夜天に仕えるもう一人の剣の騎士    作:アホの子

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第2話

朝方、はやての家の屋根の上。そこには赤い髪をおさげにした少女と、余すところ無く筋肉の付いた獣耳の男がいる。 

 

 「狭っ苦しい町だな。魔法の匂いもしねぇ」

 「少なくとも、騒乱や戦の渦巻く土地では無いようだ」

 「…なにが闇の書の守護騎士だよ。適当に選ばれた主とやらのため、闇の書のページ集めのために戦うだけの存在。どーせ一生こうなんだろ私達は」

 「いつか壊れて果てるまでは、な」

 

二人が話している雰囲気には、疲れのようなものが感じられる。そんな二人に新たな声が届く。

 

 〔ヴィータちゃん、ザフィーラ。戻って。新しい主様のお目覚めだから〕

 「いくぞ。ヴィータ」

 「…わかってるよ」

 

二人は自分達の主が目覚めたため、主の元へと来るようにと言われたので向かうことにする。自分達がどう思っていようと、主のためにその身を尽くす。それが闇の書の守護騎士の存在意義だから。

 

 

 

 

前回は守護騎士の出現にはやてが気絶してしまったため、四人は自分達のことを伝えられずにいたのでまずはそれを行う。

 

 「紹介が遅れました。我らが守護騎士、ヴォルケンリッターの将、剣の騎士シグナム」

 「鉄槌の騎士ヴィータ」

 「湖の騎士シャマル」

 「盾の守護獣ザフィーラ」

 「八神、はやてです」

 

自分に対して頭を下げて名乗ってくることにはやては、少し状況が読めていなかった。四人が夜に現れて驚いて気絶したところまでは憶えているのだが、その後が憶えておらず少し混乱しているのだ。

 

 「我らは主の盾となり剣となります。いかなる命もこなして見せましょう」

「えっと、じゃあその、闇の書ってなんなん?」

 

色々突っ込みたいことがあるが、まず最初に闇の書について聞く。この四人が現れたのはあの本、闇の書が関係していることは明らかな事は、はやてにも分かる。

 

 「はい。闇の書とは魔導師の魔力の源「リンカーコア」を吸収することでページが増え、全てのページが完成すると、主に大いなる力を授けるという古代ベルカの魔道書です」

 「えっと、魔道師にリンカーコアとベルカってなんや?」

 「そうですね…簡単にまとめますと、まずリンカーコアというのは魔法を使うための魔力を作り出すもので、これは主はやてにも備わっています。そして魔道師というのはそのリンカーコアをもち、魔法を使う者のことです。ベルカというのは古い異世界の国の名前です」

 「なるほどなぁ…って事は私って魔法使いなん?」

 

その事実にはやては少し興奮したが、話を聞いているうちにあることに気づく。昨日気絶するまで一緒にいたはずの少年のことを。

 

 「なぁ、薫君は何処にいったん?」

 「薫…?あぁ、あの少年のことですか。シャマル」

 「はい。クラールヴィント」

 <Ja>(はい)

 

シャマルが胸元にある指輪に話掛けると、緑色の三角形が現れ守護騎士達の前に緑色の物に巻かれた薫が現れた。

 

 「うお!?なんだ…?あ。はやて」

 「薫君が出てきた!?」

 「これも魔法の一つなんですよ」

 「へぇ、すごいなぁ…」

 「関心してないで外すように…んん!?んんん!!?」

 

薫は、はやてに緑色の物体を外すように言うとしたが、口を同じもので塞がれてしまった。

 

 「ちょ、なにやってんのや!?」

 「ご心配なく。拘束してあるだけです」

 「なんでや!?速く外してあげて!」

 「危険です。何をしだすか分かりません」

 「ええから!この子は私の友達なんや!」

 「…分かりました。シャマル」

 「いいの?」

 「あぁ。主の命だ」

 「…分かったわ」

 

そういうと薫を巻きつけていた物は消え、薫は自由になった。ずっとやられていたのだろうか、薫はその場で体を伸ばし筋肉をほぐす。

 

 「んっーふぅ…」

 「大丈夫なん?」

 「まあな。別に何かされたわけでもないし」

 「ならええけど…みんな。二度とこんなことしたらあかんで」

 「ですが…」

 「ええな?」

 「…はい」

 

はやての言葉に意見を言おうとしたシグナムだったが、はやての言葉にそれは打ち砕かれた。

 

 「とりあえず話を纏めると、闇の書は古い異世界のベルカってとこの魔法の本で、みんなはその守護騎士。で、私はその主ってわけやな」

 「ええ」

 「これまでの日々や覚醒のさい、闇の書の声をお聞きになりませんでしたか?」

 「んー…そんな夢を見たような、みてないような…。あ、薫君」

 「ん?」

 

そういうとはやては薫を近くに呼び何かを耳打ちする。

 

 「なんでまた?」 

 「ええから。お願いや」

 「まぁ別にいいけど」

 

そういうと薫ははやての部屋にある棚をあさり始める。それに対してシグナム達が何も言わないのは、先ほどのはやてとのやり取りで薫がはやての友人ということを確認し、一応敵ではないと認めたからだろう。だが全員警戒を解いたわけでは無い。

 

 「そやけど分かったことは一つある。私が闇の書の主として守護騎士みんなの衣食住の面倒を見なあかん言う事や」

 

そのはやての言葉に守護騎士一同は唖然とし、その表情からは驚きと困惑が見て取れた。特にヴィータは驚きのせいか、立ち上がってはやての方を見ている。

 

 「お、あったあった。ほらはやて」

 「ありがとな」

 「しっかし、考えることがすごいな。お前は」

 「まぁええやないの。みんな?幸い、住むところはあるし、料理は得意や。後はみんなのお洋服!」

 

 薫から手渡されたメジャーを伸ばし、守護騎士に伝えるはやて。

 

 「あの、主はやてそれは一体どういう事、ですか…?」

 

固まっている他の守護騎士の代表としてシグナムが質問をしてきた。

 

 「どう、って?」

 「闇の書の力を欲し無いんですか…?

 「えっとなぁ、正直闇の書の主って言っても何したらええかわからへんし、私はそんな力は別に欲しくないんよ。そりゃ、魔法は少し憧れるけど。でも私はみんなで一緒に暮らせていけたらそれでええ。薫君もええやろ?」

 「いいも何も、ここお前の家だし。好きにすればいいんじゃないの?」

 「ほんなら決まりや。みんなもええか?」

 

その言葉に守護騎士達は、状況についていけないままに了承してしまう。それに満足そうにするはやて。薫はその光景を見て喜びの気持ちが湧き出る。これによってはやてが一人になることは無くなるだろう。はやてが家族のことを持ち出したのは、それをずっと望んでいてようやく叶うかもしれなかったからだろう。多分薫が何か言っても家族にする、といって聞かなかっただろう。

 

 「そういえば皆は薫君とまだ自己紹介してないやろ?それとシグナムとシャマルは薫君にちゃんと謝らないとな?」

 「はい」

 「わかりました」

 

そういってこちらに向く四人。

 

 「シグナムだ。昨夜のことはすまなかった」

 「シャマルです。昨日のことはごめんなさい」

 

そういって薫に頭を下げる二人。子供に頭を下げる大人の姿シュールだ。

 

 「えっと、灰崎薫です。頭下げないでください。別に二人は悪くないんですから」

 「非があるのはこちらなのだが?」

 「いや誤解させちゃった俺が悪いですよ」

 「いや、しかし…」

 「もう、シグナム。そんなことじゃいつまでたっても終わらないわよ。ごめんね。この人結構頭が固いから」

 

シャマルは微笑みながらそう言ってくるが、薫はその微笑みに見とれてしまい返事すら出来ていない。だが薫は後ろから鋭い何かを感じ、正気に戻る。ちなみにはやてが睨んだためである。

 

 「…ヴィータだ」

 「守護獣ザフィーラ」

 

残りの二人は前の二人ほど警戒を解いていないのか、自分の名前を告げただけで終えた。

 

 「ん、灰崎薫。よろしく」

 

それにつられてか、薫の返事も素っ気なくなってしまうが、二人は特に反応はしなかった。

 

 「灰崎。お前のデバイスはこちらで預からせてもらう。構わないな?」

 「デバイス?」

 

シグナムから言われた言葉に憶えがなく、薫は頭を捻る。少し考えた薫はあることを思い出す。

 

 「昨日引きちぎったネックレスの事?」

 「あぁ。お前の首に掛かっていたが…」

 「俺、そんな物もってないんですけど…」

 

シグナムと薫との間で認識が食い違う。シグナム達からすればデバイスを持っている=魔道師=主を狙っている、という認識で、薫からすれば何の事だかさっぱりなのである。薫の言葉を聴いて守護騎士達は怪訝な顔をする。

 

 「だが、こいつはお前がマスターだと言っているんだが」

 

そういってシグナムはそのデバイスを取り出し机の上に置く。剣の形のような物だが、それは色は違うがシグナムの胸元にある物と形は同じだった。

 

 <Wie machen Sie Meister> (はじめまして マスター)

 「ネックレスが喋った…」

 「ほんまやぁ…」

  

ネックレスが喋ったことに驚く薫とはやて。言語は日本語ではなかったが、薫とはやてには意味が伝わっていた。

 

 「なぁ、お前名前あるのか?」

 <Ja.Dainsleif Es sagt.>(はい ダーインスレイヴと申します)

 「そうか。俺は灰崎薫。よろしくなダーインスレイヴ」

 「私は八神はやていいます。よろしくなぁ」

 <Ja>(はい)

 

笑ってデバイスと挨拶を交わす薫とはやて。ダーインスレイヴの方も何処と無く嬉しそうなのは気のせいなのだろうか。

 

 〔ねぇシグナム〕

 〔なんだ?〕

 

デバイスと会話している薫達を見ていたシグナムはシャマルからの念話に返事をする。

 

 〔薫君のことどう思う?なんだか敵ではないような気がするんだけど〕

 〔あぁ。私も同じことを思った。闇の書が狙いなら、こんなことをしている余裕は無いからな。ヴィータ、ザフィーラお前達はどう思う?〕

 

シグナムとシャマルは薫に対して敵対性は無いと判断し、残りの二人の判断も聞く。

 

 〔完全に無いとは言いきれねぇけど、ひとまずは大丈夫なんじゃないか?〕

 〔あの様子を見ている限り、俺もヴィータの意見と同じだ〕

 

二人もひとまず敵対の可能性は無いと判断した。

 

 「灰崎。そのデバイスはお前に返す」

 「いいんですか?」

 「お前とデバイスの会話を聞いていて、敵では無いと感じたからな。だが主に何かした時はお前を斬る。いいな?」

 

 「もちろんです。はやては俺の友達ですから」

 「ならばいい」

 

薫の返事にシグナムは満足し、話し合いもひと段落したので少し遅めの朝食を取ることになった。

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