ハイスクールD×D 理不尽壊しのリインカーネイション   作:橆諳髃

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間が空きすぎて申し訳ないです……。

ここの所少々立て込んでいた者ですから、少しずつしか書けなかったです。それで今回やっと書けました。いやぁ……本当にやっとです。

まぁ前書きはこの辺りにして……小説本編始まりです。


18話 〜罪の王の世界〜 茎道……貴様は万死に値する 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亞里沙さんの船上パーティーに招待されて早くも1ヶ月ほど過ぎた。あの日は、俺にとっても楽しい1日だった事は今でも覚えている。それに、あれからも亞里沙さんは俺の所に来ては他愛も無い世間話をする事が多くなった。そしていつのまにか登下校も一緒の事が多くなった。亞里沙さんはあの船上パーティーで俺を送った時に、どうやら俺の家の場所を覚えたようで……それで船上パーティーから数日して朝俺が学校に向かう時に、俺の家の前で鉢合わせになった。

 

(あの時は俺も驚いたなぁ……。まさか俺と一緒に登校しようなんて言うとは……)

 

俺はその時、了承はした。だがこうも言った。俺と登校している所を他の人に見られて大丈夫なのかと。俺は別に、亞里沙さんと登校する事をどうとも思ってはいない。これは悪い意味での話で、俺自身は亞里沙さんと一緒に登校する事は嬉しく思う。なにせ今まで生きて来て、女の子と一緒に登校するとか今まで一度もなかったからな……その意味で言えば嬉しい。

 

なら悪い意味でとはどう言うことか? それは多分……皆が思うことだろうなぁ。(語り口調なのは気にしないでくれよ?)学校で1番人気のある女の子が、ある日急に異性と一緒に楽しそうにしながら登校してくるとしようか。それを見てどう思う? 男子からして見ればそれは、その女の子と楽しげに登校する男の事を妬むだろうなぁ。まぁ、俺にとってはそんな事は些細な事だ。気にする必要はない。だが問題は女の子の方だ。ある日急に男の子と楽しく登校する所を、同じ学校の生徒に多数目撃される。その日は質問責めに会うに違いないだろうなぁ。亞里沙さんは生徒会長という役職プラス、一般的に知られている供奉院グループのご令嬢だ。

 

(……このままだと生徒どころか、供奉院さんの事を慕っている貴族関係にも質問責めにあいかねん……か)

 

そんな事を思って俺は亞里沙さんに、俺と登校しても大丈夫かと尋ねた。だがそんな心配事は杞憂に終わったがな。

 

「例え私が他の方に慕われようとも、私のこの想いは私だけのものですわ。だから、他の方からなんと言われようと私は構いませんわ。そんな事を言う方達よりも、私は……そ、颯也先生と一緒にいたいんですの」

 

その言葉はまさにプロポーズとも取れる言葉であった事は、誰が聞いてもそう捉えるであろう。俺でさえもそう聞こえたのだから、多分そう思う事はあながち間違いではないだろう。

 

だが俺は正直嬉しかったよ。俺に、こんな俺にそんな事を言ってくれる人がいるなんて事は予想外だからな。

 

(いや……予想外とは流石に言い過ぎたな。現に船上パーティーの時にも似たような事は言われたし……だが今回のはそれすらも優に超えているな。だからそこの所は予想外だな。結果的に……)

 

正直そう言われた俺は顔を赤くしていた。自分の顔に血が登っている事は分かっていたし、何より俺の顔を見た亞里沙さんがクスクスと笑って顔が赤いと言ってきたのだから。

 

まぁそんな事はどうでもいい事だ。それからと言うもの俺は亞里沙さんと登下校をし始め、学校生活も楽しく送っていた。そんな生活が、俺はいつまでも続けば良いなと思った。

 

あの……おぞましいような事件が起こるまでは……。

 

第二次ロストクリスマス……10年前に日本で起きた史上最悪な事件の再来だ。何故俺がこの事を知っているかは……まぁ俺がこの世界の知識をうろ覚えながらも知っているからだ。この作品を見たのは、俺が高校に入る前だったし、それほど離れていたら正直作品の細部まで分からなくなっている。

 

だがこれだけは言えるんだ……俺にとっての大切な人達は守らないとなと。途中経過でどのような事に見舞われようとも……最後には絶対に俺が助ける。辛いことも苦しいことも全て……俺が引き受ける。ただの自己満足だ。それぐらい俺にも分かっているさ。随分と前からな。まぁ誰かに譲る気なんてさらさらないが……。それにしても……。

 

(確か……茎道といったか? あいつ……この日にロストクリスマスを起こすとは……俺にとっての放課後の予定が狂った……)

 

今の颯也は……怒りを露わにしていた。それもそうだ。なにせ今ロストクリスマスが起こっているのだから。学校では授業の途中でもあったし、颯也も学校で仕事をしていた。

 

そしてその日の放課後は大事な用事があった。それは、亞里沙と放課後に出かけることであった。世間一般ではこの事をデートというが、あながち間違いではない。颯也はこの日を楽しみにしていた。この前パーティーには誘われたものの、それは一般的な日常では1回あるかないかだ。

 

そして颯也は、前世に色恋沙汰は全くといって良いほどない。だから颯也からすれば、放課後に女の子とどこかへ出かけるという事がとても嬉しかったのだ。精神年齢でいうとおじいちゃんではあるが、それでも青春真っ盛りで死んでしまった颯也からすれば途轍もなく嬉しい事だったのだ。それなのに……。

 

(茎道……貴様は俺にとってはやってはならない事をしてしまった。俺の今日という尊い時間を……貴様はロストクリスマスという下らない事のために勝手に使った。これは万死に値するだろうなぁ〜。俺は、向かってきた相手はできるだけ不死にするのだが……お前は別だ。死というものが……俺を怒らせたという事がどれほど地獄か……思い知らせてやろうか)

 

普段ならば思わない事を、颯也は笑いながら思った。その図はとても怖い……と、そんな時だった。校内放送の合図が鳴る。それが鳴り終わり、生徒の声が聞こえた。

 

『この放送で名前を呼ばれた人は、すぐに指定した場所まで来て下さい。校条祭さん、寒川谷尋くん……』

 

放送で次々と呼ばれる人達は、桜満くんと親交がある人達だ。まぁ、その子達と協力してこのロストクリスマスをなんとかしようとするんだろうが……。

 

『そして最後に、愛護颯也先生』

 

「っ! ほぅ……まぁ予想していた事だがな。さて……かわいいかわいい生徒から直々の指名だし、そして何よりも先生だからな。期待には応えるさ」

 

そう独り言を呟きながら、俺は指定された場所に向かった。

 

 

 

 

そして数分を要して桜満くんに指定された場所に着いた。そこには既に、桜満くんに呼ばれた子達が集まっていた。そしてその中には……。

 

「愛護先生……」

 

「あぁ、おはよう供奉院さん」

 

一応この場に来た事の合図として亞里沙さんと挨拶を交わす。そうしたら、その場に集まっていた子が全員こちらに振り向いた。

 

「あ、あなたは!」

 

そんな声が途端に上がった。それにしても久しぶりに聞いた声だなぁ。俺としては、放送の時点で彼も呼ばれたのかと思っていた。まぁ、放送を聞いていた彼は、何故教師である私が呼ばれたのか分からないだろう。

 

(いや……桜満くんと亞里沙さん以外、何故呼ばれたのか分からないだろうな。例えここに呼ばれた説明を受けたとして……逆に益々俺が呼ばれた意味は分からないだろう)

 

そんなことを思いつつ、俺は声が聞こえた方向に顔を向けて挨拶をする。

 

「やぁ、谷尋くん。あの時以来だね。元気にしてたかな?」

 

「……ブレーカーさん」

 

「えっ? 寒川くんは愛護先生と知り合いだったの⁈」

 

まぁ草間さんが驚くのは無理はないだろう。それと谷尋くん……ブレーカーさんって久しぶりに聞いたぞ。

 

「私と谷尋くんは、結構前に知り合ってね。まぁそれ以来会う事は無かったからね……」

 

「ブレーカーさんにはその時に、返しきれないほどの恩を受けたんだ。俺が集と仲直りできたのも、この人のおかげなんだ」

 

「私はただ、目の前で困っている人を救ったに過ぎないよ。まぁ他人から見ても私から見ても、自己満足と取られるだろうが……まぁそんな事より谷尋くん。当時の私は確かにアンフェアブレーカーと名乗ってはいたが、そっちはただのペンネームみたいなものに過ぎんよ。私の本名は愛護颯也だ。改めて宜しく頼むよ。ここに集まっている皆も宜しくね」

 

俺は笑顔で名乗った。何やら昔にあった谷尋くん絡みの話が出て戸惑っているようだが、今は昔話に花を咲かせている場合ではない。

 

「それよりも桜満くん、ここに皆を集めた理由というのを説明した方が良いんじゃないかな?」

 

「っ⁉︎ 分かりました。じゃあ、何で僕がここに皆を集めたのか説明するよ」

 

そこから桜満くんの説明が始まった。まずは自分が葬儀社の一員である事。今起こっているロストクリスマスの事。そして最後に、王の力の説明をした。最後の方は、知らない人からすればどよめきを生んだが、桜満くんが実際に王の力を見せた事によって一応納得はしていたな。しかしここで新しい疑問が浮上した。

 

「なぁ集。お前は、ヴォイドを取り出せるのは未成年の人しか取り出さないと言っていたよな? 厳密に言えば、あのロストクリスマスを体験してしまった子供達からしか取り出さないと……」

 

「うん。確かに言ったよ」

 

「なら……なんで愛護先生をこの場に呼んでいるんだ? 先生は俺達より年上……未成年を超えてるはずだ。なのに……」

 

「確かに、谷尋の言う通りヴォイドはロストクリスマスの経験をした子供達にしか取り出せないよ。でも僕はある時に分かったんだよ。愛護先生にも、ヴォイドがあるって」

 

「なっ……本当なのか⁉︎」

 

「うん。でも、取り出せなかったよ。さっき実演した通りに、ある不祥事で愛護先生にもさっきと同じことをしたんだ。でも僕の右手は、愛護先生のヴォイドを掴む前に弾かれたんだ。だから、愛護先生のヴォイドが何なのか分からないんだ」

 

「そ、それじゃあ何でこの場に呼んだんだよ⁉︎ その……ヴォイドってヤツ? が使えないんだったら……」

 

「あぁ、君の言う事にも一理あるよ。魂館くん」

 

「えっ? なんで俺の名前を……」

 

「それは勿論覚えたからさ。誰が保健室に来るか分からないし、名前ぐらいは事前に知っていて損はないからね。だから、この学校に通っている子達の名前は全て把握しているよ」

 

その言葉を聞いて、俺と初対面の子達は驚いていた。しかしながらさっきの魂館くんの質問には答えていないから、少し間を置いて再度口を開いた。

 

「それで、なんでヴォイドを使えない私がここに呼ばれたか……だが、まぁ桜満くんと谷尋くん、そして供奉院さんは分かるだろうな」

 

「……はい。先生の力は、例えヴォイドを取り出さなくても強い」

 

桜満くんの答えた答えに、校条さん、草間さん、そして魂館くんが驚いていた。

 

「まぁ驚くのは無理も無い。それで本来未成年でしか取り出せないヴォイドをなぜ私が持っているのか……についてだが、そんなものは簡単さ。なにせ私は17歳だからね」

 

「「「……えっ⁉︎」」」

 

まぁそんなリアクションはするだろうね。俺もそんな事は分かってはいたが。それで各々の反応はというと……。

 

「せ、先生が17歳だなんて……」

 

桜満くん……驚くのは無理はないだろうが、ヴォイドについての説明は涯の方から受けているだろう? 今更驚き過ぎだと思うのだが……。

 

「17に全然見えない……だが先生がそう見えるという事は、それほどの魅力を既に持っているのか……」

 

「や、谷尋? お前そんなキャラだったか?」

 

何やら俺が17だという事を聞いて真剣に考えている谷尋くんと、それに突っ込んでいる魂館くん。校条さんと草間さんは何も言えずに固まってはいたな。それよりも俺が予想外なのが……。

 

「愛護先生が……私より年下……そうだったんですのね」

 

(……なんか亞里沙さんの様子がおかしいような気が……)

 

「でしたら……愛護先生の事を合法的に甘えさせる事が……うふふ」

 

あの……亞里沙さん、何か良からぬ事を考えてはいないかな? なんかこれ以上悪化させてはいけないと思った俺は、桜満くんに呼びかけていた。

 

「そんな事はともかくとして、桜満くんはこれからどうするつもりなのかな?」

 

「はっ! そうですよね。では今からその事を……」

 

それから桜満くんがこれからやる事を説明した。どうやら葬儀社を助けるようで、それを先導してくれるのがふゅーねるという、桜満くんが今抱えている白い小型ロボットだ。そこからは少女の声が聞こえるが、確かツグミという子だったかな? 俺の記憶ではそう記憶している。そしてふゅーねるの先導の元、俺達は地下通路を通って軍が所有しているバギーのところへと向かっている最中だ。

 

桜満くんの作戦では、今ロストクリスマスというクーデターを起こしている軍のバギーを奪って、楪さんの元に向かうという事だ。そこで涯と合流して、ロストクリスマスを収束する。実にシンプルな作戦ではあるが……。

 

(俺から言わせてもらえば、君達はまだ学生であろう? そんな無茶をして大丈夫かい? と言いたい。だがまぁ、生徒の主体性を尊重するのも教師の務めだからな。だからと言って生徒を危険な目には合わせんさ。それに……。

 

(茎道……貴様は俺の今日の楽しみを奪った張本人だからな……。直接引導を渡してやるよ……)

 

そんな事を考えていると、不意に俺の右腕を柔らかい感触が包む。それと同時にとても甘いような匂いが、俺の鼻腔をくすぐった。俺は歩きながら顔だけをそちらの方に向ける。すると、俺の予想していた人物が俺に抱きついていた。

 

「うふふ、先生驚いたかしら? まさかこんな所で私がこの様な行動に出るとは思ってもいなかったでしょう?」

 

予想していた人物、亞里沙さんは頰を少し赤らめて、そして甘えてくる様な声でそう言ってきた。

 

「抱きつかれた時から予想はしていましたが、確かに今こんな所でそんな行動をするなんて思っていませんよ」

 

「ふふ、先生の不意をついてみたんですの。皆よりも後ろにいますし、前の子達は世間話をしていてこちらには気付いてはいない様子ですから、このまま目的の場まで行っても大丈夫かなと思いまして……」

 

「ま、まぁ確かにそうではあるかもしれませんが……多分あの小型のロボットにはこの会話は丸聞こえだとは思うけど」

 

「えっ……えっ⁉︎」

 

「まぁ、私はこのまま行っても構いませんよ。生徒を安全に現地に引率するのも、教師の務めですから」

 

「も、もぅ/// ……先生はまたそう言って……卑怯ですわ」

 

「えぇ、私もそう思っていますよ」

 

そんな雑談をしながら俺達は現地に着いた。まず先にふゅーねるがバギーを奪い、それに俺達が乗り込む。そして電波塔にいるだろう涯達と合流する……という話ではあるが……。

 

(当然敵からの妨害はあるだろうな。まぁ、その妨害から守るのが俺の務めだが?)

 

そう思って間も無く、ふゅーねるがバギーを奪ってこちらに来た。その存在に気づいてか、駐屯地にいた兵士達がこちらに殺到する。

 

「あ、あれやばくないか⁉︎」

 

魂館くんがそう言う。

 

『そんなこと言う前にさっさと乗って。このままだと追いつかれるわ!』

 

ふゅーねるを通してツグミちゃんがそう言う。予め自己紹介はしてもらったから自然と思ったが……そもそも原作の主要人は覚えている。だから自然と名前は出る。

 

それより追っ手が来ているか。ならここは私が足止めしよう。

 

「ここは私が足止めしよう。君達は先に行きなさい」

 

「ま、愛護先生?」

 

「そ、そんな事駄目ですわ! 行くなら愛護先生も一緒に……」

 

「いや、この様子だと誰かがここを引き受けなければならないと思っています。その役目を、まだ大人になりきれていないあなた達に押し付けることなど出来ないですよ」

 

「そ、そんなこと言うなら先生だって!」

 

「私は除外です。いいから早く行きなさい」

 

「……先生、この場はお願いします」

 

「えぇ、こちらも済んだら早く合流します。君たちも気を付けて行きなさい」

 

納得しない子達もいたが、桜満くんの呼びかけでなんとかバギーに乗り込み、その場から電波塔へと向かって言った。

 

それと同時に駐屯地にいた兵士達に俺は囲まれた。

 

「貴様は反逆行為を犯した!この場で拘束させてもらう。ゆっくりと両手を挙げて頭につけろ!」

 

「えぇ、あなた達の指示“には”従いましょう」

 

そして俺はゆっくりと両手を挙げる。それも物凄くゆっくりと……。

 

「遅いぞ! 早く頭に手をつけろ‼︎」

 

「やれやれ……ゆっくりと言ったのはあなた達だと言うのに……」

 

そこで異変が起こった。颯也は兵士達を束ねるリーダー的存在に従って両手をゆっくりと挙げている。そう、ただゆっくりと挙げただけなのだ。それだけなのに、颯也の周りから青い奔流が噴き出す。そして颯也の右手には、頭上から一定の速度で回転しながら青い光を放つカードが舞い降りた。

 

「き、貴様‼︎」

 

「何を激昂している? 私は……俺はお前の指示に従っただけだ。だから違反ではない。それに……」

 

颯也は右手に舞い降りたカードを力強く掌で握るように掴んだ。するとそのカードはパリンッと、綺麗な音を立てて砕けた。

 

「お前達はこの場で起きたことの記憶を無くすんだ。だからそもそも俺の存在も消え去るよ……お前達の頭の中からな」

 

少し口元を緩めた顔をして颯也は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

side 桜満

 

 

 

 

 

 

 

先生を置いてきた僕達は、バギーで電波塔に向かっていた。正直あの数を先生が苦戦するとは思わない。それでも心配になってしまう。

 

「愛護先生大丈夫かな?」

 

「でも、ヴォイドってやつがなくても強いんだろ? なら心配なんて……」

 

「だからと言って相手は軍人なんだぞ⁉︎ しかも銃も携行していたし、囲まれたら一巻の終わりだぞ……」

 

「だからと言って戻ったら……先生が残った意味が無くなっちゃうわ……」

 

祭、颯太、谷尋、花音の順にそう行った。確かにあの時、ミサイルをいとも簡単に撃破していた。でも今度は動く兵士達なんだ。まっすぐに動くわけじゃない。でも先生は僕達を先に行かせて1人残った。その先生の意思を無駄にするわけには行かないってこと僕も分かっている。それでも……心配になってしまう。それに……。

 

「……愛護先生……」

 

僕達はあまり先生との面識は無いから、あまり動揺はしてない。でも供奉院先輩は、どうやら日頃から会っていて、この中では1番親しかったようで……。

 

(というより僕も供奉院先輩と愛護先生が一緒に登校していたのは見たことあるし、何より先輩と先生が付き合っているんじゃ無いかっていう噂も流れたくらいだし……)

 

まぁそんな噂は本当かなんて分からないけど、先生と先輩が親しかったのは紛れも無い事実だと思う。だからこそ、この中で先輩が1番落ち込んでいる。

 

『集! この先に検問があって、そこにもさっき駐屯地にいた兵士と同じ装備をした奴らが複数いるわ』

 

「う、うん。ここは供奉院先輩の力を借りたいんだけど……」

 

でも正直、今の先輩の精神状態じゃ……。

 

(でも……やるしか無いんだ!)

 

「供奉院先輩……気持ちは痛いほど察します。でも今は……」

 

「……えぇ、そうでしたわね。それで、私の力が必要なんですのね?」

 

「そうです。力を……貸してくれませんか?」

 

「……分かりました。愛護先生の意思を無駄にしないためにも……」

 

どうにか供奉院先輩からの了承を得て、先輩からヴォイドを取り出して目の前の検問所を突破しようとした。その時……。

 

「おやおや……どうやら間に合ったようですね」

 

「「「っ⁉︎」」」

 

皆がその声に反応して、声のした方に顔を向けた。そこには……。

 

「いやはや遅れてしまって申し訳有りません」

 

なんといつも通りの優しい顔をした愛護先生が、バギーと並走していたんだ。

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

俺は今、亞里沙さん達が乗っているバギーに並走していた。ん? さっきまで戦っていたんじゃないかって? あんなの数秒で終わったが……どうかしたか? まぁそんなのはどうでもいいとして、今目の前には検問が近づいている。そこには先程と同じ格好をした兵隊達がいる。

 

(さて……このまま突っ込んでもどうってことはないが……素顔のまま行くと他の子達に危害が加わるかもしれないな)

 

「愛護先生……無事だったんですの?」

 

亞里沙さんが今にも泣きそうな顔をしながら俺に聞いてきた。うむ……どうやら物凄く心配させてしまったようだ。これは後で埋め合わせをしないといけないな……。

 

「えぇ。私があんな連中に負けるわけがないでしょう? それとも供奉院さんは、私が負けてしまうと思っていたのですか?」

 

「い、いえ! そんなことありませんわ‼︎ 私は、愛護先生のことを信じていましたわ‼︎」

 

「そうですか。でも供奉院さんにはとても心配させてしまいましたね。ですから、後でそれなりの埋め合わせをさせていただきますよ。さて、それで桜満くん」

 

「は、はい!」

 

「あの目の前に見える検問を突破するためにヴォイドを使おうとしましたね? 確かに私がいない時なら……まぁ仕方ないから構いませんが、今は私がいますからね。先生の役目は、生徒を目的地まで無事に引率することも含まれていますからね」

 

「え、えぇっと……それって……」

 

「ここからは私に任せてください。という事ですよ」

 

「先生……その言葉をさっきにも聞いたような気がするんですけど……」

 

「……気のせいですよ。まぁそんな事より、やりますかね。フォーム、クロスボーン」

 

俺がそう言うと、俺の体は光に包まれた。光が収まると、俺の姿はGHQの施設で桜満くんを助けた時の姿になっていた。

 

「っ⁉︎ 先生! その姿って……」

 

「おや、見覚えが……っと言って惚けるのはやめましょうかね。君の予想通り、あの時君を助けました。たまたま近くにいたのでね。さて、お話はこれぐらいにして、私は先生らしく君達の安全を保障しましょうかね」

 

そう言うと颯也は余裕でバギーを追い越し、100mほどの距離を保ってバギーの前を走る。それに気づいた兵隊達は、バギーの目の前を何かが走っていることに驚いたが、取り敢えず止まるように勧告する。しかしそれでも止まらないために、兵隊達は手に持っている銃をバギーの方に向けて構えた……のだが……。

 

「その銃を私の生徒に向けていると言うことは……貴様らはこの世からいなくなるという覚悟を持っていると……俺は思ってもいいんだろう?」

 

ゾクッ……

 

誰が喋ったか分からないが、銃を構えた兵士達はそう聞こえた。聞こえた瞬間、言いようのない悪寒が走った。そして再びバギーの方向を向く。すると兵隊達は皆恐怖に襲われた。その理由……それは、バギーの目の前を走っているものが鬼に見えた。しかもただの鬼ではない。こちらに尋常じゃないほどの殺気を飛ばして迫ってきているのだ。恐怖を覚えない方がおかしいのだ。

 

「う、撃て! あの鬼を撃て‼︎」

 

その言葉に我に帰った兵士達は、鬼……のように見える颯也に向かって発砲した。勿論全てが正確に颯也を狙えているわけではない。

 

「……それが貴様らの答えだな?」

 

それを見た颯也は、両手に両刃のついたナイフを持つ。そして、目視では確認できないほどの速さでナイフを振り始めた。それと同時に多数の金属音が聞こえた。それは、颯也が向かってくる銃弾を“全て”斬っている音だった。そして颯也の足元には斬られた銃弾の残骸が……。

 

「銃弾の残骸など残すわけがない……」

 

颯也の言った通り、銃弾の残骸は無かった。それは何故か? それは……颯也が銃弾を塵に変えていたからである。颯也は、道端に少しでも銃弾の残骸が残るとバギーの進行を妨げると考え、銃弾を塵に変えていた。

 

「さて……貴様らは好き勝手に撃ってきたな。ならこっちも、その倍返しをさせてもらおう」

 

銃弾がこない合間を狙い、颯也は右手に鉄砲を持つ。そしてその銃口に円筒型の物を取り付け、それを検問に向かって撃った。その円筒型の物は勢い良く検問の門にあたり、当たった衝撃で凄まじい爆発を生んだ。その爆発に巻き込まれ、検問を守っていた兵士達は全員が吹き飛ばされた。勿論兵士達は爆風などに巻き込まれても無傷である。気絶しているだけである。しかも道を綺麗に開けてだ。偶然に思うかもしれないが、これは颯也の計算によってである。

 

そして颯也は一旦元検問があった場所に立ち止まり、バギーが通過するのを待つ。そしてバギーが検問を通ったのを確認して、颯也もバギーと並走し始めた。

 

「す、すげー……」

 

魂館が唖然とした顔でそう呟く。他の皆もそんな感じだった。だが……。

 

「はぁ〜/// 流石は愛護先生ですわ……」

 

1人だけ……供奉院だけは頰を赤く染めてそう呟いていた。

 

『本当に……なんでもありね。愛護颯也』

 

ふゅーねるを操るツグミはボソッと呟く。それと同時に背後から音がした。それはプロペラが高速で回る音で、後ろを振り向くとヘリコプターが追走していた。そしてヘリコプターからミサイルが1つ発射された。

 

「そうか……貴様もその選択肢か……」

 

颯也が次に取り出したのは、ビームザンバーで、それを右手に持つ。そしてミサイルに向かって跳躍をした。まず颯也がミサイルに対してやったことは進路変更で、ミサイルの頭を掴んで上空に進むようにした。その後、颯也はミサイルをザンバーで斬り刻んだ。だがミサイルは、斬れないまま上空を垂直に上に進む。

 

「ミサイルの処理は済んだ……。後は……貴様だよなぁ?」

 

『ヒッ⁉︎』

 

ヘリを操縦していた操縦士は、颯也に睨まれて戦慄した。そうして固まっていた瞬間に、ヘリは颯也に攻撃を加えられていた。勿論ザンバーで斬り刻まれてはいたが、爆発はしなかった。しかしながら機能は停止していたが……。プロペラが動かなくなったヘリは、ゆっくりと降下していった。そして地面に不時着したと同時に、ヘリはバラバラになっていた。そうなった瞬間……、上空に向かっていったミサイルが花火となって夜空を照らしていた。

 

「さて、先に進むか……」

 

颯也はまたバギーと並走し始めた。

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