ハイスクールD×D 理不尽壊しのリインカーネイション 作:橆諳髃
エレナさんとこちらの世界に来て数日が経った。あの日から少し経った後しょっちゅう……いや、毎日と言っていいほどオーフィスが俺の家に来る。
来た当初は、自分が元いた次元の狭間で静寂を得るために俺の力を欲していた様だが、俺と会ってどうやら目的が変わった様だ。その目的というのは……。
「颯也……髪モフモフ。肌スベスベ。温かい……」
現在俺はオーフィスに抱っこされており、頭とかを主に撫でられていた。というか何この状況……俺オーフィスに対して何かしたのか⁉︎
「何かしたのかって……オーフィスと会った日すぐにスリスリしたでしょう? そのせいでオーフィスは毎日貴方に会いに来るし……颯也との2人きりの時間がこうも早く終わってしまうなんて……」ボソッ
後半部分を颯也に聞こえないほどの小声で言う。その時の顔は、不満そのものであった。
「まぁ……あまり家事とかした事なかったし、正直不安だったからその分手伝ってくれたりして助かってるのも事実だけどね?」
確かに……オーフィスが来てからエレナさんは動きやすくなったのかもしれない。俺がまだ赤児であると言うこともあって、必需品などはまだ十分とは言えない。お金はあるが、近くのスーパーとかまで買わないといけないのである。
エレナさんから見れば、俺の事が心配みたいで1人ではいさせるのは難しい様で……オーフィスがこの家に頻繁に通うまでは、俺を抱き寄せてスーパーまで通っていた。
ただその状況は誰から見ても大変というのが明らかに分かる事だろう。
そんな時に、オーフィスが俺の家に通い始めた。そしてオーフィスがいる間、エレナは必需品や食料品を買うためにスーパーに行き、これまで片方の腕が塞がっていたのが両腕を使える様になった。
それからは、スーパーから家に帰るまで徒歩15分ぐらいだったのが、今では10分に短縮……疲労感も当初より少なくなったと思う。
だが、エレナさんは少し不満そうだ。
それで夕食の時間にもなり、オーフィスも一緒に食事を摂っていた。あまり感情を表に出ださない彼女ではあるが、こうやって一緒にいる時は時より笑う様になった。
そんな時間もすぐに終わって……。
「今日も楽しかった……颯也、エレナ……また来る」
その一言だけ言ってオーフィスは去っていく。
「あぃあぃ(バイバイ)」
「ん、バイバイ」
これが最近の日常風景になっている。
「さて……今日も遅いし、一緒にお風呂入りましょ!」
……これもいつもの日常になっている。
side ???
冥界のなんの変哲も無い荒野を歩き続ける男がいた。全身フード姿で、多くの荷物を持っていた。
「……直に会った事はないが、あの女神によればここを真っ直ぐ行った森の奥深くと言っていたな」
そんな独り言をこぼしながら、目の前にうっすらと見えて来た森を目指して歩いていた。
やがてフードの男は森の入り口に着く。それでも男は歩くのをやめず、森の奥に進む。
そうして進んだ先に岩肌の壁があり、男は歩みを止めた。
「……魔術の形跡が薄っすらとだがある。それに、かなり高い術式を使ってあるな」
男は岩肌に手で触れながらそう呟く。
「だが……俺にとっては解く事は造作もない」
男が触れている岩肌になんらかの紋章が浮かび上がる。それは明らかに魔法を行使するものだった。紋章の描かれた陣が割れる様に無くなると、男の触れていた岩肌の壁に大きな穴が出現した。
そこに男は迷わず入る。どんどん奥へと進んでいく。そして男は……自分の目的の場へと着いた。
『……こんな所に辿り着く者が現れるなんて……幻術の類をかけていたのですが?』
「あんな物……俺の手にかかれば直ぐだ。まぁ……この世界の者が解くのは難しいだろうが……な」
それは女性の声だった。しかし、明らかに男の身長よりも高い位置から聞こえた。
「この世界でのお前は……そんな姿なのか。以前いた世界に比べると、随分可愛い姿になったではないか」
『そもそもあの世界での原因を作ったのはあなたですよ? 私を利用しようとしてまで世界を滅ぼし、新しく作りかえようとした……』
「あぁ……確かに俺は、あの世界を滅ぼそうとした。それも……たった1人のちっぽけな魔術師見習いに阻止されたがな」
『そしてそのまま行けばあなたは消えるはずだった……』
「そうだ……だが、世界……異世界にもバカはいる者だな。こんな救いようのない俺を救い、あまつさえ俺を異世界に連れて行こうとは……」
『あなたにとっては、あのまま消えた方が良かったですか?」
「……いや、そうは思ってはいない。消えるまで残り少ない命……魔術師見習いと戦い、そして初めて人間の尊さを知った。しかし残り少ない命の俺は、それしか知る時間はなかった。これまで醜い姿の人間しか見てなかったのもあって……俺は物足りなかった。その時だ……あいつが現れたのは」
『そうでしたね。私の時もそうでした。最初は……私の子供達と対峙した時。そして2回目は……あなたの作り出した歪みの世界で人を滅ぼそうとした時です。狂気に駆られ人を殺し……ですが、あなたの言う魔術師見習いに倒されました。そして死の淵に落とされ、再び私自身が滅ぼされかけた時です……あの子に再開したのは……』
「そうだな。まぁあいつに会えたおかげで、座からも輪廻の輪からも離れたはずのあいつにも再び会え、心いくまで語り合えた。そして俺は……今ここにいる。人間的に言えば第2の人生というやつだ」
『私も……あの子のおかげでここにいます。今は……退屈ですけどね』
「ふん、お前の力は強すぎるからな……今では六大竜王の一角と言われている様だが、やはり物足りないか?」
『えぇ……あの子と比べてしまうとやはり』
「まぁ女神から力を授かっているとはいえ……能力を引き出すのはそいつ次第だ。あいつは……ただ自分のできる事を精一杯やる……だからこそ純粋に、想いの力であれだけ強くなれたんだろうな。俺とは違って……前を向いてきたあいつが、俺からしても、そして俺を置いていったあいつからしても眩しく見えた」
『私は……あの子が自分の息子であれば良かったと、本当の息子であれば良かったと思ってしまいます。あの背中を見ていると、どうしても目で追ってしまって……頑張っているのが見えて、でも頑張りすぎている様に見えて。そんなあの子の事を、どれほど甘えさせたいと思ったか……』
「あんたの口ぶり……何やら初恋をした女の様な感じに聞こえるが……息子ではなく、恋人と言った方がしっくりくるのではないか?」
『……そう、ですね。確かに……そう表現した方がいいのかも知れませんね』
男が洞窟の奥に来て少し時間が過ぎた。男は懐から懐中時計を取り出し、今が何時なのかを確認する。
『そういえば、今のあなたは何をしているのですか?』
上の方から、そう問いかける声が聞こえた。男は時間を確認して懐中時計を懐にしまった。
「そうだな……今は人間の世界を滅ぼそうとした悪魔から、ただのしがない商人だ。各地を転々とする……な。さて、次の商談があるんでな……おれはここで失礼する」
その一言を残して、男はその洞窟から出て言った。
side out