学は別室で行われるので、教室を出ようとした時だった。

「あっ、筆箱忘れた」

「先行ってるね」

「うん、分かった」

机の上にある筆箱を持ち出すと、教室に残っていた若松さんとたまたま同時に教室から出た。

「あ、若松さん」

「何だったら、一緒に行く?」

「……うん」

若松さんとは、特別親しいわけでもない。しかし、誘いを断って一人で行くのも心細かったので、二人で行くことにした。

 

廊下を歩いていた時、私は口を開いた。

「…若松さんって、凄いね」

「え?」

「だって、昔からあんなに人気があるし、授業だって当てられてもちゃんと答えられてるし」

「それは、まあまだまだだし、あの時はちょっと仮眠とってたし、勉強したところがたまたま出ただけだから」

「でも、私より凄いよ。私なんか、まだデビューしたばっかだし、頭良くないし、眠いとすぐ寝ちゃうし…」

責めるように言ってしまった。少し苛立っていた。

「そういえば、緑川さんってアイドルデビューオーディションに受かったばっかりなんだよね」

こくんと頷く。もしかしたら私は、若松さんにひがんでいるのかも知れない。私よりも有名で、頭が良くて、羨ましいと思っているのかも知れない。

私は、若松さんとの差を感じてしまった。仲間の真純や、他のアイドル達といった、私より優れた人はいっぱいいる。その中でも、特に凄いと、私は思うのだ。

それに比べたら、私なんて…。

「緑川さん」

若松さんが言う。

「努力することを忘れないで。努力することで、きっと夢に近づけると思うから」

この一言で、私は目が覚めた。

きっと、若松さんは昔からずっと努力を続けてきたのだろう。そして、ここまで来れたのかも知れない。それなのに私は、何で勝手に嫉妬したりしたのだろう。

「……うん」

若松さんの目は本物だった。若松さんより下の私にそんな言葉をかけてくれる。

やっぱり、もう少し頑張ろう。

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