ハイスクールD×D 理不尽壊しのリインカーネイション 作:橆諳髃
えぇ、何かあるんでしょうねぇ……
「……お前が描いた物語だろうが……全く……まぁそれは良い。とにかく物語を進めるぞ」
今日……また夢を見た。今回は、黒い猫耳と尻尾を生やした悪魔の子が襲われていた。その後の事は分からない。残念ながらそこで意識が覚醒して、見ることができなかった。
でもこれだけは分かる……1年前と同じ感覚だって……
(でもあの風景は……冥界? だった様な気がする。特徴的な紫色の空に、独特な形をした木が鬱蒼に生えていた森林地帯……)
多分冥界だと思う。そして襲われていたのは、さっきも言ったように猫耳猫尻尾生やした女の子だ。襲っている側は、首領がチャラそうなガキと、それの付き添いの悪魔達……
(はぁ〜……なんでこうも悪魔達は見境なく……)
一応この物語は、前世ではライトノベルだったし実際にもアニメ化はされているから、襲われている子が誰なのかは分かる。勿論襲われている理由も……
本来ならそれが正しい世界の回り方なんだろう。例え俺がそこに介入しなくとも、あの子はなんとかするはずだ。だが……
(俺はこんな物を見せられて、黙って傍観者ズラするなんて考えはない……いや、そもそもそんな考え自体ありえない‼︎)
いつの時間かは分からないが、間違いなく今日起こってしまう事は事実……
何としても彼女を助ける!
それに……この1年間ただの赤ん坊として振舞っていたわけではない。それなりにこの世界でも修行は積んできたんだ。この身体の基礎体力を上げるために、1日1時間限定だが体力向上と範囲索敵能力の向上に努めてきた。
その時にはエレナさんにも手伝ってもらったし、毎日来る事は無いけど、オーフィスさんにも手伝ってもらった。
その代わりに頭の中であの時と同じく対価が要求されるんだが……特に重い要求が突きつけられる事はなかった。まぁ例を挙げるとすれば……ほとんどエレナさんやオーフィスさんに対して何らかのアクションをしろというもの……
(特に……元に戻った身体でエレナさんやオーフィスさんに甘えろと指示された時は面食らってしまったが……)
だがやらなければ、神様から特別にもらったこの恩恵が使えなくなってしまう……それは、有事の際の事も考えてどうしても避けたかったし……
(実際にエレナさんやオーフィスさんも……俺にとっては家族の様な存在で、いつのまにか恋愛感情として見てしまう事も多くなってしまったから……だから甘えろと指示されても俺は特に深刻なダメージは食らわなかったよ。ただ……)
既にギルクラの世界から転載されて2年が経とうとしている……いっしょにこの世界に来ている亜里沙さんはどうしているだろうか? 今はこれが気がかりで仕方なく思う。それでも……生きていたら必ず会えるって信じている。だからそれまでは俺も死なないし……寧ろ死ぬ気なんて更々ない。
今を精一杯自分の志を曲げずに生きる……それが今の俺の生き方で、これからも変わらない俺の生き方だ。
まぁそれは再認識する程度で良いんだが……今の状況がもんd「あら、もう起きてしまったのね。ふふっ♡ もう少し貴方の可愛い可愛い寝顔を堪能していたかったんだけど……」……もう気付いている人も多いだろう。
そう、今の俺は、ジャンヌさんに抱きつかれている状態だ……お風呂に強制的に入らされてしまった後、また何でか分からないが強制的にジャンヌさんの部屋にお持ち帰り(という名の連行)されてしまい、そのまま眠りについたという訳だ。
しかし熟睡していたのは正直な話で……ジャンヌさんは確かに抱き着きは強い方ではあったが、再開した時の様な抱き着きではなく、確かにそこに優しさと慈しみがあったんだ。だから息苦しくもなかったし、感触としては優しさと温かさを内包した、本当に母性が内からあふれ出る様な心地良さと言っておこう。
だが俺はやはり思う……ジャンヌさんはこの様な性格だったかと……
初めてあった日は、黒く禍々しいオーラを感じたし、肌に鋭い棘が刺さる様な感覚はあった。まぁ怖気付く程度ではなかったが……
だが今俺と接しているジャンヌさんを見れば……それが全く感じない。逆に温かさを感じる。そして優しさも……それに、俺に対する表情がとても柔和になった様な……
「あら? 私の顔を見つめてどうしたのかしら? 私の顔に何か付いていますか? それとも……」
そこで一旦言葉を切った後、ジャンヌさんは頰を少し赤く染めた。そして……
「私の事を……考えてくれたのかしら? そうだとしたら……とっても嬉しいわね///」
……この人は本当にジャンヌさんなんだろうか?
「あら失礼ですね。私は正真正銘……貴方のことが大好きなジャンヌですよ♡」
心を自然に読まれたと同時に何故かちゃっかり告白じみた事もされてる⁉︎
「ふふっ♡ 貴方のことなら何でもお見通しとだけ言っておきましょうか?」
妖艶な笑みを浮かべながらジャンヌさんは俺を見つめている。自然と自分の顔も赤くなっている事も、体温が少し高くなっている事も自覚した。
「頰が赤くなっていますね。ふふ、可愛いです♡ 貴方が大きくなってしまったら、この様な光景は全く見れないでしょうから、今の内に存分に見ておかないと」
(いや……それは……勘弁してほしい……)
心の中でそうは思っても、ジャンヌにはその思いは届かなかった。
それから数分後……エレナさんがジャンヌさんの部屋に入ってきた。どうやら朝食の用意ができたとかで起こしにきた様だけど……ジャンヌさんが俺を抱きしめているのを見たしまったせいか、「私も混ぜなさい!」との発言とともに乱入……結果としては背中からエレナさんにも抱き着かれた。
これはこれで……正直な話嬉しいし、役得だとも思えてしまう自分がいる……してはいるんだが……
「あらエレナ、そんな小柄な体格で颯也の事を満足せられるとも思っているのかしら?」
「ふふん、それは当然! 何せ1年間颯也と一緒にいたのよ? 颯也の撫でて喜びそうな所くらい普通に分かるわよ! それに比べてあなたは昨日きたばかりでしょ? 高々身体つきが包容力に長けているからって颯也は満足しないわよ」
「……言ってくれたわねぇー……なら、どっちが颯也の事をより満足させられる事ができるか勝負しましょうよ。それで勝った方が1日中颯也と戯れる事ができるって事で……良いわよね?」
「えぇ、良くってよ? 寧ろ望む所だわ!」
……なんか俺のせい……じゃないんだろうが、邪険な空気が流れ始めたな……
(正直俺に対しての想いは……嬉しく思うよ。ただ、これだとどちらかが傷つく思いをするのは確実だ)
そう思った俺は……
(テレポーテーション……)
心の中でそっと……そぉっと呪文を唱えてその場を後にした。
「えっ……そ、颯也はどこに行ったのよ⁉︎」
「わ、分からないわよ‼︎ そ、颯くーん……どこに行ったのぉ?」
残された2人はこんな風に慌てふためいたそうな……
数時間後……
「2人とも……少しは頭を冷やせましたかね?」
「「……はい」」
「俺は……エレナさんやジャンヌさんが俺の事を大切に想っている事を素直に嬉しく思うよ。だけど……それにも限度というのがあるし、それに俺は……その大切に想ってくれる2人に甲乙なんて付けたくないんだよ……」
「「颯也……」」
「2人の気持ちは……本当に嬉しく思う。俺も……その2人の想いな正直に、そして正々堂々正面から応えるつもりだよ。だから……焦らなくても大丈夫だよ」
それを聞いた2人は、なんか嬉しくなった様でまた俺に抱き付いてきた。でもそこには、さっきの様な取り合いの様子はなくて……
(だが……愛する人を1人に絞れない俺がこんな事を招いた事だって分かっている……)
多分、俺のこんな頑固で我儘で傲慢な性格のせいで同じような事は起こるんじゃないかと思う。そう思っているのにも関わらず、2人に説教じみた事をするのは間違いだとも思う。それでも……
(俺を好きになってくれた人は……例え何人現れようと全力で愛するって決めたんだ)
この考えが歪んでいたとしても……それでもこの、俺が抱いているこの想いを嘘だと誰にも言わせやしない!
そして俺はそのまま数時間くらい2人に抱きつかれたまま撫でられた。
時刻は昼過ぎ……
「そういば、颯也に聞きたい事があるわ」
「な、なに? ジャンヌさん」
抱き付いていた時のニヤケ顔とは打って変わり、真剣な顔をしていた。
「今朝の事で、これは私の直感なんだけど……今日この世界で何かが起こるのでしょう?」
「っ⁉︎ どうしてそう思ったの?」
「そんなの……何となくよ。ただ、颯也が今朝寝ている時に顔を少ししかめたような気がしたからかしらね」
「そう……なんだ。うん……分かった。なら、正直に言うよ。今日……冥界のどこかでとある人物が襲われるんだ。それもこの世界で必要な人が……」
「……そうだったのね。それを颯也は夢で見たの?」
「あぁ。最後までは見れなかった。でも、俺の予想が正しければ……」
「そこに颯也が介入しに行くのよね?」
「そうだけど……なんで知っているの?」
「貴方が昨日風呂に入る前寝てしまったでしょう? その時にエレナから聞いたのよ。そんな事があったって……その時に、身体が元に戻ったとも言っていたわ。まぁそれ以来から颯也はその能力……多分限定的なものだと思うけど、それを頻繁に使っていると言うことも聞くし……」
「そうだったんだね。なら、これからはもう隠さなくても良いかな……」
「でも……貴方が危険な所に行かせるかどうかは別の話よ。私との契約……忘れたかしら?」
「いや、忘れてはいないよ。でも俺は……傍観する事もしたくない! そうしてしまえば……俺は……俺の事を想ってくれている貴女達に顔向けできないって……そう思ってしまうから……」
「……バカ」
「ジャンヌさん?」
そう呟いたかと思うと、ジャンヌさんは向かい側に座っていた席から立って、俺の方に近づいてきた。そして……
ダキッ
「っ⁉︎」
「……本当に……颯也はバカよ。私は……正直貴方しかいらない。貴方が無事で……それで元気な姿だったら何にもいらないわ……」
ジャンヌさんはそう言いながら優しく抱き締めてくる。ただただ、我が子を死地に赴かせたくないかのように……
「でも私は……そんな貴方に惚れたのよ……目の前で困っている人を見過ごせない……自分の体を顧みずに向かう事ができる……こんな私でさえも助けてくれたそんな貴方に……私は惚れたのよ。だから……」
次に来る言葉は……聞かなくても分かるよ。でも、そこまで想ってくれるジャンヌさんの優しい言葉が……
「必ず……無事に戻って来るのよ?」
今の俺にとっての力になるよ……
瞬間、颯也を中心に大きな力の本流が流れ出した。屋内にもかかわらず、窓を閉め切っているにも関わらず部屋の中を突風が駆け巡る。しかしそれはカーテンなどの軽い物を揺らす程度……家具は一切傷つきはしない! そして……
「あぁ……俺は貴女の元に帰って来るよ。俺は貴女の事も大切だからさ」
「……そこは、私の事だけって言って欲しかったわ」
颯也は元の姿に戻り、ジャンヌの事を抱きしめ返していた。
「ふふ♡ 貴方の事を、こうやって抱きしめる事ができる日が来るなんて……それもこんなに早くおとずれるなんて思ってなかったわ。あぁ……ずっと……ずっとこうしていたいわ」
颯也の身体が元の状態に戻った事で、ジャンヌは加減せず颯也を抱き締めた。それに対して颯也も、ジャンヌのその抱擁を受け入れる。それどころか逆に颯也の方も抱きしめる力を強くした。
「あぁ♡ 颯也……」
「ジャンヌさんが……俺の事をここまで想ってくれている……今それを……俺は直接感じてるよ。貴女の心臓の鼓動を……貴女の息遣いを……そんな貴女に、俺はさっきと違う言葉を贈りたい」
颯也はジャンヌの耳元まで自分の顔を近づけた。そして……
「今ここで、貴女を強く抱き締めている今の俺は……大切な貴女のために帰って来るよ」
「っ⁉︎///」
その囁き声は……ジャンヌの耳からすぐさま心……ジャンヌの深層心理にまで駆け巡った。ジャンヌの身体が歓喜に震え、真っ白に透き通るような肌も桜色になっていく。
「……じゃあ、俺はもうそろそろ行くよ」
颯也はジャンヌから離れ、これから何かが起きるであろう冥界に向かおうとする。その時、颯也の服の裾が小さい力でだが引っ張られる。そうしていたのは勿論ジャンヌで……
「行く前に……しておきたい事があるの……良い、かしら?」
ジャンヌは振り向いた颯也の顔に自らの両手を添えた。そして……
「んっ……」
颯也の唇を、ジャンヌが自らの口で塞いだ。それはとても長く……しかし一瞬とも思える程の時間だった。だがその一瞬と捉える間であろうと……そこに交わされたジャンヌの想いの強さは変わる事はない!
自分の想いを実際に行動に移して伝えたジャンヌは、ゆっくりと顔を離した。
「私の事を想ってくれる貴方に……ささやかではあるけれど……聖女としてではなく復讐の魔女と化してしまった私からだけど……貴方が無事に帰ってきてくれるためのおまじないをかけました。不幸が訪れるかもしれない……けどこの気持ちと想いだけは……」
「……確かにジャンヌさんは、不当な扱いを受けたかもしれない。それは不幸だったのかもしれない……でも」
「それでも……少なくとも俺と一緒にいるこの世界では……貴女を不幸だと思わせない! そして……俺は貴女がかけてくれたこのおまじないも不幸だなんて一切思わない‼︎ だから……待ってて」
そして颯也は……一瞬でその場から姿を消して冥界に向かった。
「颯也……」
「全く……なに熱々なもの見せつけちゃってんのよ!」
「え、エレナ⁉︎」
「人が空気を読んで物陰から覗いていたというのに……あぁやって抱き合って……それにキスまで……」
「えっ……まさかエレナ……キスして……」
「えぇそうよ! 1回も無いわよ‼︎ 確かに颯也に時には甘えたり甘えさせたりしたけど、何故かそこまでは出来なかったわよ‼︎ 悪い⁉︎」
「い、いえ……それは一言も……」
「フンっだ! どうせ私はジャンヌ見たく大人の様な身体つきなんてしてないですよぉっだ! ……羨ましい」
颯也がそこからさった後は、そんな一面もあったりなかったり……
「我も颯也にキスしてもらった事無い……」
「アンタは尚更黙っていなさい‼︎」
尚オーフィスさんは邪険に扱われてました……
side ???
「くっ……しつこいにゃ!」
私は……逃げていた。たった1人の妹を置いてきてしまっ事は……悔しくて仕方がない。でも今の私じゃ、妹を守りながら逃げる事なんて出来ない。
私は……主人を殺した。でもそれは私欲の為じゃない。妹を守る為だ。でも……結果的にあの子の事を傷つけてしまったのかもしれない。
(ごめんね……ごめんね……白音)
黒い猫耳と尻尾を生やした女はそう思いながら逃走を図る。だがそれが原因で、追手から放たれた拘束魔法に足が引っかかり、倒れてしまった。
「ハハッ! 遂に追いついたぞ‼︎」
そこに現れるのは、外面が物凄くチャラいリーダー格の男と、その男に主従している者達だった。数は6人で、リーダー格含めれば7人になる。
「指名手配のS級はぐれ悪魔黒歌さんよぉ? 大人しく捕まれよぉ〜。お前がこのまま逃げたところでどうにもならないしぃ? 絶対苦しくなるよぉ? でも俺のとこに来たなら安心して暮らせるぜぇ? 何せお前を違えた事なんて報告しないし、衣食住も提供してやるよ? でもその代わりに毎日俺のいう事聞いてもらうけどなぁ?」
じわりじわりと黒歌に近づいていく追手とその取り巻き……黒歌の方は、逃げたかったが足に絡まる拘束が外れない為に動けないでいた。もがいてももがいても外れる様子はなく、焦りが募るばかり……
対して悪魔達は着々と近づいて来る。その距離僅か3mほどになった。
(このままじゃ……私……誰か……誰か助けて‼︎)
心の中でそう念じるも、追手の悪魔達は歩みを止めない。逆に時間が過ぎていくばかりだ。
「ヒヒッ! さぁ、観念して俺のところにきな?」
リーダー格の魔の手が、黒歌に伸びていき、その手が胸元に触れようとした瞬間‼︎
「おい貴様ら……か弱い少女1人に対して複数で何をしようとしている?」
その場に静かに……しかしながら怒気を内包させた声がその場に響いた。
「だ、誰だ⁉︎ どこにいる⁉︎」
取り巻きの1人が言った。それに合わせて他の取り巻きも警戒を強める。そこにどこからともなく足音が響き始めた。その音は……徐々に強くなっていく。強くなっていくとともに……その場の空気も変わって言った。
リーダー格の男、それに取り巻きもそれに感じ始め冷や汗を流す。
「どうした? 先程までの元気はどこに行ったんだ?」
対して向かって来る何者かは、それを嘲笑うかのようにそう問うた。そして……姿を現したのは……
「な、なんだあれは⁉︎」
「な、何かが蠢いている様な……」
(め、目の前にいるのは分かるのに、まるで霧がかかって影しか見えない?)
黒歌はそう思っていた。だが、それとともに黒歌には見えてしまったのだ。ただ……ほんの一瞬だけ……
それを見た黒歌は戦慄した。この世界……天使、堕天使、悪魔……そして伝説の存在である龍までもが存在する。それが当然かの様にひしめくこの世界には……当然ながら死を統括する者達もいる。
その存在は……
(し、死神⁉︎ な、何でこの冥界に⁉︎ 本来死神は滅多なことでは現れないはず……それなのに何でこんな辺鄙なところに⁉︎)
「ほぉ……そこにいる少女には……私の姿が一瞬でも見えた様だな」
「な、何を言って⁉︎」
「何を? そんな事は決まっている……本来そこにいる少女は途轍もなく強いという事さ。今は追われている身だから、十分な力も発揮できずに疲弊しているんだろうが……お前達と比べれば全員でかかろうと少女の方が強いという事さ。それに比べ……」
そこで一旦言葉を切った何者かは、霧の中で何者かが蠢いているとしか判別できないチャラーズ(チャラいリーダー格+取り巻き6人の総称)に対して、目を光らせながら言葉を発した。
「貴様らは一体なんだ? お前らみたいな悪魔どもはそんな下賎な考えしか持っていないのか? 全く……吐き気がするよ」
「このっ! 好き勝手言わせておけば‼︎」
取り巻きの1人が我慢ならない様子で啖呵を切った。そして魔法を発動して攻撃を仕掛けた。それは炎属性の魔法で、大きさは小さいもののスピードがあった。それに対し……
「……下らない」
霧で覆われている者は、その魔法が自分に当たる前に何らかの事をして、魔法をかき消していた。
「なっ⁉︎」
「驚いている暇があるか……たいそう余裕がある様に見えるが……」パチンッ!
指が鳴る音が聞こえた。それと同時に魔法を放った取り巻きの下に魔法陣が現れた。
「灼熱の風炎よ、呑み込め……フレアトルネード!」
何者かが発した呪文は……灼熱の竜巻だった。その竜巻は一瞬のうちに魔法を放った取り巻きを呑み込み、その余波は他のチャラーズにまで影響を及ぼした。熱すぎてその場から距離を取ろうとする。しかし……
(あ、熱くない?)
何故か黒歌にだけは影響を及ぼしてはいなかった。
「く、くそっ! 何なんだよこれは⁉︎」
「そんなの分かり切っている事だろう?」
「なっ⁉︎ ガァァァッ⁉︎」
距離をとったチャラーズの1人が胴体を正面から切られた。纏っていた服は鋭利な刃物のようなもので切り裂かれてはいたが、血は出ていなかった。だが、まるで糸の切れた人形のように地に倒れ伏した。
「ど、どこに⁉︎」
その時にはもうその何者かを認識さえできていなかったチャラーズ……しかし黒歌にはその者が霧に覆われてもそこにいると認識できていた。
その状況の中で次々と何者かに襲われて地に倒れ伏すチャラーズ……最後に残ったのは……
「く、くるなぁっ⁉︎」
リーダー格の男ただ1人……しかし、手には護身用なのかナイフを持ち、それを黒歌の喉元に当てていた。
「こ、これ以上近寄ると……この女を殺すぞ⁉︎」
「……貴様」
「それ以上何かを言ってもこの女を殺す! お前のような気持ち悪い存在などどこかへ行ってしまえ‼︎」
大きな声で荒げながら言う男……しかしそこには……明確な恐怖が見て取れた。
だがそんな事をしても……
「弱い者や負け犬ほどよくもまぁ声を荒げるものだ……」
「っ⁉︎ 俺の忠告を無視したな⁉︎ ならもうこの女の命は「取ってどうする?」っ⁉︎」
「貴様が人質にしているその少女……俺に取って何かの価値があるのならそれは効果的な手だろうな……だが、私と少女は残念ながら何の関係もない赤の他人だ。だから貴様にはこの言葉を贈ってやろう……無意味だと……」
「そ、そんなっ⁉︎」
「それにだ……」
チャラ男はいきなり起きた突風に目を瞑った。時間にしてほんのわずかな時間だ。だがそのわずかな時間が……
「私の目の前で人を……それもこの様な可愛げのある少女に手をかけるとは……怒らせたいのか? そして複数人で女の子を取り囲むその腐った性根……俺が最も嫌うタイプだ。そんな貴様に……特別に姿を見せてやろう……思い出したくもないほどの恐怖を添えてなぁ?」
霧が晴れる。姿が露わになっていく……その姿を見たチャラ男は……
「し、しししし死神⁉︎」
全身黒色をベースに、所々を白と赤で色付けられた鎧……そして顔は、黄色のブレードアンテナに、緑に怪しく光るツインアイのフルフェイスで覆われていた。
そして手には……2つのビーム刃が形成されている鎌を持っていた。その姿はまさに……
「死神……」
「さぁ……貴様の事だ今回だけでなく、他にも罪を犯しているだろう……その罪諸共、今この場で俺が罰してやろう。覚悟はいいな?」
「ひ、ヒィィィィッ⁉︎」
チャラ男は取り巻き達を見捨てて自分1人だけ逃げようとした。しかし……それを死神が逃がすわけもなく……
「往生際が悪いな……なに、たったの一振りだ……」
その死神の鎌は……チャラ男の首を一閃した。しかしそこは取り巻き達と同じく血は出ない……その代わり……
「アァァァァァァァッ……」
チャラ男は首を掻き毟り、口から泡を吹きながら倒れた。
「さて、これにて一件落着か……後は……」
死神は黒歌の方を向く。黒歌は、死神の目がこちらに向いている事もあり、疲弊はしているものの警戒した。
「そんなに警戒しなくても良い。俺は君を助けに来たのだから」
「た、助けに……?」
死神が発する軽い雰囲気を持つ言葉に、黒歌は一瞬ぽかんとした。
「あぁ。君がどうしてこんな状況になっているのかは……俺は分かっているよ。それと……」
死神は黒歌に近づき、黒歌の頭にそっと手を乗せた。
「かの者を癒せ……ヒール」
黒歌を淡い緑色の光が包み込むと、これまで負っていた黒歌の傷が治った。
「あ、あなたは一体……」
「俺の名前か? そうだな……君が秘密にしてくれるのなら教えよう」
「ひ、秘密にします! だから名前を聞かせて欲しいにゃ!」
「分かった。では1回しか言わないよ? 俺の名前はアンフェアブレーカー……さて、名前は言った。ここでやる事も終わった……だから俺はここから去らせてもらうよ」
そしてアンフェアブレーカーと名乗る者は、その場に元からいなかったかのように姿を消した。そこに残されたのは……
「……アンフェアブレーカー……ま、まさかにゃ〜……」
そんな驚愕に満ちた顔をしていたという……
side out
さて、久々の本編はどうだったでしょうか? まぁバトルを描くのは3回連続といった「ちょっと作者ぁ‼︎」はい? 何ですかジャンヌさん?
「こ、ここここれ! 私と颯也がキスしてるじゃないの‼︎ しかもディープな奴‼︎」
えぇ、そうですけど……何かご不満g「何言ってるのよ! 良くやったって言いに来たのよ! ふふふ、それにエレナよりも先にキスできるなんて……勝ち組の気分ってこんな感じなのね‼︎」……そ、そうですか……
で、では今回の解説行きましょう。
ガンダムデスサイズ・ヘル
機動新世紀ガンダムWに出てくる機体です。特徴的なのは、本編で描いているように、黒を基調とした色合いと2つのビーム刃が出る鎌……さらに、これは言ってませんでしたが、背中から伸びる蝙蝠の翼の様な4枚の羽です。これはシールドの役割にもなります。
主武装
・ツインビームサイズ
・バルカン
・マシンキャノン
・バスターシールド
・ハイパージャマー
因みにチャラーズに見えなかったのはハイパージャマーのお陰です。元々電子機器に影響を与え、相手のレーダーには映らない等の隠密に非常に優れた装備なのですが、そこは颯也の能力もあり、発動時はある一定の力を持っていなければ、姿が霧に包まれたかの様に相手からは見えてしまうという設定です。
フレアトルネード
簡単に灼熱の炎を纏った竜巻です。ちなみにこれに飲み込まれた取り巻きは生きています。アンフェアブレーカーの信条として、殺さずに対象を無力化するというものを持っているので、無闇に殺傷はしません。そもそも好みません。
ヒール
テイルズシリーズで一般的に使われる中級程度の癒し魔法です。効果は対象の傷や疲労を治す事……
※しかし颯也の持つ能力により普通の物より能力は向上している。
さて、今回はここまで! また会いましょう‼︎