夜天に仕えるもう一人の剣の騎士    作:アホの子

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第1話

 「なぁなぁ、薫君」

 「ん?」

 

食事の準備をしていた、灰崎薫(はいざきかおる)は不意に呼ばれたため一旦手を止め、声の方を向く。

 

 「お願いやから、私にも手伝だわさせてくれへん?」

 「ダメ。今日の主役ははやてなんだから、大人しく待ってろ」

 「むぅ…」

 

自分の頼みを断られた為か、この家の主である少女、八神はやては不満そうに顔をしかめた。そんなはやてに薫は苦笑を漏らし止めていた手を動かす。今日は年に一度、誰もが迎えることになる日。それが今日はやてに訪れている。今日は6月4日、八神はやての誕生日なのだ。

 

 「でも、されっぱなしってのは私のポリシーに反するというか…」

 「…お前今日何の日か知ってる?」

 「そんなんもちろん知ってるよ。でも薫君が全部やるっていうのは納得いかんのや。せやから料理だけでもいいから手伝わせて!」

 

再び手を止め振り返るとそこには、手を合わせるはやてがいた。そこまで何かしたいらしく、その姿に薫は少し呆れてしまった。

 

 「…分かったよ。でも、料理だけだからな」

 「ほんと!?ありがとう!!」

 

許しを得たのがよほど嬉しかったらしく、許可を出したらとても嬉しそうに声を上げた。そんな姿を見て薫は、微笑ましく思いつつ、どんだけやりたかったんだとも思ってしまった。はやてが加わり賑やかになったキッチン。一人よりも二人、とあるようにあっという間に料理は完成した。すると、インターフォンが鳴り響いた。

 

 「石田先生かな?」

 「多分な。俺が出てくるよ」

 「ほんなら頼むな」

 

そう言って、薫は玄関へと向かう。玄関を開けるとそこには一人の女性、石田幸恵がいた。

 

 「こんばんは、石田先生。もういつでも始められますよ」

 「こんばんは、薫君。でもごめんね用意とか全部任せちゃって」

 「大丈夫ですよ。どっかの誰かさんが手伝ってくれたんで。意外と速く終わりましたし」

 「そう?ならいいけど…」

 「まぁこんなところで立ち話もなんですから。入ってください」

 「そうね。お邪魔します」

 

二人はリビングに向かう。リビングではすでにはやてが椅子に座っており、後は二人が座ればいつでも始められる状態となっていた。

 

 「こんばんは、石田先生」

 「こんばんは、はやてちゃん。ごめんね準備とか手伝えなくて」

 「大丈夫ですよ。ささ、暖かいうちに食べよ」

 

はやてに催促されて二人は椅子に座る。

 

 「「「いただきます」」」

 

そう言って三人は食事を始める。リビングには会話が弾み、時折笑い声が響いた。

食事が終わり食器を片付ける。そして薫は冷蔵庫からケーキを取り出しテーブルに運ぶ。ケーキにローソクを立て火を点け電気を消す。薫と石田はハッピーバースデイの歌を歌い、はやてはローソクの火を消した。

 

 「はやて、誕生日おめでとう」

 「はやてちゃん、おめでとう」

 「二人ともありがとうなぁ」

 

そう言ったはやての目には少し涙が溜まっていた。だが涙は流さず、顔には満面の笑みが浮かんでいた。薫と石田は椅子の下に置いておいたプレゼントを取り出した。

 

 「はい。はやてちゃんプレゼント」

 「ほら、はやて俺からも」

 「わぁ…ありがと。開けてもいい?」

 「もちろん」

 

はやてはまず、石田のプレゼントを開ける。中身は石田が作った手編みのマフラー。今はまだ使う季節ではないが、必ず使う季節が来るため、これを選んだ。ちなみにセーターとマフラーで迷ったとかなんとか。次にはやては薫のプレゼントを開ける。中身は桜の花の形をした髪留めと、ネックレス。プレゼントを決める際に目に留まりはやてに似合うと思いこれを選んだ。ちなみにこれを買った際お財布の中身が消し飛んだとかなんとか。

 

 「どう?気に入ってくれたかしら?」

 「はい。もちろんです」

 「そう。なら良かったわ」

 

そういって石田は微笑んだ。

 

 「俺のはどうだ?女子の趣味とかよく分からなかったんだけど…」

 「もちろん良いにきまっとるやんか」

 「そうか。ならよかった」

 

はやての言葉に薫はほっとした表情となった。

 

 「そんじゃまぁ、プレゼントも渡したことだし、ケーキ食べるか」

 「そうやな。結構美味しそうやし」

 「じゃあ此処は私が切るわね。何にもしてないからね」

 

そういって石田はケーキを切り始める。三人の皿に乗せて食べ始める。

 

 「ん~。おいしい!これって何処のケーキ?」

 「ん?翠屋だよ」

 「なるほど。なら美味しいはずや」

 

はやては俺の言葉で納得したようで、またケーキを食べ始める。ちなみに翠屋とは薫達が住んでいる海鳴市にある喫茶店で、以前テレビにも出たことのある人気の店だ。ケーキを食べ、みんなで色々話しているうちに夜遅い時間となっていた。

 

 「それじゃあ私はそろそろ帰るわね。はやてちゃんはまた検査の時にね。薫君後は宜しくね」

 「はい。分かりました」

 「石田先生また来てくださいね」

 「ええ、もちろん」

 

薫とはやては帰る石田を見送り、リビングに戻る。先ほどまでのパーティの片付けはすでに終わっており、時間的にもそろそろ寝る準備を始める時間となっている。

 

 「そろそろ風呂入ったりしないとな」

 「せやな…」

 

はやてからは呟くような声が返ってきた。ただ単に眠いのかそれとも、先ほどのパーティを名残惜しんでいるのか。薫にはよく分からなかった。

薫とはやての付き合いはかれこれ1年近くなっており、出会いの場所は図書館でのことだった。本を取ろうとしていたが車椅子に乗っているはやてでは届かないで居たところを、薫が変わりに取って上げた、というのがきっかけである。

それからの付き合いではやては薫に対して打ち解けてはいるが、それでも少し遠慮が見られている。これまでの生活がそうさせたのかもしれないとは思っているが、薫にはそれを解決する策が思いつかなかった。

 

 「…なぁ薫君」

 「ん?どした?」

 

呼ばれたのではやてを見ると、なぜか顔を少し赤くしてこちらを見ていた。なぜか嫌な予感が止まらない。とても嫌な。

 

 「あのな…、一緒にお風呂入らへん…?」

 「……は?」

 

予感的中。薫はいきなりの事で呆けた。 

 

 「い、いやな!嫌だったらええよ!うん。ごめんな急に変なこと言って」

 

そういうはやてには少し寂しさみたいなものが感じられた。その姿を見て薫は少し複雑に感じた。やはり寂しかったのだろう。だがそれを口に出さない。出そうとしない。今までの生活の影響が出ているため人を頼ろうとしない。料理をしていた時もそう。ただでさえ迷惑を掛けているのだからと。

 

 「…わかった」

 「え?」

 「一緒に入ってやるって言ってんだ!俺からのもう一つの誕生日プレゼントだ!この後寝るまでお前の言うことを何でも聞いてやる!どうだ!」

 

恥ずかしくなって大きな声を出してしまったが、これで後には引けなくなってしまった。そんな覚悟しつつ薫ははやての返事を待つ。はやては驚いた表情をしたがすぐに嬉しそうな表情となった。

 

 「ほんなら、一緒にお風呂入ろう?」

 「…わかったよ」

 

表情の変わりように薫は苦笑を漏らし、はやてを引き連れて風呂場へと向かった。

 

 

 

 

 「ふぅ~。さっぱりしたなぁ」

 「…やっぱ止めときゃよかった」

 

風呂から上がった二人はそれぞれ違った状態となっていたが、一人のためにそこは割愛させてもらう。

 

 「まぁ、ともかくそろそろ寝ないと時間的遅いからな」

 「せやな。なら一緒に寝よな」

 「えっ」

 「さっき言ってやろ。寝るまで言うこと聞くーって」

 「もう二度とやらねぇ…」

 

はやての発言にさらに薫はこれから言葉には気をつけようと決めた。

 

 「まぁいい。部屋に行くぞ」

 「うん。頼むわ」

 

薫ははやてを部屋に連れて行きベットにはやてを降ろす。だが急に部屋が明るくなった。二人は驚き光の方を見る。そこには鎖が巻かれた分厚い本が浮いていた(・・・・・)その本は一定のリズムで鼓動している。まるで心臓のように。

 

 「な、なんやぁ!?」

 「知るかよ!?」

 

次第に鼓動は強くなり、鎖を破ろうとしている。薫ははやてを守るように前に出る。それに伴いはやては薫の服を掴む。そして鼓動の強さに鎖が耐え切れず千切れ、本が開き勝手にページがめくられていく。そしてページは最後まで開くと二人の前に降りてきた。

 

 <Anfang>(起動)

 

本から言葉が聞こえると本が光りだした。すると後ろから白い丸いものが本に吸い込まれていった。その直後床に三角形の模様が浮かび上がった。その模様は紫、緑、赤、青の四色の四つ。それが浮かび上がると本の光が強くなり、二人は目を瞑った。その光が収まり二人が前を見ると黒い服を着た四人の男女が居た。

 

 「闇の書の起動、確認しました」

 「我ら、闇の書の蒐集を行い、主人を守る守護騎士でございます」

 「夜天の主の元に集いし雲」

 「ヴォルケンリッター、何なりとご命令を」

 

四人は頭を下げ立てひざの状態でよく分からない単語を並べてきた。それに薫は頭が追いつかなかった。

 

 「なんなんだよこれ…なぁはやて。…はやて?」

 

はやてに声を掛けたが反応が無かったため薫ははやての方を見てみると、はやては目を回し気絶していた。

 

 「ちょ!?はやて!?」

 

声を掛けてみたが呼吸は安定していたため薫は安堵する。が後ろから金属のような物を突きつけられる感触と、ものすごく鋭い視線を感じ体が硬直した。

 

 「こちらを向け」

 

動くこともままならないが、勇気を振り絞り後ろを振り返ると、ピンクの髪をポニーテールにした女性がこちらに向けて剣を突きつけていた。しかも剣は刃引きされて無い。なぜ分かるのかと言うと、薫は料理で包丁を使っているためそういったことは大体分かる。

 

 「貴様は何者だ?」

 「は、はやての友達」

 「何が目的で主に近づいた」

 「…はやての誕生日を祝っていたから、だけど…」

 「ふむ…」

 

薫がそう告げると、その女性は声を漏らし黙ってしまった。薫は何をしていいのか分からなかったため、そのまま状態を維持するしかなかった。何か考えがまとまったのか、女性は剣を降ろした。

 

 「嘘は言っていないみたいだな」

 「あんな状態で嘘なんかつけるかよ…」

 「それもそうだな。だが…」

 

女性がそう呟くと薫に緑色の輪のようなものが腕と足を縛り上げた。

 

 「んな!?なんだこれ!?」

 「心配するな。主から話を聞くまでは殺しはせん。だが拘束はさせてもらう。それとこれも取り上げさせてもらう」

 

そういうと薫の首からチェーンのようなものを引きちぎり取り上げた。

 

 (なにを取り上げたんだ?というか俺首に何か掛けてたっけ?)

 

薫としては何の事だかさっぱりだったが、何か言うとまずいような気がして黙っておくことにした。

 

 「シャマル。主の方は?」

 「大丈夫。ただ気絶しただけみたい。多分朝には目が覚めると思うわ」

 「そうか」

 

ポニーテールの女性はいつの間にかはやてのそばにいた金髪の女性、シャマルに話しかけてはやての様子を聞いていた。すると急に薫は眠気に襲われた。元々寝る気で居たため仕方ないとも言える。その眠気に勝てず薫はゆっくりと瞼を閉じた。




どうもアホから生まれたアホの子と申します。今回ふと思いついたので書くことを決めました。学生がゆえに文章に至らないとこがあったり、執筆が遅かったり致しますが、どうぞ宜しくしてくれたら嬉しいです。感想とかもくれたら嬉しいです。
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