真かみさま転生200X(未完)   作:tbc

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平和といったな、あれは嘘だ

>2009年の3月30日……らしい

 あのあと気を取り直して歩きだしたはずの俺だが、そこで記憶は途切れ、気づけば俺はどことも分からぬ部屋のベッドの上で目覚めていた。

 は?

 

 

 本格的に既視感を感じ始めた部屋から外に出ると、扉の音に気づいたのか一組の男女のペアが上がってきた。

 学生服を着けた背の高い赤髪の凛々しい会ちょ……女性と、銀髪の肉ひ……じゃなかった、男性だ。

 おはようという挨拶と共に昨夜倒れたのを我々が発見したのだが覚えているか?と聞いてきた。嘘を言うわけにもいかず、覚えてませんと答えたが……だいたい察しはついた。

 この世界には今日と明日の境目、夜の0時に誰にも知られぬ1時間――「影時間」が存在している(はず)。

 つまりペルソナ3の世界だ。

 

 俺、ペルソナ使いじゃねーんですけど。

 ……って思ってたら異能者だってバレた。何故だ。

 

 

  >3月30日影時間

  どうやらペルソナ使いでない俺は「影時間」の間の記憶が残らないようなので、別々に記す。

  この世界は、悪魔の代わりにシャドウと呼ばれる異形の存在だけが動ける「影時間」が一日と一日の間に存在し、人を襲ってその感情だか精神だか魂だかを抜き出して、シャドウにしてしまう。

  影時間の間は、シャドウに狙われた人間以外は「象徴化」と呼ばれる動けないし影時間に気づけない状態になるのだが、唯一「ペルソナ使い」と呼ばれる、心のある悪魔的な一面「ペルソナ」を呼び出して攻撃させたり身を守ったりする能力を持つ影時間への適性者たちのみがシャドウに対抗する力を持つ。

  一応ペルソナ使いでなくとも影時間への適性を持つ人間は存在するのだが、シャドウはペルソナ使い以外の攻撃が通用しないらしく、それ以前に機械の多くは影時間でダメになるのでまともに火器が運用できないそうな。

  ただ、どうもペルソナ使いではないがメガテン由来の異能者である俺はシャドウをぶっ倒せる能力があるようで、試しに臆病のマーヤと呼ばれる最下級のシャドウを日本刀で【ヤマオロシ】てみれば見事に真っ二つだった。桐条先輩……ペルソナ使いを率いる月光館学園の生徒会長(予定)には大層驚かれたが、特別なことをしたわけでなく割りと力でぶった切ってるだけなので驚くことでもないんだがなぁ。

  だが異能者であってもペルソナ使いでない俺は適性者でないらしく、影時間が終わるとその間の記憶を失うようだ。現に昨夜3月29日の影時間の出来事を日中は全く覚えていなかった。

 

  あの後影時間でペルソナ3だと気づいた俺は、周囲に現れたシャドウをなんとか一部撃退するも、全てを倒しきれずに手傷を負う。そのままシャドウに精神を侵されて危うく死にかけていたが、巡回中の桐条美鶴先輩、真田明彦先輩らが駆けつけて助けられる。明らかにシャドウと戦った痕跡が残っていたこともあってペルソナ使いかと問われるが、その時はまだ適性者でないと知らなかったのもあり「腕に自信のあるだけで、ペルソナ使いではない」とだけしか答えなかった。

  ひとまず新入生だけど負った傷を癒やさせてくれということで、彼ら特別課外活動部(S.E.E.S)が利用する巌戸台分寮の一室を借りて休むことになった。

  そうして体を休めたところで、影時間が終わった後で今後について相談しようと思っていたのだが……まさか記憶が残らないとは思わず、影時間が終わった途端に彼らの前で気を失う醜態を晒してしまう。

 

  それを見て、彼らもまさかと思い念の為に影時間を知らない風に今朝はコンタクトしたのだが、記憶はなくとも彼彼女らの知識がある俺の挙動不審さに気づき、うっかり名乗られてないのに名前を呼んでしまったりとボロを出し、隠していることを幾つか聞き出されてしまった。いやあこわいこわい。それでもなんとか転生の件と原作知識は言わずに守り切ったよ……。

  俺が話したのは俺が(本来)悪魔と戦える能力を持つ「異能者」であること。悪魔ってのはシャドウと同じで異形の存在。月光館学園にはそのシャドウの噂を聞いて悪魔ではないかと思い、進学ついでに経験値稼ぎにやってきた……ということにした設定を話した。そのへん手回しのいい女神の奴が作った設定資料集をアパートの住所に置いてあるのかもしんないけど、俺まだそっちにたどり着いてねーから!

 

  間に合わせの誤魔化しだったが、俺の存在自体が彼らにとって初耳の半信半疑ものだったのでなんとか誤魔化しきれたようである。とりあえず異能者である証明として、今夜桐条先輩の前でもう一度シャドウと戦ってみせた。HPさえ十分なら、臆病のマーヤ1体ごとき楽勝よ。

  【ヤマオロシ】のコストで息切れしつつも、確かに目を見張る戦闘力があると評価していただき、予備戦力として無事S.E.E.Sに加入させていただけることになった。

 

 

>4月1日(水)

 思えば初めての原作キャラとの遭遇だったってことに後から気づいたが、その感動も驚きで吹っ飛んでいた。

 まあそれはさておき、ちょっと変則的な形だが彼彼女ら――特別課外活動部(S.E.E.S)に協力することになった。

 ペルソナ使いではなく記憶が残らない問題があるので本戦力としては数えがたいが、影時間下でシャドウと戦える能力を持つ人間は貴重ということで、予備戦力として動いてもらいたいそうだ。

 あと、S.E.E.Sに加入する場合は巌戸台分寮に入寮してもらわなければならないんだけどそのへんアパート契約とかしたばっかで手続きが大変だしあと一人暮らしの方が色々遊べるってこともあり、俺が色々言って勘弁してもらった次第。あまり力にはなれないけど、原作主人公がきっとなんとかしてくれることでしょう。

 

 それにしてもボルテクス界と違って休むところに困らないし、装備品だって調達できる。悪魔合体とか悪魔関係の施設が無いのは不満だけど、この世界はレベル上げにかなり適している。

 多少ながらも未だに身の危険はあるし、将来的に世界滅亡が待ち受けてるのは他所とも変わらないけどボルテクス界と比べれば全く天国である。

 




※なお月光館学園の入学式の日取りは不明ですが、初日である8日始業式の午後に割りと暇があったことから同日ではないだろうと思い、一日後の4月9日(水曜日)の午前ということとします。

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