真かみさま転生200X(未完)   作:tbc

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遅れました。


決別の金曜日1

>6日目(金)07:00

 朝一で使用回数が回復したスキルを使い、高レベル相応となると通常の手段では決して手に入らないレア防具を調達しようとすると、現れた妖精たちが恭しい態度で献上してきた。スキルという名分でかっぱいでるのはいつものことだが、今日はいつもに増して様子がおかしい。レベル差を感じ取ってビビってる的なサムシングだろうけど、手に入れた女性用防具をななみちゃんに横流そうとした時にこのことがバレてて、妖精たちをいじめるなと怒られた。

 

 

 

>6日目(金)07:30

 ミザールへの警戒、また討伐の準備を呼びかけ、東京へ諜報員を送り込む。一方で俺は昨日の件をメムアレフと話すためにリリスを連れてシュバルツバースへ舞い戻る。

 

 しかしセクター・ホロロジウムへやってきたが、上層は既にレッドスプライト号に制圧されており、メムアレフの居る最深部へ向かうまでに何度か調査隊員と交戦する羽目になった。一度矛を交えたこともあり、向こうはこちらへ攻撃をためらうことはない一方で、こちらはあまり積極的に人間を害したくない心象もあり普通に戦えば倒せる相手なのに随分苦労させられた。全門耐性を貫ける手札を持つ隊員は僅かなので負ける心配だけはまず無いのだけれども、HPが豊富な高レベル悪魔をたびたび相手にさせられるのはホント辛い。

 

 最深部に差し掛かる道中、中層の天空に足場が浮かぶエリアへ侵入したところで悪魔人・ヒメネス元調査隊隊員と遭遇する。以前よりレベルが上がり、メムアレフの神話形態に属する神族覚醒を済ませたのかますます人間離れした彼は、同じく人間離れした力量を持ちながらも実力を奮って我を通すことを好まない俺に対し、力の世界への誘惑をかけてきた。しかし今更その道を歩む気はないし、随分と苦労はさせられて不平不満を呟くことも多々あるけれど、何だかんだで俺の取り柄の戦闘以外で何かを為すことに充実感を抱いていることもある。というかその選択を選ぶなら、とっくにヤマトの実力主義に傾いているわいって話。

 するとヒメネスは俺をメムアレフの、カオス勢力の敵だと断定する言葉を発し、襲い掛かってきた。仲間にならない奴は敵だなんて、ちょっと血の気が多すぎんよー。思いもよらない突然の出来事に戦闘態勢が整っておらず不意打ちとばかりに手痛い万能相性の一撃を受ける。すぐ後ろにいたリリスは巻き添えを食らう前に避難しており、しかもヒメネスの戦いを止める様子はない。こりゃ戦いは止まらないなと一旦交渉を諦め、死なない程度にダメージを受け流しつつヘカーテへ変身、ダツエバを展開して【鬼女の献身】による万能相性無効のバリアを張る。ヒメネスは物理に切り替えるが耐性と防御力の上からでは大したダメージを与えきれず、デミウルゴスやリリスの時と同じ、いつもの封殺パターンにハマる。

 完全にパターンにハマり、仲魔の展開も完了して最早負ける要素が殆ど無くなったところでヒメネスに降伏を呼びかけるが、クリティカルによる防御点を貫く一撃のワンチャンを狙っているのか諦めずに何度も攻撃してくる彼に、俺は諦めて顔を振りアタッカーの造魔へ攻撃の指示を出す。【雲耀の剣】による攻撃はヒメネスの防御を貫くどころか、クリティカルしてオーバーキルに至った。

 戦いに敗れ、命を失ったヒメネスの遺体はずぶずぶと、まるで悪魔の体のようにMAG化して大半が溶けてシュバルツバースに消えていった。相手が早まったとはいえ、メムアレフ一派の「悪魔」に手を下した事実が出来てしまった。もう少し融通してほしかったが、これは交渉決裂するかもな……という悲観的な思いを胸に抱きながらシュバルツバース最深部へ向かう。

 リリスは戦いを挑んできたのは向こうだし、相手を下した俺にこそ正義があるとカオス理論を主張するが、悪魔となったヒメネス、すなわち悪魔たちの母であるならばヒメネスの母でもあるメムアレフが我が子を殺されたことにどう思うかは定かではない、と私感を述べられた。要するにメムアレフが戦闘を挑んできても戦いを止める気はないってことだ!幸いなことにリリス自体は、一度俺に敗れたこともあり二度と敵対する気は無いと誓ってくれたが……メムアレフだけでも他の悪魔とは格が違うんだよなぁ。しかもアタッカーのななみちゃん抜きで相手しなければならないのは正直厳しいが……仕方ない、この先のことを考えるとMAGの出費は痛いが仲魔を鍛え直すか。

 

 

 

>6日目(金)08:00

 現在68レベルになった俺は、装備による補正もあって69レベルまでの悪魔を使役出来る。このレベルにもなると流石に魔獣や妖精、地霊のような下位種族は頭打ちしており、魔神や破壊神に大天使、あるいは魔王や邪神、魔人のような上位種族しか存在しない。更にゲームと違って通常の2身・3身合体で作成出来る組み合わせがあるかも怪しいため、サラマンダーなどの上位精霊によるランクアップを駆使しなければ作成すら出来ないような環境である。尤もダーク種族の場合は例によってゾンビをくっつけるだけで容易に成長するし、魔神や破壊神はダーク悪魔の同種族合体で作成出来たりするが……継承スキルの問題もあり中々安上がりで済ますわけにもいかない。

 流石の俺も、60レベルを超えた環境の経験はそうそう無いため手探りで役に立ちそうな悪魔、安く素材を作れそうなルート、また継承できそうなスキルを模索しながら合体作業に時間を費やした。【魔人コンバータ】は手元にないため、現在使役・作成出来る中で最高レベルの悪魔は堕天使フラロウスLv69のみだが、生憎ながら素の堕天使はいまいちステータスが良くないため、レベルを落としてでも有用そうな悪魔を見繕う。種族スキルのこともあって鬼神(魔神)ビシャモンテンLv68、それから耐性が優秀な妖精ティターニアLv64と霊鳥ホルスLv63を終着点に見据えるが、手持ちの邪神ツァトゥグァや地母神ハリティーとはレベルも種族も、合体経路に組み込めそうにない。手間はかかるが仕方ないと、継承スキルから素材悪魔まで一から作成するルートを考案した。

 これまでの手持ち悪魔は後でななみちゃんに横流しするとして……魔王のダーク同族合体による魔神への変化を利用しつつ、途中ランクアップダウンを繰り返して何度も魔王ケートゥを作成することで【雲耀の剣】をランク3まで重ね、魔神ビシャモンテンに継承させる。更にランクダウンには珍獣マメダヌキを素材にした精霊フレイミーズを用いることで、【煌天の会心】を持たせた火力特化だ。万能が効かない相手(滅多にいないが)にも【火炎高揚】つき【マグマ・アクシス】や、【八相発破】があるので逆に【鬼女の献身】で万能を封殺されても安心設計。

 霊鳥ホルスは妖鬼プルシキ、地霊ゴグマゴグに天使ケルビムの3身合体から作成したもので、【衝撃貫通】を持つプルシキを前述のケートゥ同様にランクアップダウンを繰り返し、貫通をランク3まで引き上げており反射でも70%の確率で貫くことが出来る。【衝撃高揚】つきの【竜巻】、あるいは【羽ばたき】は武器を用いた格闘攻撃スキルの威力には劣るものの、それらの高威力スキルに比べれば低コストなため、気軽にマルチアクションによる数撃ちゃ当たる戦法を取れるのがメリットか。尤も、そちらは主砲ビシャモンテンが通じない場合のサブウェポンであり、主な役目は【ランダマイザ】バラマキや【サマリカーム】による蘇生要員であるが。

 妖精ティターニアは自慢の魔法全般耐性を活かした、落ちにくいヒーラーだ。夜魔リリスと妖魔ハヌマーンを合体させて作成されたティターニアは、【デクンダ】やら【メディアラハン】を毎ターン撃ち続けるポジションになる。MPはMAG代替消費やランク3【リカームドラ】で全回復出来るし、ナンディを5体全てを撃ち尽くすより先に戦闘は終わらせる程度の火力はある。

 あとは……本体の変身悪魔であるヘカーテに、ランク3の【ラスタキャンディ】を搭載した。そろそろレベルの低さから来るステータスの低さ(特に防御点)が目立つが、ヘカーテの他に全ての相性に耐性を持つ悪魔がいるわけでもない。またイオっぱいに【弱点看破】(情報収集・解析した敵が持つ「相性を変化させる自動効果スキル」の利益を失わせる効果がある。しかも看破した当人との戦闘中だけでなくその他の戦闘でも半永続)をされかけたことから、御霊や継承スキルで相性を補うのもこの先の戦いでは信用ならない。とりあえず、無いよりマシと御霊の【能力上昇(速)】スキルで速能力値(=回避率)を幾分か上げたが、どれほど有効だろうか。

 

 しかしなんにせよ、この後はメムアレフとの会談だ。結局シュバルツバース調査隊は退けられなかったし、ヒメネスまで倒してしまった以上、向こうがどう出るかは分からない。

 

 

 

>6日目(金)08:30

 思っていた以上に、メムアレフは激怒していた。

 既にレッドスプライト号がセクター・ホロロジウムまで到達してる以上は奴らが我が元へやってくるのももうすぐだと、どっちつかずの俺へ手を貸すわけにはいかないと通告を食らう。悪魔に与するか、それとも敵になるかの2択をつきつけられるが、その2択で前者を選ぶわけ無いじゃないですかやだー!

 上手く会話を運んでなあなあ路線を納めようとしたが、腹心のつもりか邪神スルト、魔王マーラが会話に割り込んで決断を迫ってくる。こいつらも強化されたボス仕様だし、デミウルゴスを倒した俺が敵対しても勝てるように本気でメンツを揃えてきたようだ。……この中に蝿王様がいないのは救いかな。

 だが高レベル悪魔を揃えられたところで、今更怯える俺ではない。勝てるかどうかは分からずとも、そう簡単に負ける気はしない。自信を持って先ほどの通告にきっぱりNO!と答えれば、では絶縁だとメムアレフら三体は敵意を露わにする。

 まあ待て、だからといってこちらは戦うと決めたわけではない。ポラリスが残っている以上、敵対するシュバルツバースが早々に滅ぶと人間に矛先が向いて困るため、もう暫くあなたたちはあなたたちで戦い続けてもらいたいのだ。それにもしレッドスプライト号の調査隊を倒せれば有利なのは貴方たちでしょう?というか今後予測できないヤマトやモジャ公らとの戦闘が控えてることを考えると正面対決でのリソース消費は勘弁願いたいものだ。と、表向きの理由を言い訳にして敵対的な彼らの戦意を和らげる形でその場を納め、三体の目前から逃げることに成功する。(裏向きの理由は後で話す)

 メムアレフと手を切ったにも関わらずなんでか知らんがついてくる気のリリスさんは放っといて、近場のターミナルでゴア隊長に連絡を取り、【トラポート】で名古屋に戻る。

 

 

 

>6日目(金)09:00

 名古屋に戻って、異界を管理してくれているベリアルに彼のスタンスの確認を取る。

 メムアレフと決別することになったが、貴方はどうする?メムアレフの陣営として路線を変更し、敵対するか。それともこのまま人間と付き合ってくれるかどうかという内容を尋ねる。

 ここまで名古屋勢力に食い込んだ後に敵対されるとかなり危ない状況ではあるが、神話体系的にメムアレフとは縁が薄いベリアルならば多分、わざわざ敵対しないだろうと見積もっていた。実際、ベリアルはその通りに別の条件を俺に呑んでもらうことでこのまま協力してくれることになった。

 条件とは、俺が仲魔にしている[魔人アリス]の悪魔カード――本物のアリスではない、レプリカのアリスだが、それを譲渡すること。真・女神転生1の赤男爵であるベリアルにとって、例え偽物であろうと彼らがこよなく愛するアリスが他人の手に委ねられるのは我慢ならんというのが一つ。

 もう一つは今日中に復活するネビロスと共に、アリス復活の儀をこの名古屋で行うためそれに必要なMAGを提供し、またそれ以外で向こうが触媒を用意するのを黙認するよう要請された。MAGはともかく、触媒というのがピンとこなかったけれど、ベリアルの「説明しない方がいい」という説明に、恐らく後ろめたい行い――例えば人間を材料に使うような――をするのだろうと想像がいった。ななみちゃんが絶対許さないタイプの行為であるが、協力してくれる悪魔が限られてる現状では他を探すのも難しい、こちらは実質何もせずに今後ベリアルらの協力を得られるのなら高くふっかけられない分、安いと言える。

 少し考えて、決して行いがバレることないようにと、また「それ」以外で何事かが発覚した場合は黙認することは出来ないと前もって念を押すことで取引を結んだ。

 これで後方に憂いは無くなったな。よし!

 

 

>6日目(金)09:30

 ななみちゃんに連絡を取り、シュバルツバースへ直帰。

 さっき言ってなかった裏向きの理由だけど、倒してもいい高レベル悪魔3体分の経験点が手に入るなら、ここでななみちゃんに分配しないのは勿体無いからだよ!

 

 ななみちゃんにこれまでの状況……シュバルツバース内を探索する人間と(不殺縛りで)争ったりしたが、色々失敗があってメムアレフと決別したこと、またベリアルと取引を結んだ(後ろめたいことは言わず、あくまで彼らのアリス復活にMAGを提供することを求められただけのように話した)のでもはやメムアレフと決別することに躊躇う必要は無くなったことを報告し、これよりメムアレフ陣営を打破するのに付き合ってもらうと述べると、ななみちゃんは不満そうな顔をした。ラスボスな悪魔を倒せるヒーロー的活動に喜ぶことに思ったのにあれー?

 と思ったら最近俺が忙しくて構ってくれないから、終わったらそろそろ恋人ムーヴがしたいとゴネられる。そっちか。惚れられるのは嬉しいが、正直ななみちゃんは付き合いたいって女の子じゃないんだよなぁ……と欲張りなことを思いつつ、今日の夕方頃に時間を取ると約束すると、ついさっきまでしていた不満顔はどこにいったんだという至福の表情を見せてどこでもついていくと高らかに謳う。

 

 さて、素直にシュバルツバースに入れるか分からないしもう一度ゴア隊長に連絡を取ってターミナルの補助をしてもらおうか。

 

 

 

>6日目(金)10:00

 ななみちゃんと共にシュバルツバースにやってきた。ゴア隊長に今回でメムアレフを倒すと伝えると、彼は諸手を上げて喜んだ。レッドスプライト号に連絡して共同で攻略に当たろうかと提案されるが、以前交戦してから関係がぎくしゃくしていることもあり、こちらの事情が変わったことだけを伝えてくれるよう頼む。

 

 メムアレフと敵対したことにより、これまでシュバルツバース内の移動を黙って許してくれていた雑魚悪魔たちも次々に襲い掛かってくるようになった。雑魚といっても、軽く50レベルを超える悪魔ばかり、高い奴は60にも届いている。幸い、その中に厄介な上位種族は少なく、極めて強烈な攻撃を放ってくるような悪魔は少なかった……堕天使アガレスの【マグマ・アクシス】にななみちゃんが焼かれたり、モロクの猛反撃で派手に血しぶきを上げたことは忘れよう。このレベルにもなると倒れて後から蘇生した方がむしろリソース消費が少なく済むからなぁ。

 

 

 先ほどヒメネスと矛を交えた中層へ差し掛かったところで、再び強敵の気配。まさかメムアレフの不意打ちか、と思ったら魔王マーラ様が単独で襲いかかってきた。素直にメムアレフと共に襲いかかってくればいいものを、何故愚策を行うのか。……人間より強力な悪魔だからこそ、小細工を弄するのはプライドが許さないというのもあるのだろう。データ的な強弱はさておいて。

 さて魔王マーラ戦だが、【龍の眼光】を所持する以外、特筆すべき特徴は無い。典型的な素手物理型悪魔で、ボスの追加スキルか【愛用の武器(素手)】により格闘武器並、あるいはそれ以上の威力を叩きだしてくるのは強烈であるが、生憎ながら俺は元より物理耐性、ななみちゃんも対ボス用に【カードシールド】でヘカーテの耐性を獲得させたため、万能相性でもなければまともに通用しない。更に破魔呪殺無効以外に碌な耐性を備えていないこともあって、造魔のフォッグブレスで回避が下がったところにななみちゃんの魔晶剣攻撃が直撃、マーラ様は僅か3ターンで沈む。何やら散り際に言い残してた気もするが、ななみちゃんが赤面してたくらいで大したことではなさそうだ。

 

 

 

>6日目(金)10:30

 中層を越えて深層に到達し、60レベル超の悪魔たちを蹴散らしながらようやっとメムアレフの元へ到着。魔王ケートゥに邪龍ミズガルズオルム、龍王ラハブといった威圧感溢れる面々が群れを成して襲ってくる様子はまさにメガテンの終盤戦だと実感させてくれる。また、そういった悪魔を切り捨てるななみちゃんの姿を見ると、やっぱり悪魔より人間の方がずっと強いよなと変な感覚に陥りそうになる。

 

 そうしてメムアレフの間に到達。レッドスプライト号調査隊の気配は無く、彼らに先んじて到着したようだ。ならば遅刻した彼らからイイトコどりをすることに何の躊躇いも覚えない。最後の扉を開けて、決戦に臨む。

 最早語る言葉も無しと、神霊メムアレフと邪神スルトと戦闘に。メムアレフは命中・回避率低下の追加効果を持つ万能相性魔法攻撃【大洪水】にてこちらの足を止め、スルトはななみちゃんばりの火炎特化の攻撃スキルで攻めてくる。ヘカーテの耐性なら万全、かと思いきやちゃっかり【原初の炎】なる神威により攻撃力超上昇、しかも戦場の全てのキャラクターが持つ火炎相性への耐性を失わせるなど凶悪な対策を持ち合わせていた。流石は初代火炎特化悪魔、実はメムアレフよりレベルが高いだけはある。

 なんて舐めたことを言ってる場合じゃなく、700ダメージを龍の眼光つきで数回、なんて攻撃を受け前衛にいたななみちゃんと造魔が早々に落ちる。引き出された俺にも等しく【火炎斬】の洗礼が降りかかり、手立てなくまさかの全滅の危機かと冷や汗を垂らした。変身中の今は【幸運】では凌げない、命運にしてもヘカーテのレベルの低さが災いして、防御点が高くないため2回3回は凌げてもそれ以上はHPが足りない。或いは、奴の神威によって張られた取り巻く「火炎」の場を打ち消せるならば良いのだが、そういったスキルや神威は俺の持ちあわせには一切ない。

 メムアレフを舐めたわけではないが、まさか火炎一辺倒のスルトが本命だったとは。

 詰んだか?

 

 しかしゲームオーバーを覚悟した瞬間、突如「火炎」の場が剥がれ、耐性が復活して【火炎斬】が弾かれる。何事かとスルトと俺があたりを見回すと、ななみちゃんの持つCOMPから顔を出す妖精ピクシーの姿が。あれはななみちゃんが絆を結んだピクシー……そうか、妖精が持つ神威を使ったのか!

 レベル一桁の妖精と、レベル100近い邪神スルトの神威とでは比にならない力の差がある。しかし絆を結んだ妖精たちが力を合わせれば、スルトの力の一端を削ぐくらいの助けにはなる。スルト自身の火勢は止まらずとも、俺たちに降りかかる原初の炎の呪いは収まった。最早、スルトなど恐れるものではない。

 俺はすぐさま生贄用のナンディを召喚、【リカームドラⅢ】によりななみちゃんと造魔を蘇生し、必殺への布石としてデバフをばらまく。友情と絆の力を得て復活したななみちゃんは、スルトとメムアレフへ必殺の連撃を放つ。スルトの火炎反射は火炎ガードキルにより打ち消され、また俺の放ったデバフとななみちゃんの【縮地Ⅲ】により回避率は最低に落ち込み、最早避けることすら能わずメムアレフとスルトはその身に必殺の直撃を受け、消し飛んだ。

 

 この間、わずか1ターンの出来事である。

 

 

 

>6日目(金)11:00

 戦後処理中、遅れてシュバルツバース調査隊の面々、およびゴア隊長がメムアレフの間へやってくる。メムアレフが倒れたことで悪魔たちの抵抗が弱まり、随分楽にここまで来れたらしい。……正直、あのスルトを彼らは倒せるのだろうかという疑問が浮かぶが、全滅したらそれはそれで事なのでこれで良かったと思うことにする。

 一度は戦ったこともあったが、もう敵対する理由はこちらには無いと正直に伝えながらメムアレフの残した最後のレアフォルマを渡す。ななみちゃんが俺の代わりに謝る姿を見て、何人かは苦笑を浮かべて謝罪を受け取っていた。……流石に俺の所業を彼女に謝らせるのはどうかと思うので、俺からも仲直りを頼む。石化やら何やらを食らった恨みを持つ隊員は多かったが、メムアレフを打倒した立役者たちをないがしろにするのは忍びないというゴア隊長の一声で不満の声は収まった。この場で復縁とはいかないが、彼らの敵意は薄れたように感じる。

 今後、シュバルツバースを脱出してもポラリスの侵食が続いている以上、地上に戻った彼らは引っ張りだこが予想される。その一環で、いずれセプテントリオンが出現している日本へやってくる時があるかもしれない。そもそも無の侵食が進んでいて、来れなくなっているかもしれない。……そのどちらにしても、あるいはポラリスを倒した後で再会した時には、笑って話せる関係になってるといいなとは思いつつ、撤収作業に入る彼らを見送った後は、先に【トラポート】でシュバルツバースから脱出する。

 

 

 南極で事を済ませ、地上へ戻ってきた俺たちを待っていたようにミザール出現の報せが入る。結界と引き換えに倒すミザールを、ここで俺たちの手で倒すことで絶好のアピールになるだろう。それが出来なければ、結局俺たちはジプスやヤマトのおこぼれに預かって美味しいとこどりしただけの勢力になり、LAWやCHAOSの先人たちに恥ずかしくて顔向け出来ないね、ってのは個人的な話。

 まあ、口先で言うよりもまず行動で示してみせましょうか。ちょっと東京行ってくる、なあにすぐ戻るさ。

 

 


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