>所変われば出没悪魔も変わる日
地下世界東京は断層により新宿の北エリアが上層、新宿-赤坂間の中央エリアが中層、そして赤坂以南六本木を含む南東エリアが下層に分かれているのは以前にも述べたこと。エリアごとに妖精、地霊と都市を統べる人間も異なるが、ここ下層の六本木エリアにはミュータント(この時代ではミレニアムの改造や、悪魔による身体への悪影響を受けた人間)が僅かに残る日本の神々の力を得て統べることに成功している。
多分。
しかし日本古来の神々、天照大神を含む天津神は天の岩戸に強制封印、国津神らも封印されたり利用されていたりと神族勢力としては壊滅状態。結果、ミュータントらが住む六本木の街以外は全く手付かずで、悪魔がごろごろと襲い掛かってくる。妖精ハイピクシー、妖鳥ケライノーに地霊ツチグモ、それから幽鬼デュラハンと、だいたいは上のエリアと似たようなメンツだが。
物理が通るのは殴り倒し、通らない相手は高揚ブースタ込みの【アギダイン】で蒸発させる。300ダメージも出せば、このレベルで活泉も火炎耐性も無い悪魔は確1だ。
東京タワー到着前日にレベル34になった。レベルアップでHPMPも回復し、使った分のMAGも補充し終えて用意は万全である。さて鬼が出るか蛇が出るか。
近づいて気づいたが、東京タワーが異界に包まれていた。ルシファーの仕業かコレ。
異界というのは普通、生物の血液や空気中・大地に含まれる魔力といった生体マグネタイトを他所から獲得し、身体を構成している悪魔にとって、現代日本のように治安が良く、戦いや争いで血が流れることがない=空気中にMAGが漂わない地球上ではMAGが足りず「窒息」してしまうため、生存するために作成するMAG溜まりで、かつ狩り場も兼ねる結界だ……しかし大破壊後で悪魔が周知の存在となり、争いが絶えなくなったこの東京では悪魔はMAGで窒息することはなくなりほぼ無縁の代物のはず。
それでも異界を張るのは、今の状況でもまだ足りないほど高位の、それこそ魔界からやってきた大悪魔が中にいるのか。あるいは結界として、内部の悪魔の存在を外に悟らせないものとして張ったものなのか……どちらにせよ、中に入ってみれば分かるだろう。
すぐさま戦闘になることはないだろうが、目の前で悠長に準備させてくれるとも思えないと感じ、入り口付近で出せるだけの全悪魔を布陣しておく。道中雑魚戦がなければ、1回の召喚でボス戦まで持つだろう……まさか雑魚まで用意してるってことはないよな?
雑魚はいなかった。
いたのはルイ・サイファー閣下と、それから対戦相手の悪魔が1体だけ。
だがなんであなたがここに
「心はしっかり整えてきたかな?」じゃねえよ。
「強くなるとは、力が強くなることだけではない。いずれ自分の弱き部分も捨てることが強さになる」じゃねえよ。
「だから君の手伝いをしてあげることにした」、って。
よけいなおせわだ。
いや、なんであなたもわかったようにうなずくのさ。ねえ、アリスさん。
>リリム、いや夜魔リリスが現れた日
悪魔は契約を……たとえ口約束であろうとも守る。
しかし契約の隙を突いて不履行したり、契約の合間を縫って危害を加える悪魔は多い。薄情者とされることも多々ある。
でも、サマナーの仲魔のように悪魔と交流することで相手への感情が生まれ、契約がなくとも害しなくなることもあれば、無償で利することだってある。
例えば、アリスさんがそうだった。最初は、俺の力を見て仕掛けてきたんだろう。でも肌を重ねるうちに、言葉を交わすうちに情が生まれ、絆を結んだ。代償がなくても力になってくれようとした。
そんな絆が生まれたからこそ、このような行いに出ようと思ったのだろうか。