真かみさま転生200X(未完)   作:tbc

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驚愕の木曜日3

 

>5日目(木)17:30

 せいぞんーせんりゃくー。

 明日、東京に出現する6番目のセプテントリオン『ミザール』は、物理特化の脳筋だが恐らく際限なく無限に増殖することが可能である。ゲームでは、本体のミザール大サイズに一定量のダメージを与えるたびにミザール小サイズを生成し、小サイズは時間をかけると中サイズへ成長する。ミザール中サイズはやられた時にミザール小サイズへ分裂する性質を持ち、当然その小サイズはやがて中サイズに成長するため放置することは出来ない。とまあ本体性能よりも数で押してくる厄介な奴だが、大サイズにダメージを与えつつ生成された小サイズを各個撃破していくのが正当な撃破手段である。

 TRPG的には恐らく、ミザール本体はTRPG独自の展開スキルという――ボス補正による展開スキルを使うたびHPが最大に生き返る、いわゆる「残機性」型のボスだと予想出来る。サプリメントの追加データやクラスによって一発火力に特化した環境を抑制する他、1キル防止やボスの段階的な本気を演出するシステムだが、通常のスキルで得られる効果とは一線を画する効果を持つ展開スキルは少なくない。以後戦闘終了時まで攻撃相性を万能相性に変えられる【万能攻撃】から始まり、弱点相性を失う【弱点克服】、防御力が激減するが全てのクリティカル率が上昇する【激怒モード】に、激怒モードを解除しつつ強化・低下系を解除する【冷静モード】他、有利な効果を得る展開スキルと不利な効果を得る展開スキルがそれぞれ10種ずつある。尤も特記がなければどの展開スキルも次の展開スキルを使用した時に失われるため、ななみちゃんのように一撃ではなく数回に分けて高火力を叩き出すタイプには有利な展開スキルをスキップされる等、結局相性が悪いのだが。

 ただ、今までのセプテントリオンを見る限り、メラクのビット射出やフェクダの分裂は種族スキルとして扱われていた。ならばミザールの増殖も展開スキルとは別に起動すると考えられる。例えばダメージを受けるたびに中サイズを生成するとか……だったら、洒落にならん増殖速度だな。特にサマナーばかりで火力特化の人間が見当たらないTRPG仕様のデビサバ2世界では、ちまちまサマナーとその仲魔が本体にダメージを与えるたびに中サイズが生成されて、ひょっとしなくても彼らでは火力不足なんじゃないか? うむ、ヤマトが切り札の龍脈の龍を用いる理由も納得する。

 というわけで放っておいてもヤマトがなんとかするけど、それで結界の崩壊が更に早まるのを見過ごすのはちょっとどうかと思うの。デビサバ世界では貴重なイオっぱいの神族覚醒を潰すことになるが、ルーグパワーって龍脈現出と敵対した時にしか発揮されないし。

 ということをななみちゃんに相談。俺たちで先にミザールぶっ倒そうぜ!という結論に至る。

 

 

 

>5日目(木)18:00

 ロナウドを含め、市民サマナーたちから特に30レベルを超える幾人を見繕って明日現れる“侵略者”(セプテントリオン)を我々で打倒し、ジプスの対抗馬として正式に広く名乗りを上げることを伝え、ミザール対策の手持ちを配布する。何人かは名古屋に現れた『フェクダ』や『メグレズ』の話を聞いていたようで、納得してくれたため話が早く済んだ。

 これまでに現れた奴らの傾向から明日現れるものは物理か衝撃を得意とするセプテントリオンだろうとの予測を伝え(ドゥベが火炎、メラクが氷結……という風にセプテントリオンの得意とする相性は全て異なる。実際、明日現れるミザールはこれまでに出現していない物理特化のセプテントリオンである)、そのどちらにも耐性を持ち、更に強力な火炎相性の格闘攻撃スキル【火炎斬】を継承させた聖獣バステトLv28の仲魔を10体ほど配布する。本来30レベルのサマナーには手が届かない天津神ヒノカグツチLv44が所有するスキルだが、レベル制限の高い俺が手間暇かけて作成し、彼らにも使えるレベルの悪魔まで継承させれば問題なく使役出来るのだ。素で所有する【耐衝撃】に加え、合体経路の副産物【耐物理】を継承したバステトはミザールの群れを相手取ってもなんら致命傷を負うことなく、【火炎斬】で文字通り激戦を切り抜けるであろう。

 作成に際して9000MAG(現金に換算すると900万円くらい)ぶっ飛んだが、デミウルゴスだとかメタトロンとか倒した直後で所持金が溢れかえる俺たちには2割り程度の些細な消費だ。上を目指すなら幾ら金があっても御霊作成で消費するけど、目先のところそこまで強化が必要な敵が現れることはないだろう。ヤマト含め。

 

 明日の説明を終えた後、暫く放っておいたななみちゃんの成長を見直すことに。主に超人覚醒とか魔晶剣の強化とか。

 色気を出すなら探偵とかクイーンとか、一見格闘を得意としないような格闘系クラスは色々あるけど、やっぱり剣士に敵うクラスはそうそうないね。というわけでななみちゃんが剣士に覚醒する。ただしクラススタイルは【切り落とし】が手に入る格闘(武器)スタイルではなく、格闘(打撃)スタイル。一撃必殺よりも、高火力の連打を得意とするななみちゃんには、ターン中の攻撃全ての回避を難しくする【縮地】の方が似合っているからだ。

 というわけで習得スキルを幾つか組み替えながら成長作業を完了する。魔晶剣は龍神ペクヨンLv53に。普通に使役すると【武器強化(牙)】された【生得武器(牙)】からの【マグマ・アクシス】を放つ強力な悪魔なのだが、ステータスだけしか見ない魔晶剣では所有スキルは殆ど関係ないのが残念である。

 あと札幌で龍を狩った時に手に入れた具足、カムライターオをななみちゃんに着せたりしながら彼女の成長結果を見直すと、1発当たりの最大打点が900を超えたことが判明。クリティカルや【気合い】を乗せれば1発で3600ダメージである、四文字のHPが軽く半分消し飛ぶ。ひえー。

 命運コストの問題点とか、まだ伸びる余地があるのが恐ろしいところ。レベル60へ達する頃には打点1000点を超えるだろう。そこまでレベルが上がるよりも先に、全ての敵を倒しきってしまうんじゃないかとは思うけど。

 

 ふとレベルが上がっても仲間がそのままだったことを思い出し、ひとまず造魔を強化してレベルを60まで引き上げておく。あと大天使カマエルから【雲耀の剣】を継承させ、万能ゲーの準備も万端に。サマナー戦を見据えるならばガードキルか貫通を揃えたいが、今そこまでする必要はないかねぇ……。

 

 

 

>5日目(木)18:30

 ベリアルからの通達、異界外周にジプスの侵入を確認したとのこと。地の利を味方につけた異界で凌いでいるが敵がしぶとく、また強いサマナーが数名いて突破されそうだという。こちらはベリアルを倒されたら負けだ、試運転も含めバステトを渡した市民サマナー数人、連絡係に数名の悪魔を引き連れて迎撃に向かう。ななみちゃんとリリスはベリアルの護衛に置いていく。決戦兵器なものの、継戦がやや苦手なななみちゃんを連れてってもすぐバテるんだから、我慢してこの場は引っ込んでなさい。

 

 防衛力を重視し、悪魔の禍々しさを取り繕うともしていない異界内では、主であるベリアルの意志に従い通路を変形させられる。突如壁から現れることでうまく不意を突き、ジプス局員らを撃退していくが、任せろとばかりに出てきた後続の第二波がなんとモジャ公らだった。ジプス側として、名古屋を奪取しに来たらしいが……そういえば具体的にどうジプスへ対抗するのか、彼らに喋っていなかったことを思い出す。電話で告げたのも、ジプスと対立を決めたことだけで悪魔のことなんて一言も言わなかったからね、そりゃ仕方ない。

 未だジプスと悪魔たちが争い合う戦場ではあるが、丁度いいと彼らに俺の考えるポラリス撃退後の世界、悪魔と手を組んで地球を再生する「協調主義」を彼らに伝える。例えポラリスを全て撃退しても、世界の崩壊や無の侵食は治らない。傷跡が残り、活動範囲が狭まった人間社会を人の手で完全に復興することは叶わないが、ならば人の手ではなく悪魔の手を借りればいい。そうして手を結んだのが異界を張ることが出来るほどの強い悪魔、魔王ベリアルや夜魔リリスである、と(この場にいないメムアレフの名は、まだ伏せる)。

 彼ら悪魔の力を使えば、ジプスの持つタワーの機能を使わずとも侵食から都市を守る結界――「異界」を張ってポラリスを防ぐことが出来るし、徐々に異界を広げることで逆に侵食された部分を「上書き」して埋めることが出来る利点を説いて、彼らを引き込んでみる。

 が、ダメ。ダイチ少年が悪魔の手を借りるなんてとやんわりとした否定をし、イオっぱいら他が争うのはどうだと思うと。攻めてきたのはそっちやんけ。

 話をしてる最中にジプスの攻勢が激化しつつあり、奥へ突破したジプス局員も度々見受けられるため冗長に話す時間の猶予は無いと、彼らにこの場で立場を決めてもらう。ジプスに与して悪魔を倒すか、与せず見届けるだけなのかを、この場のリーダーであるモジャ公に問う。戦うか、戦わないか。

 

 

 

>5日目(木)19:00

 勝った!第三部完!

 

 そんなことはありません、ええ。負けてないのは事実だが、別に下ってもらう約束とかしたわけでも主義のぶつかり合いをしたわけでもなければ、倒したわけでもない。単にまともな万能相性攻撃手段もガードキルも貫通も有していなかったモジャ公らパーティが全門耐性で詰んだため、向こうが先に撤退しただけである。勝ったとは言えぬ。

 あとイオっぱい、さり気なく【弱点看破】チェック入れるのやめなさいこら。

 素で全門耐性のヘカーテなら、自動効果の相性変化スキルを剥がれても影響は少ないが、迂闊に変身悪魔の強化を行えなくなったなぁ。それにこちらの最大の防御、全門耐性を知られてしまった以上、次回は対策を練ってくることも予想される。そろそろレベル差のアドバンテージもなくなってきて、またレベル的にもクルースニクに届きそうだし万能貫通ガードキルゲーが加速するなぁ……それこそ対策あるけどね。

 

 この話はおいといて、モジャ公らを退けた後、奥へ到達したジプス局員らの対処に戻……ったが既にななみちゃんが片っ端から切り払った後だったため、死に体の戦闘員たちを悪魔たちに運ばせ、まとめて【トラポート】で東京にすっ飛ばした。

 今もまだ気を張りしめて余裕のない市民サマナーたちに、パンパンと手を払って戦いの終わりを知らせ本日の解散を告げる。ジプスの中堅戦力が集まっていたし、今回の戦闘で手痛い被害を受けた後に二度の夜襲はないだろう。あったとしても小規模な、巡回する悪魔たちで凌ぎきれる程度だろう。それくらいであれば連絡を飛ばす余裕は十分にある。まあ、念を入れて俺も支局内で休みますがね。異界でおどろおどろしく、快適とは言いがたい寝心地なのは我慢する。

 そういえば、全てを見届けたわけではないがバステトの運用は中々良い活躍をしたように見受けられた。対火炎耐性持ちには通じてないが、火炎耐性と剣耐性を併せ持つ悪魔は滅多にいないことから【火炎斬】が効かなければスキルを使わない物理で殴り倒す、といった運用で無力化される心配も無いことは良いことだ。バステトは弱点の多い悪魔だけど、元より絡め手への防御を意識した悪魔ではないし、そっちはそっちで別に支援用の悪魔を配布すればいいだろう。【耐物理】持ち紫鏡とか定番。……でもミザール相手に出すと反射して分裂を促進しかねないから迂闊に渡せないわな。

 

 

 

>5日目(木)19:30

 俺氏、NAISEIを始める。

 

 ジプスを漁って市民の飯を確保したが、それら物資だけで凌ぐには数日しか保たないということで急遽、メムアレフのとこから食料生産できる悪魔を連れてこようと提案。リリスさんを通じて派遣を依頼する。ほら、蝿王様ことベルゼブブとかいいんじゃないかな?貶められてないバールの方だと豊穣神でぴったしだと思うんですが、どうでしょう、なんて。

 

 

 

>5日目(木)20:00

 やってきましたホロロジウムinシュバルツバース。メムアレフに面会……って見覚えのあるバケツスーツの姿がちらほらと。まさかもう最終セクターに到着したのかレッドスプライト号!?早い!

 直通エレベーターが既に破壊されていたこともあって、やや遠回り気味に最深部へ。メムアレフと面会し、挨拶がてら近況を尋ねる。エレベーターが破壊されているということは、既にルート選択が起こった後のはずだけど……。

 

 ……ううむ、やはりシュバルツバース隊は任務を果たすことを選択したようだ。このシュバルツバース内で豊穣神といえば地母神、地母神といえばメムアレフたち母なる神に連なる主要神格ばかりということで大事な戦力を派遣する余裕はないと、断られる。あるいはレッドスプライト号を撃退することを条件として要求される。当然か。

 同じ人間を救いたいと考える同士と敵対するのは望ましいことではないな……それに現状シュバルツバース内で唯一の敵対勢力であるメムアレフ側を助長させるのは、かえって危険である。少し考えさせてほしいと彼女に伝え、レッドスプライト号側へ面談を取ろうと考え、その場を辞した。

 しかし、ロウルートを事前に潰し、レッドスプライト号がメムアレフに協力してない以上はニュートラルルートか。となると元ゴア隊長ことユーバーゲシュタルトも向こうについたか、あるいは何らかの援助をしてることだろう。一度敵となるかどうかの確認も含めて連絡を取っておいた方がいいな。

 

 ホロロジウム上層に戻り、レッドスプライト号へ足を向ける途中、女声のバケツスーツを着た調査隊員に呼び止められる。単身で母艦へ向かうこちらの姿を警戒して呼び止めたのかと思えば、なんだか普通の隊員とは様子が異なる。隊員の中でもカオス寄りか、あるいはロウ寄りの非協力的な隊員かとも思ったが、異能や悪魔に詳しい風な様子を見せつつ、俺に近況を尋ねてきた。そちらの人類救済の進捗はどうだね?なんてまるで他人事のような……。

 とそこまで言われてピンと来た。微妙にスーツの合間から見える金髪、でシュバルツバース内の怪しげな女といえば女神転生シリーズを知ってて、原作をプレイ済みなら正体を察せる。人間側らしくない発言もヒントのつもりですかね、ねえルイ・サイファー閣下。

 

 

 

>5日目(木)20:30

 正体を言い当てられたルイ・サイファー閣下こと、魔王ルシファーはバケツメットごとスーツを脱いで(抜ぎ捨てたスーツはどこへともなく消えた)、ニヤリと頬を歪めて策略に頭を悩ませる君に良い助言を与えよう、と前置きしてシュバルツバース上層にある4つのあるアイテムのことを語った。

 そのアイテムは、宇宙卵。放射能とか核弾頭じみた超エネルギーを秘めた触媒であるが、レッドスプライト号の隊員はそれを利用してシュバルツバースを消し去ろうと考えている。それを先回りして君が持っていってしまえば、彼らがシュバルツバースをどうこうすることは出来なくなるし、もう一つ君が懸念している事項も解決……はしないが残り3、4日の時間は稼げるだろう、と、閣下は原作ストーリーの〆を担うアイテムのことを告げた。

 ちゃっかり人の内心を察しやがって、というのはおいといて……何故それを伝えたのかと聞き返しかけたが、ふと「メムアレフ側が宇宙卵を何に使うのかを知らされてない」ことは、「知らずにメムアレフ側を妨害してしまうのに都合が良い」ことに気づき、何も言わずに礼を言い、近くのターミナルに向かった。

 確かに良い助言だった……以前のぶん殴りたいと思った気持ちはまだ残ってるけど、今回はそれに免じて殴らないでおいてやる。

 

 

 

>5日目(木)21:00

 ターミナルにて、ユーバーゲシュタルト人を呼び出すが、いつもはメール等で連絡する彼が今回は違ってこの場に実体で現れた。タキシードでキリッとした筋肉質の黒人の姿は、レッドスプライト号の故・ゴア隊長のものだ。わけあってユーバーゲシュタルト人と化した彼は、てっきりアーサーのデーターベースと同期(同化)して宇宙卵の情報を渡したものかと思ったが、少し原作の展開と違ったようだ。

 ゴア隊長―――呼び安さもあるが、現在取っている姿のこともあってそう呼ぶ――に現在のレッドスプライト号のスタンスを尋ね、そして悪魔と手を組んでの人類生存を考えている俺に対する今後の態度を尋ねる。ゴア隊長は、やはり原作と同じくレッドスプライト号に与し、シュバルツバース消滅の任務を達成する術を教えたらしい。そして現在、シュバルツバース内に眠るあるアイテム(宇宙卵のことだ)の在り処へ向かって各機動隊が移動中とのこと。故に、メムアレフと手を組むためにシュバルツバースを残そうとする俺には協力を出来ないが、人類を活かそうと模索している者として尊敬する。だから絶縁は出来るならばしたくない、とゴア隊長は仰った。

 故にお互い、手を組めないだろうか。共に人類を生かす道を歩むためにと、彼は言う。手を組むのは吝かではないが……しかしシュバルツバースに囚われている彼らが、現在東京でポラリスやジプス相手に四苦八苦してる俺らへ協力する術がないのは、手を組む以前の問題ではないか?と俺は言う。ううむ、とゴア隊長は唸って考えこみ……ならばこれはどうだと、【フォルマサーチ】アプリとレッドスプライト号で開発・生産中の装備品の横流しを約束すると言った。

 戦力強化としては良い取引だが、肝心の状況解決にならんのがなぁ……シュバルツバース解決だけを考えている調査隊と違って、こっちは戦後を考えると悪魔たちの関係を崩したくはないこともあり、頷くことは出来ない。

 まあ、協力は呑めないがお互い縁を切ろうとは思ってないし、それにポラリスとジプスの対処に追われている今は余裕がないわけであって、もう二日もしてヤマトを潰せば、メムアレフ勢力の手を借りずとも動く余裕は出来てくる。それまでは時間稼ぎでお茶を濁すということでどうだ?とゴア隊長に告げる。

 苦い顔をしつつも、仕方ないといった顔でゴア隊長は頷いた。ただし時間稼ぎを出来るかは、お前の腕次第であるとも。ああまあ、宇宙卵を回収に向かった調査隊と衝突する可能性は考慮してますよってね。モジャ公とはまた別の、主人公との対立。それも今度はお互いそれなりに本気の戦闘になるが……果たして勝てるかどうか。

 

 

 

>5日目(木)21:30

 セクター「ボーティーズ(B)」なう。見た目には歓楽街のような奇妙な色をした“町並み”に、遠くにはかつて魔王ミトラスが支配していた宮殿が見える。ここで回収すべきは、不時着したまま眠るギガンティック号にあるはずの宇宙卵と……起爆のための核弾頭も積まれていたはずだが、それを回収したところで扱いに困るのでそっちは置いておく。

 とにかく、宇宙卵を回収するのだ。あちらを回収すればシュバルツバースを爆破する火力が足りなくなるはずだと、原作の脳内マップを頼りにギガンティック号のある地点へ歩を進める。

 

 そうしてやってきた不時着地点では、万人の悪魔を倒し今にも宇宙卵の捜索に入らんとしていたところだった。外面からでは伺えないが、原作主人公らしきひときわ強そうな気配を漂わせる隊員もいる。レベル50といったところだろうか、原作ゲームならともかくTRPG的には50レベルはかなり高い。レベル差のアドバンテージも薄い領域だから、あとは手持ち悪魔の鍛え具合とクラス構成のぶつかりあいといったところか。

「悪いが宇宙卵とやらを持って行かせるわけにはいかない、(まだ)シュバルツバースを破壊されると困るからな」と彼らに敵対を告げ、近くにいる弱そうな隊員を狙い、気を失う程度で済むよう(殺しの意図は無いことを伝えつつ)手加減しながら数を減らす。調査隊は気絶した奴を助けに入る隊員と、俺の迎撃体勢に入る隊員の二つに分れる。ここで無視して宇宙卵の捜索に入られ、ゾンビアタックで時間稼ぎに徹されるのが一番不味かったが……安心した。

 

 平均レベル40程度(しかし才能がないのか超人ではなくクラス2つの覚醒者止まりのようだ)の隊員たちは、大した痛手を与えてくる相手ではなく造魔が【雲耀の剣】でバッサバッサと薙ぎ払ってやれば簡単に勢いを削げた。問題はひときわ強い主人公だ。別に戦法があれだとか、悪魔の継承スキルが凝っているなんてことはないのだけど、よりにも寄って悪魔のメンツが魔人ラインナップ。しかも何かしらレベル上限を超える恩恵を得ているのかマザーハーロットLv69にデイビッドLv67にペイルライダーLv63にブラックライダーLv61と、自身のレベルを超えるボスではないかと思わせるえぐい悪魔がズラッと並んでいる。揃いも揃って【三分の活泉】なのはともかく、【メディアラハン】で全回復されたり【サマリカーム】で蘇生役を起こされたりと倒す片っ端から回復される泥仕合の様相を見せる。攻撃しても高レベル悪魔の超回避されるし、【フォッグブレス】を撃っても【デクンダ】でデバフを解除される等、負けはしないんだが勝ち筋が見えない。ただ向こうも強力な万能相性や貫通を有しているわけではなく削りきることが出来ない、傷つけてはメディアラハンで回復する互いに千日手だ。辛い。やってらんねえ!!

 

 敵の仲魔全員をほぼ倒しきっても蘇生連打により仲魔を全員生き返され【メディアラハン】で戦況リセット、を3回食らったあたりで完全に戦う気を無くす。もっと仲魔を揃えてくるべきだった、火力が足りてねえ。

 

 

 

>5日目(木)22:00

 突如現れたゴア隊長の調停により、痛み分けながら俺が引き下がることになった。悔しいが、時間稼ぎをされると困るのはこっちだとゴア隊長が知っていることもあり、また1プレイヤーとしても敵を突破できる戦力を用意しなかった俺に原因があるとも言える。レベル差やななみちゃんの火力に頼って、合体を怠ったツケが回ったのだ。

 

 メムアレフにはなんと伝えたものかと悩みながらボーティーズを戻る道中、天使の残党に襲われる。まあ、所詮プリンシパリティ程度の雑魚だったわけだけど……つい最近の癖でとどめを刺さずに戦闘不能にしたところで、あることを思い出す。

 そういえばロウ勢力の神威に、ピンポイントで食料を賄う効果のものがあったよな……。

 

 

 

>5日目(木)23:00

 グルースの天使たちの隠れ家を訪れ、門前払いを食らった後に一旦シュバルツバースを抜けて、ロナウドを連行して再侵入。天使たちへの交渉に立たせる。当初は俺への敵意を沸々と滾らせていた天使たちだが、頭を欠いて秩序の下に統一する意志が崩れたこともあってか、純粋なロナウドの心情に当てられて幾分か緩和させる様子があった。今日中に約束を交わすことはできなかったが、この様子だとぼちぼち何度か交渉に赴けば神威を融通してもらうチャンスが出来そうだな、と感じる。

 メムアレフへの弁解は……まあ明日でいいか。

 

 




TRPG版の仕様として、ペルソナ3~4のように速度順に動き、ターンが回ってきた時点でキャラクターが何を動くかを決定します。そんな中で召喚された仲魔はサマナーと同じタイミングで動くのですが、動く順番は問わないのでもしサマナー以外全ての仲魔が倒れていても、サマナーがアイテムで仲魔を蘇生し、蘇生された仲魔がリカームで蘇生、更に……を繰り返して最後に蘇生された仲魔がメディアラハンを撃ってHP全回復という行動が可能です。酷い話ですね。

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