私は研修生として346プロダクションに入ることになった。
大企業となったこの346プロには「元アイドル」がたくさんいるらしい。
たしか、研修生担当のトレーナーさんもアイドルだったみたいだ。
はじめてのレッスン、スタイルが良く、笑顔が素敵なトレーナーさんだった。
一時間ほど指導を受け、呼吸も荒くなってくる。不意にこう言われた。
「今日は上がっていいぞ」
他の研修生達もいる中で「一番先に上がらされる」酷くショックだった。
他の研修生に聞いてみると
「体力が追いついていなければすぐに上げてしまう」「全て終わらせたあとの特別レッスンが研修修了の証」「特別レッスンが一番つらい」
体力勝負のアイドルではあるが、無茶はさせない。
無茶出来るだけの体力をつけないと、この先、生きのこれはしないということなのだろう。
一ヶ月後には初日の倍以上の時間動けるようになった。
二ヶ月後には最後まで残れるようになった。
ある日、研修生の一人が特別レッスンを受けることになった。
通常のレッスン終了後に二人きりで場所を移してやるらしい。
翌日、彼女は昨日のハツラツとした笑顔はどこへやら。苦しそうな顔でこう言った。
「本当に特別レッスンはキツイ、あなたも吐かないようにしなさい。」
どこか満足気な表情に見えたのは研修生卒業が嬉しかったのだろう。
それから半年ほどたっただろうか。
ついに私にも声がかかった。
「次回は特別レッスンも追加でやるぞ。もちろん、その日の内容も見て撤回するかもしれないからな、体調は整えて来いよ?」
嬉しかった、今までのすべてを出しきれるように、今日から体調管理だ!
とは言ったものの、小学生のように期待感で前日は遅くまで眠れなかった。
研修生の友達には笑われたが、先に行って待ってると伝えると
「待ってたら追い越してやるから、どんどん進んでいってよ。」
我ながら良い友達をもったものだ。キツイと言われている特別レッスンも絶対こなしてみせる。
その日のレッスンは本当に厳しかった。この後があることを知っていて
意地悪なぐらいにしごかれた。
「では今日はここまで!特別レッスンは別の場所でやるからな!着替えて駐輪場に集合だ。」
ヘトヘトな体を引きずりながら身支度を整えて駐輪場に向かうと
「夏だから上はいらねーだろ?メットだけしっかりつけとけよ?舌噛まねーよーに捕まってな。」
そう言ってバイクに載せられた。
いつもより言葉遣いが荒っぽいトレーナーさんの後ろで20分位しがみついていただろうか?
「うっし、到着だ!」
私の見間違えでなければここは「焼肉屋」である。もしやと思って聞いてみると
「最高に疲れててもしっかり食えなきゃやってけねーからな!
アタシも昔はよく仲間といったんだよ。」
疲れきったところに焼肉は本当に辛かった。人生でもこれだけ食べるのが辛かったのははじめてだ。
トレーナーさんはアイドル時代にライブの打ち上げで行っていたらしい。
アイドル時代の写真は絶対に検索するなと釘を差されたが、逆に気になってしまうので後でこっそり調べておこう。
当時はプロデューサーに望んでない仕事を沢山持ってこられたらしい。
それでも、やり通せば自分の力になるし一応感謝はしていると。
顔が赤かったのは炭の熱だけじゃなかったんじゃないかなぁ。
そんな地獄のお食事会も終わり、トレーナーさんが自宅まで送ってくれた。
「アタシは根性座ってねー奴がキライなんだよ。
自分の決めたこと曲げねぇ、んで諦めんな。」
「お前がしぶとく生き残ってアイドル続けている間は見守っててやっから。」
嬉しくて嬉しくて泣いてしまった。この日は一番キツかったけど一番嬉しかった日だったのかもしれない。
翌日、ロッカーの整理のためにレッスンルームに向かうと。
「よ!お疲れ様。」
一番仲の良かった友達が見送りに来てくれていた。
思い出や、これからを語り合い涙を流しながら寄り添いあった。
別れ際に特別レッスンの内容を聞かれた。
「最高にキツイレッスンだったよ。」
納得いっていないようだが、これ以上は自分で確かめてみてほしいからね。
また今日も研修生用のレッスンルームに新人が入ってきたようだ。
「これからお前らの指導に当たる向井拓海だ、気合入ってなかったら叩き出すからな!」
今日も研修生たちのトレーナーさんは気合全開で指導してます。
ということで、向井拓海編でした。
どうこうしたらいい、どこがダメとか気軽にどうぞ。
次回も未定なので書いてほしいアイドルがいればそちらも合わせてどうぞ