真かみさま転生200X(未完)   作:tbc

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変容の水曜日3&驚愕の木曜日1

>4日目(水)22:??

 シュバルツバース内部にはアントリア(A)からホロロジウム(H)まで8つのセクター(区域)が存在し、各セクターを“母”と呼ばれる生命や創造を司る神・悪魔が守護している。特にここエリダヌス(E)は最も地上に近く、脱出が可能な浅いセクターなため唯一外部との出入りが可能である。ただし、外部からではシュバルツバースの侵食を防ぐことは出来ず、また脱出・侵入の際に悪魔の妨害を受けやすいため簡単には出入り出来ず、正攻法で脱出する時はそれこそシュバルツバースを攻略した時となるだろう。

 ただし憂う者という裏口を借りた俺は例外だが。しかし移動と引き換えに、彼に一つ用事を託される。シュバルツバース内にいる、もう一人の『輝く者』……彼の人としての意志を確かめてほしいとのこと。

 要するに、ストレンジジャーニーの原作主人公がどのルートを辿るのかを見定めてほしいのだろう。俺も気になるし、外部に影響が無いわけじゃないし確かめよう。あわよくばNルートに誘導するのも悪くない……が、出来るかなぁ。

 

 さてシュバルツバース内のミニターミナルに到着したところで移動を開始する。といってもシュバルツバースはセクター毎に亜空間で分かれているため、通常の移動手段ではセクターを渡れない。そして【マッパー】で周辺を確認する限り、どうやらこのセクターに南極探査隊のレッドスプライト号はいないようだ……。

 であればセクター間を移動せねばなるまい。内部に移動したところで改めてユーバーゲシュタルトと連絡を取り、ターミナル間の移動を手伝ってもらう。外部と内部の移動は難しくても、内部間の移動なら実に簡単なのだ!

 

 シュバルツバース内にあるターミナルを用いて、本来同セクター間でしか移動できないものを彼の協力により無理矢理セクター間を移動するのに用いる。目指すはホロロジウム、母(マー)を意味する言霊そのものだが、ことシュバルツバース内においては悪魔の母であるメムアレフが最深部に待ち受ける最終セクターだ。

 

 

 

>4日目(水)23:??

 ホロロジウムの上層はまるで熱帯に包まれたジャングルのように原始を思わせる風景をしているが、下層に行くに従ってまるで生命が生まれる時代よりはるか昔を思い浮かべる、地球が誕生した時のごとき溶岩と灼熱に包まれた世界となる。

 調査隊たちは未だこの最終セクターに到達してないようで、本来ならすぐに破壊され遠回りをせねばならなくなる最深部直通のエレベーターが機能しており、無事にメムアレフの元へ到達出来るはずだが……ケルトの暗黒の女神、地母神スカディがその前を塞ぎ、俺の素性と力を確かめるべく襲いかかってきた。

【地母の晩餐】、【会心】を持つ高レベル悪魔のスカディは流石の俺でもヘカーテに変身しただけでは完封することは出来ない。ある意味リリスよりも強烈な打撃を【メディアラハン】で受け流し、自らの大技で消耗したところを【ブフダイン】で叩き込み凍結したところをオオモノヌシが【不動剣】でクリティカル。見事と称賛を言い残してMAGと化すスカディが残した女性用最上級防具、カムライターオとスカディが落としたレアフォルマらしき謎物体を回収してエレベーターに乗り込む。原作みたく最後っ屁に壊されたりせずによかった……!

 超人になり、必要経験点が上がったこともありここ最近上がってなかったレベルが上昇し、46になった。シュバルツバース内はまだまだ危険な悪魔が一杯いることだしと、エレベーターで地下まで下るインターバルにスカディから得られたMAGで悪魔合体を行う。

 主にレベルの割に作成が楽という理由から、精霊ランクアップを駆使して霊鳥ジャターユを作成。

 同様にダーク悪魔でありランクアップが容易、かつ所持スキルが優秀である邪神ツァトゥグァを作成。素材にオオモノヌシを使用し、いつでも蘇生して【メディアラハン】を撃つことが出来る優秀な支援役だ。

 打撃役には三分の活泉のためだけに魔王オーカスをベースとし、ギリメカラからランクダウンして【物理無効】を引っ張った邪神ニャルラトホテプと組み合わせた造魔を作成。例によって【フォッグブレス】【魔法耐性】も継承し、全門耐性持ちの隙のないメイン前衛だ。ただし剣耐性は勘弁な。

 

 あと最後に神獣ナンディさんの束、5体。例によって【リカームドラ3】持ちのリセット要員だ。これで5ターンは最低持つという意味合いも兼ねる。

 

 

>5日目(木)00:??

 文字通り灼熱のまっただ中、スキルによってシュバルツバースのどこからともなく「掘り出し」た極地適応済み装甲服を身に纏い、なんとか環境ダメージを防ぎながらメムアレフとご対面。

 原作ではあまりに強すぎて主人公の自力だけでは姿を見られなかったとされる大神霊だが、超人である俺には裸眼で見える。その御姿は、例えるなら……寝そべった仏像。

 リリスを通じて協力を請い、スカディにその力を示した俺を直に見てメムアレフは、カオスの一端が感じられると高評価。しかしこれから彼女の期待を裏切るかもしれないと思うと、逆鱗に触れるのが怖くてしょうがない。四文字よりレベルが低いとはいえ、後期サプリ掲載のボス悪魔だけあって数種類の専用スキルは極悪。特にスクンダ内蔵の万能魔法【大洪水】やら、回復に加えデカジャデクンダ同時発動の【始祖の理】など、力押しだけで無い分、打点を除けばなんだかんだ言って四文字より強いかもしれない御方だ。

 否定はせぬように、しかし俺の願いを彼女に伝えるべく言葉を尽くし、あるべき人間と悪魔が共に立つ理想の世界を訴えた。メムアレフといった彼女ら母なる悪魔は原始の、人間が争い、生と死が蠢く文明の無い社会を望んでいるが、文明や知識という軟弱さは決して力なき者の逃げ道ではない、むしろ「知」という能力は魔術・魔法にも通じる、れっきとした人間の一つの力であり、それが発達した文明の利器というものも―――争う武器の使い方からは逸れているが――戦いのための武器である、等と俺は魔術の一側面が錬金術に、そして科学へと発達していった例を上げて人間社会の必要性を訴えた。その上で、彼らの主張する軟弱な文明に逃げ込まないように、人間が文明を争いのための武器とする理由として、我々人間の身を脅かす悪魔の存在が常に身近にあれば良い、という提案・妥協案を投げつけた。そしてこれこそが俺の望む、悪魔と人間が共存するがしかし平和でない、カオスでもありロウもある、しかし決して殺伐としただけではない、悪魔の存在が社会に組み込まれるライト的理想の世界だ。

 この一連のプレゼンテーションが終わるまで彼女から反対の声は上がらなかったが、語り終えてやや渋る口調でそれだけの力を持ちながら、何故自らがのし上がる世界を望まないかと問うてきた。それは勿論、一人の実力でやれることには限界があると知っているからだ。あのクソ女神……もとい、目の前のメムアレフよりも遥かにぶっ壊れた実力を身に付けた奴と戦っていれば、一人ではどうしても倒せない相手がいると知っていれば、どれだけ強くても限界があると分かっていれば、単純な力比べだけを重視しがちのカオスの世界では適材適所、有利不利、長所短所という言葉が残らないのだ。こと悪魔相手に隠す必要もないだろうと、俺が異世界出身であることを交えながらワケを話すと、メムアレフはふむふむと頷き、幾つかの条件と引き換えにポラリスへの共闘、場合によってはシュバルツバースの縮小や侵略により無と化した陸地の修復を呑んでくれることになった。

 その条件にはレッドスプライト号の説得や悪魔との関係構築の仲介など戦闘を行わずに済ませられるものも幾つか含まれていたが、特に戦闘が必要な条件として、俺が自らの理想を訴える一勢力のリーダーとして、彼女メムアレフの協力を得るのに妥当な実力を持つか、また俺が述べた力不足の経験がただ単に非力で及ばなかっただけではないという証明として、ここシュバルツバースに眠る「神」を打倒してみせよ、というとんでもないノルマを課された。

 ここで彼女が言う神とは、単にどこかの神族である悪魔とかではないだろう。このシュバルツバースには、二周目以降の隠しボスとして、他作品にはひっきりなしに登場するはずのメシア教の最大神―――の一側面である「偽神」デミウルゴスが封印されている。

 メムアレフは、俺にそれを打倒してみせよと述べたのだ。つまり、メムアレフでもポラリスでもないが、唐突なラスボス戦をしろとのことである。

 

 

 

>5日目(木)01:??

 偽神が封印されているセクター、グルース(G)に移動しつつ、対策を考える。案内としてつけられたのは、この前逃がした夜魔リリスだ。投げキッスを飛ばして誘惑してくるが気にせず思考に耽る。

 まずデミウルゴスのデータはTRPG版にはない。オリジナルデータも考えられるが、予想の出来ないそれよりは既存のデータが流用された悪魔であると考えた方がいい。

 まず予想されるのは四文字こと、唯一神YHVHと同一のデータであること。偽である場合はレベルが低い分、楽勝であるとして対策から外すが……龍の眼光による多数の【メギドラオン】および【雲耀の剣】連打は流石に耐え切れるものかどうか怪しい。全力で【ランダマイザ】【ラスタキャンディ】を仕込んで無理矢理ダメージを抑えても耐え切れるかどうか。かといって即行で落としにかかるには火力が足りないし、ほぼパラメータカンストの四文字の回避率は回避不可スキル抜きでは当てられたものではない。この場合は必然、【メギドラオン】が切れるまでの持久戦になるだろう。最も勝ち目の薄い相手だが、一度悪魔を展開さえ出来ればナンディの【リカームドラ3】連打や鬼女ダツエバの【鬼女の献身】による万能無効などで凌ぐ余地はある。戦闘がどのような状況で開始されるかが不明だが、なんとか出来る可能性は高い。

 次に可能性が高いのは、堕天した神であるとして、魔王ルシファーや神霊サタン、ひょっとすると大天使メタトロンである可能性も否めなくはないが、このへんは四文字に比べれば万能相性一択で無い分の行動に隙が多く、レベルも低いため打点も低いためまだ楽に戦える相手だ。ダツエバによる万能メタは効かないが、そこまで必要な相手とも思わない。

 最後に魔王アーリマン。打点もレベルも前述のボスたちに比べれば見劣りするが、雲耀の剣とは違い対象全体の格闘攻撃スキル【末世破】と持ち前の【会心】により、唐突な手痛いクリティカルを負う可能性がそこそこあるため油断はならない。あと指定した行動の種類を取った奴を即死させるスキルも結構危険であるが……強いか弱いかでいえばやっぱり弱いので、特に対策はいらないけど。

 こうして見ると、悪魔を展開出来るまでの数ターンをいかに凌げるかが問題となりそうだ。しかし勝ち目が決してないわけでもない。特にMPが削れるまで耐え切るか、【鬼女の献身】でメタってるうちに殴り切るかのどちらかとなるか。MAGの在庫は、幾分か使ってしまったが悪魔召喚やMPコスト肩代わりに使う分には十分に残っていることもあり、戦う前に負け確定ということはないだろう。だが、今のやや雑な合体を行った仲魔の構成では防御点を抜くことは出来ない、か……。仕方ない、ミレニアム以来だが再びあれを使う時が来たか。

 とりあえず鬼女ダツエバを束で購入、手持ちは計30枚に。そしてシュバルツバースの高いGPを活かして精霊2身合体により妖魔クルースニクを作成、同種合体で精霊エアロスを御霊のパーツにして【至高の魔弾】(とついでにガネーシャからもたせた【食いしばり】)を各種悪魔に持たせて削る準備は万全。

 んでもって問題のグルース地下4階へやってくる。案内はここまでだと、健闘を祈ると言い残して彼女は扉を離れる。この扉の中にデミウルゴスが封印されているということで、事前に仲魔を召喚して万全の体制を整えた状態で戦いに挑む。さて、何が出るかな……。

 

 

 

>5日目(木)02:??

 デミウルゴスのデータは、真四文字だった。予想していた中で最も強力であり、あのクソ女神を除けば俺が戦った中でも最強の悪魔であり、そして名実ともに真女神転生200X既成の悪魔データの中では最高のレベルを誇る「ラスボス」である。

 ご挨拶とばかりに放たれた【メギドラオン】3分割を早速ダツエバが【鬼女の献身】でカバーする。生じた隙に造魔が【フォッグブレス】で回避を下げ、霊鳥ジャターユ、邪神ツァトゥグァ、そして本体の俺が【至高の魔弾】を飛ばす。ある程度スキルを放って減ったHPはツァトゥグァの【メディアラハン】で早々に全快させる。

 こんなことを許すほど敵も馬鹿ではない。万能が防がれる状況ではあえてスキルを使わない攻撃を行うしかないが、それでも物理無効を持つ造魔や俺は削ることが出来ないと諦め、虎視眈々と隙が生じるのを待ち受けていた。鬼女のカード30枚が切れるまでの約60ターン以内に削りきれるかどうかは運だが……まあ、流石に60ターンもかけて毎ターンフォッグブレスかけて回避を下げつつ2~3回の防御点無視を放つ心積もりでいれば、いかに回避率50%だろうがHP6000超えだろうが死ぬものだ。やったぜ。

 ……四文字ってこんな簡単に倒せる相手だったっけ……?

 

 ところで【宝探し】しようとしたら真四文字はラスボスだからかドロップアイテムが設定されておらず、拾得物はなかった。こんだけ苦労しても生玉すらないとか、訴訟。代わりに特に意味はないけどカードハントをした。真四文字Lv108の悪魔カードゲットだぜ(使えない)。

 60レベルになった。これでもまだミレニアム死亡時のレベルより低いんですってよ。

 

 扉から無事な姿を見せたらリリスにドン引かれた。偽とはいえ神を倒すのがそんなに凄いのかと疑問に思ったが、そういえばHP消費はコストだけで実質無傷だったことを思い出す。そりゃ引きますわ。

 

 

 

>5日目(木)03:??

 戻ってメムアレフかーちゃんにご報告。リリスから伝わったのか反論も疑いもなく粛々と話の段取りが進む。あとは未だシュバルツバース内にいるレッドスプライト号の処理とか、ついでにポラリスの使徒でもある大天使マンセマットの扱いとかの話だが、デミウルゴスを無傷で倒すという彼女に予想以上の成果を見せてしまったせいか最早他の条件などどうでもいいような反応だったため、これが実力主義や力の世界では目立たない、知の力だ!なんて言い放つと薄ら笑いのかーちゃんが真顔になった。シュール。

 とにかく約束は取り付けたので、ホロロジウムを出る。レッドスプライト号は現在フォルナクス(F)を攻略中、やがてティアマットの元に到達しそうということで、出来るなら彼らも説得してポラリスへの共闘の方針に転換してほしいとの要請をメムアレフから受ける。どのみち憂う者の用で確認をせねばならないので、それも考えておきます。

 案内役、および今後のメムアレフとの連絡役として例のリリスをつけられた。その見た目は俺に効く、やめてくれ。流石に狼狽してしまい、思わぬ弱点を見つけたと積極的にアプローチするリリスをあしらいながらフォルナクスへ。

 

 

 

>5日目(木)04:??

 フォルナクスはなんとも特徴を挙げづらい、一面金色でメタリックな通路が張り巡るセクターである。

 そこに停泊中だったレッドスプライト号を発見し、調査隊の方々に銃をつきつけられるお出迎えを受けながら彼らと話をする。

 こちらの素性―――といってもこちらの表向きの身分はジプスという日本国の対悪魔組織に所属中の元民間人の悪魔使いである、としか言えないのだが―――を伝え、地球上がシュバルツバースとは異なる悪魔の侵略による被害を受けておりその解決のために別の悪魔の協力を得ようと、シュバルツバースへ交渉に取り付けにきたところだと話す。外人構成部隊なだけに受け答えは英語なため、日本人の隊員を通じて彼らメンバーに通訳される。

 シュバルツバースに存在する悪魔と協力を取る行為を批難するものもいたが、調査隊のリーダー代理らしき通訳に当たっていたのとは別の男性日本人が主導を取り、訪問の理由を尋ねる。ようやく本題に入れるということで、彼らにこのシュバルツバースの中心であるメムアレフと協力関係を結び、亜空間の拡大を止めさせたことを話して、シュバルツバースで行動する理由は無い、今すぐ地上に戻って別悪魔の侵略への抵抗に参加すべきだと忠告した。

 ……つい南極の事情や、探査隊の目的を知っている前提で話してしまったため本当に民間人か?と再びこちらのことを疑われてしまったが、案内役として付けられたリリスを紹介すると、少なくともシュバルツバース内に詳しい悪魔と友好関係を結んで付き合っている人間とは納得されたようだ。

 船には上げてもらえないが、出来れば情報を聞きたいと引き続き会話を要求される。時間制限はあるが構わない、ただし引き換えにこちらの用も済ませたいと、この調査隊の現リーダーに……正しくは実力的な意味でトップの者、恐らく日本出身者に聞かねばならないことがあると伝える。用を託された憂う者から第二の輝く者は『日本人』であると聞いていたので、人違いを抑えるために伝えても問題はない。

 少し船内への伝達に時間を取られたが、聞き取りの場に同席するということで、デモニカスーツを着込んだ隊員が降船してきた。【アナライズ】で調べた感じ、40近い飛び抜けたレベル的にも彼がSJの原作主人公で間違いはないだろう。

 

 俺の用件はひとまず後に回し、シュバルツバース内の説明を続けるが彼らはそもそもシュバルツバース内を治める悪魔たちが何なのか、ただの思考し、知恵を持ち、喋るモンスターでしかないという傲慢な認識を改めるために、悪魔の成り立ちから説明する。メガテン世界にほぼ共通する悪魔の性質として、多くの悪魔は宗教や物語、時には空想や概念などに、人間の信仰や恐怖、尊敬畏敬などを通じてその概念を核とした悪魔にマグネタイトが流れ込むことで、実世界や異界・亜空間内にその悪魔が発生するものだ。真・女神転生2で四文字が「神は信仰がある限り滅びない」と述べた通り、人間の記憶や記録に残る限り、神や悪魔は本質的には不滅ということを教える。

 その上で、シュバルツバース内のセクターを治める悪魔たち、例えばここフォルナクスのティアマットはメソポタミア神話の海の女神であり、他のセクターを治める悪魔たち、特にエリダヌス以降に出るボス悪魔たちは神話で語られる母だとか、原始や概念の神々である。ラスボスであり首魁であるメムアレフも同様に母の概念から生まれた悪魔だ。そんな彼らがシュバルツバースを作成し、地上を侵食しようとする目的は地上に飽和した人類が環境の破壊と汚染を続ける人類への制裁にあることを伝えた。故に彼女らは言うなれば地球の自浄作用として生まれた悪魔たちで、人類にははた迷惑な存在かもしれないが警戒を呼びかけるために現れた彼女らを倒してシュバルツバースを解決しても、生き延びた人類は引き続き地球を破壊し、遠い未来に自滅の道を辿ることになるだろう。

 地球の代表でもある貴方たちはシュバルツバースを解決し、人類を救える選択肢を持つが、同時に未来の人類を自滅の道へ招く選択肢をも選びかねない。悪魔のことは恐ろしいだろうが、俺としては自浄作用である悪魔たちとうまく付き合い、恐ろしくも親しい隣人として過度な地球破壊を防ぐことを考えてほしいと話した。

 

 俺がシュバルツバースについて知っていることはだいたい話し終えたが、余分な話も混じえたしまったせいで、調査隊を戸惑わせることになり原作主人公に彼のスタンスを聞ける状況ではなさそうだ。調査隊の皆には今の話を共有し、考える時間を取ってもらうとして、あとメムアレフや今後待ち受ける悪魔データの幾つかくらいは知っていることを伝えると、こちらが落ち着いて再度話を聞ける状態になるまで休みを取ってほしいと船内にリリスともども通される。

 念願のレッドスプライト号に乗車したぞ。

 

 

 

>5日目(木)05:??

 船内に上がり、シュバルツバースの(フォルナクスは安全ではあるけど)極地防御のために着けていたごっつい装甲服を脱ぐと、同行・船内を案内していた調査隊の面々から驚きの声が上がる。young、若いことに驚かれたのだろうか。異能者は一般人と違い、短期間で悪魔退治などにより経験を積めば簡単に強くなれるので、才能が最も強さに関わるので、若くして強いことはさほど珍しいことでもないのだけど。……そういえば、原作のデモニカスーツはレベルアップ機能を備えているので異能の有無は関係なく、本体の強さを見て調査隊が選ばれたんだったか。先ほどはシュバルツバースということでそのへんは伝えなかったけど、次は従来から存在する悪魔と異能の話もした方がいいのだろうか。

 ところで船内を俺と共に移動中の夜魔リリスに、果敢にもに告白し、二言であっけなく振られた調査隊員がいた。もしかして、あれが何度も女悪魔に告白しては恋破れることで有名なアンソニー隊員か……?

 

 俺たちは管制室に案内され、調査隊の作戦班所属の面々と挨拶を交えながら、レッドスプライト号のシステム処理や作戦プラン・ミッション発令を管理する疑似人格プログラム「アーサー」との対面を済ませる。そしてシュバルツバース内についてまだ話せることがあれば、隊員の代わりにこのアーサーが担当すると伝えられた。混乱している調査隊が落ち着くまでは常に冷静なAIが話を引き継ぐということなのだろう。

 初めまして、と丁寧な挨拶から始まり、早速異能者と悪魔についての質問が始まった。俺は知っている限りのことを(憶測、予想が混じる内容はそれも伝えなから)音声を通じてアーサーに入力した。悪魔という存在について質疑応答を繰り返して、どんどんと詳しくなっていくアーサーに調子を良くした俺は、異世界渡航の経験があることもバラし、他の女神転生世界で起きた出来事を俺が知った・聞いた話という形にして伝えていく。その上で再度、アーサーに俺の理想である「悪魔と人間が共存する世界」の形を伝え、おかしな点があるかないかを「彼」に逆に聞いてみた。

 アーサーはその理想に「筋道は通りますが、それで多くの人間が救える可能性は低い。むしろ場合によっては争いを助長する可能性もあるため、貴方のいうLightな考えには完全に必ずしも一致しない」と評した。

 むう、やはり数日で思い描いた形にしては穴があるか……と再び悩みかけた俺にアーサーはスピーカーから音声を響かせて、こう伝える。

「しかし悪魔が不滅である以上、悪魔を一時的に倒しても将来リバウンドする可能性が何度もあるというのであれば、最初から悪魔の知識を人類に公開するというのは理に叶っています。英雄的ではありませんが、小を捨てて大を救う決断は後年になって初めて賞賛されるので、必ずしも間違っている行いではありません」

 情を排した擬似人格プログラムという第三者の視点から己が理想を認められたことで自信を取り戻した。ななみちゃんの馬鹿が移ったわけではないが、人を助けることに利益とか打算とか、深く考えすぎる必要はないよね!

 

 お礼というわけではないが、アーサーに俺の知るメムアレフやティアマットのデータを伝えて、今後万が一敵対関係になった場合に備えてボス対策を伝えておく。隣でリリスが怖い顔をしているが彼女たちが人類と二度と敵対しなければいいだけなのだ、それにどれだけ対策をしたところで強い悪魔はそれだけで強いのだから関係ないものもある。

 

 

 

>5日目(木)06:??

 少し仮眠を取らせてもらい、ようやく調査隊の面々が落ち着いた頃に話を再開する。とはいっても伝えられる事項はおおよそアーサーに伝えてあるので、話せることはそう多くない。せいぜい、外の世界で何が起こっているのかについてだろうか。

 現在、外の世界はメムアレフとは別のポラリスという宇宙悪魔に侵略を受けており、シュバルツバース前から世界の裏に隠れていた異能者たちが主要都市に張った結界外の大部分はもはやブラックホールのように謎空間へと削られる“無の侵食”を受けてしまい、残った都市もセプテントリオンというポラリスの手先が結界基部を破壊しようと侵略を続けていることを話す。セプテントリオンは今のところ先日まで無事撃退出来ているが、差し向けられるセプテントリオンはだんだんと強化されており、やがて人類の力では撃退しきれないレベルに至るだろう予測を話す。

 俺がメムアレフと協力関係を結んだ理由には、そんなセプテントリオン撃退のために助力を得たい事情があったからだと話す。ただし人類側に全く用意がないわけでもなく、日本を秘密裏に守護する国家組織ジプスの長、峰津院家は様々な悪魔の秘密兵器を所蔵しており撃退する秘策も有するはずだが、そのジプスが力無い民間人を切り捨てる方針なので彼らを当てにすると間違いなく大勢の人々が死ぬ。それを避けるためにもジプスとは別の民間人を守れる勢力が必要、だから少なくとも外の事態が解決するまでメムアレフを倒さないでほしい……とまで話し、ようやく俺の理由と目的を調査隊員たちに伝えられた。

 ただしシュバルツバース調査隊たちはあくまで国際組織、日本だけの部隊ではないので日本のことを危惧する必要はないとも言える。ヨーロッパやアメリカ、海外がどうなっているかも俺は分からないので、彼らの心に危機感を訴えるほどの情報は有しておらず、彼らの心が人々の救出を優先に考えるのか、それとも部隊の目的であるシュバルツバース調査および打開を優先するのかは俺には予想出来ない。

 

 とりあえずメムアレフや幾らかのボス悪魔たちを倒さずにさえいてくれれば俺としては協力関係を維持できるということで、その他の調査とか採取・収集活動は彼らと敵対しなければ何ら問題ないと伝え、この前倒したスカディのレアフォルマ「御先の勾玉」を渡して、シュバルツバースを立ち去ろうと考える。

 だがその前、最後にSJの原作主人公に彼の思想を確認する。これは最終的な決断と同じでなくてもいい、今の貴方がどの理想に傾いているのかを教えてくれと、「原始の悪魔と人が争いを繰り広げる輝く生命の世界」ことメムアレフの理想、「神や絶対的な秩・法律の意思の下に人々が生きる世界」こと天使やポラリス(三賢人)の理想、もしくは「調査隊の任務を遂行する」ことを絶対に考えているのか……ここに、あるいは俺の理想に共感を抱いてくれやしないか?と僅かな期待も込めて尋ねてみた。

 回答は調査隊として任務は最後まで遂行すべきだ、というニュートラル寄りの意思だった。やはり俺ごときの意思では、原作主人公の意思を動かせなかったかとやや失意に沈みながらレッドスプライト号をリリスと共に後にした。

 ふと、船を去る時に強い視線を感じたので振り向くと、赤い鬼のような悪魔の面を顔に半分だけ被った悪魔人がこちらを覗き見ていた。あれは……SJのカオスヒーローこと、機動班隊員のヒメネスか。俺の理想と、メムアレフや彼の理想は似て異なるためにいずれは敵対することもあるかもしれない。

 ただ、俺がシュバルツバースを訪れることは二度はないだろう故、戦いは原作主人公に預けた。信念は否定しない、せいぜい頑張るといいさ。

 

 

 

>5日目(木)07:30

 シュバルツバース内外の転移を俺だけ妨害対象から外してもらい、自前の【トラポート】にてリリスともどもジプス東京支局に帰還する。緊張に包まれていた亜空間から脱出して、一晩中起きていたことによる眠気が酷い。

 ええと、確か10時頃にロナウドたちの援護をしなければならないはずだ。そ、それまでにちょっと仮眠を……

 

 え、異常現象発生の調査?ああアリオトビットの毒素のやつね、ちょっとこのタイミングで呼び出すのは勘弁……

 

 

 

 




最初はサタンの予定でしたが、デミウルゴスはメガテンNINEで四文字になってたのを思い出したので四文字化

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